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第二章 フカフカな日々
ビックリな一日・その四
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シーマ十四世殿下一行は、魔王の自信作「未確認飛行物体型魔導機ジョージさん一号」に乗り込み、鉱山の国への空路を進んでいた。
全体的に銀色な機内では、はつ江が窓に貼りつくようにして、めまぐるしく過ぎていく外の景色を眺めていた。
「ほうほう。このユーフォーはずいぶんと速いんだねぇ」
感心するはつ江の言葉に、隣で同じく外の景色を眺めていたシーマもコクコクとうなずいた。
「ああ、本当だな。ひょっとしたら、魔界の乗り物の中で一番速いんじゃないかな?」
そんな二人の言葉を受けて、中央に設置された運転パネルを操作していた魔王が、コクリとうなずく。
「うむ、現在ある乗り物の中では、これが最速だな。もっとも、初代魔王のころは、もっと早い飛行魔導機もたくさんあったそうだが」
「ほうほう、そうだったのかい。でも、なんでなくなっちまったんだい?」
はつ江が問い返すと、魔王はパネルを操作しながら、そうだなぁ、と呟いた。
「まあ、色々と諸説はあるんだが……、『そもそも、乗り物で空を飛ぶ必要って、あんまりなくね?』ってことに、みんなが気づいたっていうのが一番の理由だろうな」
「乗り物でお空を飛ぶ必要があんまりない?」
キョトンとした表情ではつ江が首を傾げると、シーマが尻尾の先をピコピコと動かした。
「乗り物を高速飛行させることに魔力を使うくらいなら、転移魔術を使った方が早いんだよ」
「あれまぁよ、そうなのかい!」
「ああ。大型の飛行魔導機を飛ばす魔力があれば、魔界中はおろかはつ江の世界にだって、乗客分くらいの人数を転移させることができるからな」
「はえー、そういうもんなんだねぇ」
はつ江は、シーマの説明にコクコクとうなずきながら納得した。すると、魔王がパネルを操作しながら、ふぅむ、と声を漏らした。
「まあ、魔力以外で空を飛ばすこともできるが、燃料のコストだとか環境目への配慮とかを考えると、やっぱり転移魔法使っちゃった方が手っとり早いし、飛行魔導機は下火になっているな。でも、個人的には空飛ぶ乗り物って、ロマンがあって好きなんだけどなぁ……」
魔王がどこか淋しげにそう言うと、シーマが片耳をパタパタと動かした。
「まあ、そういうロマンを追い求める人たちがそこそこいるし、レジャーとしても人気があるから……、飛行魔導機がまったくなくなることはないんじゃないか?」
「そうだぁね、好きな人が一人でも残ってれば、まったくなくなっちまうってことはねぇだぁよ!」
二人のフォローを受けて、魔王は柔らかに微笑んだ。
「そうだな。飛行魔導機の競技なんかも続いているし……、なくなってしまうことはないな」
そんなこんなで、一行が魔界の航空事情について話しているうちに、「未確認飛行物体型魔導機ジョージさん一号」は、紫色の草原の上空に差しかかった。
シーマは窓の外の景色を見ると、耳と尻尾をピンと立てた。
「おっ! はつ江、そろそろ鉱山の国に到着するぞ!」
「そうかい、そうかい! ということは、お山も見えるのかい?」
「ああ、あっちに見えるのがそうだ!」
シーマが指さした先には、どんぶりをひっくり返したような形をした、巨大な岩山があった。その裾野には、石造の大きな街が広がっている。
「あれまぁよ、ずいぶんと大きなお山なんだねぇ」
「そうだろう! あの山からは、地中の魔力が固まってできた宝石が、たくさん採れるんだ!」
「ほうほう、それはすごいねぇ!」
二人の話に、魔王が、ふむ、と声を漏らした。
「魔界に出回っている魔力宝石の大半は、ここで採掘されているな」
「へぇー、そうなのかい。でも、それだと採り尽くしちゃったりはしないのかい?」
「ああ、そのへんは問題ない。魔力宝石は、他の宝石と違って生成されるのに必要な年月が短いからな。それに、採掘する量も厳格に管理されているんだ」
魔王が説明すると、はつ江は納得した様子でコクコクとうなずいた。
「こっちの人たちは、ちゃんとしてるんだねぇ」
「まあ、資源はムダにしないにこしたことはないからな。さて、そろそろ着陸だから、二人は座ってシートベルトを着用してくれ」
魔王がそう言いながらパネルを操作すると、窓際の壁から二人掛の座席が現れた。シーマとはつ江はピョインと座り、シートベルトを締めた。
そんなこんなで、「未確認飛行物体型魔導機ジョージさん一号」が着陸態勢に入るなか、鉱山の麓に聳える石造りの城では――
「遅い! アイツはいつまで我が輩を待たせれば気が済むのだ!?」
――ライオンの頭をした男性が、苛立った表情で天鵞絨張りの玉座に座っていた。
そんなライオンの元に、兵士の鎧をつけたヒョウの獣人が、息を切らせながら駆け寄ってきた。
「ぷ、プルソン様! た、た、大変です!」
「そんなに慌てて、一体なにごとなのだ?」
「は、はい! 城のバルコニーに、なにやらよく分からない円盤状の物が不時着しまして……」
「なにやらよく分からない円盤、だと?」
「そのとおりであります! それで、その円盤から『ワレワレハマカイジンダ』という機械的な声と、『なに言ってるんだこのバカ兄貴!』という可愛らしい声と、『わはははは! ヤギさんはお茶目だぁね!』という元気ハツラツな声が聞こえてきました!」
ヒョウの報告に、プルソンはたてがみと尻尾をしおしおとさせながら脱力した。
「報告ご苦労……、ソイツは間違いなく魔王一行なのだ……」
「そうでしたか……、陛下は相変わらず、個性的な現れ方をなさいますね……」
玉座の間には、プルソンとヒョウの力ない声が響いた。
かくして、わりとネコ科大集合になりそうな予感がしながらも、シーマ十四世殿下一行は鉱山の国に到着したのだった。
全体的に銀色な機内では、はつ江が窓に貼りつくようにして、めまぐるしく過ぎていく外の景色を眺めていた。
「ほうほう。このユーフォーはずいぶんと速いんだねぇ」
感心するはつ江の言葉に、隣で同じく外の景色を眺めていたシーマもコクコクとうなずいた。
「ああ、本当だな。ひょっとしたら、魔界の乗り物の中で一番速いんじゃないかな?」
そんな二人の言葉を受けて、中央に設置された運転パネルを操作していた魔王が、コクリとうなずく。
「うむ、現在ある乗り物の中では、これが最速だな。もっとも、初代魔王のころは、もっと早い飛行魔導機もたくさんあったそうだが」
「ほうほう、そうだったのかい。でも、なんでなくなっちまったんだい?」
はつ江が問い返すと、魔王はパネルを操作しながら、そうだなぁ、と呟いた。
「まあ、色々と諸説はあるんだが……、『そもそも、乗り物で空を飛ぶ必要って、あんまりなくね?』ってことに、みんなが気づいたっていうのが一番の理由だろうな」
「乗り物でお空を飛ぶ必要があんまりない?」
キョトンとした表情ではつ江が首を傾げると、シーマが尻尾の先をピコピコと動かした。
「乗り物を高速飛行させることに魔力を使うくらいなら、転移魔術を使った方が早いんだよ」
「あれまぁよ、そうなのかい!」
「ああ。大型の飛行魔導機を飛ばす魔力があれば、魔界中はおろかはつ江の世界にだって、乗客分くらいの人数を転移させることができるからな」
「はえー、そういうもんなんだねぇ」
はつ江は、シーマの説明にコクコクとうなずきながら納得した。すると、魔王がパネルを操作しながら、ふぅむ、と声を漏らした。
「まあ、魔力以外で空を飛ばすこともできるが、燃料のコストだとか環境目への配慮とかを考えると、やっぱり転移魔法使っちゃった方が手っとり早いし、飛行魔導機は下火になっているな。でも、個人的には空飛ぶ乗り物って、ロマンがあって好きなんだけどなぁ……」
魔王がどこか淋しげにそう言うと、シーマが片耳をパタパタと動かした。
「まあ、そういうロマンを追い求める人たちがそこそこいるし、レジャーとしても人気があるから……、飛行魔導機がまったくなくなることはないんじゃないか?」
「そうだぁね、好きな人が一人でも残ってれば、まったくなくなっちまうってことはねぇだぁよ!」
二人のフォローを受けて、魔王は柔らかに微笑んだ。
「そうだな。飛行魔導機の競技なんかも続いているし……、なくなってしまうことはないな」
そんなこんなで、一行が魔界の航空事情について話しているうちに、「未確認飛行物体型魔導機ジョージさん一号」は、紫色の草原の上空に差しかかった。
シーマは窓の外の景色を見ると、耳と尻尾をピンと立てた。
「おっ! はつ江、そろそろ鉱山の国に到着するぞ!」
「そうかい、そうかい! ということは、お山も見えるのかい?」
「ああ、あっちに見えるのがそうだ!」
シーマが指さした先には、どんぶりをひっくり返したような形をした、巨大な岩山があった。その裾野には、石造の大きな街が広がっている。
「あれまぁよ、ずいぶんと大きなお山なんだねぇ」
「そうだろう! あの山からは、地中の魔力が固まってできた宝石が、たくさん採れるんだ!」
「ほうほう、それはすごいねぇ!」
二人の話に、魔王が、ふむ、と声を漏らした。
「魔界に出回っている魔力宝石の大半は、ここで採掘されているな」
「へぇー、そうなのかい。でも、それだと採り尽くしちゃったりはしないのかい?」
「ああ、そのへんは問題ない。魔力宝石は、他の宝石と違って生成されるのに必要な年月が短いからな。それに、採掘する量も厳格に管理されているんだ」
魔王が説明すると、はつ江は納得した様子でコクコクとうなずいた。
「こっちの人たちは、ちゃんとしてるんだねぇ」
「まあ、資源はムダにしないにこしたことはないからな。さて、そろそろ着陸だから、二人は座ってシートベルトを着用してくれ」
魔王がそう言いながらパネルを操作すると、窓際の壁から二人掛の座席が現れた。シーマとはつ江はピョインと座り、シートベルトを締めた。
そんなこんなで、「未確認飛行物体型魔導機ジョージさん一号」が着陸態勢に入るなか、鉱山の麓に聳える石造りの城では――
「遅い! アイツはいつまで我が輩を待たせれば気が済むのだ!?」
――ライオンの頭をした男性が、苛立った表情で天鵞絨張りの玉座に座っていた。
そんなライオンの元に、兵士の鎧をつけたヒョウの獣人が、息を切らせながら駆け寄ってきた。
「ぷ、プルソン様! た、た、大変です!」
「そんなに慌てて、一体なにごとなのだ?」
「は、はい! 城のバルコニーに、なにやらよく分からない円盤状の物が不時着しまして……」
「なにやらよく分からない円盤、だと?」
「そのとおりであります! それで、その円盤から『ワレワレハマカイジンダ』という機械的な声と、『なに言ってるんだこのバカ兄貴!』という可愛らしい声と、『わはははは! ヤギさんはお茶目だぁね!』という元気ハツラツな声が聞こえてきました!」
ヒョウの報告に、プルソンはたてがみと尻尾をしおしおとさせながら脱力した。
「報告ご苦労……、ソイツは間違いなく魔王一行なのだ……」
「そうでしたか……、陛下は相変わらず、個性的な現れ方をなさいますね……」
玉座の間には、プルソンとヒョウの力ない声が響いた。
かくして、わりとネコ科大集合になりそうな予感がしながらも、シーマ十四世殿下一行は鉱山の国に到着したのだった。
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