上 下
24 / 45
第一章

列車は行く

しおりを挟む
 夕食をご馳走になってから、すぐにカリダスさんの家を出て夜行列車に乗り、いったん王都へと戻った。
 あのまま居候してもよかったけど、借りてる部屋を引き払う必要があったから。

 部屋に戻り、荷物をトランクに詰め、大家さんのところで引き払いの手続きを済ませた。
 ダンジョン探索者向けの物件は、入居や引き払いの手続きが楽で助かった。

 それから、その足で駅に向かい、海辺の街行きの列車に乗り込んだ。
 まだ正午前だから、日没ころには目的地に着くだろう。

「まもなく、発車いたします」

 車内アナウンスとともに、列車が動きだす。
 車窓に顔を向けると、見慣れた王都の景色がゆっくりと過ぎ去っていくのが見える。

 ……王都に来たばかりのころは、すごくワクワクしてたな。
 絶対、ベルムさんの最強パーティーに入るんだって。


 それなのに、こんな結果になるなんて――

「まあ、なんか失敗しちまったのかもしれないけどさ、そんなの若いうちはよくあることだって」

「そうそう。みんな、そうやって年取っていくんだからさ」
 
 ――こんな気休めの言葉に、すがることになるなんて。


 ……悲観的になるのは、これくらいにしておこう。
 
 魔術の家庭教師を頼まれるってことは、実力を見抜かれて認められたってことなんだから!
 ははは!
 ようやく、僕の実力を認めてくれる場所にたどり着けたんだから、よかったじゃないか!
 他人と連携がとれないんだし、ダンジョン探索者なんて、最初から向いてなかったんだ!
 うん! 今までなんかより、ずっと気が楽だ!

 車窓に顔を向けると、王都がどんどんと遠ざかっていく様が見えた。
しおりを挟む

処理中です...