異世界でダンジョンを作ることになった俺はとんでもない物を作ってしまった

白玉しらす

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正しくないオッサンの寝かしつけ方

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 危なかった。あと十年若かったら、野獣と化していた。
 牛丼に紅生姜を知っていて、なんで男女のアレコレを知らないんだよ。
 いや、俺だって出来るもんならしたいよ?
 でも、俺は知ってしまった。
 セラフィナが使命を果たそうと、不安な気持ちを抱えながら、必死に頑張っている事を。
 俺を頼ってくれているのも分かるから、不埒な事をして信頼を裏切りたくない。
 でもまあ、全てが終わったら、ちょっとぐらい手を出しても許されるんじゃないか。
 例えば、あのけしからんおっぱいをこう……

「お先にいただきました」
 デスクの椅子にふんぞり返り、くるくる回りながら良からぬ事を考えていたら、すぐ近くでセラフィナに声をかけられた。
 見上げれば、Tシャツ姿のセラフィナが髪を拭いていた。
 長めの裾から程よく肉のついた太ももが覗いている。
 それは、履いているのか履いていないのか。
「履いてますよ?」
 セラフィナが不思議そうに裾を捲り、ショートパンツを見せてきた。
 心の声が漏れていたらしい。
「トオルも、どうぞ」
 捲ったままどうぞとか言うなよ。風呂の事だと分かっていても、ドキッとしてしまう。
「入ってくる」
 俺はセラフィナを見ないように風呂場へ向かった。

 俺が風呂から出るとテーブルが出ていて、冷たい水が用意されていた。至れり尽くせりだな。
「風呂場はどうしたらいい?」
「そのままで大丈夫ですよ。全自動掃除機能付きですから」
 なんだその主婦垂涎の便利機能。快適過ぎてここから出たくないレベルだ。
 目の前には金髪美女もいるしな。
 ついつい水を飲みながら、目の前のセラフィナを盗み見てしまう。
 プラチナブロンドと言っていいぐらい見事な金髪はきれいなストレートで、肩までのショートカットなのがもったいなく感じる。
 まあ、似合ってるんだけどな。
 少し丸顔で、くりくりと大きな瞳のせいで少し幼く見えるから、金髪美女と言って想像する威圧感は全くない。
 ほっそりとしていながらも、つくところにはしっかりついた肉が、健康的な印象を与えている。
 もっと端的に言うと、大きめなTシャツを着ていても分かる、その胸の大きさ。
 いや、待て。ツンと少し尖った感じのその胸の感じ。
 それはもしやノーブラなのか?
 ノーブラ、なのか?

「トオル、どうですか?」
「何が?」
 ノーブラについて聞かれたかと思って、思わず声が上ずってしまった。
「ダンジョンは、出来そうですか?」
「それね!大丈夫だ、問題ない」
 動転して、なんか死亡フラグみたいな事を言ってしまった。
「良かった……」
 ほっとした顔のセラフィナを見て、これは明日から気合い入れてやらないとなと思った。
「じゃあ、もう寝ましょうか」
 本当はまだ作業したいんだけど、許しては貰えないだろう。
 手をかざしてテーブルを片付けるセラフィナを、大人しく眺めておいた。
「トオル、どうぞ」
 デスクの反対側にベッドを出すと、セラフィナが手を向けて俺に勧めてくれた。
「どうも」
 他にすることも無いし、早く寝て朝から頑張ろう。
 そう思いベッドに潜り込むと、当然の様にセラフィナも潜り込んできた。

「待て待て待て」
 キングサイズとかではない。シングルサイズの小さなベッドだから、当然セラフィナは別の場所で寝ると思っていた。
「どうかしましたか?」
「ここで、寝るのか?」
「ベッドは一つしか用意していないので」
 なんでだよ。そこは謎技術で二つ用意しておきなさいよ。
「なら、ここはセラフィナが使え。椅子や床で寝るのには慣れてる」
「駄目です」
 起き上がろうとすると、腕に抱きつかれた。
 柔らかな感触に、俺は固まってしまう。
「ちゃんと休まないと、明日に障ります」
 この状況の方が休まらないと思うんだけど、間違ってるのかな?俺。
「きっと、一緒の方がよく眠れますよ」
 なんだ、その一緒の方がより良いはずだ信仰は。
「あー、俺、人がいると眠れないんだ。ごめんな」
 そろそろと腕を引き抜き、脱出を試みる。
「分かりました……」
 セラフィナは大人しく巻き付かせた腕を解くと、ベッドから立ち上がろうとした。
「待て、どこに行くつもりだ?」
 今度は俺がセラフィナの腕を掴む。
 ベッドが一つしかないなら、退くのは俺の方だ。
「邪魔にならないように、私は浴室で寝ます」
「謎技術でもう一つ寝室を作れないのか?」
「私は、どこでもいいんで……」
 なんで、そんなにやさぐれてるんだ。
「いや、それを言ったら俺だって床でいい。俺が床で寝るから、セラフィナはベッドを使え」
「トオルが床で寝るなら、私も床で寝ます」
 なんでだよ。
 もう、面倒くさいな。
 正直にムラムラハァハァするから駄目だと言えばいいのか?
 鷲掴んで舐め回されたくなかったら、大人しく一人で寝ろと言えばいいのか?


 そして今、俺はセラフィナに腕に巻き付かれて一緒に寝ています。
 いや、ガツンと言ってやろうと思ったんだよ?
「男と女が一緒に寝るとどうなるか、知らないなら教えてやる」
 とかなんとか言って押し倒して、男の怖さを身をもって知らしめてやろうと思ったんだよ?
「私は一緒がいいです。トオルは、温かいから」
 信頼しきった顔で微笑まれて、俺は沈黙した。
 ヘタレなんじゃない。俺は紳士なんだ。

 猫のように丸まって、俺の腕にしがみつくセラフィナは、幸せそうに眠っている。
 俺の手はセラフィナの太ももに挟み込まれ、柔らかな胸の感触と共に、俺の理性にダメージを与えている。
 紳士ストッパーに負荷がかかる。
 ああもう、ドキドキと心臓が煩くて眠れやしない。
 やっぱり、床で寝よう。
 起こさないようにゆっくりと腕を引き抜こうとすると、セラフィナが身じろぎした。
 ムニムニと柔らかな肉の感触が俺を襲う。
 もうこれ、やっていいんじゃないかと悪魔な俺が囁やけば、同意なき行為は犯罪と紳士な俺が囁く。
「トオル?」
 悪魔と紳士のハルマゲドンが始まる前に、セラフィナが目を覚まして俺の顔を覗き込んできた。
「眠れないんですか?」
「人がいると眠れないと言っただろ」
 ちょっと腹が立って文句を言うと、セラフィナはグイッと顔を近付けてきた。
「な、なんだ?」
「私が、眠らせてあげます」
「何、を……」
 セラフィナは更に顔を近付けさせ、チュッと俺の額にキスをした。
「お休みなさい、トオル」
 優しい微笑みを最後に、俺の視界はブラックアウトした。

 味噌汁と焼き鮭の匂いに目を覚ますと、テーブルに座ってセラフィナが俺が起きるのを待っていた。
 異世界の癖に、相変わらずのメニューだな。
「おはようございます」
「何だったんだ、昨日のあれは」
「昨日?」
「俺の意識を奪っただろ」
「そんな、寝かしつけただけです」
 俺は赤子か。
「とにかく、二度とあんな事はするな。それから、ベッドはちゃんと分けてくれ」
「一緒は、駄目ですか?」
 しょんぼりするセラフィナに、思わずいいよと言ってしまいそうになる。
「ベッドは二つ。これだけは譲れない」
 自分にも言い聞かせるように強く言うと、セラフィナは渋々頷いた。
「分かりました。準備しておきます……では、朝ごはんにしましょう。いただきます」
「いただきます」
 これで今夜は落ち着いて眠れるだろう。
 俺は朝食を食べると、ダンジョン設計に集中した。
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