仔猫殿下と、はつ江ばあさん

鯨井イルカ

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第三章 仔猫殿下と、はつ江ばあさん

仔猫殿下と、はつ江ばあさん・その二十八

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 そんなこんなで、シーマ十四世殿下は、プルソンとゴルトを引き連れて、「超・魔導機☆」退治に向かうことになった。

「じゃあ、向かうとしますか」

 脱力気味ながらもシーマが声をかけると、プルソンは目をキラキラさせてうなずいた。

「了解なのだ! 弱点の探知は任せるのだ!」

 そんなプルソンとは対照的に、ゴルトは浮かない表情でうつむいた。

「別に僕なんか連れていかないで、キミらだけで片付ければいいじゃないか……」

 弱気な言葉に、プルソンが耳を後ろに反らし、尻尾をパシパシと揺らした。

「こら金色! バッタ仮面から名指しで頼られたのに、何を気弱なこと言っているのだ!」

「だって……、『超・魔導機☆』もあんなことになったし、鍵も手に入らなかったし……、僕の魔術なんてキミらに比べれば、大したことないんだろ? 足引っ張るだけになるって……」

 いじけた言葉を受け、シーマが片耳をパタパタと動かしながら、小さくため息を吐いた。

「えーとな、兄……、バッタ仮面がああ言うってことは、君の力より足りなくても多くても、上手く暴走が止められないように設定されてるはずなんだ。だから、協力してくれないか?」

 シーマが諭すように声をかけると、ムツキはさらに肩を落とした。

「でも……」

 やっぱり自信がない。そんな弱音をムツキが吐こうとした。

 まさにそのとき!


「それでは、ここで魔界各地からよせられた応援メッセージを紹介しますぞ!」

 
 モニターに、意気揚々と司会進行するリッチーの姿が映し出された。

「一応、緊急事態のはず、なんだよな……?」

 シーマはヒゲと尻尾をダラリと垂らしたが、画面の中のリッチーは気にせずに視界を進めた。

「まずは魔界商店街組合の方々!」

 張り切った声とともに、画面には博物館の街で商売をする面々が映し出された。

「あ、お母さんと、お父さんと、おじいちゃんも映ってるー!」

「みみー!」

「ほうほう、これを機にすかうとされたりするかもしれないねぇ」

 ばあちゃんと仔猫ズは、身内がテレビにでたときのような反応をした。そんな中、画面ではユキが、せーの、と小さく号令をかけた。


「シーマ殿下、頑張ってくださーい!」
「シーマ殿下、頑張ってくださーい!」
「シーマ殿下、頑張ってくださーい!」


 一同からの声援を受け、シーマは片耳をパタパタうごかした。

「……まあ、やるからには全力を尽くすかな」

 満更でもなさそうにシーマが呟くと、画面には再びリッチーが映し出された。

「次は! 鉱山の国と、熱砂の国から、この方々です!」

 高らかな声とともに画面が切り替わり、シトリー、オリバーたち宝石博物館の面々、そして笑顔のセクメトが映し出された。


「プルソン様、応援しております!」
「プルソン様、頑張ってー!」
「プルソン様なら、絶対に成し遂げられますよ」


 若干バラバラな声援を受け、プルソン様は目頭を軽く抑えて、耳と尻尾をピンと立てた。

「セクメト……、皆……、我が輩、頑張るのだ……!」

 プルソンが決意を新たにする中、画面にはまたしてもリッチーが映し出される。

「さあ、最後はこの方々……、カワウソ村のみなさんです!」

 画面には、村長のマテオを中心に、カワウソ村の全村人たちが映し出された。その途端、ゴルトは目を見開いて画面に近づいた。

「!? み、みんな!?」
 

「ムツキ! 頑張って!」
「ムツキなら、絶対大丈夫だよ!」
「負けるなー! ムツキー!!」
「フレーフレー! ムーツーキー!」

 
 ワチャワチャしたカワウソたちの応援を受け、ゴルト……、もといムツキはふたたびうつむいた。

「みんな……、僕、あんな迷惑かけちゃったのに……」

 小さな呟きに、はつ江がにっこりと微笑んだ。

「生きてりゃ失敗したり迷惑かけたりなんてこと、沢山あるあるだぁよ。悪いことしたと思ったんなら、まずはちゃんと謝ればいいだぁね」

「……でも、謝っても許してもらえなかったら?」

「わはははは! そしたら、そんときにまたどうするか考えればいいだぁね! あれなら、私も一緒にあやまりにいくだぁよ!」

「……ははは。相変わらずなこと言うんだから」

 ムツキも表情を緩めると、シーマが尻尾の先をピコピコと動かした。

「まあ、あの応援のしようじゃ、絶対に許さない、なんて思ってないだろ。ともかく、謝りにいくにしても、まずは一緒にあの福引のアレを止めにいかないとな」

 シーマの言葉に、プルソンもコクコクとうなずいた。

「そのとおり! 今は応援してくれた皆のためにも、魔界の危機を取り除くことが最優先なのだ! 一緒にいくぞ、金色!」

 シーマのプルソンの言葉に、ムツキは意を決した表情でコクリとうなずいた。

「……分かった。僕も一緒にいくよ」

 ムツキの言葉に、シーマとプルソンは穏やかに微笑んだ。

「ああ、よろしくな」

「一緒に頑張るのだ!」

「うん」

 突撃隊組三名の話がまとまると、お留守番組三名もニコリと微笑んだ。

「みんな、頑張るだぁよ!」

「殿下もプルソンさまも、ムッちゃんさんも頑張れー!」

「みんみみー!」

 応援の声に、突撃隊組三人はコクリとうなずいた。

 かくして、仔猫殿下たちは、はつ江ばあさんたちの声援を受け、「超・魔導機☆」のもとに向かったのだった。
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