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6.和食は最高です

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 まぁ、済んでしまった事は仕方がない。
 仕方がないと言いつつ説教かましたが、それはそれ! これはこれ! と、自分を正当化した。
 どちらにせよミウさんにはプライバシーの大切さを、どこかの段階では教えないといけなかったと実感したので、結果オーライという事にしておく。
 とりあえず、ミウさんには俺の情報を取り扱う時は慎重に行う事を約束させた。

 「喉が乾いた……」

 そう、説教を滔々とかましたので、乾涸びそうな程に喉が乾いている。
 管理者初日にしてどっと疲れるような事案が多かったからか、1度意識してしまったら空腹まで同時に襲ってきた。
 うん、人間どんな時も腹は減るな。

 「了解しました。サイドテーブルに飲料を転送します」

 ミウさんがそう言った直後、飲み物がサイドテーブルに転送されていた。
 俺が喉を盛大に鳴らして飲みたい! と思っていた麦茶がそこにあった。
 何かを考える暇もなく麦茶に口を付けて飲み干した。

 「っはー! 生き返った! ミウさんありがとな。……ん? そういや、なんで麦茶?」
 「補給に関しては、管理者の求める物が用意出来る環境を整えています。零二様の前居住地での行動パターンを解析し、零二様の求める飲料の予測を演算し、99.9%の確率で麦茶を希望されるとの演算結果がでましたので用意しました」

 うん、ハイスペックの無駄遣い!
 いや、確かに麦茶飲みたかったからありがたいんだけれども……いいのかそれで。
 そして、ミウさんの辞書に慎重という文字はない事がわかった。
 俺の情報を慎重に取り扱う約束はどこいった?

 「うん、色々と言いたい事はあるけど……もういいや」
 「お食事はどう致しますか?転送しますか?」
 「うん……腹減ったから転送して……」

 俺はミウさんのマイペース? さに若干脱力しながらもそう答えて頷いた。
 次の瞬間には、ほかほかの白飯と味噌汁に煮物と焼き魚、さらには漬物までがサイドテーブルに並んでいた。
 俺の愛する和食のラインナップに若干どころではなくテンションが上がったのは否定出来ない。

 「うぉ! 美味そう! いただきます!」

 冷めては味も落ちてしまうので直ぐ様いただいた。
 どこの料理人が作ったのかと思うほど美味かった。
 いや、食材が良いのか? とにかく、俺の直球ど真ん中どストライクな食事に夢中になって食べ進めたら、あっという間に完食した。

 「ごちそうさま。いやぁ、上手かった! ミウさん、こんな上手い食事をありがとな」
 「管理者の体調を健康状態で維持出来るようにシステムに組み込まれていますので感謝は不要です。補給はもう終了でよろしいですか?」

 補給って……こんな美味い食事をそんな味気無く表現されるとなんだか切ないものがある。

 「うん、もう大丈夫、ありがとう。ミウさんも感情とか味とか分かればこの気持ちを共有出来るんだがなぁ」

 深い意味はなく、ただ、美味しいものや楽しい事を共有出来れば楽しさも増すと思っただけなのだが、俺の言葉を拾ったらしいミウさんから返事がきた。

 「感情と味覚の理解及び解析ですか。味覚は現状のスペックでも再現可能ですが、32%が限界値です。感情の理解は可能です。零二様の命令は実行致しますが、業務に関する項目とは関係性を認められませんので優先的項目ではないと判断します。バックグラウンドでの実行がタイムロスも最小ですので、バックグラウンドでの実行を推奨いたします。味覚及び感情の取得を実行しますか?」
 「へっ? そんな事も出来るの!? じゃあ、ミウさんが良いのならお願いしたいかな」
 「管理者の決定に私の判断は不要です。バックグラウンドでの実行命令を確認しました。完了まではおよそ120時間です」

  俺はこの時、これで少し素っ気ないミウさんとの会話を楽しめるようになると喜んだが、それと同時に俺の思いつきでミウさんが感情を持つ事による弊害がどこかに出たりするのではないかと懸念を抱いたのだった。
 まぁ、すぐに記憶の彼方へ行ってしまったんだけれども。
 
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