冤罪の英雄

ゆうきの小説

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第二話:冤罪の証明

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事件発生から10年の月日が流れた。

無事刑期を終え、出所したオレは、

生活保護を受けながら職探しの日々を過ごしている。

そんな中。宿でくつろいでいると、突然チャイムがなる。

警察「カズさん。いらっしゃいますか?警察です。

急遽カズさんに相談したいことがあって参りました。」

相談したいこと?ムショでは問題沙汰は起こしていないし、脱獄したわけでもない。一体なんで?

警察「あなたは濡れ衣を着せられていたのかも知れない。証人が現れたんです。今一緒にいますので、開けてください。出来れば力になりますから。」

その言葉を聞き、オレはドアを開けた。

そこには、都警の男性と見知らぬ女性が立っていた。

警察「彼女はミーコさん。あなたを陥れたバーのオーナーをやっていた店主の娘です。」

ミーコ「カズさん。初めまして、10年前。うちの父があなたの腕を切り落としたことを聞き、謝罪のために訪ねて来ました。」

なんだと!?ということはオレを切りつけたアイツの娘だというのか?信用できん。

カズ「お断りします。失礼ですが帰ってください。」

ミーコ「カズさん。なら私の腕を切り落としてください。私も父もあなたの言うことを聞かずに切ってしまったこと。とても後悔しているんです。

あなたは父のせいで不便極まりない生活を余儀なくされ、しかもわいせつ罪で起訴され、ホントに言葉では言い表せないほどの怒りが沸いてきます。何より父はいつもあなたに腕をあげたいと言っていましたから」

カズ「わかりました。そこまで言うのであれば、お話は聞きます。どうぞお入りください。」

ミーコ「ありがとうございます♪」

そう言いながら、オレの手を握ってきた彼女の手をオレは無意識のうちに払い除けてしまった

カズ「すみません。あの日以来スキンシップされると拒否反応が出るんです。女性は特に。あの日のことがトラウマになってしまったみたいなんです。」

ミーコ「そうですよね。あれだけの経験をされたのですから、心中お察しします。」

カズ「ご理解感謝します。」

オレはミーコからあの日あった「真実」を全て聞いた。最初に聞いた時は沸き上がる怒りを抑えるのに苦労した。

ミーコ「うちの父がもっと早く気づいていれば、彼女たちの犯行を防ぐことも出来たかも知れません。

父の代わりに私が謝罪します。ホントに申し訳ございませんでした。」

カズ「ミーコさんもお父さんもオレと同じ被害者ですから、謝らないでください。オレは大丈夫ですから」

大丈夫なはずがない。でも怯えながら仕切りに謝る彼女を安心させるためにはそういうしかなかった。

警察「事の経緯は私どもの署に出向いてご説明致します。証拠品として切り落とされた手首を保存してありますので、よろしければカズさんもご同行願います。」

オレはミーコさんと一緒に最寄りの警察署に向かう車両に乗り込んだ。

警察「これが10年前にカズさんが切り落とされた手首になります。」

久々に失った手首を目視するのは、不思議な気分だった。

カズ「でもよく保存なんてしてありましたね。オレみたいな一般人の手首なんて処分してしまえば良かったのに」

警察「そんなこと言わないでくださいよ。あなたの手首が無ければ、事件の真相を解明出来なかったんですから。この手首のおかげで冤罪が明らかとなった事例は数知れません。あなたとっては不名誉かもしれませんが、彼らにとってあなたは英雄(ヒーロー)なんです。」警官の話に寄ると、オレが送還されてすぐ、オレの母さんがオーナーを訪ねて手首を奪い返したらしい。そして警察に出向き成分鑑定を依頼したという。そんな母さんの苦労も知らず、オレはのんきにムショ生活を送っていたわけだ。で、ここ三、四年の間に依頼していた詳しい鑑定結果が出たらしく、当時の犯行の全貌が明らかとなったわけなんだとさ。

ちなみにオレを陥れた犯人はオレと先輩を出迎えてくれたアイツらだとよ。証拠品として鑑定結果を見せてもらったが、オレの手に付着していたネバネバは、彼女らが作り出した人工粘液だそうだ。

オレ以外にも1000人もの人間がこの人工物のせいで、濡れ衣を着せられていたというから驚きだ。

とにかく、この件を立件するためにミーコさんたちが協力してくれるのであれば、オレの無念も少しばかり晴れると思う。

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