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一章 仮面の少年
4話 薬剤庫、再来。
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目の前に立ち塞がる扉を開けずにいる。
先生にもらった地図とメモを持ち、薬剤庫の前に辿り着いたものの、僕は立ちすくんでいた。
この扉を開かなければ、シュウ君を助けることは出来ない。そう、分かってはいるのに、どうしてもあと一歩を踏み出せない。
前回、薬剤庫に行ったときの記憶が蘇る。また、あのやかましい自称悪魔の女に会わなくてはならないのか、とため息を吐いた。それから大きく息を吸う。
「よし」
意を決して、扉を叩く。数秒の静寂の後、部屋の中から「バリンッ」と何かが割れた音が聞こえたが、扉を叩いたことへの返事はない。
「あの人、なにしてるんだ」
中で何が起きているのか、僕には皆目見当もつかない。特に知りたいとも思わなかった。
「中に、入るか?」
返事がない以上、中に入ってはいけない場面である可能性がある。例えば、今割れた何かは危険な液体が入っていたビンで、彼女はその処理に必死でこちらに気づいていないという場合だ。もし僕が入って、誤って液体に触れてしまえば、溶けてなくなってしまうかもしれない。
思考を巡らせ、ついに答えをだした。
「よし、一度先生のところに戻ろう」
僕は、扉に背を向ける。何かの割れた音は聞かなかったことにしよう。ただ、返事がなかったことにしよう。中には誰もいなかったことにしよう。そう考えて一歩踏み出す。少しでも早くこの場から離れたい。今までのは言い訳だった。僕は彼女に会いたくなかったのだ。
早足で廊下を駆け抜ける。
帰り道、曲がり角で、半透明な何かが目の前に現れ、僕をすり抜けた。一瞬の出来事で何が起きたのか理解できなかった。その後、すぐ半透明な何かの後に曲がり角から現れた誰かと僕はぶつかった。
「うわぁ!」
僕と激突した彼はそんな声を出して盛大に後ろに倒れ込む。僕は目を疑った。彼の周りには、人魂のようなものが浮遊していた。
◇
「ごめんね、大丈夫?怪我はないかな?」
起き上がった誰かは、僕にこう声をかけてきた。
周囲にふわふわとした半透明の何かを浮遊させる様子から怪しさは拭うことは出来ないが、悪い人ではないように感じる。
「大丈夫です。あなたこそ、大丈夫ですか?」
その言葉を聞いた彼はにこりと笑い、僕の方を見てこう答える。
「僕は大丈夫だよ」
その時、彼の目がよく見えた。長い髪で片目が隠れているが、彼の目は明らかに異質だった。黒白眼に印象的な青い瞳。綺麗とも言えるし、恐ろしいとも言える不思議な目だ。
そして、瞳が通常通りであれば、なんとなく、10年ほどでシュウ君はこのような姿になるのではないかと考えてしまった。彼はそんな見た目の人物だった。
僕が彼の顔をじろじろと見ていると、彼とは違う別の誰かの声が聞こえてきた。
「おい!テメェ、そっちからぶつかって来てごめんの一言もねぇのかよ!イチゴもイチゴだ!お前が謝ってんじゃねー!悪りぃのはそっちだろ!」
やけにうるさい誰かの声は、廊下中に響き渡る。近くから聞こえた。しかし、声の主人の姿は見当たらない。黒白眼の男の声に似ていたような気もするが、彼の口は動いていなかった。
見えない声の主人に動揺している僕を見て、彼はクスリと笑いながら口を開く。
「ごめんごめん!でもぶつかっちゃったら謝らないと。それにこの子焦ってたみたいだしね。何かあったのかもしれないだろ?」
イチゴと呼ばれた青年は明らかに彼を取り巻く半透明な何かに話しかけていた。そこで僕はやっと気づいた。声の主人を。
「あ、あの。その浮いてるのって…」
「その説明は、こっちで話そう。君についても聞きたいことがあるんだ。ついておいで」
僕の質問を全て聞く前に、青年は僕の手を引き歩き出す。
「おい!待ちやがれ!そんなやつ連れてったらグリムの野郎に何言われるかわからねぇぞ!」
声を荒げる人魂のような何かに青年は「大丈夫」と返事する。そして、僕はそのままあの忌々しい薬剤庫へと連れて行かれた。
◇
「やぁ!モルモット君じゃあないか!!!!!」
青年が扉を開けてすぐ、僕と目があったあの自称悪魔は嬉しそうにこう声を上げた。
「あぁ、グリムさんの知り合いでしたか」
「いいえ」
青年の問いかけに対して、僕は即座に否定する。
「冷たいな~モルモット君~。で、アタシの助手がな~んで、あいつの助手を連れてきてんの?」
「そこの角でこの方と激突して、ちょっと気になるものを持っていたので連れてきました」
「気になるもの?なになに~?」
グリムさんはそう言って、青年の周りをぐるぐると回る。彼女の反応を見ながら、彼は「ニカワ、それを見せて」と浮遊する何かに声をかける。
「チッ。わかった。ほらよ」
ニカワと呼ばれた浮遊する何かの中から1枚のメモ用紙が表れる。
「それは…」
僕は慌ててポケットの中を確認した。あるはずのものがない。そして、確信する。あのメモは、ユウヤ先生にもらったものだ。
「いつのまに盗って…あ」
そうして思い出す。浮遊する何かは、僕の体をすり抜けていた。
「あのとき…」
「あぁ、そうだよ。テメェの体をすり抜けた時に上手いこと掠め取ってやったんだ」
下品に笑うそれに対して、青年はため息をつき、こう話し始める。
「あまり感心できることじゃないけれどね。でも、内容が内容だ。ここに連れてくるべきだと判断した」
「グリムさん、これを」
青年が、メモを手に取りグリムさんに手渡す。彼女は、それを受け取ると「どれどれ~」と言いながら、静かにメモを黙読し始めた。そして、「なるほど」と一言口にすると彼女は奥の部屋へと姿を消した。
僕がそれを見ていると「そういえば」と、青年に呼びかけられる。
「自己紹介を忘れていたね。僕の名前は"四角 一期"。グリムさんの助手だよ」
彼はふわふわと浮かぶ何かを鷲掴みにする。突然のことだったのかそれは「ゔっ」と愕く。それからイチゴさんはこうつづける。
「そして、さっき君が気になっていたコイツは、僕の弟"四角 二河"。体がないのは…まぁ、聞かないでくれると嬉しいな」
「それで…」
イチゴさんは僕の方に向き直り、にこりと笑みを浮かべる。
「君の名前を聞いてもいいかな」
その笑顔から、悪意は一切なさそうだ。しかし、なぜだか寒気を感じた。
僕が動じていると、ニカワさんが口を開く。
「テメェ!こっちは名乗ってんだから早く名乗れよ!ぼけ!」
彼の怒りを露わにする態度で僕は冷静になる。そうだ、名を名乗らなくては。
「香水千夜です。えーっと、僕はこの病院の患者なんだけど、色々あってユウヤ先生の助手になったんだ。よろしく、イチゴさん」
「ユウヤ先生の助手。あぁ、だからユウヤ先生の書いたメモを持っていたのか。…ということは僕達は助手仲間だね。これから仲良くしようよ。よろしくね、チヨ君」
そう言って、彼はまた人懐っこい笑みで笑う。やはり、悪い人ではないのだろう。まぁ、彼も死んでいるのかもしれないが。
「それにしても香水さんか。驚いたよ。まさか、あの人と同じ苗字の患者さんがいるなんてね」
「あの人?」
僕は思わず聞き返した。
期待したのかもしれない。
もしかしたら、イチゴさんは僕について何か知っているのかもしれないと思ったから。
考えてみれば、病室に書かれていた香水千夜という名前に違和感を覚えたことはなかった。ということは、これは僕の名前に間違いない、はずだ。
ならば、彼の言うあの人は、僕と血のつながりのある人物なのではないだろうか。
「あぁ、あの人というのはね…」
「準備できたよ!」
彼が全ての言葉を言い終える前に、奥の扉が「ばんっ」と音を立てて盛大に開き、グリムさんが大声を上げながら姿を現した。
「あ、グリムさんお疲れ様です。用意できたみたいですね」
「うん。ばっちしだよ~!ほら、あの蜘蛛野郎の助手!それ持ってさっさと出てくんだな」
彼女は左手に持っていた瓶を僕に投げつける。なんとかそれを受け止めて瓶の中を覗く。
「カプセルの、錠剤?」
「そだよ~。でも、まさかモルモット君が自殺志願者だったなんてねぇ~」
「え?」
自殺志願者?この女は何を言っているのだろうか。僕が死にたいと思っているわけがないだろう。メモには何と書かれていたのだろうか。
僕が顎に手を当てて思考を巡らせていると、頭上に疑問符を浮かべながらグリムさんが口を開く。
「死ぬ薬が欲しいんでしょう?そんなの飲むのは、安楽死か自殺くらいじゃないの~?」
安楽死、なるほど。彼女の発言を聞いて僕は、はっとした。そうだった。僕は精神世界から戻るために死ななければならない。そのために必要なのがこの安楽死薬というわけか。
僕が否定しようと口を開けたとき、イチゴさんが声を発する。
「グリムさん、ちゃんとメモ読んだんですか?必要なだけですよ。まぁ、何に使うかまでは書いてなかったですが」
「でも、飲むんでしょ?なら死ぬよ。眠るようにゆ~っくりね。あ!どうせ死ぬなら、死ぬ前にワタシの実験に付き合ってよ!痛くしないから、さ❤︎」
物騒なことを耳にして、僕は「あ、もう行かなくちゃ」と言って、逃げるように薬剤庫を出て行く。それを見ていた薬剤庫の主、グリムさんが僕を止めることはなかった。
◇◇◇
チヨが出て行った後の薬剤庫でこんな会話が繰り広げられていた。
「あ、そういえばグリムさん。僕、チヨ君と話してる最中だったんですよ」
タイミングを考えてください、と言わんばかりに、イチゴはグリムの方を見る。彼女は「チッ」と舌を打ち、怒りを露わにした。
「お前、マジで危なかったンだけど!アタシがあの場で出てかなかったらどうなってたかわかる!?」
彼女はそう言いながらイチゴの胸ぐらを掴む。
「ちょっとやめてくださいよ!なんですか!別にいいじゃないですか!ただ同じ苗字の人がいるだけなんですから」
「それでモルモット君の記憶戻っちゃったらどうするのさ!」
「いいことじゃないですか!彼が望んでいることでしょう?」
イチゴの反論にグリムは大きくため息を吐いた。
「オマエは何にも知らないからそんなこと言ってられンだよ。とにかく!もう、アイツに香水の話はするな。…消えたくなかったらな」
グリムの発言に、イチゴは不満そうな顔を見せる。それを見ていたニカワが口を開く。
「おい。なんだか知らねェがイチゴ、こいつの言うことだけは聞いとけよ。お前1人のせいで俺たちまで消えちまうのはごめんだぜ」
イチゴは少し考えて冷静に返す。
「分かりました。もう話しませんよ。でも理由くらい聞かせてください」
彼の発言にグリムは心底嫌そうな顔をしたが、やがて諦めて口を開く。
「分かったよ。あのクモ野郎にはアタシが言ったって言うなよ」
そうして、イチゴはチヨの正体を知ることになる。その部屋に聞き耳を立てる男が1人、彼は「ケハハハ…」と怪しい笑みを浮かべた。
◇◇◇
「やぁ。貰ってきたみたいだね」
薬剤庫から出た僕はすぐに先生の待つ診察室へと戻ってきた。
彼は僕が片手に持つ瓶を見て落ち着いた声でこう口にする。
「グリムから聞いたかもしれないけれど、それは飲んだら死ぬ薬だ。用途は、わかるよね?」
僕は頷く。
「はい。精神世界からこっちに戻るために飲めばいいんですよね。でも、これを精神世界に持っていくことは可能なんですか?」
「あぁ。それは大丈夫だよ。君の身につけているものはあちらに持っていくことができるはずだ。君があちらに行ったとき、その服は着ていただろう?」
「たしかに」
そう言って、僕はまた頷いたが、ふと疑問に思う。この人はなぜ僕の持つ異能にここまで詳しいのだろう。ただ前例があっただけなのだろうが何か引っかかる。
そのようなことを考えていると、先生が続ける。
「この薬に関して、2つお願いがある。いいかな」
僕が「なんですか」と返すと、先生は指を一本立ててこう言う。
「まず1つめだ。この薬はこっちの世界、つまり現の夢病院内では"絶対に"飲まないこと。大丈夫かな?」
僕が理解を示せば、「ありがとう」と言って、もう一本の指を立てて続ける。
「次に2つ目。この薬は誰にも渡してはいけない。君がこの薬を持っていることを知っている人は少ないけれどね」
「これで全てだ。理解できたかい?」
僕が「大丈夫です」と了承すると、先生は薄ら笑いをした。
「ありがとう。約束だよ。じゃあ、もう行って大丈夫だ」
「何かあったらまたおいで」と言う先生に頭を下げて、僕は診察室から出る。その後、いつのまにか、診察室の外にいたガスマスクの看護師に連れられて、僕の病室へと戻った。
それから、僕は机に向かう。日記を書くのだ。忘れては困ることが山ほどある。
僕は筆を走らせた。
日記2
僕には異能があるらしく、他者の精神世界に入る事ができる。眠る事で誰かの精神世界に入り、そこで死ねば元の病室に戻る。
もしかしたら、病気由来なのかもしれないその能力を使って先生の助手として他の患者の世界に入っている。
現在はシュウ君という患者の世界に入り、彼の悩みや苦しみを探っている状態だ。
死ぬのは痛い。
だから、死ねる薬を貰った。
これを使って、シュウ君を助けるために精神世界を旅しよう。
文字を書き終え、次は似顔絵を描いた。シュウ君と、薬剤庫の2人と1体(?)。1ページ目に描かれたユウヤ先生と看護師さんよりは良く描けたような気がする。
日記を閉じて、僕は病室のベッドに寝転がる。
さて、準備は整った。ポケットに入れた薬の瓶を握りしめて、目を瞑る。羊が1匹、羊が2匹…。僕はまた、あの場所に向かう。
◆
気がつけば、僕はアパートの一室にいた。深呼吸をしてすぐにポケットの中を弄る。
「よかった。ある」
中に瓶が入っていることを確認して僕は胸を撫で下ろす。これがなくてはまた、あの苦痛を味わうことになる。
…部屋の様子は前回来た時と変わらない。テレビをつけてみれば砂嵐の画面が映るのみ。ここにはもう、調べられそうな場所はない。
僕は大きく息を吸う。気を引き締めて、玄関の扉に近づき、ドアノブに手をかけた。そうして、手首を捻り軽く前に押し出す。やはり、鍵はかかっておらず扉はゆっくりと開いていった。
「よし、行こう」
シュウ君の片割れであるセキチクに会わないように願いながら、意を決した僕は外の世界へと足を踏み出した。
◇
久しぶりに見る外の風景は、あまり美しいと言えるものではなかった。空は赤く染まり、地面はひび割れている。また、香水の香りにカビの臭いが混ざったような悪臭に鼻が曲がった。
「これがシュウ君の世界…」
彼には世界がこう映っていたのかと考えると心底気分が悪くなる。そして再度決意する。あの少年の抱える問題がこの場所にあるのなら、僕がそれを解決しなければ。
無理やりチラシやら何やらを詰め込まれた郵便受けを横目に、僕はアパートから出る。2階建てのこのアパートの2階に、先程までいた一室はあった。階段を下るとき、足を踏み込むたびに軋む音がして不安定だ。いちよう、他の部屋の扉も確認したが開くことも反応もなかった。
階段を降り、僕はあたりを見渡す。無造作に置かれた三角コーンや真っ赤な花がコンクリートの床を突き破り生えているが目に入る。
「この花は、カーネーション?」
記憶がないからわからないが、僕はあまり植物に詳しい方ではないと思う。それでもこの花がカーネーションであることくらいはわかった。
「綺麗だな」
その花に近づくと、鉄臭い臭いが鼻に広がる。想像と異なる香りに僕は一歩後ずさる。それは明らかに血の臭いだった。
「なんだ、これ」
生理的嫌悪感で僕はその花と距離をとる。そして、再認する。この世界はイカれていると。息苦しさと吐き気を催す。
一歩、また一歩と後退っていると、柔らかい何かとぶつかった。感触からそれが人だとわかった僕の頭に嫌な予感がよぎる。あの赤い瞳のシュウ君の片割れ"セキチク"がそこにいるのではないかと。
僕はすぐに振り返る。そこにいたのは彼ではない。
そこには、シュウ君よりも少し背の高い僕と同じ黒髪の少女がいた。
不思議な雰囲気を醸し出す少女を前に僕は一言も発すことができずにいた。数秒間の沈黙が続き、彼女はゆっくりと口を動かして…
「あなたは、だれ?」
表情をひとつも変えず、そう、こちらに問うてきた。
先生にもらった地図とメモを持ち、薬剤庫の前に辿り着いたものの、僕は立ちすくんでいた。
この扉を開かなければ、シュウ君を助けることは出来ない。そう、分かってはいるのに、どうしてもあと一歩を踏み出せない。
前回、薬剤庫に行ったときの記憶が蘇る。また、あのやかましい自称悪魔の女に会わなくてはならないのか、とため息を吐いた。それから大きく息を吸う。
「よし」
意を決して、扉を叩く。数秒の静寂の後、部屋の中から「バリンッ」と何かが割れた音が聞こえたが、扉を叩いたことへの返事はない。
「あの人、なにしてるんだ」
中で何が起きているのか、僕には皆目見当もつかない。特に知りたいとも思わなかった。
「中に、入るか?」
返事がない以上、中に入ってはいけない場面である可能性がある。例えば、今割れた何かは危険な液体が入っていたビンで、彼女はその処理に必死でこちらに気づいていないという場合だ。もし僕が入って、誤って液体に触れてしまえば、溶けてなくなってしまうかもしれない。
思考を巡らせ、ついに答えをだした。
「よし、一度先生のところに戻ろう」
僕は、扉に背を向ける。何かの割れた音は聞かなかったことにしよう。ただ、返事がなかったことにしよう。中には誰もいなかったことにしよう。そう考えて一歩踏み出す。少しでも早くこの場から離れたい。今までのは言い訳だった。僕は彼女に会いたくなかったのだ。
早足で廊下を駆け抜ける。
帰り道、曲がり角で、半透明な何かが目の前に現れ、僕をすり抜けた。一瞬の出来事で何が起きたのか理解できなかった。その後、すぐ半透明な何かの後に曲がり角から現れた誰かと僕はぶつかった。
「うわぁ!」
僕と激突した彼はそんな声を出して盛大に後ろに倒れ込む。僕は目を疑った。彼の周りには、人魂のようなものが浮遊していた。
◇
「ごめんね、大丈夫?怪我はないかな?」
起き上がった誰かは、僕にこう声をかけてきた。
周囲にふわふわとした半透明の何かを浮遊させる様子から怪しさは拭うことは出来ないが、悪い人ではないように感じる。
「大丈夫です。あなたこそ、大丈夫ですか?」
その言葉を聞いた彼はにこりと笑い、僕の方を見てこう答える。
「僕は大丈夫だよ」
その時、彼の目がよく見えた。長い髪で片目が隠れているが、彼の目は明らかに異質だった。黒白眼に印象的な青い瞳。綺麗とも言えるし、恐ろしいとも言える不思議な目だ。
そして、瞳が通常通りであれば、なんとなく、10年ほどでシュウ君はこのような姿になるのではないかと考えてしまった。彼はそんな見た目の人物だった。
僕が彼の顔をじろじろと見ていると、彼とは違う別の誰かの声が聞こえてきた。
「おい!テメェ、そっちからぶつかって来てごめんの一言もねぇのかよ!イチゴもイチゴだ!お前が謝ってんじゃねー!悪りぃのはそっちだろ!」
やけにうるさい誰かの声は、廊下中に響き渡る。近くから聞こえた。しかし、声の主人の姿は見当たらない。黒白眼の男の声に似ていたような気もするが、彼の口は動いていなかった。
見えない声の主人に動揺している僕を見て、彼はクスリと笑いながら口を開く。
「ごめんごめん!でもぶつかっちゃったら謝らないと。それにこの子焦ってたみたいだしね。何かあったのかもしれないだろ?」
イチゴと呼ばれた青年は明らかに彼を取り巻く半透明な何かに話しかけていた。そこで僕はやっと気づいた。声の主人を。
「あ、あの。その浮いてるのって…」
「その説明は、こっちで話そう。君についても聞きたいことがあるんだ。ついておいで」
僕の質問を全て聞く前に、青年は僕の手を引き歩き出す。
「おい!待ちやがれ!そんなやつ連れてったらグリムの野郎に何言われるかわからねぇぞ!」
声を荒げる人魂のような何かに青年は「大丈夫」と返事する。そして、僕はそのままあの忌々しい薬剤庫へと連れて行かれた。
◇
「やぁ!モルモット君じゃあないか!!!!!」
青年が扉を開けてすぐ、僕と目があったあの自称悪魔は嬉しそうにこう声を上げた。
「あぁ、グリムさんの知り合いでしたか」
「いいえ」
青年の問いかけに対して、僕は即座に否定する。
「冷たいな~モルモット君~。で、アタシの助手がな~んで、あいつの助手を連れてきてんの?」
「そこの角でこの方と激突して、ちょっと気になるものを持っていたので連れてきました」
「気になるもの?なになに~?」
グリムさんはそう言って、青年の周りをぐるぐると回る。彼女の反応を見ながら、彼は「ニカワ、それを見せて」と浮遊する何かに声をかける。
「チッ。わかった。ほらよ」
ニカワと呼ばれた浮遊する何かの中から1枚のメモ用紙が表れる。
「それは…」
僕は慌ててポケットの中を確認した。あるはずのものがない。そして、確信する。あのメモは、ユウヤ先生にもらったものだ。
「いつのまに盗って…あ」
そうして思い出す。浮遊する何かは、僕の体をすり抜けていた。
「あのとき…」
「あぁ、そうだよ。テメェの体をすり抜けた時に上手いこと掠め取ってやったんだ」
下品に笑うそれに対して、青年はため息をつき、こう話し始める。
「あまり感心できることじゃないけれどね。でも、内容が内容だ。ここに連れてくるべきだと判断した」
「グリムさん、これを」
青年が、メモを手に取りグリムさんに手渡す。彼女は、それを受け取ると「どれどれ~」と言いながら、静かにメモを黙読し始めた。そして、「なるほど」と一言口にすると彼女は奥の部屋へと姿を消した。
僕がそれを見ていると「そういえば」と、青年に呼びかけられる。
「自己紹介を忘れていたね。僕の名前は"四角 一期"。グリムさんの助手だよ」
彼はふわふわと浮かぶ何かを鷲掴みにする。突然のことだったのかそれは「ゔっ」と愕く。それからイチゴさんはこうつづける。
「そして、さっき君が気になっていたコイツは、僕の弟"四角 二河"。体がないのは…まぁ、聞かないでくれると嬉しいな」
「それで…」
イチゴさんは僕の方に向き直り、にこりと笑みを浮かべる。
「君の名前を聞いてもいいかな」
その笑顔から、悪意は一切なさそうだ。しかし、なぜだか寒気を感じた。
僕が動じていると、ニカワさんが口を開く。
「テメェ!こっちは名乗ってんだから早く名乗れよ!ぼけ!」
彼の怒りを露わにする態度で僕は冷静になる。そうだ、名を名乗らなくては。
「香水千夜です。えーっと、僕はこの病院の患者なんだけど、色々あってユウヤ先生の助手になったんだ。よろしく、イチゴさん」
「ユウヤ先生の助手。あぁ、だからユウヤ先生の書いたメモを持っていたのか。…ということは僕達は助手仲間だね。これから仲良くしようよ。よろしくね、チヨ君」
そう言って、彼はまた人懐っこい笑みで笑う。やはり、悪い人ではないのだろう。まぁ、彼も死んでいるのかもしれないが。
「それにしても香水さんか。驚いたよ。まさか、あの人と同じ苗字の患者さんがいるなんてね」
「あの人?」
僕は思わず聞き返した。
期待したのかもしれない。
もしかしたら、イチゴさんは僕について何か知っているのかもしれないと思ったから。
考えてみれば、病室に書かれていた香水千夜という名前に違和感を覚えたことはなかった。ということは、これは僕の名前に間違いない、はずだ。
ならば、彼の言うあの人は、僕と血のつながりのある人物なのではないだろうか。
「あぁ、あの人というのはね…」
「準備できたよ!」
彼が全ての言葉を言い終える前に、奥の扉が「ばんっ」と音を立てて盛大に開き、グリムさんが大声を上げながら姿を現した。
「あ、グリムさんお疲れ様です。用意できたみたいですね」
「うん。ばっちしだよ~!ほら、あの蜘蛛野郎の助手!それ持ってさっさと出てくんだな」
彼女は左手に持っていた瓶を僕に投げつける。なんとかそれを受け止めて瓶の中を覗く。
「カプセルの、錠剤?」
「そだよ~。でも、まさかモルモット君が自殺志願者だったなんてねぇ~」
「え?」
自殺志願者?この女は何を言っているのだろうか。僕が死にたいと思っているわけがないだろう。メモには何と書かれていたのだろうか。
僕が顎に手を当てて思考を巡らせていると、頭上に疑問符を浮かべながらグリムさんが口を開く。
「死ぬ薬が欲しいんでしょう?そんなの飲むのは、安楽死か自殺くらいじゃないの~?」
安楽死、なるほど。彼女の発言を聞いて僕は、はっとした。そうだった。僕は精神世界から戻るために死ななければならない。そのために必要なのがこの安楽死薬というわけか。
僕が否定しようと口を開けたとき、イチゴさんが声を発する。
「グリムさん、ちゃんとメモ読んだんですか?必要なだけですよ。まぁ、何に使うかまでは書いてなかったですが」
「でも、飲むんでしょ?なら死ぬよ。眠るようにゆ~っくりね。あ!どうせ死ぬなら、死ぬ前にワタシの実験に付き合ってよ!痛くしないから、さ❤︎」
物騒なことを耳にして、僕は「あ、もう行かなくちゃ」と言って、逃げるように薬剤庫を出て行く。それを見ていた薬剤庫の主、グリムさんが僕を止めることはなかった。
◇◇◇
チヨが出て行った後の薬剤庫でこんな会話が繰り広げられていた。
「あ、そういえばグリムさん。僕、チヨ君と話してる最中だったんですよ」
タイミングを考えてください、と言わんばかりに、イチゴはグリムの方を見る。彼女は「チッ」と舌を打ち、怒りを露わにした。
「お前、マジで危なかったンだけど!アタシがあの場で出てかなかったらどうなってたかわかる!?」
彼女はそう言いながらイチゴの胸ぐらを掴む。
「ちょっとやめてくださいよ!なんですか!別にいいじゃないですか!ただ同じ苗字の人がいるだけなんですから」
「それでモルモット君の記憶戻っちゃったらどうするのさ!」
「いいことじゃないですか!彼が望んでいることでしょう?」
イチゴの反論にグリムは大きくため息を吐いた。
「オマエは何にも知らないからそんなこと言ってられンだよ。とにかく!もう、アイツに香水の話はするな。…消えたくなかったらな」
グリムの発言に、イチゴは不満そうな顔を見せる。それを見ていたニカワが口を開く。
「おい。なんだか知らねェがイチゴ、こいつの言うことだけは聞いとけよ。お前1人のせいで俺たちまで消えちまうのはごめんだぜ」
イチゴは少し考えて冷静に返す。
「分かりました。もう話しませんよ。でも理由くらい聞かせてください」
彼の発言にグリムは心底嫌そうな顔をしたが、やがて諦めて口を開く。
「分かったよ。あのクモ野郎にはアタシが言ったって言うなよ」
そうして、イチゴはチヨの正体を知ることになる。その部屋に聞き耳を立てる男が1人、彼は「ケハハハ…」と怪しい笑みを浮かべた。
◇◇◇
「やぁ。貰ってきたみたいだね」
薬剤庫から出た僕はすぐに先生の待つ診察室へと戻ってきた。
彼は僕が片手に持つ瓶を見て落ち着いた声でこう口にする。
「グリムから聞いたかもしれないけれど、それは飲んだら死ぬ薬だ。用途は、わかるよね?」
僕は頷く。
「はい。精神世界からこっちに戻るために飲めばいいんですよね。でも、これを精神世界に持っていくことは可能なんですか?」
「あぁ。それは大丈夫だよ。君の身につけているものはあちらに持っていくことができるはずだ。君があちらに行ったとき、その服は着ていただろう?」
「たしかに」
そう言って、僕はまた頷いたが、ふと疑問に思う。この人はなぜ僕の持つ異能にここまで詳しいのだろう。ただ前例があっただけなのだろうが何か引っかかる。
そのようなことを考えていると、先生が続ける。
「この薬に関して、2つお願いがある。いいかな」
僕が「なんですか」と返すと、先生は指を一本立ててこう言う。
「まず1つめだ。この薬はこっちの世界、つまり現の夢病院内では"絶対に"飲まないこと。大丈夫かな?」
僕が理解を示せば、「ありがとう」と言って、もう一本の指を立てて続ける。
「次に2つ目。この薬は誰にも渡してはいけない。君がこの薬を持っていることを知っている人は少ないけれどね」
「これで全てだ。理解できたかい?」
僕が「大丈夫です」と了承すると、先生は薄ら笑いをした。
「ありがとう。約束だよ。じゃあ、もう行って大丈夫だ」
「何かあったらまたおいで」と言う先生に頭を下げて、僕は診察室から出る。その後、いつのまにか、診察室の外にいたガスマスクの看護師に連れられて、僕の病室へと戻った。
それから、僕は机に向かう。日記を書くのだ。忘れては困ることが山ほどある。
僕は筆を走らせた。
日記2
僕には異能があるらしく、他者の精神世界に入る事ができる。眠る事で誰かの精神世界に入り、そこで死ねば元の病室に戻る。
もしかしたら、病気由来なのかもしれないその能力を使って先生の助手として他の患者の世界に入っている。
現在はシュウ君という患者の世界に入り、彼の悩みや苦しみを探っている状態だ。
死ぬのは痛い。
だから、死ねる薬を貰った。
これを使って、シュウ君を助けるために精神世界を旅しよう。
文字を書き終え、次は似顔絵を描いた。シュウ君と、薬剤庫の2人と1体(?)。1ページ目に描かれたユウヤ先生と看護師さんよりは良く描けたような気がする。
日記を閉じて、僕は病室のベッドに寝転がる。
さて、準備は整った。ポケットに入れた薬の瓶を握りしめて、目を瞑る。羊が1匹、羊が2匹…。僕はまた、あの場所に向かう。
◆
気がつけば、僕はアパートの一室にいた。深呼吸をしてすぐにポケットの中を弄る。
「よかった。ある」
中に瓶が入っていることを確認して僕は胸を撫で下ろす。これがなくてはまた、あの苦痛を味わうことになる。
…部屋の様子は前回来た時と変わらない。テレビをつけてみれば砂嵐の画面が映るのみ。ここにはもう、調べられそうな場所はない。
僕は大きく息を吸う。気を引き締めて、玄関の扉に近づき、ドアノブに手をかけた。そうして、手首を捻り軽く前に押し出す。やはり、鍵はかかっておらず扉はゆっくりと開いていった。
「よし、行こう」
シュウ君の片割れであるセキチクに会わないように願いながら、意を決した僕は外の世界へと足を踏み出した。
◇
久しぶりに見る外の風景は、あまり美しいと言えるものではなかった。空は赤く染まり、地面はひび割れている。また、香水の香りにカビの臭いが混ざったような悪臭に鼻が曲がった。
「これがシュウ君の世界…」
彼には世界がこう映っていたのかと考えると心底気分が悪くなる。そして再度決意する。あの少年の抱える問題がこの場所にあるのなら、僕がそれを解決しなければ。
無理やりチラシやら何やらを詰め込まれた郵便受けを横目に、僕はアパートから出る。2階建てのこのアパートの2階に、先程までいた一室はあった。階段を下るとき、足を踏み込むたびに軋む音がして不安定だ。いちよう、他の部屋の扉も確認したが開くことも反応もなかった。
階段を降り、僕はあたりを見渡す。無造作に置かれた三角コーンや真っ赤な花がコンクリートの床を突き破り生えているが目に入る。
「この花は、カーネーション?」
記憶がないからわからないが、僕はあまり植物に詳しい方ではないと思う。それでもこの花がカーネーションであることくらいはわかった。
「綺麗だな」
その花に近づくと、鉄臭い臭いが鼻に広がる。想像と異なる香りに僕は一歩後ずさる。それは明らかに血の臭いだった。
「なんだ、これ」
生理的嫌悪感で僕はその花と距離をとる。そして、再認する。この世界はイカれていると。息苦しさと吐き気を催す。
一歩、また一歩と後退っていると、柔らかい何かとぶつかった。感触からそれが人だとわかった僕の頭に嫌な予感がよぎる。あの赤い瞳のシュウ君の片割れ"セキチク"がそこにいるのではないかと。
僕はすぐに振り返る。そこにいたのは彼ではない。
そこには、シュウ君よりも少し背の高い僕と同じ黒髪の少女がいた。
不思議な雰囲気を醸し出す少女を前に僕は一言も発すことができずにいた。数秒間の沈黙が続き、彼女はゆっくりと口を動かして…
「あなたは、だれ?」
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