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最終章 人とあやかし

幕間三

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「玉葉様」

「うん、どうしたの? 文車」

「先ほど誉と一緒に、遺骨を丁重に埋葬いたしました」

「そっか、ありがとう。ごめんね、全部任せちゃって」

「いえ。しばらくはゆっくり休んでください」

「ゆっくり休む、か。そうしたいところなんだけどね」

「お仕事でしたら、私が代わりますから。誉も手伝ってくれると言ってますし」

「ふふ。文車がそんなこと言うなんて、明日は薙刀でも降るのかな?」

「茶化さないでください」

「ごめんごめん。でも、大丈夫だよ。最近うまく眠れなくてね。いっそのこと仕事でもしてた方が、気がまぎれるから」

「……それこそ、明日は煮えた鉛でも降りそうですね」

「ふふ、違いないね。まあ、遺されたほうが眠れなくなるのは、昔から詩にも詠われるくらいよくあることだからさ」

「それは、そうですが……、眠りやすくなる薬を用意しましょうか?」

「大丈夫だよ、文車。僕は眠らないくらいじゃ死なないから。残念ながら、ね」

「……」

「ほらほら、そんな顔しないで。ところでさ、一つお願いがあるんだけど」

「はい、なんでしょうか?」

「僕はこの先、絶対に道を踏み外すからさ」

「ちょっと待て。いきなり何言いだすんですか、このジジイ」

「ふふ、ごめんごめん。でも、診たところ誉の寿命も多分普通の人間と同じくらいみたいだし……、この先ずっとまともでいられる自信が皆無なんだよね」

「でも、アツシは多分あやかしくらいか……下手したら、玉葉様と同じくらいの寿命になりそうですよね?」

「まあ、診たかんじそうだね」

「なら、なるべく踏みとどまってください。あの子の精神衛生上、よろしくないので」

「そうだね……、善処はしてみるよ。せめて、おかしくなる時期があっても、なるべく早く立ち直るように」

「そうしてくださたい。で、お願いって言うのは……、万が一道を踏み外してしまわれたときの対応ですか?」

「うん。もしも僕がおかしくなっているときに、明が帰って来ちゃったら……、化け襷と暴れ箒と一緒に、色々と助けてあげてくれないかな? たとえ僕をたおさないといけないことになっても」

「……もとより、そのつもりですよ。ま、私らが玉葉様にかなうとは思えませんがね」

「ふふっ、ならそのときは金枝を頼るといいよ。アイツなら僕と互角に渡り合えるし、なんだかんだで助けを求める子を無下にはしないヤツだから」

「……分かりました。ただ、本当にもしもの話ですからね」

「そうだね、もしもの話、にしないとね。さてと、じゃあ僕はあやかし一覧を更新したりするから」

「かしこまりました。では、私はこれで失礼します」

「はい、お疲れ様……ねえ文車、もしものときは本当にくれぐれもお願いね」

「……かしこまりました」
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