あなたが側にいてくれるから

白玉しらす

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「うっ、ひっ……ふっ……」
 私の上でジェイクが果てた後も、私は泣くのを我慢できないでいた。
「ごめん、痛かったか?嫌だったか?」
 慌てるジェイクに、私は首を横に振った。
「ううん。気持ち、良かった。幸せ、なの」
 泣きながらそう言うと、ジェイクがぎゅっと抱きしめてくれた。
「なんだよそれ。俺の方が幸せ過ぎて、泣きそうだ」
 泣きそうと言っておきながら、ジェイクは嬉しそうに笑っていた。
「もう、大丈夫なんだな?」
「うん、ごめんね」
「だから謝るなよ。エレノアのせいじゃないんだから」
「でも……」
「エレノアが嫌じゃないんだったら、俺は嫌じゃない。だから気に病むな」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいから……」
 今も、裸で抱き合っている事が恥ずかしくて、まともにジェイクの顔が見られないでいた。
「……かわいい」
「わっ、あっ……」
 涙を拭うようにキスをされて、私はくすぐったさに身を捩った。
「ずっと一緒だ、エレノア」
 ちゅっと軽くキスをされて、あまりの嬉しさにまた泣きそうになってしまった。
「本当はもっとこうしていたいけど、場所が場所だからな。身体拭く物貰ってくるよ」
 ジェイクは起き上がると、手早く服を来て部屋を出ていってしまった。
 そう言えば、ここは騎士団の一室だった。
 多分、結構、かなり、大きな声を出してしまっていた気がする。
 恥ずかし過ぎて、いっそ気を失いたいぐらいだった。


「あの、その、すみませんでした」
「えー、何が?」
 身なりを整えた頃先生がやってきて、私を診察してくれた。
「その、シーツも、換えていただいて……」
「ああ、それね」
 先生は気にする様子もなく、診察を終えると部屋の外で待たされていたジェイクを呼び入れた。
「洗脳系の魔法は、精神が不安定になると発現しやすいからね。倒れた時点でこりゃ始まるなと思ってたから気にしなくていいよ。騎士団長を呼ばずに済んだのは残念だった……いや、良かったね、うん」
 隣のジェイクが分かりやすく不機嫌になったので、先生がしれっと言い直した。
「まあちょっとはやーらしいかわいい声が聞こえなくも無かったけど、これ以上騎士アホが盛ると困るから、棟ごと立ち入り禁止にしといたし、大丈夫大丈夫」
 なんか全然大丈夫じゃ無い事を言われて布団に潜り込みたくなったけど、先生は気にした様子も無かったのでなんとか我慢した。
「二人ともスッキリした顔してるし、もう心配なさそうだね。あ、スッキリって、性的な意味じゃなくて精神的な意味だからね。まあこっちの彼は両方あるかもしれないけど」
 反応に困る事を言われて、相槌を打つ事もできなかったけど、先生はお構いなしに話し続ける。
「支えてくれる人がいれば大抵の事は乗り越えられる、ってね。この子で支えきれない時は騎士団長を派遣するから、いつでも言って」
 ジェイクを指差しながら、先生は素敵な笑顔で言った。ジェイクはもう諦めたのか無反応だ。
「それで、申し訳なくも言いにくい事があるんだけど……」
「先生が言いにくいなんて、よっぽどですね」
 言い淀む先生に、ジェイクが嫌味を言ったけど、先生には聞こえていないようだ。
「クリフ・シーグローヴに関する捜査打ち切りが決まった。焼け跡の捜査も行われない」
「早いですね。圧力がかかったんですか?」
「まあそうかな。証言の必要も無くなったし、早くここを出た方がいい。あまり長くいて、勘ぐられるのも良くない」
「消される可能性があると?」
「最悪ね」
 部屋の中に重苦しい沈黙が続いた。

「エレノア」
 暗い気持ちになる私の手をジェイクがぎゅっと握ってくれた。
「おばさんの研究日誌はあったのか?」
「え?うん」
「俺とエレノアは、恋人になったんだよな?」
「うん……」
 先生の前でちょっと恥ずかしかったけど、真剣な顔のジェイクに、私も素直に答えた。
「ここでは悪い事もあったけど、いい事もあった。いい事だけを持って、一緒に帰ろう」
「うん」
 なんだか、父さんみたいな事を言うんだなと思うと、胸がいっぱいになった。
「これは、騎士団長の出番はなさそうだね」
 先生が小さく呟きながら部屋を出ると、ジェイクはそっと私にキスをした。



 医務室に戻った先生に別れを告げると、私達は乗合馬車を乗り継ぎ、街へと帰った。
 太ももの傷は回復魔法をかけて貰っていたから、歩くのに支障が無い程度には治っていたけど、時折チクチクと痛んだ。
 傷跡が消えるのにも時間がかかるだろうし、見る度に思い出して暗い気持ちになるのは、もう仕方のない事なんだろう。

「ただいま」
「お帰りなさい」
 街に帰ってから、ジェイクは私の家で暮らすようになった。
 一人が怖いとか、一人にするのが心配とか、そう言った理由もあるけど、何より一緒にいたかった。
「ただいま」
「うん、だからお帰りなさい」
 ジェイクは私をぎゅっと抱きしめると、同じ言葉を繰り返した。
「しまった。今日は初級の奴らに稽古つけたんだった。汗臭かったよな」
 慌てて私から離れると、自分の臭いを確認するジェイクに、今度は私がぎゅっと抱きついた。
「うん、でも私は好き。ジェイクの臭い」
「……いつも汗臭いみたいに言うなよ。先に風呂に入っていいか?」
 ちょっとの間の後で、ジェイクは私の腕の中からすり抜けていった。
「うん、準備してあるよ」
 少し残念に思いながら答えると、ジェイクは私の手を引き浴室に向かった。
「あの、ジェイク?」
「可愛い事を言うエレノアが悪い」
 それだけ言うと、ジェイクは私の耳元に顔を寄せた。
「ちゃんと責任取れよ」
 低く囁かれた声に、私の身体はかあっと熱くなった。

「んっ、ふっ……んんっ……」
 簡単に身体を洗うと、ジェイクは私を後ろから抱きしめ、キスをしながら胸を揉んできた。
 直ぐに硬くなってしまった乳首を指で弾かれる度、びりびりと快感が走る。
「んんっ、んっ……ふ、うっ……」
 ぬかるむ割れ目を指でなぞられ、キスで塞がれた口から嬌声が溢れ出てしまう。
 くちゅくちゅといやらしい水音が狭い浴室の中に響いて、私の興奮を高めていった。
「おっぱい舐めたい」
 普通の状態で聞いたら、これ以上ないぐらい頭の悪そうなセリフも、荒い息遣いと共に耳元で囁かれると、舐めて欲しくて堪らなくなるから不思議だ。
「……舐めて」
 正面を向いて、恥ずかしいけど突き出すように胸を反らすと、ジェイクは私を睨みつけてきた。
 今ではもう、にやけるのを我慢しているんだと分かるけど、知らなければ機嫌を損ねたようにしか見えない。
「顔、怖くなってる」
「ああ、もう我慢しなくていいんだった」
 ジェイクはにやけると言うより、ニヤリと凶悪に笑うと、私の胸にしゃぶりついた。
「あっ……んんっ……んーっ……」
 ちゅうちゅうと乳首に吸い付きながら、指で割れ目を弄られると、どうしても声が出てしまって、私は口を押さえて必死で我慢した。
 そんな私の様子をちらりと見上げてから、ジェイクは舌先で私の身体をなぞりながらしゃがみこんでいった。
「待って、そこはだっ、ああっ、めっ……ああっ……」
 足を掴み、軽く広げさせられると、ジェイクは舌での愛撫を始めた。
 ぬるぬるとした感触が、堪らなく気持ちいい。
「や、んっ……あっ、あっ……ああっ……」
 手を伸ばし胸を揉みながら、反対の手ではクリトリスを押されると、我慢しきれない私は押し付けるように腰を揺らした。
「あっ、やっ……イ、く……イッちゃ、うっ……あっ、ああっ……」
 長く攻め立てられて、我慢できなくなった私は、ガクガクと腰を揺らしてイッてしまった。
 イッた後も余韻からか、身体がびくびくと震えてしまう。
 そんな私の様子を満足そうに見つめると、ジェイクは立ち上がり、私を後ろに向かせた。
「もうちょっと、お尻を突き出してくれ」
「こ、う?……ああっ……」
 言われた通りお尻を突き出すと、ぬるりと指が中へと入れられた。
 私は指の出入りに合わせるように腰を揺らし、更にお尻を突き出していった。
「直ぐにとろとろになって、かわいい」
「ああっ、んっ……や、ああっ……」
 ねっとりと耳を舐めながら、そんな事を言われると、また直ぐにイッてしまいそうになった。
「やっ……も、うっ……ああっ……きてっ……ジェイクっ……あっ……お願い……」
 太ももに押し付けられていたジェイクの硬い物を求めて、私は足を広げて腰を揺らした。
「俺も、エレノアが欲しい」
「あっ、ああっ!」
 割れ目を擦るように熱く硬いものを押し付けると、ジェイクは一気に私を貫いてきた。
 すっかり受け入れる準備が出来ていたそこは、凄まじい快感を私にもたらす。
「ひっ、あっ……い、いっ……ああっ……もっと……」
 正気に戻ると恥ずかし過ぎて赤面してしまうのに、快感に支配された私は欲望のままにねだってしまう。
 媚薬の影響はもう無いはずなのに、知ってしまった快感を、貪欲に求めるようになってしまっていた。
「ああ、ほんと……たまんないな……」
 私の恥態に、ジェイクも荒い息遣いで腰を打ち付けている。
「あ、あんっ……あっ、あっ……すごっ……ああっ……気持ち、いいっ……」
 ジェイクが喜んでくれてるのが嬉しくて、私は貫かれるまま嬌声をあげ続けた。
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