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第一章 シマシマな日常
ギクッ
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シーマ十四世殿下一行は森の中で無事にウェネトを発見し、ついでにローブの二人組まで捕獲した。
シーマは光の檻に捕らえられた二人組に目を向けながら、耳を後ろに反らせて腕を組んだ。
「君たち、『超・魔導機☆』を改造したっていうのは、本当か?」
そして、苛立った声で二人組に問いかけた。声をかけられた二人組は、ギクッとした表情を浮かべた。それから、二人はお互いにチラチラと視線を送り合っていたが、シーマに見つめられ続け、諦めたように深いため息を吐いた。
「そうだね。猫ちゃんの言うとおり、僕たちが所属してる団体の幹部たちが、リーダーの指示で改造してたよ」
黒ローブが質問に答えると、シーマは尻尾の先をクニャリと曲げた。
「それなら、効果を解除する方法も、当然確立してるんだよな?」
「えーと、それは……」
シーマが問い詰めると、黒ローブはタジタジとした様子で口ごもった。それを見かねた灰色ローブは、深いため息を吐いてシーマに顔を向けた。
「すまないが、まだそんな段階ではないんだ。今も魔界の住人たちに入力端末を貸して、どんな願いがどこまで叶うか動作確認をしている最中だ」
「……そうか」
灰色ローブが正直に状況を説明すると、シーマは苦虫をかみつぶしたような表情でポツリと呟いた。すると、黒ローブが慌てて、灰色ローブに顔を向けた。
「ちょっと!? なんで、そんなことまでバラしちゃうのさ!? 君はだれよりも、仲間思いだったのに!」
黒ローブが問い詰めると、灰色ローブは再び深くため息を吐いた。
「……仲間たちのことは大切だと思ってるさ。だが、上のヤツらのやり方も、気に入らない部分があったからな。これを機に、魔王側に寝返って重要なポストに就くのも悪くないかなと思っただけだ」
「あ、そっか! 僕たちの目的って、ちゃんと実力に見合った役割をもらうことだもんね! リーダーたちのところにいても、結局、雑用とか嫌がらせの実行を押しつけられるだけだもんなー」
灰色ローブと黒ローブの言葉を聞くと、シーマは小さくため息を吐いた。
「協力してくれるのはありがたいけど、魔界の重要なポストに就きたいなら、それなりの実力は必要だぞ?」
シーマが呆れながら声をかけると、灰色ローブは口の端をニッと吊り上げた。
「ああ、分かっているさ。それなり以上の実力はあるし、元の世界での経験もある。だから、魔王の人見知りさえなければ、側近として充分にやっていけるはずだ」
「……そこまで言うなら、事情を聞くためにも城に連れて行くから、兄貴に直接かけあってみるといい」
自信に満ちた表情の灰色ローブに、シーマは冷ややかな視線を送った。そんなギスギスしたやり取りが続くなか、はつ江たちは……
「あれまぁよ! でっかいムカデさんだねぇ! ゑねとちゃんも、マロちゃんも噛まれなかったかい?」
「大丈夫よ! マロが助けてくれてから! マロは、いつもはパッとしない性格だけど、剣術の腕は熱砂の国でも随一なんだから! あとね、笛の腕も熱砂の国いち……ううん、魔界一なんだからね!」
「ほうほう、マロちゃんはすごいんだねぇ」
「そうよ、おばあちゃん! マロはすごいのよ! どれだけすごいかっていうと、えーと……とにかく、すごくすごいのよ!」
「あれまぁよ! それは、すごいねぇ!」
「う、ウェネトさんもはつ江さんも、買いかぶり過ぎですよ! 剣の腕だって、笛の腕だって、まだまだ精進が必要です」
……なんとも、なごやかなやり取りをしていた。
はつ江たちのやり取りを見た、シーマとローブの二人組は、ため息を吐きながら脱力した。
「……あと、俺、ウサギ派だから、気に入らない幹部たちよりも、あの子の役に立ちたいと、ちょっと思ったのもある」
灰色ローブは脱力しながらウェネトを指さし、正直に魔王側に寝返る理由を口にした。すると、黒ローブも頬を掻きながら、あー、と声を漏らして、コクコクと頷いた。
「たしかに、幹部のヤツらより、猫ちゃんとかウサちゃんの役に立ちたいってのはあるよね」
二人の言葉を受けて、シーマはヒゲと尻尾をダラリと垂らした。
「だったら、最初から反乱分子なんかに協力しないで、普通に魔界の住人として暮らしてほしかったんだけど……まあ、ともかく一旦城に戻ろうか」
シーマは独り言のようにそう言うと、はつ江たちに顔を向けた。
「おーい。はつ江も、マロさんも、ウェネトさんも、一旦城に戻るからこっちに来てくれ」
「はいよ! シマちゃん……ところで、シマちゃんや」
はつ江はシーマに元気よく返事をすると、少し間を置いて、キョトンとした表情を浮かべた。
「うん? どうしたんだ、はつ江」
シーマが問いかけると、はつ江は縦に真っ二つになったトビズイッカンムカデを指さした。
「あのムカデさんは、そのままにしておいていいのかい?」
「ああ、そうか……トビズイッカンムカデは狩猟魔獣の一種だから、狩ること自体は問題じゃないけど……」
シーマはそう言うと、ちらっとマロに目配せをした。すると、マロは苦笑を浮かべながら、たもとを探った。
「今回は、レディたちの護衛も兼ねていましたから、ちゃんと狩りの免許と、道中の地域で狩りをすることについての許可証も……はい、こちらに」
マロはそう言いながら、たもとから狩猟に関する免許と、丁寧に折りたたんだ許可証を取り出し、シーマに手渡した。シーマはコクリと頷いてから書類を受け取ると、ふんふんと鼻を鳴らしながら内容に目を通した。そして、内容に問題がないことを確認すると、書類をマロに差し出した。
「うん。ちゃんと、許可はでているな。ありがとう、マロさん」
「いえいえ」
マロはシーマから書類を受け取り、再びたもとにしまった。それから、マロは口元に手を当てて、尻尾の先をクニャリと曲げながら、うーん、と声を漏らした。
「先ほどのはつ江さんの質問ですが……獲物は放置せずに、仕留めた者が業者に売るなり、自分で何かの素材として使うなりしないといけないのです」
マロが説明すると、ウェネトが深いため息を吐いた。
「でも、トビズイッカンムカデって、使い道がないのよね。一応、薬の材料にはなるみたいだけど、加工がものすごく難しいから、場合によっては薬屋さんにもっていっても引き取ってもらえないこともあるし」
「ほうほう、そうなのかい」
マロとウェネトの説明に、はつ江は感心した表情で、コクコクと頷いた。
「ムカデさんは、こっちでもお薬の材料になるんだねぇ」
はつ江がシミジミと声を漏らすと、シーマもコクリと頷いた。
「ああ、そうだな。ウェネトさんが言ったとおり加工が難しいからか、加工方法を知っている人も段々少なくなってきてるけど、たしか、魔法をはじく成分を取り出して、状態異常を治す薬が作れ……」
シーマはそこで言葉を止めると、ハッとした表情を浮かべた。
「……そうだ、トビズイッカンムカデから薬が作れれば、バステトさんの声が元に戻るかもしれない」
シーマの言葉に、はつ江、マロ、ウェネトは目を見開いた。
「あれまぁよ! シマちゃんや、本当かい!?」
「レディの声が、戻るのですか!?」
「殿下、本当なの!?」
三人が目を輝かせながら声を合わせて尋ねると、シーマはコクリと頷いた。
「まだ、断言はできないけど……可能性はゼロじゃないはず」
シーマが答えると、光の檻の中で黒ローブと灰色ローブが首を傾げた。
「でも、加工がすごく難しいんでしょ?」
「明日の晩までに薬が作れるのか?」
二人が問いかけると、シーマは口元に手を当てて、片耳をパタパタと動かした。
「多分、兄貴なら、できる……はず」
シーマが呟くように答えると、はつ江はニッコリと笑った。
「そんじゃあ、早くヤギさんのところに、ムカデさんを持って帰らないとね」
はつ江はそう言うと、肩からさげていたポシェットを開こうとした。
「あ、はつ江、待ってくれ」
しかし、シーマに声をかけられ、はつ江はポシェットを開く手を止めた。
「ほいほい、どうしたんだね?」
「流石に、この大きさのモノをポシェットに入れると、重たくなっちゃうから……」
シーマはそう言うと、トビズイッカンムカデに手をかざし、ムニャムニャと呪文を唱えた。すると、トビズイッカンムカデの上に、紫色の魔法陣が浮かび上がった。
「……えい!」
シーマがかけ声を上げると、魔法陣は紫色の光を放ち、トビズイッカンムカデを吸い込んだ。トビズイッカンムカデを吸い込んだ魔法陣は、点滅しながら徐々に消えていった。魔法陣が完全に消えたのを確認すると、シーマは満足げに微笑んだ。
「よし。これで、兄貴の元に、トビズイッカンムカデが転送されたはずだ」
「ほうほう、シマちゃんの魔法はすごいねぇ。荷物を重くしないでくれて、ありがとうねぇ」
得意げにしているシーマに向かって、はつ江ニコリと微笑みながら声をかけた。すると、シーマは耳と尻尾をピンと立てて、そっぽを向いた。
「べ、別にこれくらい大したことないんだからな! それよりも、早く城に戻ろう!」
シーマはニコニコと微笑むはつ江に見守られながら、魔王城へ戻るため、魔法の扉を呼び出すための呪文を唱え始めた。
一方、そのころ魔王城では……
「えーと、魔法の解除法が載っている文献は……ん? 何か今、音がしたような……うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
書庫で調べ物をしていた魔王の背後に、立て真っ二つになったトビズイッカンムカデが転送されていた。
こうして、魔王城に魔界を統べる者の悲鳴が響き渡りながら、事態が少し好転したのだった。
シーマは光の檻に捕らえられた二人組に目を向けながら、耳を後ろに反らせて腕を組んだ。
「君たち、『超・魔導機☆』を改造したっていうのは、本当か?」
そして、苛立った声で二人組に問いかけた。声をかけられた二人組は、ギクッとした表情を浮かべた。それから、二人はお互いにチラチラと視線を送り合っていたが、シーマに見つめられ続け、諦めたように深いため息を吐いた。
「そうだね。猫ちゃんの言うとおり、僕たちが所属してる団体の幹部たちが、リーダーの指示で改造してたよ」
黒ローブが質問に答えると、シーマは尻尾の先をクニャリと曲げた。
「それなら、効果を解除する方法も、当然確立してるんだよな?」
「えーと、それは……」
シーマが問い詰めると、黒ローブはタジタジとした様子で口ごもった。それを見かねた灰色ローブは、深いため息を吐いてシーマに顔を向けた。
「すまないが、まだそんな段階ではないんだ。今も魔界の住人たちに入力端末を貸して、どんな願いがどこまで叶うか動作確認をしている最中だ」
「……そうか」
灰色ローブが正直に状況を説明すると、シーマは苦虫をかみつぶしたような表情でポツリと呟いた。すると、黒ローブが慌てて、灰色ローブに顔を向けた。
「ちょっと!? なんで、そんなことまでバラしちゃうのさ!? 君はだれよりも、仲間思いだったのに!」
黒ローブが問い詰めると、灰色ローブは再び深くため息を吐いた。
「……仲間たちのことは大切だと思ってるさ。だが、上のヤツらのやり方も、気に入らない部分があったからな。これを機に、魔王側に寝返って重要なポストに就くのも悪くないかなと思っただけだ」
「あ、そっか! 僕たちの目的って、ちゃんと実力に見合った役割をもらうことだもんね! リーダーたちのところにいても、結局、雑用とか嫌がらせの実行を押しつけられるだけだもんなー」
灰色ローブと黒ローブの言葉を聞くと、シーマは小さくため息を吐いた。
「協力してくれるのはありがたいけど、魔界の重要なポストに就きたいなら、それなりの実力は必要だぞ?」
シーマが呆れながら声をかけると、灰色ローブは口の端をニッと吊り上げた。
「ああ、分かっているさ。それなり以上の実力はあるし、元の世界での経験もある。だから、魔王の人見知りさえなければ、側近として充分にやっていけるはずだ」
「……そこまで言うなら、事情を聞くためにも城に連れて行くから、兄貴に直接かけあってみるといい」
自信に満ちた表情の灰色ローブに、シーマは冷ややかな視線を送った。そんなギスギスしたやり取りが続くなか、はつ江たちは……
「あれまぁよ! でっかいムカデさんだねぇ! ゑねとちゃんも、マロちゃんも噛まれなかったかい?」
「大丈夫よ! マロが助けてくれてから! マロは、いつもはパッとしない性格だけど、剣術の腕は熱砂の国でも随一なんだから! あとね、笛の腕も熱砂の国いち……ううん、魔界一なんだからね!」
「ほうほう、マロちゃんはすごいんだねぇ」
「そうよ、おばあちゃん! マロはすごいのよ! どれだけすごいかっていうと、えーと……とにかく、すごくすごいのよ!」
「あれまぁよ! それは、すごいねぇ!」
「う、ウェネトさんもはつ江さんも、買いかぶり過ぎですよ! 剣の腕だって、笛の腕だって、まだまだ精進が必要です」
……なんとも、なごやかなやり取りをしていた。
はつ江たちのやり取りを見た、シーマとローブの二人組は、ため息を吐きながら脱力した。
「……あと、俺、ウサギ派だから、気に入らない幹部たちよりも、あの子の役に立ちたいと、ちょっと思ったのもある」
灰色ローブは脱力しながらウェネトを指さし、正直に魔王側に寝返る理由を口にした。すると、黒ローブも頬を掻きながら、あー、と声を漏らして、コクコクと頷いた。
「たしかに、幹部のヤツらより、猫ちゃんとかウサちゃんの役に立ちたいってのはあるよね」
二人の言葉を受けて、シーマはヒゲと尻尾をダラリと垂らした。
「だったら、最初から反乱分子なんかに協力しないで、普通に魔界の住人として暮らしてほしかったんだけど……まあ、ともかく一旦城に戻ろうか」
シーマは独り言のようにそう言うと、はつ江たちに顔を向けた。
「おーい。はつ江も、マロさんも、ウェネトさんも、一旦城に戻るからこっちに来てくれ」
「はいよ! シマちゃん……ところで、シマちゃんや」
はつ江はシーマに元気よく返事をすると、少し間を置いて、キョトンとした表情を浮かべた。
「うん? どうしたんだ、はつ江」
シーマが問いかけると、はつ江は縦に真っ二つになったトビズイッカンムカデを指さした。
「あのムカデさんは、そのままにしておいていいのかい?」
「ああ、そうか……トビズイッカンムカデは狩猟魔獣の一種だから、狩ること自体は問題じゃないけど……」
シーマはそう言うと、ちらっとマロに目配せをした。すると、マロは苦笑を浮かべながら、たもとを探った。
「今回は、レディたちの護衛も兼ねていましたから、ちゃんと狩りの免許と、道中の地域で狩りをすることについての許可証も……はい、こちらに」
マロはそう言いながら、たもとから狩猟に関する免許と、丁寧に折りたたんだ許可証を取り出し、シーマに手渡した。シーマはコクリと頷いてから書類を受け取ると、ふんふんと鼻を鳴らしながら内容に目を通した。そして、内容に問題がないことを確認すると、書類をマロに差し出した。
「うん。ちゃんと、許可はでているな。ありがとう、マロさん」
「いえいえ」
マロはシーマから書類を受け取り、再びたもとにしまった。それから、マロは口元に手を当てて、尻尾の先をクニャリと曲げながら、うーん、と声を漏らした。
「先ほどのはつ江さんの質問ですが……獲物は放置せずに、仕留めた者が業者に売るなり、自分で何かの素材として使うなりしないといけないのです」
マロが説明すると、ウェネトが深いため息を吐いた。
「でも、トビズイッカンムカデって、使い道がないのよね。一応、薬の材料にはなるみたいだけど、加工がものすごく難しいから、場合によっては薬屋さんにもっていっても引き取ってもらえないこともあるし」
「ほうほう、そうなのかい」
マロとウェネトの説明に、はつ江は感心した表情で、コクコクと頷いた。
「ムカデさんは、こっちでもお薬の材料になるんだねぇ」
はつ江がシミジミと声を漏らすと、シーマもコクリと頷いた。
「ああ、そうだな。ウェネトさんが言ったとおり加工が難しいからか、加工方法を知っている人も段々少なくなってきてるけど、たしか、魔法をはじく成分を取り出して、状態異常を治す薬が作れ……」
シーマはそこで言葉を止めると、ハッとした表情を浮かべた。
「……そうだ、トビズイッカンムカデから薬が作れれば、バステトさんの声が元に戻るかもしれない」
シーマの言葉に、はつ江、マロ、ウェネトは目を見開いた。
「あれまぁよ! シマちゃんや、本当かい!?」
「レディの声が、戻るのですか!?」
「殿下、本当なの!?」
三人が目を輝かせながら声を合わせて尋ねると、シーマはコクリと頷いた。
「まだ、断言はできないけど……可能性はゼロじゃないはず」
シーマが答えると、光の檻の中で黒ローブと灰色ローブが首を傾げた。
「でも、加工がすごく難しいんでしょ?」
「明日の晩までに薬が作れるのか?」
二人が問いかけると、シーマは口元に手を当てて、片耳をパタパタと動かした。
「多分、兄貴なら、できる……はず」
シーマが呟くように答えると、はつ江はニッコリと笑った。
「そんじゃあ、早くヤギさんのところに、ムカデさんを持って帰らないとね」
はつ江はそう言うと、肩からさげていたポシェットを開こうとした。
「あ、はつ江、待ってくれ」
しかし、シーマに声をかけられ、はつ江はポシェットを開く手を止めた。
「ほいほい、どうしたんだね?」
「流石に、この大きさのモノをポシェットに入れると、重たくなっちゃうから……」
シーマはそう言うと、トビズイッカンムカデに手をかざし、ムニャムニャと呪文を唱えた。すると、トビズイッカンムカデの上に、紫色の魔法陣が浮かび上がった。
「……えい!」
シーマがかけ声を上げると、魔法陣は紫色の光を放ち、トビズイッカンムカデを吸い込んだ。トビズイッカンムカデを吸い込んだ魔法陣は、点滅しながら徐々に消えていった。魔法陣が完全に消えたのを確認すると、シーマは満足げに微笑んだ。
「よし。これで、兄貴の元に、トビズイッカンムカデが転送されたはずだ」
「ほうほう、シマちゃんの魔法はすごいねぇ。荷物を重くしないでくれて、ありがとうねぇ」
得意げにしているシーマに向かって、はつ江ニコリと微笑みながら声をかけた。すると、シーマは耳と尻尾をピンと立てて、そっぽを向いた。
「べ、別にこれくらい大したことないんだからな! それよりも、早く城に戻ろう!」
シーマはニコニコと微笑むはつ江に見守られながら、魔王城へ戻るため、魔法の扉を呼び出すための呪文を唱え始めた。
一方、そのころ魔王城では……
「えーと、魔法の解除法が載っている文献は……ん? 何か今、音がしたような……うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
書庫で調べ物をしていた魔王の背後に、立て真っ二つになったトビズイッカンムカデが転送されていた。
こうして、魔王城に魔界を統べる者の悲鳴が響き渡りながら、事態が少し好転したのだった。
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