勇者の中の魔王と私

白玉しらす

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後日談

剣術大会 ☆

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「ニナ君、今年の剣術大会の賞品が、君に決まったよ」
 団長は開発室に入ってくるなり、意味不明な言葉を発した。
 団長の言葉が意味不明なのはいつもの事なので、開発室の皆さんは完全無視だ。
 私も出来れば無視したい。
「オスカー君を運営室に呼び出して交渉して良かったよ。魔王の花嫁を巡る、勇者と魔王の戦いに盛り上がる運営室の子達に、口を挟む隙もなかったからね」
「姑息な手を……でも、賞品って何ですか。私は何をさせられるんですか?」
「私が勝ったら……ニナ君も子供じゃ無いんだから、分かるよね」
 肩に手を置き、耳元で囁かれて鳥肌が立った。
 私は無言でブンブン首を振る。
「冗談だよ。キスで我慢してあげるよ。舌ぐらいは入れさせて貰うかもしれないけど」
「ちょっと、確認してきます!」
 私は開発室を飛び出した。

 開発室は、運営室から依頼された魔法の術式を開発している。
 完成した術式は紙に書き起こして運営室に返される。
 私は慌てて飛び出しながらも、運営室行きの紙を持ってきていた。
 仕事中はちゃんと仕事をしなくてはいけない。

「失礼します!」
 返事も待たず扉を開けると、お姉様方が何やら激論を交わしていた。
「まだ魔王に攫われる前の、村娘ニナのイメージで行くべきよ」
「剣術大会が開かれのはお昼よ。王族や貴族もご覧になるんだし、開発済はちょっとねえ」
「ニナと言えば薄っぺらい夜着よ。少し生地を厚くすれば全年齢向けになるから大丈夫」
「王族や貴族の方々の事を考えるなら、裸でベッドに括り付けるぐらいの事をやらないと満足しないんじゃないかしら」
 仕事をしていない!
「すみません、書類をお持ちしました」
 さり気なく、皆さんに仕事して貰おうと試みる。
 誰もこちらを見ようともしない。

「じゃあ、こう考えるのはどうかしら。魔王は勇者に勝って、冒頭のシーンを再現しようとしている……」
「やだ、いいわそれ」
「負けた勇者の目の前で、見せつけるように……魔王エロっ!」
「開発済のニナなら、勇者の前で喜んで腰を振りそうね……冒頭との対比で、いいシーンになるわ」
 人の名前を使っておいて、変な事を言わないで欲しい。
「書類をお持ちしました!」
 私が声を張り上げると、あっさりと室長のジョセリンさんが受け取ってくれた。
「ごめんなさいね。少し盛り上がっちゃって」
「仕事は大丈夫なんですか?」
 新人が言う様な事では無いけど、思わず言ってしまった。
「いやあね、これも仕事よ。剣術大会総合演出は、運営室の大事な仕事」
「剣術大会って、騎士団主催ですよね」
 なんで魔術師団が総合演出してるんだろう。
「団長が出場している縁もあって、司会の声を大きくしたり、出場者に光を当てたり、スモークを焚いたり、魔法で色々やってるのよ」
「そうなんですね」
 仕事中とは思えない会話だったけど、まさか仕事だったとは。
「今年はニナにも協力して貰うから、よろしくお願いね」
「出来れば魔法で色々やる方を手伝いたいんですが」
「うふふ」
 笑顔で流された。
「団長は私が賞品とか言っていたんですが、何をすればいいんでしょうか」
「それなのよねえ。もし団長が勝ったら、オスカー君が怒らない程度で何かやっておいて。団長が一晩ニナを貸してくれと言った時のオスカー君は、国一つ滅ぼしそうな勢いで怒っていたわ。あれは怖かった」
「丸投げですか」
「よろしく頼むわね」
 ジョセリンさんは適当にそう言うと、村娘ニナ開発済みバージョンについての激論に加わってしまった。
 私はトボトボと運営室を後にした。

 開発室に戻る頃にはお昼休みになっていたため、お昼ご飯を食べながらロティさんに相談することにした。
「魔王の花嫁を掛けた、勇者と魔王の戦いねえ。それは盛り上がりそうねー」
 ロティさんは興味無さそうに答えた。
「ロティさんは全然盛り上がって無いですけどね」
「だって一応カイルも出るのよ。最終試合が勇者と魔王の戦いになるのはほぼ確定なのは分かっていても、ちょっと面白く無いじゃない?」
 ロティさんはむくれている。
「でも、カイルも言っていたわ。魔王はいつ見ても鍛錬してる。あれでは敵わないはずだって。それでも私はカイルを応援するけどね!」
「カイルさんは幸せですね」
 ロティさんとカイルさんの仲が良さそうで、私まで嬉しくなってしまう。
「それで、ニナの相談って何?」
「今までなるべく、オスカーと一緒にいる所は見られないようにしてきたんですけど、剣術大会で調子付いた事をして、石でも投げられるんじゃないかと……やっぱり仮病を使ってでも断った方がいいんでしょうか」
「どう言う事?」
「オスカーの恋人と言う事がバレたら村八分に……」
 スーザンさんの書いた『魔王オスカーと村娘ニナ』は話題にはなったけど、それは貴族社会だけの話だ。
 騎士団を中心に『魔王の花嫁』なんて言われていても、それが私の事だと分かる人はそんなに多くはないだろう。
 でも、剣術大会に出てしまったら、多くの人にバレてしまう。
 妬まれて悪意に晒される事には慣れていても、優しくしてくれている人達が、変わってしまうかもしれないと思うと胸が痛んだ。

「ニナ……」
 ロティさんが可愛そうな子を見るような目で私を見つめている。
「残念だけど、オスカー君はそこまで人気無いわよ」
「……え?」
「いや、そりゃ見た目はトップクラスよ。見かけたらみんなキャーキャー言ってるわよ。でも、なんて言うか、それだけって言うか」
 ロティさんは少し口ごもった。
「何なら、カイルの方が人気なぐらいだし」
「えええっ!?」
「ちょっと、その反応は失礼じゃない?」
 驚き過ぎてロティさんの機嫌を損ねてしまった。
「もう!いい?まずカイルは近衛兵よ。この時点で、騎士の中でもダントツ人気の職種な訳よ。近衛はよっぽどの事が無いと王都から出る事はないし、見た目も家柄も一定水準以上なのは確かだから。カイルも末端とは言え、貴族の三男なのよ」
 ロティさんは勝ち誇っている。
「それに引き換え、オスカー君は魔兵でしょ。いつ魔物討伐に駆り出されるか分からないじゃない?それに、勇者だから将来性はあるかもしれないけど、現状はただの田舎出の平民でしょ」
「でも、剣術大会の優勝候補ですよ。魔法だって、魔術師団でも普通にやっていけるぐらい凄いんですから」
「将来性はあるって言ったじゃない。それにここって男の方が多いから、みんな言い寄られる事に慣れてるのよね。遠くの色男より、近くのまめな男の方が、結局はモテるのよ」
 なんか、色々ショックだった。
 私の根幹を揺るがす様な、衝撃の事実だ。
「私も田舎出身だから分かるけど、田舎って選択肢が少ないじゃない?一極集中しちゃうのよね。外から見たら大した男じゃなくても、妙にモテてたりするから、オスカー君ともなると凄かったんだろうけど……」
「いやもう、村の至宝って感じでしたよ……私なんか、宝に取り付く害虫みたいな扱いでしたから」
 私も若干その思想に引きずられている。
「田舎の人って、自分が手に入らない物は、他の人も手にすべきじゃないって言う謎の考え方をするから……」
「……石は、投げられないんですね」
「そもそも、そんな低レベルな人間は、ここでは採用されないわよ」
「お城、ですもんね……」
「だから安心して花嫁役を頑張って。もしカイルが優勝したら、私に変わってよ」
 ロティさんの優しい微笑みに、私も漸く少し笑顔になれた。


 そして就業後、私は鍛錬場にオスカーを探しに行った。
 鍛錬場は建物の外にあり、騎士でなくても、お城にいる人間はいつでも見学できる。
 恋人だったり片思いだったり、目当ての騎士に会うため、女性の姿も多い。
 私はなるべく二人でいる所を見られない様にしていた為、来たのは初めてだ。
 
「やっぱり、この格好はおかしい気がする」
 ロティさんの言葉を受けて、勇気を振り絞ってオスカーに会いに行ったけど、身に付いた習性でついつい人気の無い所に誘ってしまった。
 私は今、城壁近くの森の中、木に寄りかかって座るオスカーの上に座らされていた。
「魔術師が土まみれの方がおかしいだろ?魔兵はいつも土まみれだから気にするな」
「立ち話でいいんだけど」
「そこも気にするな」
 まあ、会いに行った事を喜んでくれているようだからいいか。
「あの、剣術大会の事なんだけど、もし団長が勝ったらどうしたらいいのかな?オスカーが決めていいみたいだったけど」
「俺が勝つから大丈夫だ」
 オスカーは笑って私の頭を撫でている。凄い自信だ。
「団長もかなり鍛えてるし、強いと思うよ?」
「ニナが掛かっているんだ、俺がどうなってでも必ず勝つ」
「いや、別に団長の物になる訳ではないからね。怪我しない事を優先して」
「そうなると、流石に勝つのは五分か」
「私は怪我が無い方が嬉しいよ」
「そうか。じゃあ、頑張ってニナの為に無傷で勝つよ」
「……ありがとう」
 私の為に頑張ってくれると思うと、何だか気恥ずかしくて、そして嬉しかった。
「でも、一応負けた時の為に、花冠でも用意しておけよ。魔術師団長が勝ったら、それを渡せばいい」
 不本意そうに小さく呟くオスカーに思わず笑ってしまった。
「うん。オスカーに渡すのを楽しみにしてるね」
「任せとけ」
 二人で笑いあって、幸せな時が流れる。
 思い切って会いに来てよかった。

「そうだ、もう一つ伝えておきたい事があったんだった」
「なんだ?」
「私は、オスカーが大好きだからね」
 私はそう言うと、オスカーに抱きついた。
 ロティさんからオスカーが人気が無いと言われて、無性に気持ちを伝えたくなったのだ。
 一人で何人分もの好意をオスカーに与えたかった。
「ニナ……」
 オスカーは私の顎に指を添えて上に向けると、キスをした。
 どんどん深くなるキスと、スカートの中を上へ向かう手に私は焦る。
「ま、待って。ここ外だよ!」
 私はオスカーを押しのけて、ついでに立ち上がろうとした。
「大丈夫だ。見回り中に人気の無い場所はしっかりと調べてある。ここなら誰も来ない」
 何が大丈夫なのか、オスカーにきつく抱きしめられて身動き出来ない。
「人気の無い所に行きたいと言って、好きだと抱きついてきたのはニナだろ?」
 オスカーは耳元で囁くと、スカートの中の手を一気に滑らせた。
「誘ったのはニナだ」
 その言葉と同時に、下着の中に指が入ってきた。
「あっ、だめっ……」
 足を閉じて逃げようとするけど、その動きで指が擦れて、余計に感じてしまう。
「ふっ、んんっ……」
 割れ目をなぞられ、私の身体から力が抜ける。
「だ、めぇっ……」
 残っている理性で頭を振ると、オスカーは耳に噛りついてきた。
「ひっ……」
 きつめに噛じられて、そのまま舌先で嬲られると、全身を快感が駆け巡った。
「あっ、ああっ……やあっ……」
 指の腹でクリトリスを押しつぶされながら、ぬるぬると割れ目をなぞられて、腰が揺れてしまう。
「そんなに大きな声を出していいのか?」
 オスカーの声に、ここがどこだか思い出す。
「や、ああっ……だ、めっ……」
 逃げようとする私をきつく抱きしめて、オスカーは指を中に入れてきた。
「あっ、んんっ……んっ、んっ、んんっ……」
 私のあげる嬌声は、オスカーの口の中に消えていく。
 舌と指が私の中をうごめいて、頭が真っ白になった。

 気がつけば前開きのワンピースはいくつかボタンが外され、肌着もたくし上げられて、胸が片方出てしまっている。
「や、だめぇっ……あうっ……」
 ねっとりと乳首を舐められて、だめと言っておきながら身体が動かない。
 私の身体は、更なる快感を求めてしまっていた。
「こんなにぐちょぐちょにして、ニナは外で犯されるのが好きなのか?」
「ちが、うっ……」
 耳元で囁かれた言葉に、弱々しく答える。
「じゃあ、もうここで止めるか?」
「や、め……ない、で……」
 もう、止めてとは言えなかった。
「ニナは、淫乱なんだな」
 意地悪く笑いながら囁かれる声に、どうしようもなく感じてしまう。
「そ、う……だから、んんっ……もっと……」
 私は指を差し込まれたまま、ゆっくりとオスカーに跨ると、自ら胸を晒した。
 誰かに見られるかもしれないと言う思いすら、もう私に快感しか与えない。
「淫乱なニナも、大好きだ」
「んっ、んっ……ふあっ……んんっ……」
 オスカーに口を塞がれ、クチュクチュと舌を絡ませながら乳首を摘まれれば、私の身体はビクビクと震えた。
「オスカー……もう、だめぇ……ほし、い……」
 私はオスカーを見つめながら、硬くなっているオスカーの物を撫でた。
 両手で胸を揉まれながら、私はオスカーのズボンのボタンを外す。
「んっ……ああっ、いれ、たい……」
 熱に浮かされたように下履きを緩めて下へずらすと、勢いよくオスカーの物が飛び出してきた。
 思わず口を開けて顔を近づけようとすると、オスカーに止められた。
「俺だって、挿れたい」
 腰を引かれて一気に奥まで突き刺される。
「くっ、ふっ……ああっ……」
 目の奥がチカチカするような快感に、私はオスカーに抱きすがる。
「ニナ、大丈夫だ」
 オスカーは私の身体をそっと押すと、両方の乳首を摘みながら、激しく突き上げだした。
「ああっ……オス、カー……はっ、あっ……イ、く……ああっ……イッ、ちゃうっ……」
「まだ、だめだ……」
 オスカーは腰の動きを弱めると、クリトリスをやわやわと捏ねた。
「ああっ……やあ、んっ……」
 痺れるような気持ち良さに、どうかなってしまいそうだ。
「オスカー……おね、がい……」
 私は身体を少し反らせると自ら腰を振り、熱のこもった視線をオスカーに向けた。
「くっ、そっ……」
 オスカーは呻くように言うと、私を押し倒した。
 仰け反ったまま両肘を地面に付けて、かなり苦しい体勢になる。
「んっ……くる、しい……」
「すぐに、終わる」
 オスカーはそう言うと、私のお尻を抱えるようにして勢いよく引き寄せた。
 持ち上げるようにして引き抜き、また強く引き寄せる。
「あっ、ああっ、ああっ、あああっ……」
 大きな動きに、声が止まらない。
 叫ぶようにイッた瞬間、オスカーの物が中で脈打ち、熱いものが注がれた。
「オスカー……はあはあっ……どうしよっ……声が……」
 あんな大きな声を出したら、人気が無いとは言え、誰かに聞こえてしまったんじゃないだろうか。
 私は快感の余韻に身体を震わせながらも、泣きそうな顔でオスカーを見つめた。
「大丈夫だって言っただろ。結界を張ったから、誰にも聞かれてない」
 つながったまま私を抱き起こすと、オスカーはそのままきつく抱きしめた。
「ニナのエロい声を、俺以外の誰にも、聞かせる訳無いだろ」
「早く、言って……」
 私はぐったりとオスカーに身体を預けた。
「とは言え、遮断できるのは音だけだ」
「うっ、わあっ」
 私は自分の姿を思い出し、慌ててオスカーの上から飛び退いた。
 ずるりとオスカーの物が抜けて、ドロドロと白濁が溢れる。
「流石に、身体が痛い」
 オスカーは立ち上がりながら私を抱きしめると、二人まとめて浄化の魔法をかけた。
 かなり高度な魔法なのに、腕輪も使わずあっと言う間に発動させて、いつもの事とは言え、手際の良さに見とれてしまう。
「なんだ、まだしたいのか?」
 私がオスカーを見つめていたら、ひっくり返されて後ろから胸を揉まれた。
 そう言えば、まだ胸が出たままだった。
「え?違う、や、待って」
 スカートの中にも手を入れられて、まだ熱が燻っていた私の身体はあっと言う間に蕩けてしまう。
「だ、めぇ……ああん……」

 後ろからも激しく突かれて、声が枯れる程泣かされる羽目になり、人気の無い所でオスカーに会うのは控えようと思った。
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