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六十九話 ミイナ ②

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 迫る剣先を躱し、反撃に転ずる。その反撃は難なくいなされ、更に反撃を受ける。それを避けて次の攻防へ。

 一進一退。絶え間なく繰り広げられる攻防。でも、これじゃ駄目だ。

「あっ、ぐうぅ……!!」

 マルクの剣を弾いて少し崩れた隙を突かれ蹴りを喰らう。不完全ながらガードはしたものの、勢いを殺しきれず弾き飛ばされる。

「この程度かい? 君の力は?」

 弾き飛ばされ完全に体勢が崩れた私を追撃しようという素振りすら見せず、悠々と歩み寄るマルク。一見、一進一退の攻防が繰り広げられるように見えるが、本当はこの様にかなりの差があった。

「これじゃあがっかりだよ。せっかくあの時見逃して、大きくなって僕の目の前に立ちはだかってくれると期待してたのに。まあ、勝手に期待した僕が悪いんだよね。でも、本当にその程度なのかい? 君の想いは」

 マルクが問う。まるで知ってるよと言うかのように。お前のことなんて全てお見通しだとでも言うかのように。

「僕が憎いだろう? 僕を殺したいだろう? 僕の四肢を切断し臓物をぶちまけさせ原型が分からなくなるまで顔を潰し、僕という存在を潰して、壊して、破壊し尽くしたいだろう? この世から消し去りたいだろう!?」

 それは私に向かって言っているのか。それとも、自分に向かって言っているのか。誰の為の言葉で、誰の気持ちを表したものだ。私のものなのか? 私のものなのか。

「その為にここへ来たのだろう! 僕を殺す為に! それなのにこの程度かい!? 君の殺意は! 僕を殺して殺して殺し尽くしたいだろう! さあ、早く見せてくれ! 君の想いを! 早く、早く。……早く見せてくれないと、君が死んでしまう」

 マルクの剣先が私へと向けられ、マルクの魔力が一点に集中する。マルクが持つ細い剣へと。そして、放たれる眩き光の光線。人間なんて一瞬で焼き付くすだろうその光線。

 それを避けることも出来ず直撃する。



「……確かにその想いは否定出来ない。私はお前を殺したい。お前の言う通り殺して殺して殺し尽くしたい」

 私が直視出来ない認められないワタシ。だけど、あれは紛れもなく私であり、認められずともその存在を理解している。

「だけど、そんなこと私は教えてもらってないから。私が教えてもらったのは守ること。逃げて、避けて、受身を取って。私を守ること」

 でも、私が今ここに居るのは教えがあったから。教えられ、助けられ、導かれて今、私はここに居る。

「お前を殺したい。殺す為に戦いたい。……でも、残念ながらそんなことは許されない」

 その教えに反抗なんてしていいだろうか。そもそも反抗するのを許す様な人だったろうか。反抗なんてすれば、する前の五倍くらい酷い目に合わせてくる人じゃなかっただろうか? 

「弟子に選択権なんて無いんだ! 私はただ師匠に教えてもらったことを実行するのみ! 私は私を守るために戦う! お前を殺す為じゃない! 私を守るためだ!」

 どんな無茶を言われようと、どんなキツイ修行を命じられようと、弟子の私に選択権などない。弟子はただ師匠の命令に、教えに従うだけ。

「弱い私を守るために力を貸して! 私の記憶、私の影よ!」

 私の影が呼応するように動き出す。それはかつて纏いし記憶。我が師の力の断片。

「影纏い『武神ゴルドーラ』!」

 私が、私を守るんだ。
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