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二十六話 冒険者の街
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「と言うことで、これからは実戦で鍛えていく」
「はい!」
受身の修行は終わり、次はとうとう実戦での修行が始まる。ここにくるまで長かった。基礎体力を身体を作るのから始まり、逃げる、避ける、防御(受身)。やってることは単純で少ないのに時間はものすごくかかった。
「で、今俺達がいるのは商業都市だ」
「はい」
私達が今居るのは商業都市。と言っても、都市の中にいることはほとんどなく、都市を囲う壁のすぐ外にいるほうが多かった。ここで避けると受身を一ヶ月以上やっていた。
「そして、商業都市はその街の性質から付近に魔物は少ない」
「そうですね」
商業都市は商業が盛んで毎日多くの人が出入りをする。だから、この都市の周辺は整備されていて、道もきれいだし、魔物も少ない。
「だから、移動しなければならない」
「はい」
実戦で鍛えるって言われてるんだからそれはそうだ。クエストが少ないここじゃそれが出来ないから。
「魔物が多くいる街はここから歩けば二週間ほどでつく」
「……はい」
あっ、これ走らされるやつだ。歩けば二週間で着くなら走れば一週間で着くだろとか言われるやつだ。
「だから、今回は前回り受身で一ヶ月で着ければいいと思っている」
「はい。……はい!?」
前回り受身!? あの前転する受身でまさか移動しろと!?
「よし! それでは、出発!」
「イエーイ! ゴーゴー!」
「いや、待ってくださいよ!」
ちょっと待って! なんでもうこれで行くのが決定してるの!?
「なんだよ。こっちはもう行く気満々なのに」
「そーだよー。行こうよー」
「いやいやいや。なんで歩けば二週間かかるところを前回り受身で一ヶ月かけて行かないといけないんですか!」
一体どういう発想をすればその考えに至るのだろう。普通、歩けば二週間かかるなら走って一週間で行こうでしょ。今思ったけどこの考えに至る私の発想もダメだ。気付かないうちに毒されてる。
「そりゃただ移動するだけなんてもったいないだろ。じゃあ、受身やりながら行こうってなるだろ?」
「ならないです!」
そんな発想になる訳がない! 普通は走って
「やっと着いたな」
「………………」
回って回って回って一ヶ月。着いた。やっと着いた。
一ヶ月前、私の意見など完全無視され強制的に決定されたこの旅路。来る日も来る日も回る。前回りしすぎて気持ち悪いって言うと後ろ回りをさせられ、それが気持ち悪くなると前に戻る。地獄の循環、回りに回る。
「……わあー。なんかすごい街ですねー」
私が回りに回り着いた街。そこもうすごい街だった。なんというか、嫌な街。
「ここは冒険者の街だな。この付近には多くの魔物がいてそれひ強かったり珍しいのもいる。だから、それ目当てに冒険者が集まり自然と出来た街だ」
ですよね。この嫌な感じは冒険者ギルドで感じるあれだ。ギラギラっていうかギスギスっていうか。お互いを敵と思い合っている人達が集まっている感じ。
「強い冒険者が集まることもあり別名『武の街』とも言われている」
へえー。武の街。あっ、うん。なるほどそういうことね。武の街。喧嘩の街ってことね。
まだ街の入り口だってのにもう罵声は色んなところから聞こえてくるし、見えているだけで喧嘩は三件。入る前からもう嫌だこの街。
「井の中の蛙大海を知らず! だね!」
「そうですねー」
今度は間違いませんでしたね。湖じゃないです。海です。
「この街はそんな蛙がいっぱいいるからな。基本的に目は合わさない。目を合わしたら喧嘩の始まりだと思え」
「動物ですか」
目を合わしたら喧嘩が始まるって完全に動物でしょ。もう人間辞めた人がいっぱいいる街なんて嫌だ。
「ほらほら、行くよー。ミッちゃん」
「ええ……。行きたくない」
目を合わしたらアウトな街なんか入りたくない。リンさん待って行かないで。いや、行くけど。今この二人から離れる訳にはいかないし。
「安心しろ。この街は冒険者の街とも言われる訳だからな、冒険者ランクが大きな意味を持つ。Aランクのリンが居るなら絡まれてもそう問題にはならねえだろ」
なるほど。そこはさすが冒険者の街。冒険者ランクがものを言うなんて。だから、高ランクなら絡まれても安心。高ランクってことは強いってことだしね。絡みたくないよね。……最低ランクの私はこの街で生きていけるのかな? 絶対リンさんから離れないようにしよう。
「おい見ろ……」
「なんだあの二人……」
それにしてもなんだろう。街に入ってからずっとひそひそ声が聞こえる。それも私達が何か言われてるような。
そんな変な感じの中を歩き、冒険者ギルドと着いた。おお。さすがは冒険者の街。冒険者ギルドがすごく大きいし立派。
扉も武骨ながらどこか豪勢。そんな扉を開け、いざギルドの中へ入る。
ギルドの中は予想通り賑やかだった。でも、その予想以上に規模が大きい。大きいギルドだから、喧騒もこれまでのギルドとは違った。喧嘩はいっぱい起きている。でも、ここで予想と違うことになった。
「ようこそおいで下さいました! リン様! どうぞこちらへ!」
私達が入るとすぐにギルドの職員さんが飛んできた。そして、すごいへりくだっている。ギルドの職員さんってどこか感じ悪い人が多いのに。
それに職員さんの一声の後、ギルド内全体が変わった。急にしーんと静まり返り、喧嘩は全て収まった。あれ? これ前にもあったな。
「リン、お前何したんだ?」
「初めて来た時絡まれたからね。井の中の蛙大海を知らず! をやった」
ああ、なるほど。この前私が絡まれた時のことここでもやったんだ。だから、こんなことになってたり、街中でもあんな感じだったんだ。
「……ん? リンさんこの街来たことあるんですか?」
「あるよっ。……二人がボクのこと除け者にするからこの街で毎日クエスト受けてたんだよ」
「まだ怒ってんのかよ」
私がシオンさんと受身の修行をしてる時、ずっとクエスト受けてる言ってたけどこの街で受けてたんだ。あれ? でも、リンさんとは夜毎日会ってたな。一緒にご飯食べて寝てたのに、どうやってこの街で受けてたんだろう?
「リンさんどうやってこの街に来てたんですか? 結構距離あるのに」
あの商業都市からこの冒険者の街までは歩いて二週間。走れば一週間。前回り受身で一ヶ月。毎日行き帰りするなんてどうやってたんだろう。
「ボクは交換魔法って魔法が使えるんだ。ボクと何かの位置を入れ替える魔法。それで移動してたの」
「交換魔法ですか……」
へえー。交換魔法。位置を入れ替える魔法。……え。それがあるなら私あんな一ヶ月も回り続ける必要なかったんじゃ。
「リンさんそんな便利な魔法使えるなら一ヶ月前に使ってくれてたら……」
「んー、でも、これボクにしか使えないんだ。ボクと何かを入れ替えるの」
「あっそうなんですか」
そうか。自分にしか使えないんだ。良かった。リンさん使えるのに使わなかった訳じゃなかった。
「それにしてもすごい対応ですね」
職員さんに案内されて椅子に座るとどこからともなく飲み物とお菓子が。リンさんだけでなく私達にまで。普通こんなことされない。
「何をおっしゃいます。これぐらい当たり前です。リン様には本当に感謝していますから」
「ふーん」
まあ、リンさんがいるだけで喧嘩が起きないもんね。職員さんからしたらありがたいんだろうなぁ。でも、こんな一人の冒険者に贔屓してるのは周りからしたら不愉快だろうし良くないんじゃ。
「おいしい。……ねへへ」
ああ可愛い。お菓子を頬張って嬉しそうなリンさん可愛い。ん? ……ああ、なるほど。ありがたいのはそれだけじゃないと。贔屓しても全然大丈夫なのはみんな見たいからか。
リンさんのお陰で、どうやら私はこの街で生きていそうです。
「はい!」
受身の修行は終わり、次はとうとう実戦での修行が始まる。ここにくるまで長かった。基礎体力を身体を作るのから始まり、逃げる、避ける、防御(受身)。やってることは単純で少ないのに時間はものすごくかかった。
「で、今俺達がいるのは商業都市だ」
「はい」
私達が今居るのは商業都市。と言っても、都市の中にいることはほとんどなく、都市を囲う壁のすぐ外にいるほうが多かった。ここで避けると受身を一ヶ月以上やっていた。
「そして、商業都市はその街の性質から付近に魔物は少ない」
「そうですね」
商業都市は商業が盛んで毎日多くの人が出入りをする。だから、この都市の周辺は整備されていて、道もきれいだし、魔物も少ない。
「だから、移動しなければならない」
「はい」
実戦で鍛えるって言われてるんだからそれはそうだ。クエストが少ないここじゃそれが出来ないから。
「魔物が多くいる街はここから歩けば二週間ほどでつく」
「……はい」
あっ、これ走らされるやつだ。歩けば二週間で着くなら走れば一週間で着くだろとか言われるやつだ。
「だから、今回は前回り受身で一ヶ月で着ければいいと思っている」
「はい。……はい!?」
前回り受身!? あの前転する受身でまさか移動しろと!?
「よし! それでは、出発!」
「イエーイ! ゴーゴー!」
「いや、待ってくださいよ!」
ちょっと待って! なんでもうこれで行くのが決定してるの!?
「なんだよ。こっちはもう行く気満々なのに」
「そーだよー。行こうよー」
「いやいやいや。なんで歩けば二週間かかるところを前回り受身で一ヶ月かけて行かないといけないんですか!」
一体どういう発想をすればその考えに至るのだろう。普通、歩けば二週間かかるなら走って一週間で行こうでしょ。今思ったけどこの考えに至る私の発想もダメだ。気付かないうちに毒されてる。
「そりゃただ移動するだけなんてもったいないだろ。じゃあ、受身やりながら行こうってなるだろ?」
「ならないです!」
そんな発想になる訳がない! 普通は走って
「やっと着いたな」
「………………」
回って回って回って一ヶ月。着いた。やっと着いた。
一ヶ月前、私の意見など完全無視され強制的に決定されたこの旅路。来る日も来る日も回る。前回りしすぎて気持ち悪いって言うと後ろ回りをさせられ、それが気持ち悪くなると前に戻る。地獄の循環、回りに回る。
「……わあー。なんかすごい街ですねー」
私が回りに回り着いた街。そこもうすごい街だった。なんというか、嫌な街。
「ここは冒険者の街だな。この付近には多くの魔物がいてそれひ強かったり珍しいのもいる。だから、それ目当てに冒険者が集まり自然と出来た街だ」
ですよね。この嫌な感じは冒険者ギルドで感じるあれだ。ギラギラっていうかギスギスっていうか。お互いを敵と思い合っている人達が集まっている感じ。
「強い冒険者が集まることもあり別名『武の街』とも言われている」
へえー。武の街。あっ、うん。なるほどそういうことね。武の街。喧嘩の街ってことね。
まだ街の入り口だってのにもう罵声は色んなところから聞こえてくるし、見えているだけで喧嘩は三件。入る前からもう嫌だこの街。
「井の中の蛙大海を知らず! だね!」
「そうですねー」
今度は間違いませんでしたね。湖じゃないです。海です。
「この街はそんな蛙がいっぱいいるからな。基本的に目は合わさない。目を合わしたら喧嘩の始まりだと思え」
「動物ですか」
目を合わしたら喧嘩が始まるって完全に動物でしょ。もう人間辞めた人がいっぱいいる街なんて嫌だ。
「ほらほら、行くよー。ミッちゃん」
「ええ……。行きたくない」
目を合わしたらアウトな街なんか入りたくない。リンさん待って行かないで。いや、行くけど。今この二人から離れる訳にはいかないし。
「安心しろ。この街は冒険者の街とも言われる訳だからな、冒険者ランクが大きな意味を持つ。Aランクのリンが居るなら絡まれてもそう問題にはならねえだろ」
なるほど。そこはさすが冒険者の街。冒険者ランクがものを言うなんて。だから、高ランクなら絡まれても安心。高ランクってことは強いってことだしね。絡みたくないよね。……最低ランクの私はこの街で生きていけるのかな? 絶対リンさんから離れないようにしよう。
「おい見ろ……」
「なんだあの二人……」
それにしてもなんだろう。街に入ってからずっとひそひそ声が聞こえる。それも私達が何か言われてるような。
そんな変な感じの中を歩き、冒険者ギルドと着いた。おお。さすがは冒険者の街。冒険者ギルドがすごく大きいし立派。
扉も武骨ながらどこか豪勢。そんな扉を開け、いざギルドの中へ入る。
ギルドの中は予想通り賑やかだった。でも、その予想以上に規模が大きい。大きいギルドだから、喧騒もこれまでのギルドとは違った。喧嘩はいっぱい起きている。でも、ここで予想と違うことになった。
「ようこそおいで下さいました! リン様! どうぞこちらへ!」
私達が入るとすぐにギルドの職員さんが飛んできた。そして、すごいへりくだっている。ギルドの職員さんってどこか感じ悪い人が多いのに。
それに職員さんの一声の後、ギルド内全体が変わった。急にしーんと静まり返り、喧嘩は全て収まった。あれ? これ前にもあったな。
「リン、お前何したんだ?」
「初めて来た時絡まれたからね。井の中の蛙大海を知らず! をやった」
ああ、なるほど。この前私が絡まれた時のことここでもやったんだ。だから、こんなことになってたり、街中でもあんな感じだったんだ。
「……ん? リンさんこの街来たことあるんですか?」
「あるよっ。……二人がボクのこと除け者にするからこの街で毎日クエスト受けてたんだよ」
「まだ怒ってんのかよ」
私がシオンさんと受身の修行をしてる時、ずっとクエスト受けてる言ってたけどこの街で受けてたんだ。あれ? でも、リンさんとは夜毎日会ってたな。一緒にご飯食べて寝てたのに、どうやってこの街で受けてたんだろう?
「リンさんどうやってこの街に来てたんですか? 結構距離あるのに」
あの商業都市からこの冒険者の街までは歩いて二週間。走れば一週間。前回り受身で一ヶ月。毎日行き帰りするなんてどうやってたんだろう。
「ボクは交換魔法って魔法が使えるんだ。ボクと何かの位置を入れ替える魔法。それで移動してたの」
「交換魔法ですか……」
へえー。交換魔法。位置を入れ替える魔法。……え。それがあるなら私あんな一ヶ月も回り続ける必要なかったんじゃ。
「リンさんそんな便利な魔法使えるなら一ヶ月前に使ってくれてたら……」
「んー、でも、これボクにしか使えないんだ。ボクと何かを入れ替えるの」
「あっそうなんですか」
そうか。自分にしか使えないんだ。良かった。リンさん使えるのに使わなかった訳じゃなかった。
「それにしてもすごい対応ですね」
職員さんに案内されて椅子に座るとどこからともなく飲み物とお菓子が。リンさんだけでなく私達にまで。普通こんなことされない。
「何をおっしゃいます。これぐらい当たり前です。リン様には本当に感謝していますから」
「ふーん」
まあ、リンさんがいるだけで喧嘩が起きないもんね。職員さんからしたらありがたいんだろうなぁ。でも、こんな一人の冒険者に贔屓してるのは周りからしたら不愉快だろうし良くないんじゃ。
「おいしい。……ねへへ」
ああ可愛い。お菓子を頬張って嬉しそうなリンさん可愛い。ん? ……ああ、なるほど。ありがたいのはそれだけじゃないと。贔屓しても全然大丈夫なのはみんな見たいからか。
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