勇者の中の魔王と私

白玉しらす

文字の大きさ
上 下
8 / 37
本編

第四夜 ☆

しおりを挟む
 ただのお休みのキスで顔を赤らめている場合ではない。
 私にはやるべき事があるのだ。
『裸で自慰』
 私は手で顔を覆った。
 ほぼゼロ距離にオスカーがいるのに、無理でしょうよ。
 もう、無視して寝てしまおうか。
『約束を守れなかったら昼まで犯す』
 朝までじゃなくて、昼までと言う所に本気具合を感じてしまう。
 実際は朝になればオスカーは目を覚ます訳で、もう完全に真っ最中に魔王と交代する訳だ。
 そっちの方が無理だ。
 やっぱり、やるしかない。

 私はひたすらオスカーが寝るのを待った。
 とは言え、待ちすぎて魔王が出てきてしまっては元も子もない。
 規則正しい呼吸音を確認すると、私は意を決して寝間着を脱ぎだした。
 最小限の動きでボタンを外し、寝返りを装いながら脱いでいく。
 何とか寝間着を脱ぎ、下着姿でオスカーの後ろ姿を見つめる。
 これだけでももう、変態の世界に足を踏み入れてしまっている気がする。
 動きの無いオスカーの後ろ姿を見つめたまま、ゆっくりと肌着をたくし上げる。
 胸を出す時に、肌着が硬くなった乳首を弾いて、身体がビクリと反応してしまった。
 そんな反応がとてつもなく恥ずかしくて、恥ずかしいのに、私の乳首はより一層硬くたってしまった。
 
 何をしているんだ、私は。
 泣きそうになるのを何とか堪えて、一気に肌着を脱ぎ、その勢いのまま、下着に手をかける。
「ニナ」
 振り向いたオスカーと目が合い、私は固まる。
 これは、どっちだ?
「眠れないのか?」
 オスカーだった。
「う、うん。でも、もう寝れそう。お休み」
 私は布団に潜り込みながら背中を向けた。
 こう言う時は下手に言い訳しない方がいい。
 脱ぎかけの下着はそのままに、限りなく全裸に近い姿のまま、私はひたすらオスカーが寝るのを待った。
 オスカーはしばらく私の様子をうかがってから、再び背中を向けたようだった。
 しばらく時間をおいてから、私は寝返りをうち、オスカーの方を向いた。
 その動きに合わせて脱ぎかけの下着も足元へ脱ぎ捨てる。
 さあ、これで一つ目の約束は果たした。
 もう一つの方は適当でもバレやしないだろう。
 さあ、さあと魔王の出現を待つけど、いたずらに時だけが過ぎていく。
 
 じっとオスカーの後頭部を見つめていたら、もぞりと身体が動き、向き合う形になった。
 目は閉じられているから、ただの寝返りだろう。
 私はじっとオスカーの顔を見つめる。
 月明かりだけの薄暗い部屋だから、見ていてもそうそう気づかれないはずだ。
 旅に出る前は知らなかった、オスカーの顔を思い出す。
 私の場合中身は魔王だったけど、オスカーだってああ言う事をする時は、あんな顔をするんだろうか。
 本当なら私には見せない顔なのに、私は知ってしまった。
 それは本当にいい事だったんだろうか。
 あまりの出来事の連続で、秘密のままここまできてしまったけど、やっぱりオスカーに魔王の事を話した方がいいのかもしれない。
 でも、ここ数日のあれこれは何が何でも隠し通したい。
 どうやって言えばいいんだろう。

「どうやら、昼まで犯されたいらしいな」
 エッチな事にガッツリ修正を入れた魔王の話を考えていたら、オスカーの声が聞こえてきた。
 言いながら乳首を摘んでくるのは、どう考えてもオスカーではなく魔王だ。 
「ちょっと、休憩してた、だけ」
 足の付け根まで触られて、私は身体をよじる。
「いつ始めるか、寝たふりをして待っててやったのに」
「待って、それはいつから?」
「そう言うって事は、やってなかったんだろ?」
 あれ?ひょっとして嵌められたんだろうか。
「ニナは一人でするより、昼まで犯される方を選んだ訳だ」
 魔王は楽しそうに笑いながら布団を捲り、起き上がって寝間着を脱ぎだした。
「裸にはなっていたから、もう一つの約束は守ってやる」
「もう一つ?」
 伸し掛かってきた魔王に腕を押さえつけられながらも、何の事か分からずに聞いてしまう。
「言う事が聞けたら、他の女の所には行かないと言っただろ?」
 魔王がするキスは、当然のように舌が差し入れられ、私も素直に受け入れてしまう。
「んっ、待って……本当に、んんっ……もう他には行かないで、んっ……くれるの?」
 キスの合間に何とかそれだけ聞くと、魔王は耳にピッタリと口をつけて囁いた。
「ああ、ニナだけだ」
「んっ、ふっ……ああっ……」
 囁きだけで蕩けてしまった所に、指で割れ目をなぞられて一気に力が抜ける。
「あんっ……んんっ……ああんっ……」
 胸も揉まれて、気持ちよさから腰が揺れる。
「さあ、昼まで楽しもうか」
「やっ、まっ、待って!」
 魔王の言葉に血の気が引く。気持ちいいとか言っている場合ではない。
「あの、何とかそこは、考え直し、て、あううっ……」
 魔王は聞く耳を持たず、ぬるぬると割れ目をなぞり続けている。
 耳たぶを噛じられ、意識が飛びそうになる。
「がんばる、から……んんっ……ゆる、して……」
 荒い息遣いが聞こえるように、耳を舐めていた魔王の動きが止まる。
「何を頑張るんだ?」
 魔王は心底楽しそうに、意地悪く笑いながら私を見下ろす。
 ここが正念場だ。
 私は上に乗る魔王の身体をグイッと押し倒すと、馬乗りに跨った。
「まさか、この魔法を使う時が来るとは……」
 私は腕輪に手を添え、魔法を発動させる。
 オスカーの腹筋の上に魔法陣が出現し、そこから粘性のある水が溢れ出る。 
「待て」
 焦る顔も、オスカーと同じなんだなと見つめていると、起き上がって腕を掴まれた。
「なんだ、この魔法は」
「あうっ……ぬるぬる、する……」
 魔王が起き上がったせいで、粘性のある人肌の水が私の方にも流れてきた。
 溜まったぬるぬるを掬って、自分の身体に塗りつける。
「んっ……娼婦の友達が、海藻で作ったローションは、ああっ……」
 そのまま滑り込むように魔王の身体に密着すると、魔王はそのままベッドに倒れ込んだ。
「片付けが大変、んっ……だからって……魔法で何とか、ならないかなって……はあっ……」
 ぬるぬると身体を擦り合わせるだけで、堪らなく気持ちが良い。
「フローラさん、魔法が使えなかったから、ううっ……意味なかった、けど……」
 私が気持ち良くなっていても仕方が無い。
 私は胸でオスカーの身体を洗うように、身体を滑らせる。
「せっかくだからって、ふっ、うっ……やり方を、教えて、くれてっ……あんっ……」
「どこから、突っ込めばいいか、分からない」
 何だかさっきから私ばかり気持ち良くなっていて、魔王の反応が薄い気がする。
「あの、でも……やるのは、初めてで、あうっ……気持ち良く、なかった?」
 起き上がって割れ目を腹筋に擦り付けながら、魔王を見降ろすと、何だか苦しげな顔をしていた。
「相変わらず……ニナは、バカだ……」
 今一つどう言う反応なのか分からなかったため、再び胸を押し付けて下へと下がって行くと、硬い物が行く手を阻んだ。
 こちらの反応は、良好そうだ。
「あう……」
 なぞるように腰を浮かせて回避して、更に下へと向かう。
「見てて……」
 オスカーの硬く勃った物をそっと握り、その先端に自分の乳首を押し付ける。
「ああっ、んっ……はあっ……」
 ええと、次は挟み込んで目を見つめるだっけ?
 ぼんやりする頭のまま、両脇から胸を押さえて、オスカーの物を挟み込む。
 そのままムニムニと押さえつけながら、視線を上に上げると、魔王は上半身を軽く起こして、悩まし気な顔でじっと見つめていた。
「ええと、ダメ、だった?」
「いや……くっ、大丈夫、だ……」
 それならばと、私は魔王を見ながら、胸を左右交互に動かして擦り合わせる。
「うっ、くっ……ニナ……」
 先端から汁が溢れ出しているのに気付き、思わず舌で舐め取ってしまった。
 腰をビクつかせる魔王に、もっと気持ち良くなって欲しくなって、そのまま先端を口に含む。
 胸で揉みしごきながら、舌を這わせ吸い上げると、魔王は声にならないうめき声をあげた。
 
「もう、いい……」
 まだこれからと言う所で、頭をくしゃくしゃ撫でられ、魔王に止められてしまった。
 身体を引き上げられて、そのまま押し倒される。
「まだ、イカせてない」
 私としてはかなり頑張ったけど、結果が出ていない。
 泣きそうな顔で魔王を見つめる。
「本当に、ニナはバカだな」
 呆れたように笑うと、魔王は私の頬にそっと触れた。
「こんな事、俺以外にするなよ」
 魔王は怒っているような、真剣な顔で私を見降ろした。
「脅されてなければ、魔王にだってこんな事、しない」
 私はつい不満を漏らしてしまう。
「いや……そうだな、すまない」
 悲しいような、苦しいような、何だか辛そうな顔で魔王が謝ってきた。
「こんな事をしていても、ニナは手に入らない」
 私の上に覆いかぶさると、魔王はきつく抱きしめてきた。
「魔王?」
 何だか様子がおかしい。
「どうしたら、俺のものになってくれる?」
 小さな声で呟かれた声は、大きなオスカーの身体が小さく感じられるぐらい、弱々しい物だった。

 魔王はもうすぐ封印されてしまう。だから、こんな事をするんだろうか。
「私でよければ、全部あげる」
 私は魔王の背中をそっと撫でる。
 誰かとどうこうなる事もないだろうから、全て魔王に捧げても問題ない。
 少しでも魔王の慰めになるなら、私の全部をあげよう。
「封印されても、私の心も身体も、魔王のものだよ。誰にも触らせない」
 私の言葉に顔を上げた魔王の瞳は、絶望に震えていた。
「なんで……」
 魔王は首を振ると、暗い瞳でじっと私を見つめた後、噛み付くようにキスをしてきた。
「ふっ、んんっ……んっ、んっ……んんっ……」
 濡れ具合を確認するように割れ目をなぞると、すぐに熱い猛りを押し挿れる。
「俺以外は、簡単に受け入れるんだな」
「あっ、はっ……うっ……やっ……」
 余りに激しい突き上げに、声も出ない。
「ニナ、ニナ……くっ、うっ……ニナ……」
 うわ言のように私の名前を呼びながら、魔王はひたすら腰を振り続ける。
「や、あっ……ああっ……あああっ!」
 何かが弾けるような快感に、悲鳴をあげてイッてしまう。
 それでもなお、魔王の動きが止まる事は無かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結保障】平凡OL(β)ですが、同期の末っ子御曹司(α)に溺愛されています

神無月りく
恋愛
日本外食産業の一翼を担う『川嶋フーズ』で秘書としてOL黒田鞠花(くろだまりか)は、同期で社長令息の川嶋隼人(川嶋はやと)に入社以来恋に似た憧れを抱いていた。 しかし、そもそもの身分が違う上に自分はβで、彼はα。 ただの同期以上の関係になれないまま、五年の月日が流れた。 ある日、Ωのヒートに巻き込まれて発情した彼を介抱するため一夜を共にし、それがきっかけで両思いだったことが発覚して交際がスタート。 意外に庶民的でたまに意地悪なスパダリ彼氏に溺愛され、順調にデートを重ねて幸せな日々を送っていた鞠花だったが、自分の母親からαの交際を反対されたり、彼の運命の番を自称するΩ令嬢が登場したりと、恋路を妨げる波乱に見舞われるように…… ※ムーンライトノベルズ(小説家になろう)様で同一作品を連載中ですが、こちらが若干先行公開となっております。 ※一応R18シーンには☆マークがついています。 *毎週土日および祝日の不定時に更新予定(ただし、1月1日~5日までは連日更新)。

元上司に捕獲されました!

世羅
恋愛
気づいたら捕獲されてました。

大好きな幼馴染と結婚した夜

clayclay
恋愛
架空の国、アーケディア国でのお話。幼馴染との初めての夜。 前作の両親から生まれたエイミーと、その幼馴染のお話です。

処理中です...