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ようこそ残飯食堂へ
五 ご馳走様
しおりを挟む「ちくしょう、嘘つきやがったら後で酷い目にあうからな」
金城は乱暴に皿を自分の方へ手繰り寄せ、ガッとスプーンを掴むと我を忘れんばかりに、カレーライスの残飯をかきこんだ。最初は、お"えっとえずいていた。当たり前だ。あんな埃や髪のついたご飯を食べたら誰だって吐くだろう。だけど、すぐに金城に異変が起こった。両方の眼をカッと大きく見開いて手を止め、肩を震わせたと思えば、背中を丸めながら料理を一心不乱に食べる。
その異様さに、俺は釘付けとなった。金城は泣きながら「うま……うめえっ」と嗚咽を漏らしているのだった。
何が起こっているのか、理解が出来ないままに、ついに金城の前の皿は綺麗さっぱり真っ白になった。何故なら、金城は最後の最後も、舌で舐め取ってしまったからだ。それから一言「マナミ」と漏らした。
「最高だ。……こんな美味い料理、食べたのは久々だ。ああ、ご馳走様」
眼鏡の奥を涙でいっぱいにさせて、彼はか細い声で呟き、椅子を引いて席を立つ。俺は一連の不思議な行動に、興味が惹かれるばかりだった。
そして金城は、真っ白なズボンのポケットに右手を突っ込んだ。
「ありがとうな」
と言って、取り出した黒い拳銃を自分のこめかみに宛がった。
「あっ」僕は咄嗟に声を漏らした。
バァン。
金城は、撃った。
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