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11.いつまでも隊長に甘えていてはいけない
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隊長からお酒に誘われた翌日、私はベッドの上で目を覚ました。きっと寝てしまった私を、隊長が運んでくれたんだろう。
隊長のキスの練習に付き合ったところまでは覚えている。
隊長の腕の中、暖かくて心地よくて、ふわふわと幸せな気持ちになっていた気もするけど、定かではない。
隊長とのキスを思い出すと、さすがに顔が赤くなる。あれは完全に私から誘っていた。
隊長が一線を越えることはないからと言って、ブレーキを効かせなさすぎだ。
苦い顔の隊長を思い出せば、私にくっつかれるのも、キスをするのも本意では無いんだろう。
いつまでも隊長に甘えていてはいけない。
そう思うと、なぜだか少し胸が痛んだ。
魔物討伐の通達があると、砦には緊張感が漂いだした。
訓練の時間は作戦の確認や装備の準備に取って代わられ、怪我人はほとんど出なくなった。
ピリピリと張り詰めた空気の中、私だけ暇を持て余しているのに耐えられず、私は早々に女子寮に逃げ込んだ。
「また来たのか、ババア」
庭先で素振りをしているレインが、手を休める事なく毒づいた。
女子寮で育てられているレインは十四歳とお年頃なので、私が来るといつも憎まれ口を叩いてくる。
彼からしたら十分ババアだろうし、この世界の適齢期から考えてもやっぱりババアなんだろうけど、おいそれと認めるわけにはいかない。
レインを真似して私をババアと呼んだ子達は、脅してお姉ちゃんと呼ぶように矯正したけど、レインだけはいつまで経ってもババア呼びをやめなかった。
私はレインは無視して、その横を素通りしようとした。
「ババアだから耳も遠いんだな」
レインが素振りを止めて、私の背中に向かって暴言を吐いてきた。
これは、ない。
「言っていい事と悪い事の区別もつかないぐらい子供なの?」
既に私よりも背の高いレインを睨みつける。
「俺は子供じゃねえ」
「子供じゃないなら、礼儀をわきまえなさい」
「ババアにババアと言って何が悪い」
「私は耳が遠くなる程ババアじゃない」
「だったら、無視すんなよ」
あら、かわいい。
ちょっと拗ねたように呟く姿はまだまだ子供だなと思った。大人ぶりたい年頃なんだろう。
「無視されたくなかったら、お姉ちゃんって……」
うへえと言う顔をされたので、私は言い直すことにした。年頃の少年にお姉ちゃんは無いか。
「ユイと呼んで」
「……分かったよ」
「分かればよろしい」
私が満足して頷くと、レインは真面目な顔をして聞いてきた。
「あのさ、ユイ。騎士のみんなはどんな様子だ?」
「どんなって、みんな真剣な顔して忙しそうにしてるよ」
「そうか……」
「そんなに慌てなくても、来年には騎士になれるんでしょ?」
レインは砦の子供で、小さい頃から騎士になると言って鍛えていたそうだ。
早く騎士になりたくて仕方ないらしい。
「俺はもう戦える。力がある者は、それを使う義務がある」
「力を使うことで、人を不幸にする事だってあるよ」
子供相手にこんな事を言っても仕方ないのに、レインを見るとどうしてもラドの事を思い出してしまう。
当時のラドはレインと二つしか年が変わらなかったと思うと、私の罪の深さを痛感してしまう。
「力を使わなくても、人を不幸にする事はあるだろ?ならやっぱり力は使うべきだ」
レインには確かな信念があって、それに向かって努力もしている。私が十四歳だった頃とは大違いだ。
「レインは子供なのに立派だね」
「だから、子供じゃねえ」
「そんな事言ったって、子供だからまだ騎士になれないんでしょ」
この国では十五歳で成人だから、もうすぐ成人のレインが子供じゃ無いと言い張るのも分からなくもない。それでも、私から見たらまだまだ子供だ。
「今の業務隊長は十三歳で騎士になってる。俺だってもう戦えるのに」
「なんでそんな事知ってるの?」
「業務隊長も砦の子供だからな。今はなんでか成人するまで騎士になれないけど、業務隊長あたりまでは、砦の子供は早くから騎士になってたんだ」
「へえ」
つい目の前のレインと隊長を比べてしまう。レインもいずれあんな巨体になるんだろうか。
「どうせ俺はチビだよ」
私の視線の意味に気付いたのか、レインが拗ねている。
「レインは十分大きいよ。もう私より大きいし」
「ユイが小さ過ぎるだけだろ。そんなんじゃここの男達の相手は大変だろ」
「は?」
「入るのか、そんな身体で」
「どこを、見ているの」
「俺が騎士になったら買ってや……痛って!」
私はレインに頭突きをかまして、そのまま無言で女子寮に向かった。
産まれた時からここにいたらそれが普通なのかもしれないけど、私には笑えない冗談だった。
子守りを終えて業務隊に戻っても、皆忙しそうにしていた。
「物が出入りする時は、色々やる事が多くてねー」
バートが凄い勢いで伝票のチェックをしている横で、のんきに業務日誌を書いているのが心苦しくて、私は皆さんにお茶を出したら部屋に戻る事にした。
役立たずで申し訳なかった。
「失礼します」
隊長から先にお茶を出そうと隊長室に入ると、隊長の机も書類の山になっていた。
「お茶をお持ちしたんですが、置けないですね」
「いや、大丈夫です。貰います」
隊長が机の上の書類を端に寄せて、お茶を置く場所を作ってくれた。
「凄い量ですね」
「私も討伐に参加するので、昼間はこちらの仕事ができなくて溜まってしまうんです」
業務隊には事務官だけでなく騎士もいるけど、討伐には参加しないと聞いていた。
「隊長は討伐に参加するんですか?」
「業務隊長としてではなく、一戦力としてですが」
なんだか不思議な気もしたけど、隊長の邪魔をする訳にはいかないので、それ以上聞く事は止めておいた。
「そうなんですか……気をつけてくださいね」
私は礼をしてそのまま立ち去ろうとした。
「先生」
呼び止められ、険しい顔で見つめられる。
隊長の言いつけは守っているつもりだけど、何か怒られるんだろうか。
「額が赤くなっている。どうか、したんですか?」
「なんでもないです。失礼します」
子供の軽口に実力行使してしまったと言うのも恥ずかしくて、私は笑って誤魔化すと逃げるように立ち去った。
夜遅くになっても、隊長はなかなか部屋に戻ってこなかった。
忙しいんだなと思うと、私の暇さ加減が申し訳なくて、どうしても落ち込んでしまう。
この世界でなんの拠り所もない私が、ここにいてもいいと思うためには、何かの役に立つ必要があった。
そのための巫女の力なんだろうと、力の副作用に戸惑いながらも癒やしの巫女になったけど、王都での巫女の役割は、価値が見出だせるような物ではなかった。
ここではどうなんだろう。
ちゃんと役に立てているんだろうか。
「気持ちいいー」
屋上の壁にもたれ掛かかり、石のひんやりとした感触を楽しんでいると、どうしても女子寮が目に付いた。
「レインのバカ」
レインの笑えない冗談は、私にラドとの行為を思い出させた。
私が必要以上に落ち込んでいるのは、ラドの事を思い出してしまったからだろう。
『ほら、ユイ。これでもっとイケるだろ?』
『やめて、やっ、あっ……いや、ああっ!』
『くっ、ははっ……もっと、もっとイキなよ』
『いや、ああっ、やっ……あああっ!』
私のドロドロでグチャグチャな毎日は、血の匂いがした。
「こんな所に一人でいると、襲われると言ったでしょう」
急に腕を引っ張られたと思うと、そのまま抱きしめられて耳元で囁かれた。
隊長だと思い確認のため顔を見上げると、そのままキスをされた。
相変わらず眉間にシワを寄せて見つめられ、そんなに嫌ならしなきゃいいのにと思った。
「皆さん忙しくしてますから、こんな所に来ないですよ。隊長はなぜここに?」
隊長のキスは無かった事として私が問えば、隊長は再び耳元で囁いた。
「先生に会いに行ったらご不在だったので、探しにきました」
「怪我人ですか?」
「いえ……」
隊長が私のおでこにそっと触れる。
「どうしても気になったので。レインとは、誰です?」
「レイン?」
私の呟きが聞こえていたんだろうか。
「レインは女子寮にいる子供ですよ。口が悪いから、頭突きして黙らせたんです」
隊長が無言で私を見つめている。
「……すみません」
隊長は抱きしめていた私を離すと、視線を外したまま謝ってきた。
何を謝られているんだろう。
「隊長?」
様子のおかしい隊長の顔を覗き込めば、隊長はそのまま後ろを向いてしまう。
「もう夜も遅い。部屋に戻りましょう」
私は歩きだした隊長の背中を見つめ、大人しくその後を追った。
隊長のキスの練習に付き合ったところまでは覚えている。
隊長の腕の中、暖かくて心地よくて、ふわふわと幸せな気持ちになっていた気もするけど、定かではない。
隊長とのキスを思い出すと、さすがに顔が赤くなる。あれは完全に私から誘っていた。
隊長が一線を越えることはないからと言って、ブレーキを効かせなさすぎだ。
苦い顔の隊長を思い出せば、私にくっつかれるのも、キスをするのも本意では無いんだろう。
いつまでも隊長に甘えていてはいけない。
そう思うと、なぜだか少し胸が痛んだ。
魔物討伐の通達があると、砦には緊張感が漂いだした。
訓練の時間は作戦の確認や装備の準備に取って代わられ、怪我人はほとんど出なくなった。
ピリピリと張り詰めた空気の中、私だけ暇を持て余しているのに耐えられず、私は早々に女子寮に逃げ込んだ。
「また来たのか、ババア」
庭先で素振りをしているレインが、手を休める事なく毒づいた。
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彼からしたら十分ババアだろうし、この世界の適齢期から考えてもやっぱりババアなんだろうけど、おいそれと認めるわけにはいかない。
レインを真似して私をババアと呼んだ子達は、脅してお姉ちゃんと呼ぶように矯正したけど、レインだけはいつまで経ってもババア呼びをやめなかった。
私はレインは無視して、その横を素通りしようとした。
「ババアだから耳も遠いんだな」
レインが素振りを止めて、私の背中に向かって暴言を吐いてきた。
これは、ない。
「言っていい事と悪い事の区別もつかないぐらい子供なの?」
既に私よりも背の高いレインを睨みつける。
「俺は子供じゃねえ」
「子供じゃないなら、礼儀をわきまえなさい」
「ババアにババアと言って何が悪い」
「私は耳が遠くなる程ババアじゃない」
「だったら、無視すんなよ」
あら、かわいい。
ちょっと拗ねたように呟く姿はまだまだ子供だなと思った。大人ぶりたい年頃なんだろう。
「無視されたくなかったら、お姉ちゃんって……」
うへえと言う顔をされたので、私は言い直すことにした。年頃の少年にお姉ちゃんは無いか。
「ユイと呼んで」
「……分かったよ」
「分かればよろしい」
私が満足して頷くと、レインは真面目な顔をして聞いてきた。
「あのさ、ユイ。騎士のみんなはどんな様子だ?」
「どんなって、みんな真剣な顔して忙しそうにしてるよ」
「そうか……」
「そんなに慌てなくても、来年には騎士になれるんでしょ?」
レインは砦の子供で、小さい頃から騎士になると言って鍛えていたそうだ。
早く騎士になりたくて仕方ないらしい。
「俺はもう戦える。力がある者は、それを使う義務がある」
「力を使うことで、人を不幸にする事だってあるよ」
子供相手にこんな事を言っても仕方ないのに、レインを見るとどうしてもラドの事を思い出してしまう。
当時のラドはレインと二つしか年が変わらなかったと思うと、私の罪の深さを痛感してしまう。
「力を使わなくても、人を不幸にする事はあるだろ?ならやっぱり力は使うべきだ」
レインには確かな信念があって、それに向かって努力もしている。私が十四歳だった頃とは大違いだ。
「レインは子供なのに立派だね」
「だから、子供じゃねえ」
「そんな事言ったって、子供だからまだ騎士になれないんでしょ」
この国では十五歳で成人だから、もうすぐ成人のレインが子供じゃ無いと言い張るのも分からなくもない。それでも、私から見たらまだまだ子供だ。
「今の業務隊長は十三歳で騎士になってる。俺だってもう戦えるのに」
「なんでそんな事知ってるの?」
「業務隊長も砦の子供だからな。今はなんでか成人するまで騎士になれないけど、業務隊長あたりまでは、砦の子供は早くから騎士になってたんだ」
「へえ」
つい目の前のレインと隊長を比べてしまう。レインもいずれあんな巨体になるんだろうか。
「どうせ俺はチビだよ」
私の視線の意味に気付いたのか、レインが拗ねている。
「レインは十分大きいよ。もう私より大きいし」
「ユイが小さ過ぎるだけだろ。そんなんじゃここの男達の相手は大変だろ」
「は?」
「入るのか、そんな身体で」
「どこを、見ているの」
「俺が騎士になったら買ってや……痛って!」
私はレインに頭突きをかまして、そのまま無言で女子寮に向かった。
産まれた時からここにいたらそれが普通なのかもしれないけど、私には笑えない冗談だった。
子守りを終えて業務隊に戻っても、皆忙しそうにしていた。
「物が出入りする時は、色々やる事が多くてねー」
バートが凄い勢いで伝票のチェックをしている横で、のんきに業務日誌を書いているのが心苦しくて、私は皆さんにお茶を出したら部屋に戻る事にした。
役立たずで申し訳なかった。
「失礼します」
隊長から先にお茶を出そうと隊長室に入ると、隊長の机も書類の山になっていた。
「お茶をお持ちしたんですが、置けないですね」
「いや、大丈夫です。貰います」
隊長が机の上の書類を端に寄せて、お茶を置く場所を作ってくれた。
「凄い量ですね」
「私も討伐に参加するので、昼間はこちらの仕事ができなくて溜まってしまうんです」
業務隊には事務官だけでなく騎士もいるけど、討伐には参加しないと聞いていた。
「隊長は討伐に参加するんですか?」
「業務隊長としてではなく、一戦力としてですが」
なんだか不思議な気もしたけど、隊長の邪魔をする訳にはいかないので、それ以上聞く事は止めておいた。
「そうなんですか……気をつけてくださいね」
私は礼をしてそのまま立ち去ろうとした。
「先生」
呼び止められ、険しい顔で見つめられる。
隊長の言いつけは守っているつもりだけど、何か怒られるんだろうか。
「額が赤くなっている。どうか、したんですか?」
「なんでもないです。失礼します」
子供の軽口に実力行使してしまったと言うのも恥ずかしくて、私は笑って誤魔化すと逃げるように立ち去った。
夜遅くになっても、隊長はなかなか部屋に戻ってこなかった。
忙しいんだなと思うと、私の暇さ加減が申し訳なくて、どうしても落ち込んでしまう。
この世界でなんの拠り所もない私が、ここにいてもいいと思うためには、何かの役に立つ必要があった。
そのための巫女の力なんだろうと、力の副作用に戸惑いながらも癒やしの巫女になったけど、王都での巫女の役割は、価値が見出だせるような物ではなかった。
ここではどうなんだろう。
ちゃんと役に立てているんだろうか。
「気持ちいいー」
屋上の壁にもたれ掛かかり、石のひんやりとした感触を楽しんでいると、どうしても女子寮が目に付いた。
「レインのバカ」
レインの笑えない冗談は、私にラドとの行為を思い出させた。
私が必要以上に落ち込んでいるのは、ラドの事を思い出してしまったからだろう。
『ほら、ユイ。これでもっとイケるだろ?』
『やめて、やっ、あっ……いや、ああっ!』
『くっ、ははっ……もっと、もっとイキなよ』
『いや、ああっ、やっ……あああっ!』
私のドロドロでグチャグチャな毎日は、血の匂いがした。
「こんな所に一人でいると、襲われると言ったでしょう」
急に腕を引っ張られたと思うと、そのまま抱きしめられて耳元で囁かれた。
隊長だと思い確認のため顔を見上げると、そのままキスをされた。
相変わらず眉間にシワを寄せて見つめられ、そんなに嫌ならしなきゃいいのにと思った。
「皆さん忙しくしてますから、こんな所に来ないですよ。隊長はなぜここに?」
隊長のキスは無かった事として私が問えば、隊長は再び耳元で囁いた。
「先生に会いに行ったらご不在だったので、探しにきました」
「怪我人ですか?」
「いえ……」
隊長が私のおでこにそっと触れる。
「どうしても気になったので。レインとは、誰です?」
「レイン?」
私の呟きが聞こえていたんだろうか。
「レインは女子寮にいる子供ですよ。口が悪いから、頭突きして黙らせたんです」
隊長が無言で私を見つめている。
「……すみません」
隊長は抱きしめていた私を離すと、視線を外したまま謝ってきた。
何を謝られているんだろう。
「隊長?」
様子のおかしい隊長の顔を覗き込めば、隊長はそのまま後ろを向いてしまう。
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