勇者の中の魔王と私

白玉しらす

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後日談

いつか魔王に ※オスカー視点 ☆

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「私って、鈍くさいのかなあ」
 久しぶりに休日が合って、手をつないで街をぶらつき、ニナの部屋に戻ろうと言うところで、ニナが呟いた。
「何だ、急に」
「最近、良く人にぶつかるんだよね」
 深刻な顔をしている割に、大した内容では無かった。
「よそ見して歩くからじゃないか?」
 今日も俺と手をつないでいなかったら、危なかった場面はいくらでもある。
「仕事中は緊張感を持って歩いてるよ。ちょっとしかよそ見してない」
「してるんじゃないか」
「まあ、そうなんだけど、でも騎士団に行くようになってからなんだよ……」
 俯きがちに呟いたニナの表情は暗い。


 夜間庭園の見回りをしながら、外灯に光を灯すのは新人魔兵の仕事だ。
 消費する魔力が多い上に数が多いので、途中で魔力が切れて行き倒れる者も多い。
 魔力の底上げに一役買っているとも言えるが、捜索に人が割かれるのも警備上不味いと言うことで、改良の依頼が出されていた。
 そして戻ってきた術式を見て、皆言葉を失った。
 ニナが改良した術式は、ほとんどの魔兵が理解できなかったのだ。

 魔法文字は一つ一つに意味があり、組み合わせる事により意味が変わる。
 通常十文字の魔法文字で記述するような物を、ニナは五文字で済ませてしまう。
 その意味を理解するためには、より深い魔法文字の知識が求められる。
 術式を理解できる者が一割にも満たなかったため、ニナが改良した術式は実用不能として魔術師団に突き返された。
 突き返された副団長は「丁度いいからもっと勉強したら?」と言い、騎士団にニナが派遣される事になった。
 
「魔術師団術式開発室のニナです。よろしく、お願いします」
 教壇に立ち、赤い顔で声を震わせながら挨拶した後、部屋の後ろに座った俺を見つけて、嬉しそうに微笑んだニナに、小さなどよめきが起きた。
 ただでさえ、ニナは可愛い。
 男所帯の騎士団に来て、無事で済むはずがない。
「おい、今絶対俺に笑いかけたって。やべえ、今から外泊許可取れるかな」
 俺の隣で同僚のヒースがそわそわしている。
 あちこちで聞こえるひそひそ声は、同じような内容だろう。
 この部屋にいるのは、新人魔兵の中でもニナの術式を理解した、それなりに出来る人間だ。
 いきなり全く理解しない大人数に教えるのは大変だろうと、ニナの練習も兼ねて術式の説明を聞くために集められていた。
 それなりに出来る人間でもこの反応だ。
 大多数の魔兵は端的に言うとアホだ。
 飢えた肉食獣の群れの中にニナを放り込んだらどうなるか。考えただけで頭が痛い。
 恐らくこれは俺への嫌がらせだ。
 過去に俺がニナにした事を知っている副団長は、蛇蝎のごとく俺を嫌っている。
 アホな男共に言い寄られるニナを見て、やきもきすればいいとでも思っているんだろう。


「気をつけているのに、必ずと言っていいぐらい、魔兵の人とぶつかっちゃうんだよね……」
「どう考えてもわざとだろ」
 ニナの気を引きたくてやっているんだろうが、やっている事が完全に子供だ。
「やっぱり……」
 黙り込むニナを見て確信する。
 絶対に明後日な方向に勘違いしている。
 今までは俺だけのニナでいて欲しくて、見て見ぬ振りをしてきた。
 今はもう、それではいけないと知っている。
「ぶつかるのはニナが好きだからだ。気を引きたいんだろう」
「え?わざとぶつかるって、悪意しかないでしょ。村の女の子達のタックルは強烈だったよ?」
「……ごめん」
 俺はニナを抱き寄せると、ニナの頭に頬を寄せて謝った。
 年頃になると、ニナに言い寄る男達を蹴散らしたり、何よりニナに対する欲望を誤魔化す為に身体を動かすのに忙しくて、ニナが置かれた状況にまで気が回らなかった。
「いや、だから避ける事には自信があったんだよ。それなのにぶつかっちゃうから、色々衰えてるのかなって。鍛え直した方がいいのかな?」
 ニナは嫌われていると思って悩んでいたんじゃなかった。
 わざとぶつかってくる人間を避けられない事に悩んでいた。
 俺が思っていたよりも、明後日な方向を向いていて、流石ニナだなと思った。

「今度ぶつかられたら、名前を聞くといい。喜んで教えてくるはずだ」
 ニナの部屋についた俺達は、ベッドに並んで座っていた。
 今すぐ押し倒したい気持ちを抑えて、優しく髪を撫でながら耳元で囁く。
「聞いてどうするの?」
 安心しきって俺にもたれ掛かるニナが愛おしい。
「俺に教えてくれ。注意しておく」
「いいよ、自分の問題は自分で解決する」
 ニナが俺から離れ、慌てて首を振った。
 俺は両手をニナの頬に添えて、顔を近づける。
「俺もニナを守りたいんだ。恋人なんだから、いいだろ?」
 そう言ってニナの唇に俺の唇を重ねると、ニナは俺にしがみつくように抱きついてきた。
「ふっ……んっ……」
 舌を入れるとニナから甘い吐息が漏れて、劣情をそそられる。
 ゆっくりと舌を絡ませながら、ニナの服を脱がしていく。
 俺の動きに合わせて自ら肌を晒していくニナに、今すぐ挿れてしまいたくなる。
「ニナ」
 晒された肌をあちこち撫で回しながら、俺は欲望を口にする。
「ローブを、着てくれないか?」
「んっ、あっ……何?」
 固くなった乳首をコリコリと抓りながら言うと、ニナは不思議そうな顔をした。
「魔術師団の制服のローブを、着て欲しい」
「あうっ、うっ……なん、で?」
 割れ目をなぞると、もうしっとりと濡れていた。
「着たら、教える」
「あんっ……」
 最後にクリトリスを弾いてニナの身体から手を引くと、ニナは戸惑いながらも立ち上がり、ローブを着に行った。
 
「ニナ、そのまま後ろを向いて、テーブルに手を突くんだ」
 ローブを着てベッドに戻ろうとするニナを後ろから抱きしめて、テーブル脇に立たせる。
「やっ……ああっ……」
 ニナがいつも着ている黒いローブは、すっぽりと被るタイプの物で、お尻が隠れるぐらいの丈の長さだ。
 テーブルに手を突くと、肝心な所が見えそうで見えなくて、割れ目を弄る俺の手が見え隠れして、とにかく堪らなくエロい。
「だ、だめぇっ……」
 クリトリスをぐりぐりと押しつぶすと、ニナの身体から力が抜けて、テーブルに突っ伏す形になった。
 白くて可愛らしいニナのお尻が目の前に突き出されて、我慢出来なくなる。
 ニナの中に指を差し込むと、滑りよく奥まで入り、クリトリスを突けばきゅうきゅうと締め付けた。
「ニナの身体はいやらしいな」
「ふっ、やっ……ああっ……」
 手の動きを早めながら、覆いかぶさるようにして耳元で囁くと、ニナの身体は面白いようにビクついた。
「このローブを着たまましたら、教壇に立つ度思い出すだろ?」
 俺の言葉に、ニナはびくりと身体を強張らせた。
「ニナは感じやすいからな。思い出して我慢出来なくなったら、いつでも呼んでくれ」
「へ、んたいっ……ふっ、うっ……あっ、ああっ……」
 罵る言葉すら心地良い。
 逃げようとするニナを軽く押さえつけて、浅い部分を小刻みに擦ると、あっと言う間に力が抜けて、中をうねらせながらイッてしまった。
 
 ぐったりとするニナを見下ろしながら、急いで服を脱ぐ。
「オスカーの、エッチ……」
 テーブルに突っ伏したまま、顔だけこちらを向けて不満げに言われても、ご褒美にしかならない。
「知らなかったのか?」
 そっと抱き上げ椅子に座ると、そのままニナを跨がせた。
 お互いの性器が触れ合って、自然と腰が揺れる。
「……もう、知ってる」
 ニナは擦り付けるように腰をくねらせ、自分から口づけをしてきた。
 誘うように舌を入れられて、下半身に熱が集まる。
「ニナ、挿れたい」
「あっ、んっ……」
 耳元で囁くと、ニナは濡れそぼったそこを、ぐいぐいと押し付けてきた。
「あっ、うっ……おっきぃ……入ら、ない……」
 眉を寄せ潤んだ瞳で見つめられて、心臓が止まりそうになる。
 大胆な癖に時折見せる初心な反応は何なんだ。
「こうだ……」 
 腰を掴んでガチガチになった俺のものをぐっと挿し込む。
「ああっ……うっ……ふっ……」
 身体を仰け反らせて衝撃をやり過ごすニナを、追い詰めるように突き上げる。
 ローブに隠れてつながった部分は見えない。
 それなのに、普段は見えないニナの白い太ももが俺の動きに合わせて揺れて、堪らなく扇情的だ。

「んっ……はあっ……オスカー……」
 蕩けそうな顔で俺の顔を見つめると、ニナがローブの裾を捲り上げた。
「ああっ……あんっ……あああっ……」
 つながった部分が晒されて、それを見たニナが激しく身体をビクつかせる。
 エロ過ぎる光景に何も考えられなくなり、ひたすらニナを突き上げ続けていると、ニナは苦しげに呻きながら、更にローブを捲り上げた。
「ふっ、あっ……オス、カー……んっ……こっち、もっ……」
 揺れる大きな胸の頂きには、硬く勃ち上がったピンク色の乳首があった。
 余りに魅力的な光景に、思わず出そうになる。
 腰の動きを緩めて、ニナの出方を伺うと、ニナはローブを捲り上げたまま、乳首を俺の口元に押し付けてきた。
「はっ、あっ……なめ、て……」
 腰をくねらせながらそんなおねだりをされて、俺の中で何かが壊れた。
「ああっ……オスカーっ……やあっ、すご、いっ……あああっ……」
 請われるままに乳首にかぶりつき、狂ったように腰を振る。
 誰だ、ニナをこんなに仕込んだのは。仕込み過ぎだろ。
「くそっ……ニナっ、ニナっ……」 
 俺はもう、本能のままに腰を振ることしか出来なかった。


「アイバー先輩、ちょっと鍛錬に付き合ってもらえませんか?」
 ニナから告げられた名前は十を超えた。驚く程アホばっかりだ。
 騎士には階級はない。その代わり役職と褒章の数と入団時期で序列が決まる。
 勇者と言っても入団したばかりの俺は騎士団では最下層だ。
 注意するにも気を使わなければならない。
「勇者オスカーか……いいだろう。付き合うぜ」
 勇者に勝って名を上げたいのか、皆あっさりと乗ってくる。
「ありがとうございます」
 得意な作り笑いで答えると、俺達は鍛錬場に向かった。

「まだ続けますか?先輩?」
 伸びたアイバーに回復魔法を掛けながら、貼り付けた笑顔で尋ねると、アイバーは勢いよく首を横に振った。
「も、もういいっ……」
「そうですか、残念です。ところで、先輩にお願いがあるんですが」
 アイバーを笑顔で見下ろしながら、本来の目的を告げる。
「ニナにわざとぶつかる様な子供じみた真似、止めて貰えませんか?ニナが悲しむ」
「な、に?」
「もう二度と、ニナを泣かせないと誓ったんです」
 貼り付けていた笑顔を止めて、剣を首元に突き付けると、アイバーは顔色を失った。
「止めて、貰えますよね?」
「あ、ああっ……」
 ガタガタと震えながらアイバーが頷く。
「ニナは誰にも渡さない」
「ひぃっ!」
 自分に言い聞かせる様に言うと、アイバーは脱兎のごとく逃げていった。

 そんな事を十回以上続けなければならず、途中から雑になっていたのは確かだ。
 さっさと終わらせたくて、容赦のない打ち合いをしてしまった。 
「おい、オスカー。お前一部の人間から魔王って呼ばれてるらしいぞ。何やったんだよ」
 全員に釘を刺し終える頃、ヒースが呆れた顔で聞いてきた。
「魔王か……」
 つい、魔王を騙ってニナにした事を思い出してしまった。
「うっわっ。何だその悪そうな顔。完全に魔王だわ」
 反省はしている。思い出せば痛みもある。
 それでも、最高の夜だった事は否定できない。
「それもいいな」
 俺が魔王になれば、ニナともまたあんな夜を過ごすことが出来るだろうか。
「怖えぇ」
 駄目だ、考えただけで勃ちそうになる。
「ヒース、ちょっと鍛錬に付き合ってくれ」
「え?俺、何もしてないよ?お前のニナに、手なんか出してないよ?」
「何をやったか知ってるんじゃないか。ただの鍛錬だ」
「遠慮して……いや、男を担ぐなよ!最低だな、お前!」
 暴れるヒースを肩に担いで鍛錬場に向かう。
「これは、倒れるまでやらないと収まらないな……」
「魔王だ……魔王がいる……」
「何とでも言え」
 
 こうして俺は、勇者でありながら魔王と呼ばれるようになった。
 いつかニナの前でも、また魔王になれるだろうか。
 ヒースが伸びるまで鍛錬を続けても、俺の下半身が落ち着くことは無かった。
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