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ヒスイの口から、練習さえすれば私にも究極魔法が使える、という衝撃の事実を明かされた。
「本当に体育会系の世界なんだな、魔術ってのは……」
「ええ、日々の鍛錬に勝るものはないですよ。私だって、日々走り込みやら、魔術の基礎トレーニングやら、筋力のトレーニングやらをしていますから」
そうだったのか……。ヒスイはどちらかというと、か弱いタイプだと思っていたから意外だな。
「元帥? 今、何か聞き捨てならないことを考えませんでしたか?」
「いやいやいや! け、決して、そんな、こと、ないぞ! むしろ、自慢の側近だと考えている、ので、ごんす!」
……焦って、わけの分からない語尾になってしまった。なんだろう、ごんす、っていうのは……。どこかのトリオの、青色担当じゃないんだからさ……。
「そんな……、元帥にそうおっしゃっていただけるなんて、恐悦至極に存じます……」
とりあえず、本人が嬉しそうにしているから、ごんす、については放っておこう。
「それにしても、練習で誰でも究極魔法が使えるなら、わざわざ光の聖女を召喚しなくてもいいんじゃないだろうか……」
まあ、そのおかげでこっちの世界で友達が増えたのだから、不満はないのだけれど。思えば、元の世界では、ミカ以外の友達とは、あまり話もしなくなっていたもんなぁ。
そう、ミカと私はいつだって、放課後の教室で――
「元帥! 誰にでも使える、なんてとんでもございません!」
――長い回想をしようとしたところ、ヒスイによって遮られてしまった。
えーと、誰にでも使えるわけじゃない、の?
「でも、さっきは私にも使えるって……」
「それは、元帥が究極魔法を使用する条件を満たしているからです!」
「条件を満たしている?」
この世界に来てから、何かフラグを立てるようなことをしていた、かな?
いや、まあ、たしかに、ミカエラとはなんだかんだで友達になったけれど、ついさっきのことだし……。
「そうですよ! まず、究極魔法を使うには、膨大な魔力をうちに秘めている必要があります」
ああ、そうか。ミカエラは、回復魔法の名手だし、騎士団長を勤めているオウギョクを一撃でふっとばせるほどの攻撃魔法も使える。それに、私も、一応は戦場で無双できているし、今のところ闇の勢力NO.2の座を脅かされてもいない。
「次に、清純な乙女である必要があります」
たしかに。私は男子と付き合ったことがないし、ミカエラも元の世界ではずっと片思いだったという話だから、その条件も満たしているか。
「最後に、この世界に相思相愛の仲である人物がいる必要があります」
なるほど、それなら……、うん? 相思、相愛の、仲?
「元帥、いかがなさいましたか? 狼男が銀の弾丸を食らったような、顔をなさってますよ?」
「どんな顔なんだそれは……、それよりも、この世界に相思相愛の人間がいる、というのは、本当に必須の条件なのか?」
「え? あ、はい。そうですが、何かご不明な点がございますか?」
「いや、不明な点というか……」
ミカエラは攻略対象キャラを全員攻略しているようだから、条件を満たしているのかもしれないけれども……。
「……私に、そんな相手はいないぞ?」
「またまたー、何をおっしゃるんですか、元帥」
「いや、またまたー、じゃなくて、本当に……」
「元帥には光の聖女殿が、光の聖女殿には元帥が、いらっしゃるではないですか!」
ヒスイは勝ち誇ったような表情を浮かべて、そう言い放った。
あー、うん、そうだった。ヒスイとムラサキは、私とミカエラが交際するのを心から望んでいるんだった。だから、この答えが出るに決まっている。
それでも……。
「ヒスイ、残念ながら彼女とは友人にはなったが、それ以上の関係ではないよ」
「え? そう、なのですか?」
「ああ、そうだ」
私はまだ、ミカのことを完全に吹っ切れていない。それにミカエラだって、元の世界で好きだった子のことを忘れられていない様子だった。
たしかに、二人とも同じような想いを抱えているけれど、相思相愛というにはほど遠い。
「でも、おかしいですね……」
「おかしい?」
「はい。光の聖女殿は、この世界に召喚された時点で、究極魔法を使う全ての条件を満たしていた、とムラサキの方から聞いています」
「全ての条件……というと、その、相思相愛の相手がいる、という部分もか?」
「ええ、もちろんです」
えーと、ゲームのときでも、好感度パラメータを最初から最高の状態にする、なんて裏技はなかったはず……。なら、生年月日と出生時間が、ちょうどムラサキと相性のいいものだったとか? いや、ムラサキ本人の口から、してほしいのは握手まで、という発言があったから、それも考えられないか……。
「それで、ムラサキさんの占いによると、ですね……」
「……おい、今しれっと、本名が出たぞ」
「あ! しまった! まあ、でも最初からバレバレでしたでしょう?」
「たしかに、そうだけれども……」
「なら、その話は置いておきましょう」
「まあ、本題ではないからな……」
「はい。ということで、本題に戻りますと……」
ヒスイはそこで言葉を止めて、深く息を吸い込んだ。
「その、相思相愛の相手というのが、元帥、貴女だったんですよ」
……うん、まあ、この流れなら、そんな話になるとは思っていたけれども。
「それはもう、光の聖女殿がこの世界に来る前から、相思相愛だったとしか思えないようなほど相思相愛の仲だそうです」
「ふーん、そうなんだー」
「元帥! 何ですかその気のない返事は!」
「いや、すまない。当代随一の占星術師でも、占いを間違えることがあるのだなと思ったら、気が抜けてしまって」
「占いを、間違える?」
ヒスイは、心底不思議だ、と言いたげな表情で首を傾げた。それでも、何も不思議なことなんてない。
この世界に来た時点で相思相愛ということは、絶対にその相手が私のはずはない。
そのころの私は、今よりもずっとミカのことを引きずっていたのだから。
それに、ミカエラがミカだという可能性も、まずあり得ない。
だって、私が元の世界で最期に見たのは、嬉しそうに男子に抱きつくミカの姿だったのだから。
「本当に体育会系の世界なんだな、魔術ってのは……」
「ええ、日々の鍛錬に勝るものはないですよ。私だって、日々走り込みやら、魔術の基礎トレーニングやら、筋力のトレーニングやらをしていますから」
そうだったのか……。ヒスイはどちらかというと、か弱いタイプだと思っていたから意外だな。
「元帥? 今、何か聞き捨てならないことを考えませんでしたか?」
「いやいやいや! け、決して、そんな、こと、ないぞ! むしろ、自慢の側近だと考えている、ので、ごんす!」
……焦って、わけの分からない語尾になってしまった。なんだろう、ごんす、っていうのは……。どこかのトリオの、青色担当じゃないんだからさ……。
「そんな……、元帥にそうおっしゃっていただけるなんて、恐悦至極に存じます……」
とりあえず、本人が嬉しそうにしているから、ごんす、については放っておこう。
「それにしても、練習で誰でも究極魔法が使えるなら、わざわざ光の聖女を召喚しなくてもいいんじゃないだろうか……」
まあ、そのおかげでこっちの世界で友達が増えたのだから、不満はないのだけれど。思えば、元の世界では、ミカ以外の友達とは、あまり話もしなくなっていたもんなぁ。
そう、ミカと私はいつだって、放課後の教室で――
「元帥! 誰にでも使える、なんてとんでもございません!」
――長い回想をしようとしたところ、ヒスイによって遮られてしまった。
えーと、誰にでも使えるわけじゃない、の?
「でも、さっきは私にも使えるって……」
「それは、元帥が究極魔法を使用する条件を満たしているからです!」
「条件を満たしている?」
この世界に来てから、何かフラグを立てるようなことをしていた、かな?
いや、まあ、たしかに、ミカエラとはなんだかんだで友達になったけれど、ついさっきのことだし……。
「そうですよ! まず、究極魔法を使うには、膨大な魔力をうちに秘めている必要があります」
ああ、そうか。ミカエラは、回復魔法の名手だし、騎士団長を勤めているオウギョクを一撃でふっとばせるほどの攻撃魔法も使える。それに、私も、一応は戦場で無双できているし、今のところ闇の勢力NO.2の座を脅かされてもいない。
「次に、清純な乙女である必要があります」
たしかに。私は男子と付き合ったことがないし、ミカエラも元の世界ではずっと片思いだったという話だから、その条件も満たしているか。
「最後に、この世界に相思相愛の仲である人物がいる必要があります」
なるほど、それなら……、うん? 相思、相愛の、仲?
「元帥、いかがなさいましたか? 狼男が銀の弾丸を食らったような、顔をなさってますよ?」
「どんな顔なんだそれは……、それよりも、この世界に相思相愛の人間がいる、というのは、本当に必須の条件なのか?」
「え? あ、はい。そうですが、何かご不明な点がございますか?」
「いや、不明な点というか……」
ミカエラは攻略対象キャラを全員攻略しているようだから、条件を満たしているのかもしれないけれども……。
「……私に、そんな相手はいないぞ?」
「またまたー、何をおっしゃるんですか、元帥」
「いや、またまたー、じゃなくて、本当に……」
「元帥には光の聖女殿が、光の聖女殿には元帥が、いらっしゃるではないですか!」
ヒスイは勝ち誇ったような表情を浮かべて、そう言い放った。
あー、うん、そうだった。ヒスイとムラサキは、私とミカエラが交際するのを心から望んでいるんだった。だから、この答えが出るに決まっている。
それでも……。
「ヒスイ、残念ながら彼女とは友人にはなったが、それ以上の関係ではないよ」
「え? そう、なのですか?」
「ああ、そうだ」
私はまだ、ミカのことを完全に吹っ切れていない。それにミカエラだって、元の世界で好きだった子のことを忘れられていない様子だった。
たしかに、二人とも同じような想いを抱えているけれど、相思相愛というにはほど遠い。
「でも、おかしいですね……」
「おかしい?」
「はい。光の聖女殿は、この世界に召喚された時点で、究極魔法を使う全ての条件を満たしていた、とムラサキの方から聞いています」
「全ての条件……というと、その、相思相愛の相手がいる、という部分もか?」
「ええ、もちろんです」
えーと、ゲームのときでも、好感度パラメータを最初から最高の状態にする、なんて裏技はなかったはず……。なら、生年月日と出生時間が、ちょうどムラサキと相性のいいものだったとか? いや、ムラサキ本人の口から、してほしいのは握手まで、という発言があったから、それも考えられないか……。
「それで、ムラサキさんの占いによると、ですね……」
「……おい、今しれっと、本名が出たぞ」
「あ! しまった! まあ、でも最初からバレバレでしたでしょう?」
「たしかに、そうだけれども……」
「なら、その話は置いておきましょう」
「まあ、本題ではないからな……」
「はい。ということで、本題に戻りますと……」
ヒスイはそこで言葉を止めて、深く息を吸い込んだ。
「その、相思相愛の相手というのが、元帥、貴女だったんですよ」
……うん、まあ、この流れなら、そんな話になるとは思っていたけれども。
「それはもう、光の聖女殿がこの世界に来る前から、相思相愛だったとしか思えないようなほど相思相愛の仲だそうです」
「ふーん、そうなんだー」
「元帥! 何ですかその気のない返事は!」
「いや、すまない。当代随一の占星術師でも、占いを間違えることがあるのだなと思ったら、気が抜けてしまって」
「占いを、間違える?」
ヒスイは、心底不思議だ、と言いたげな表情で首を傾げた。それでも、何も不思議なことなんてない。
この世界に来た時点で相思相愛ということは、絶対にその相手が私のはずはない。
そのころの私は、今よりもずっとミカのことを引きずっていたのだから。
それに、ミカエラがミカだという可能性も、まずあり得ない。
だって、私が元の世界で最期に見たのは、嬉しそうに男子に抱きつくミカの姿だったのだから。
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