白雪姫とシンデレラ

白玉しらす

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12.ハッピーエンド

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「あの、普通に……」
 普通に愛してくださいと言おうとしたけど、今までのエリックの境遇を思い出して私は口を噤んだ。
 エリックの暮らしが普通だったとは思えない。そんな人に普通でいる事を求めるのは酷な気がした。
「エリックのしたい事、してください」
 幸せになって欲しいと思い、そのためにはなんだってしようと思ったんだから、覚悟を決める時だ。
 私は丹田に力を入れ、次の攻撃に備えた。
「やはり白雪は優しいな。私はそんな白雪が大好きだよ」
 言いながらエリックは戸惑うことなく私の服を脱がせていった。
「あっ……」
 剥き出しにされた胸にキスをされ、身体から力が抜ける。
「あ、やっ……そんな、いき、なりっ……」
 乳首に吸い付かれ、カリカリとひっかくように反対の乳首を弄られて、私は足をもじもじさせてしまった。
「したい事をしていいんだろう?」
「や、ああっ……」
 脱げかけのドレスを引っ剥がしながら、エリックは手を私のパンツの中へと侵攻させた。
「もう濡れてる。かわいい」
「あっ……んんっ……」
 確かめるようなゆっくりとした動きに、私のそこはもっとと言うようにひくついてしまう。
「もっと欲しい?じゃあ、入れてあげようか」
「ああっ!」
 エクセレント!
 そんな当たり判定が脳内に浮き出そうなぐらい、素晴らしくツボを心得た指運びだった。
「やっ、だ、めっ……あ、あ、ああぁっ……」
 ぐちゅぐちゅと指で中を擦られ、私は呆気なくイッてしまった。
 もはや丹田ってどこだっけと言うぐらい身体から力が抜けている。
「あっ、ひっ……う、ぐっ……あっ、ああっ、ああっ!」
 可愛くもない喘ぎ声をあげ、私は自ら腰を振った。
 私の気持ちを置き去りに、身体が勝手に快感を求めてしまう。
「やっ……あっ……い、やっ……ああっ……」
 ガクガクと腰を揺らしながら、涙が滲む瞳でエリックを見つめると、エリックは優しく微笑んだ。
「そう言えば、この身体は七人の男から快楽を教え込まれていたんだったね。そのせいで感じやすくなっているのかな。白雪はそのまま感じていて大丈夫だよ」
 そんなの、何一つとして大丈夫じゃない。
「しょっ、しょっ……しょ、じょっ、じっ……」
 なんだか月夜にたぬきが踊りそうな声を出してしまった。
 本当は『処女じゃないのにいいんですか?』と聞きたかったけど、エリックが微笑みを浮かべたまま、ぐちゅぐちゅと指を動かし、時折クリトリスを刺激してくるので、全く言葉にならなかった。
「白雪の魂が入る前の事なんて、私にはどうでもいい。むしろこんなに白雪を感じさせる事ができて嬉しいぐらいだ」
「あっ、あっ……ああっー!」
 激しい指の動きはそのままに、乳首をがぶりと噛みつかれ、私は絶叫しながら身体を痙攣させた。
 プシュッと何かが漏れるような音もして、もうだめだと思った。
 もう、これ以上無理。これ以上したら、絶対理性が飛ぶ。獣になってしまう。
「もっ……やっ……」
 はあはあと荒い息を吐きながら、エリックにストップを申し出ようとしたら、いつの間にか裸になっていたエリックに膝立ちで伸し掛かられた。
「女の身体だった時に、嫌と言う程思い知ったんだ。女のここは、男のこれでしか満足できないんだって」
 ここと言いながら私の中に指を埋め、これと言いながら自らのものを扱くエリックに、私は毅然とした態度でNOを突きつける。
「早く、ちょうだい……」
 おかしい。何故私は足を大きく広げ腰を浮かせているんだ。
「求めてくれるのは嬉しいけど、それじゃあ駄目だよ」
 私もそう思います。あはんうふん言いながら、エリックの怒張を求めて腰を振っていてはいけない。
「白雪が求めていいのは、私のものだけだからね。ほら、何が欲しいかちゃんと言って」
「エリックの、おっきいの……あうっ……ほ、ほしいっ……」
「うん、いいよ。いっぱいあげる」
「あっ、ひっ……あ゛っ、あ゛っ、あ゛あ゛ーっ!」
 激しく突き上げられて身体を揺らされる私は、よだれが垂れるのも気にせず絶叫し続けた。
 なる程、とっくに理性なんて失なっていたんだな。
 そんな思考を最後に、私はそれ以上考える事を止めた。



「なあに?疲れた顔して。この世界が嫌になったなら、私と一緒に神の世界に戻る?私のチート能力『程よい空の死体を見つける』能力があれば、転生する事は簡単なのよ」
「しっ、声が大きい」
 魔法使いの呑気な声に、私はニャンダユウスパイの姿を探した。
 良かった、いない。今はどこか涼しいところでも探して昼寝中なんだろう。
「別に、嫌になった訳じゃないですよ。公私共に充実してますし」
 半年の婚約期間を経て、私とエリックは無事?結婚した。
 はてながつくのはエリックの愛の重さに若干ひいてしまっているからだ。
 今までの暮らしぶりを考えると仕方ないのかなとも思うので、全面的に受け入れてはいるけど。
「充実?新刊でも出したの?」
「あなたと一緒にしないで下さい」
 ありとあらゆるチートを持つ魔法使いは、今や売れっ子作家となっていた。
 新しい本ができるたび献本しに来てくれるけど、内容が内容だけにありがた迷惑だった。
 なんとなくクローゼットの奥に隠しているけど、ひょっとして掃除をしてくれているメイドさん達にはバレていて、アレな性癖な持ち主とか思われていないか心配だ。
「王妃として公務をこなす傍ら、正体不明の空手仮面として、騎士団に稽古をつけているんです」
「私、あなたの行動原理が分からないわ」
「仮面をつけて過ごすお許しが出たんで、能力を活かしてみようかなって。それより、白雪姫の行方は分かったんですか?」
 ちょいちょい遊びに来るようになった魔法使いに歪みを直させようとしたけど、皆一様に今のままが幸せだと言うので、歪みはそのままにしていた。一度開いてしまった性癖の扉は、二度と閉まらないんだろう。
 ただ一つ、私が身体を奪ってしまった元々の白雪姫の魂の行方だけが気がかりだった。

「そう、それなんだけど……」
 魔法使いはそう言うと鞄から一冊の薄い本を取り出し、私に差し出してきた。
「答えは全て、ここに書いてきたわ」
「ここに?」
 なんの気なしに薄い本を受け取ると、表紙にはデカデカと『快楽墜ち白雪姫は転生しても七人の小人チンポにハメられたい』と書かれていた。
「なんとなく、分かりました」
「ちょっと、ちゃんと読んでよ」
「夜中一人で読まさせていただきます」
 裏を向けてテーブルの上に置いたら、七つのモザイクからほとばしる白濁液を全身に浴びながら、白目を剥いている女の人の絵が出てきたので、そっとテーブルクロスの下に隠した。これは置き忘れたら死ぬな。
「もう、今感想聞きたかったのに。まあいいわ。白雪姫はこの世界で転生していたんだけど、どうしても七人の小人達が忘れられなくて、自力で小人の家まで旅したんですって。なかなか白雪姫とは信じて貰えなかったけど、全員の目の前で一人ずつとセックスして、一人フィニッシュする毎に認めて貰い、最終的には以前と同じ様に仲良く8Pして楽しく暮らしているそうよ」
 聞きながら白目を剥きそうになったけど、なんとか堪えた。
「本物の白雪姫が見つかったなら、この身体は返した方がいいんでしょうか。魔法使いなら何とかできますか?」
「そう言うと思って聞いておいたわよ。白雪姫の新しい身体は身寄りのない曲芸師のもので、事故で死んでしまった所に魂が入り込んだみたいね。常人離れした身体の柔らかさにより、体位のバリエーションが増えたから今のままがいいって」
「あー、そうですか」
 なんかもう気にするだけ無駄な気がしてきた。
「ついでに伝言も預かってきたわ。その身体はお尻の方は未開発だから、最初は優しくして貰ってね、ですって」
「聞かなかった事にします」
 私は即答すると、大きなため息をついてから魔法使いを見つめた。
「一応全て丸く収まり、ハッピーエンド、でいいんでしょうか」
「そうね、あなたのその疲れた顔さえ問題なければ、いいんじゃない?」
 魔法使いは問い詰める様な顔で私を見返してきた。
 私はそれには答えず、そっと目を閉じた。
 私が疲れている理由。それは、空手仮面として騎士団に出入りする様になり、ついうっかり侍女と騎士のかっこよさについて語り合ったら、それをニャンダユウスパイにチクられてしまった事に端を発する。
『白雪が楽しんでいると私も嬉しいけど、忘れられないように、私も頑張らないといけないな』とか言われ、一晩中頑張られてしまったのだ。
『ずっと挿れたままでいたら、白雪は私を忘れたりしないかな』
 と挿れっぱなしで碌に動いてくれず、手やキスで何度もイかされてしまった。
 まあでも明け方近くに見た、幸せそうに笑うエリックの顔を思えば、疲れも吹っ飛ぶと言うものだ。
「そうですね、問題なしです」
 目を開けて魔法使いに答えると、私は心の中でそっと呟いた。


 こうして、白雪姫とシンデレラは、末永く幸せに暮らしたのでした。
 めでたし、めでたし。
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