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4件目 横取り女と浮気性彼氏
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幸いにも前回のアザミさんの一件で、うちに警察が来るということはなかった。それに、前回のアザミさんから、メッセージが追加でくるなんてこともなかった。
それは良かったんだけど、これからどうしようかな……。
あれ以降、新しい体験談も来ないし、過去に掲載したのを再発信しても「いいね」が全然つかないし、もうこのSNSもやめどきなのかな……。これ以上、変な体験談とか、グロ画像を送りつけられてもやだし。
でも、フォロワーさんも五千人を超えたし、一万「いいね」をもらったこともあるんだし、もうちょっとだけ続けても……あ、新しいメッセージだ。
えーと……。
「はじめまして、アザミといいます」
……また、別のアザミさんか。
「この間、彼氏との間に、スカッとしたことが起きたんです」
「彼氏ってば、私との約束があったのに、『バイト先の後輩にどうしても相談したいことがあるって言われたから』って言って、一方的にキャンセルしたんですよ!」
「しかも、その後輩っていうのが女で、一回バイト先を見にいってみたら、馴れ馴れしく彼の腕をつついたりしてたんです!」
「彼も彼で、注意しないでデレデレしながら笑ってて、本当に酷いですよね!」
聞いてもいないのに、画面がメッセージで埋まっていく。
「だから、彼が寝てる間に、道ばたに落ちてたネズミの死骸を体になすりつけてやることにしたんです!」
「踏み潰されて口とお尻から内臓みたいなのが出てた死骸だったから、効果はバツグンかなって思って、ウキウキしながら彼の体中、もちろん下着の中まで丁寧になすりつけてやりましたよ!」
「それから、しばらく彼氏に会いにいかなかったんですけど、一週間後に彼からメッセージがきました」
「寒気が止まらないとか、熱が下がらないとか、体中が痛いとか、そんなメッセージが三日くらい毎朝送られてきました」
「でも、四日目からはメッセージが来なくなったから、放っておきました」
「そしたら、一ヶ月くらいあとに、共通の友達から連絡があったんです。彼氏と全然連絡がつかないって」
「放っておいても良かったんですが、友達がうるさくて、仕方なく彼氏の部屋を見にいったんです。私、合い鍵は持ったままだったんで」
「それで、彼の部屋の前に行ったら、変な臭いがして、うわんわん音がして」
「ドアを開けたら、ハエがものすごくて。それでも、なんとか寝室に向かいました」
「そしたら、ベッドのところに、黒いマネキンみたいな何かが、二体横たわってたんですよ!」
「ぐちゃぐちゃになってましたけど、直感的にそれが彼氏とあの後輩だって分かりました」
「人の彼氏を盗ったり、こんなに可愛い彼女を裏切ったりしたんだから、当然の報いですよね!」
「そうそう、これがそのときの写真です!」
メッセージとともに、ハエとウジにたかられた腐乱死体の画像が、スマホの画面いっぱいに表示される。
「あの後輩、生きてるうちは可愛いって言われてたみたいだし、彼氏もカッコいい方だったんですけど、こうなると見る影もないですよね!」
「体験談を載せるときは、ぜひこの写真も載せてくださいね!」
「きっと、その方が、『#ザマァミロ』を読んでくれてる人たちも、喜んでくれると思いますから!」
「それじゃあ、私はこれで! 体験談が載るの、楽しみしてますね!」
そのメッセージを最後に、スマホの画面から動きがなくなった。
腐乱死体の画像を載せた方が、「#ザマァミロ」の読者が喜ぶなんて、勝手なこと言って……。そんなわけ、あるはずないのに。
でも、体験談をくれた人はみんな、最初は読者だったはず……。
前々前回のアザミさんも、前々回のアザミさんも、前回のアザミさんも、今回のアザミさんだって。
そんな読者だった人たちが、ぐちゃぐちゃになった手や、陥没した頭や、合い挽き肉になったいじめっ子たちや、腐乱死体になった恋人と浮気相手の話を嬉しそうに送ってきている。丁寧に、画像までつけて。
そんな人たちが、五千人も私のSNSを見ている……。
でも、多分、全員が全員、そんなグロい話題をほしがってるわけじゃないはず。
うん、きっとそうだ。
そうに決まってる!
でも、なんでなんだろう?
フォロワー数を見てると、トリハダが止まらないのは。
それは良かったんだけど、これからどうしようかな……。
あれ以降、新しい体験談も来ないし、過去に掲載したのを再発信しても「いいね」が全然つかないし、もうこのSNSもやめどきなのかな……。これ以上、変な体験談とか、グロ画像を送りつけられてもやだし。
でも、フォロワーさんも五千人を超えたし、一万「いいね」をもらったこともあるんだし、もうちょっとだけ続けても……あ、新しいメッセージだ。
えーと……。
「はじめまして、アザミといいます」
……また、別のアザミさんか。
「この間、彼氏との間に、スカッとしたことが起きたんです」
「彼氏ってば、私との約束があったのに、『バイト先の後輩にどうしても相談したいことがあるって言われたから』って言って、一方的にキャンセルしたんですよ!」
「しかも、その後輩っていうのが女で、一回バイト先を見にいってみたら、馴れ馴れしく彼の腕をつついたりしてたんです!」
「彼も彼で、注意しないでデレデレしながら笑ってて、本当に酷いですよね!」
聞いてもいないのに、画面がメッセージで埋まっていく。
「だから、彼が寝てる間に、道ばたに落ちてたネズミの死骸を体になすりつけてやることにしたんです!」
「踏み潰されて口とお尻から内臓みたいなのが出てた死骸だったから、効果はバツグンかなって思って、ウキウキしながら彼の体中、もちろん下着の中まで丁寧になすりつけてやりましたよ!」
「それから、しばらく彼氏に会いにいかなかったんですけど、一週間後に彼からメッセージがきました」
「寒気が止まらないとか、熱が下がらないとか、体中が痛いとか、そんなメッセージが三日くらい毎朝送られてきました」
「でも、四日目からはメッセージが来なくなったから、放っておきました」
「そしたら、一ヶ月くらいあとに、共通の友達から連絡があったんです。彼氏と全然連絡がつかないって」
「放っておいても良かったんですが、友達がうるさくて、仕方なく彼氏の部屋を見にいったんです。私、合い鍵は持ったままだったんで」
「それで、彼の部屋の前に行ったら、変な臭いがして、うわんわん音がして」
「ドアを開けたら、ハエがものすごくて。それでも、なんとか寝室に向かいました」
「そしたら、ベッドのところに、黒いマネキンみたいな何かが、二体横たわってたんですよ!」
「ぐちゃぐちゃになってましたけど、直感的にそれが彼氏とあの後輩だって分かりました」
「人の彼氏を盗ったり、こんなに可愛い彼女を裏切ったりしたんだから、当然の報いですよね!」
「そうそう、これがそのときの写真です!」
メッセージとともに、ハエとウジにたかられた腐乱死体の画像が、スマホの画面いっぱいに表示される。
「あの後輩、生きてるうちは可愛いって言われてたみたいだし、彼氏もカッコいい方だったんですけど、こうなると見る影もないですよね!」
「体験談を載せるときは、ぜひこの写真も載せてくださいね!」
「きっと、その方が、『#ザマァミロ』を読んでくれてる人たちも、喜んでくれると思いますから!」
「それじゃあ、私はこれで! 体験談が載るの、楽しみしてますね!」
そのメッセージを最後に、スマホの画面から動きがなくなった。
腐乱死体の画像を載せた方が、「#ザマァミロ」の読者が喜ぶなんて、勝手なこと言って……。そんなわけ、あるはずないのに。
でも、体験談をくれた人はみんな、最初は読者だったはず……。
前々前回のアザミさんも、前々回のアザミさんも、前回のアザミさんも、今回のアザミさんだって。
そんな読者だった人たちが、ぐちゃぐちゃになった手や、陥没した頭や、合い挽き肉になったいじめっ子たちや、腐乱死体になった恋人と浮気相手の話を嬉しそうに送ってきている。丁寧に、画像までつけて。
そんな人たちが、五千人も私のSNSを見ている……。
でも、多分、全員が全員、そんなグロい話題をほしがってるわけじゃないはず。
うん、きっとそうだ。
そうに決まってる!
でも、なんでなんだろう?
フォロワー数を見てると、トリハダが止まらないのは。
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