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2章 感動の再会から王都を死守するまで
42話 アルトリア騎士団・序列二位の実力 その2
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「は?」
その間の抜けた声は俺のものだった。無意識のうちに出てしまっていた。
今、目の当たりにしているものがあまりにも現実離れしていたからだ。
これは一体、どうなっている?
俺は確かにラインハルトに『ファイア・スパイラル』をぶつけたはず。
それなのに実際は当たっていない。何か目の見えないものに拒まれているのか?
いや、そんなわけがない。そんなもの反則技以外の何物でもない。
だが、ラインハルトが『一つでも傷をつけられたらアルトの勝ち』と言っていた理由が、もしこの反則技にあるのだとしたら……。
勝てなくね?
これが、アルトリア騎士団・序列二位の実力か。
……序列二位? こんな反則技持っているのに序列一位じゃなくて、二位?
もしかして何か弱点があるのか?
どうやらそれを探るほかないみたいだな。
俺は一度ラインハルトから距離を取る。
「いい動きだ、アルト。お前ならアルトリア騎士団・序列十位の中にランクインできる」
「そりゃどうも。というか、あんまり話しかけて来ないでくれ。俺は今、お前に勝つ算段を見つけてる最中なんだ」
「へぇ、流石だな。もう俺のスキル――【無限領域】に穴があるのを見つけたか」
「だから話しかけんな。気が散る」
だが、やはり何かしらの弱点はあるらしいな。
それにしても【無限領域】か。名前からして強そうだな。俺なんて【魔物生産】なのに。
やっぱりラインハルトは恵まれてるな、すべてが。
だからこそ勝つ。買ってみせる。
俺はスライムを百匹作り出し、ラインハルトを攻撃するよう命令した。弱点を見つけ出すまでの時間稼ぎだ。
わざわざラインハルトが時間をくれるとは思えないからな。
勿論、俺も動く。動きながら、絶対に【無限領域】の弱点を見つけ出してやる。
そのためにはまずは分析だな。
さっき【無限領域】に『ファイア・スパイラル』をぶつけた感じだが、吸収されているわけではなかった。
どちらかと言えば、目に見えない何かに遮られているみたいだった。
そう、どちらかと言えば……な。
あのとき、少し違和感を覚えた。俺の『ファイア・スパイラル』は完全に止められたわけじゃなかった気がするのだ。
勿論、気がするだけで何の確証もない。どちらかと言えば、時間が遅くなった……みたいな印象だ。
だから目の見えない何かに遮られたと言うよりも、単純に攻撃が届かなかったと捉えた方がいい……か。
まだ判断材料が少ないから確定的ではないが。
俺は一度思考を切り替えて、ラインハルトの動向を探ることにした。
「……ん?」
ラインハルトはなぜか剣技で、魔法でスライムを迎え撃っていた。何でだ? 【無限領域】があるのに……。
もしかして【無限領域】は魔力の消費が多いから、長時間は使えない?
……その可能性は大いにあるだろう。あらゆる攻撃を無効化するスキルが低コストで使えるわけがない。
だが、本当にそれだけか?
「…………」
俺はラインハルトに火属性の初級魔法――『ファイア・ニードル』を撃った。
すると、ラインハルトは【無限領域】を使うことなく、火の針を避けた。
「アルト! 急に魔法を撃つな。危ない」
……ラインハルトのこの様子、『ファイア・ニードル』を余裕で避けられたわけではないはずだ。
なら何で【無限領域】を使わなかった? やっぱり魔力の消費が大きいからか?
いや、もしかして……。
「ラインハルト。その【無限領域】は動きながらだと使用できないんじゃないのか?」
俺はその結論に至った。スライムを迎え撃っていたときは単純に魔力消費を気にしているだけかと思ったけど、『ファイア・ニードル』を避けたのを見て、考えが変わった。
あの状況なら【無限領域】を使うのが一番攻撃を受けなくて済むからだ。
何せ今回の勝負内容は、『ラインハルトの体に傷をつけられたら俺の勝ち。制限時間内に傷をつけられなかったらラインハルトの勝ち』というものだったからな。
「そして、まだ弱点はある。【無限領域】は外部からの攻撃は防げるが、内部からの攻撃には対処できない。だから、お前は動くことにした。俺の【魔物生産】が体内にも作り出せると思ったから。違うか?」
「……フッ、流石だなアルト。まさかこんな短時間で俺の弱点をことごとく看破するとは……。だが、それで勝った気になっては困る。攻略法が分かっても俺には……」
「――『セイント・メテオレイン』ッ!」
俺はオルガ戦でも使った聖なる剣の雨を発動した。
恐らくラインハルトはオルガよりも身体能力は低い。
それに今回の勝負内容もあってラインハルトは【無限領域】を使わざるを得ないだろう。
もし、使わなかったら掻い潜れないほどの聖なる剣の雨を俺は降らしてやる。
「――なっ!? アルト? これ、やりすぎじゃないか!?」
おうおう流石のラインハルトでも焦ってるみたいだな。
「降参か? それとも【無限領域】使うか? 選べ」
「……お、俺を舐めるなよ? 選ぶは道連れだ!」
そう言って、ラインハルトは身体強化魔法を使って近づいてくる。
だが、遅い。俺は展開していた『セイント・メテオレイン』を地上に降らした。
その間の抜けた声は俺のものだった。無意識のうちに出てしまっていた。
今、目の当たりにしているものがあまりにも現実離れしていたからだ。
これは一体、どうなっている?
俺は確かにラインハルトに『ファイア・スパイラル』をぶつけたはず。
それなのに実際は当たっていない。何か目の見えないものに拒まれているのか?
いや、そんなわけがない。そんなもの反則技以外の何物でもない。
だが、ラインハルトが『一つでも傷をつけられたらアルトの勝ち』と言っていた理由が、もしこの反則技にあるのだとしたら……。
勝てなくね?
これが、アルトリア騎士団・序列二位の実力か。
……序列二位? こんな反則技持っているのに序列一位じゃなくて、二位?
もしかして何か弱点があるのか?
どうやらそれを探るほかないみたいだな。
俺は一度ラインハルトから距離を取る。
「いい動きだ、アルト。お前ならアルトリア騎士団・序列十位の中にランクインできる」
「そりゃどうも。というか、あんまり話しかけて来ないでくれ。俺は今、お前に勝つ算段を見つけてる最中なんだ」
「へぇ、流石だな。もう俺のスキル――【無限領域】に穴があるのを見つけたか」
「だから話しかけんな。気が散る」
だが、やはり何かしらの弱点はあるらしいな。
それにしても【無限領域】か。名前からして強そうだな。俺なんて【魔物生産】なのに。
やっぱりラインハルトは恵まれてるな、すべてが。
だからこそ勝つ。買ってみせる。
俺はスライムを百匹作り出し、ラインハルトを攻撃するよう命令した。弱点を見つけ出すまでの時間稼ぎだ。
わざわざラインハルトが時間をくれるとは思えないからな。
勿論、俺も動く。動きながら、絶対に【無限領域】の弱点を見つけ出してやる。
そのためにはまずは分析だな。
さっき【無限領域】に『ファイア・スパイラル』をぶつけた感じだが、吸収されているわけではなかった。
どちらかと言えば、目に見えない何かに遮られているみたいだった。
そう、どちらかと言えば……な。
あのとき、少し違和感を覚えた。俺の『ファイア・スパイラル』は完全に止められたわけじゃなかった気がするのだ。
勿論、気がするだけで何の確証もない。どちらかと言えば、時間が遅くなった……みたいな印象だ。
だから目の見えない何かに遮られたと言うよりも、単純に攻撃が届かなかったと捉えた方がいい……か。
まだ判断材料が少ないから確定的ではないが。
俺は一度思考を切り替えて、ラインハルトの動向を探ることにした。
「……ん?」
ラインハルトはなぜか剣技で、魔法でスライムを迎え撃っていた。何でだ? 【無限領域】があるのに……。
もしかして【無限領域】は魔力の消費が多いから、長時間は使えない?
……その可能性は大いにあるだろう。あらゆる攻撃を無効化するスキルが低コストで使えるわけがない。
だが、本当にそれだけか?
「…………」
俺はラインハルトに火属性の初級魔法――『ファイア・ニードル』を撃った。
すると、ラインハルトは【無限領域】を使うことなく、火の針を避けた。
「アルト! 急に魔法を撃つな。危ない」
……ラインハルトのこの様子、『ファイア・ニードル』を余裕で避けられたわけではないはずだ。
なら何で【無限領域】を使わなかった? やっぱり魔力の消費が大きいからか?
いや、もしかして……。
「ラインハルト。その【無限領域】は動きながらだと使用できないんじゃないのか?」
俺はその結論に至った。スライムを迎え撃っていたときは単純に魔力消費を気にしているだけかと思ったけど、『ファイア・ニードル』を避けたのを見て、考えが変わった。
あの状況なら【無限領域】を使うのが一番攻撃を受けなくて済むからだ。
何せ今回の勝負内容は、『ラインハルトの体に傷をつけられたら俺の勝ち。制限時間内に傷をつけられなかったらラインハルトの勝ち』というものだったからな。
「そして、まだ弱点はある。【無限領域】は外部からの攻撃は防げるが、内部からの攻撃には対処できない。だから、お前は動くことにした。俺の【魔物生産】が体内にも作り出せると思ったから。違うか?」
「……フッ、流石だなアルト。まさかこんな短時間で俺の弱点をことごとく看破するとは……。だが、それで勝った気になっては困る。攻略法が分かっても俺には……」
「――『セイント・メテオレイン』ッ!」
俺はオルガ戦でも使った聖なる剣の雨を発動した。
恐らくラインハルトはオルガよりも身体能力は低い。
それに今回の勝負内容もあってラインハルトは【無限領域】を使わざるを得ないだろう。
もし、使わなかったら掻い潜れないほどの聖なる剣の雨を俺は降らしてやる。
「――なっ!? アルト? これ、やりすぎじゃないか!?」
おうおう流石のラインハルトでも焦ってるみたいだな。
「降参か? それとも【無限領域】使うか? 選べ」
「……お、俺を舐めるなよ? 選ぶは道連れだ!」
そう言って、ラインハルトは身体強化魔法を使って近づいてくる。
だが、遅い。俺は展開していた『セイント・メテオレイン』を地上に降らした。
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