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1章 パーティー追放からざまぁするまで
7話 魔法陣を吸収したら派生スキルに目覚めました
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「は?」
そんな間の抜けた声が耳に届いた。誰の声だったのかは分からない。俺の声だった可能性もある。
さっき目の前で起きたことを目の当たりにすれば、声が出ていてもおかしくはなかった。
それほどまでに今、目の前で起きたことは俺からしてみても驚愕に値するものだったのだ。
というのも。
「スライムが解除魔法を喰らうどころか、魔法陣すら取り込みやがった……」
「お、おいアルト! あのスライムは何をしたのだ!」
「俺に聞くなよ。俺だって分からない。ただ、スライムに現れてる模様。これは……」
「魔法陣とまったく同じ模様です!」
……意味が分からない。理解が追いつかない。
これは一体どういうことだ?
魔法陣を取り込んでくれたお陰で魔物が増殖することがなくなって助かったのは事実。
事実なのだが、ノエルが言ったようにスライムの体に魔法陣と同じ模様が現れている。
これはつまり、そういうことか?
そういうことで、いいんだよな?
全然受け入れられそうもないが、そう思うほかにない。
それに。
「魔法陣の解除、成功だな!」
「いやそうだけども! そうじゃないだろう、今は!」
「でもさ、俺にだって何が起きたか分からない。だからそう思う以外にないだろ?」
「分からないで済むものか! アルト、これはとんでもないことになってしまった……」
「はい。とんでもないことになりました……」
え? 何がとんでもないことなの?
アナベルもノエルも、ちょっと興奮しすぎじゃない? そうなる気持ちも分かるけど。
そこで、俺はとある提案をしてみることにした。
「一回、魔法陣使ってみる?」
「馬鹿か。馬鹿なのかキミは……! さっき言ったはずだ。これはとんでもないことなのだと……!」
「いや、そう言われても俺からすると何がとんでもないことなのか分からない。それに、まだ絶対にそうなっているとは限らないし、一度試してみても……」
「…………。……確かに、そうかもしれないな。やってみてくれ、アルト」
どうやら少しは落ち着いたらしい。
アナベルから魔法陣を使う許しが出た。
それに多分、これはいける。
スライムと情報共有してみた結果、新たなスキルの存在が確認できたのだ。
スキル――【自動生産】。
これが魔法陣を取り込んで得た新たなスキルだ。
恐らく、【魔物生産】の派生スキルだと思う。
「じゃあ、やってるぞ……」
俺はスライムに【自動生産】の発動を命令した。
すると、スライムの体に現れていた魔法陣のような模様は地面にまで広がった。
これで多分、スキルは発動されたと思う。
だが、この感じ……俺の魔力は発動するときに消費される分以外、消費されていない。
ということは、空気中に含まれている魔力を取り込み使用しているっぽいな。
しかし。
「一向に魔物が出てこないぞ?」
「そうみたいだな。……もしかしたら、この辺りの空気中に含まれる魔力をほぼ使い切ってるのかもしれない」
「……確かに、私たちが来て少ししてから、魔物がまったく増殖しなくなったな」
「やっぱりか。なら……」
俺はスライムに魔力を送った。
もし魔力が枯渇していて使えないなら、魔力を送ってあげればスキルは正常に動くようになるはずだ。
……やはり、俺の考えは正しかった。
微々たる魔法陣の輝きが魔力を送った瞬間から増し、そして……。
……スライムが生まれた。
「って、またスライムかい。やっぱりそこは【魔物生産】と一緒ってことか……」
「だが、これで確定したな」
「はい。アナベルさん」
何やら二人の間で確定したことがあるらしい。
俺はしばらく二人の様子を伺っていると、急に二人が俺の方に視線を向けてくる。
そして。
「やはりアルト。キミは勇者だ。シャルロッテ様がおっしゃることに狂いはなかった。まさかこのような形で戦況を覆せる可能性を見せてくれるとは、正直驚いたぞ」
「やっぱりアルトさんが勇者だったんですね。私は先の戦いぶりから、薄々気づいてはいましたけど」
……出たよ勇者。
もしかしてとんでもないことってそういうこと?
今まではまだ確信できてなかったってことか。
だが、新情報も出てきた。
シャルロッテという名の人物だ。
どうやらこいつが俺を勇者であると、アナベルとノエルに伝えたらしいな。
余計なことしやがって。
これは一言文句を言ってやらなきゃならない。
そう思っていたのだが。
「アルト。今すぐシャルロッテ様に会いに行くぞ」
「……へ?」
「詳しいことは後で話そう。だから、今は大人しくついて来てくれ」
「行きましょう、アルトさん」
そう言って、ノエルは手を差し出してくる。
「あー、クソ。またこのパターンかよ」
俺はガシガシと頭を掻いた後、ノエルの手を掴み、アナベルたちの後ろをついて行くのだった。
……はぁ。ようやく休めると思ったのになぁ。ツイてねぇよ、ほんと……。
そんな間の抜けた声が耳に届いた。誰の声だったのかは分からない。俺の声だった可能性もある。
さっき目の前で起きたことを目の当たりにすれば、声が出ていてもおかしくはなかった。
それほどまでに今、目の前で起きたことは俺からしてみても驚愕に値するものだったのだ。
というのも。
「スライムが解除魔法を喰らうどころか、魔法陣すら取り込みやがった……」
「お、おいアルト! あのスライムは何をしたのだ!」
「俺に聞くなよ。俺だって分からない。ただ、スライムに現れてる模様。これは……」
「魔法陣とまったく同じ模様です!」
……意味が分からない。理解が追いつかない。
これは一体どういうことだ?
魔法陣を取り込んでくれたお陰で魔物が増殖することがなくなって助かったのは事実。
事実なのだが、ノエルが言ったようにスライムの体に魔法陣と同じ模様が現れている。
これはつまり、そういうことか?
そういうことで、いいんだよな?
全然受け入れられそうもないが、そう思うほかにない。
それに。
「魔法陣の解除、成功だな!」
「いやそうだけども! そうじゃないだろう、今は!」
「でもさ、俺にだって何が起きたか分からない。だからそう思う以外にないだろ?」
「分からないで済むものか! アルト、これはとんでもないことになってしまった……」
「はい。とんでもないことになりました……」
え? 何がとんでもないことなの?
アナベルもノエルも、ちょっと興奮しすぎじゃない? そうなる気持ちも分かるけど。
そこで、俺はとある提案をしてみることにした。
「一回、魔法陣使ってみる?」
「馬鹿か。馬鹿なのかキミは……! さっき言ったはずだ。これはとんでもないことなのだと……!」
「いや、そう言われても俺からすると何がとんでもないことなのか分からない。それに、まだ絶対にそうなっているとは限らないし、一度試してみても……」
「…………。……確かに、そうかもしれないな。やってみてくれ、アルト」
どうやら少しは落ち着いたらしい。
アナベルから魔法陣を使う許しが出た。
それに多分、これはいける。
スライムと情報共有してみた結果、新たなスキルの存在が確認できたのだ。
スキル――【自動生産】。
これが魔法陣を取り込んで得た新たなスキルだ。
恐らく、【魔物生産】の派生スキルだと思う。
「じゃあ、やってるぞ……」
俺はスライムに【自動生産】の発動を命令した。
すると、スライムの体に現れていた魔法陣のような模様は地面にまで広がった。
これで多分、スキルは発動されたと思う。
だが、この感じ……俺の魔力は発動するときに消費される分以外、消費されていない。
ということは、空気中に含まれている魔力を取り込み使用しているっぽいな。
しかし。
「一向に魔物が出てこないぞ?」
「そうみたいだな。……もしかしたら、この辺りの空気中に含まれる魔力をほぼ使い切ってるのかもしれない」
「……確かに、私たちが来て少ししてから、魔物がまったく増殖しなくなったな」
「やっぱりか。なら……」
俺はスライムに魔力を送った。
もし魔力が枯渇していて使えないなら、魔力を送ってあげればスキルは正常に動くようになるはずだ。
……やはり、俺の考えは正しかった。
微々たる魔法陣の輝きが魔力を送った瞬間から増し、そして……。
……スライムが生まれた。
「って、またスライムかい。やっぱりそこは【魔物生産】と一緒ってことか……」
「だが、これで確定したな」
「はい。アナベルさん」
何やら二人の間で確定したことがあるらしい。
俺はしばらく二人の様子を伺っていると、急に二人が俺の方に視線を向けてくる。
そして。
「やはりアルト。キミは勇者だ。シャルロッテ様がおっしゃることに狂いはなかった。まさかこのような形で戦況を覆せる可能性を見せてくれるとは、正直驚いたぞ」
「やっぱりアルトさんが勇者だったんですね。私は先の戦いぶりから、薄々気づいてはいましたけど」
……出たよ勇者。
もしかしてとんでもないことってそういうこと?
今まではまだ確信できてなかったってことか。
だが、新情報も出てきた。
シャルロッテという名の人物だ。
どうやらこいつが俺を勇者であると、アナベルとノエルに伝えたらしいな。
余計なことしやがって。
これは一言文句を言ってやらなきゃならない。
そう思っていたのだが。
「アルト。今すぐシャルロッテ様に会いに行くぞ」
「……へ?」
「詳しいことは後で話そう。だから、今は大人しくついて来てくれ」
「行きましょう、アルトさん」
そう言って、ノエルは手を差し出してくる。
「あー、クソ。またこのパターンかよ」
俺はガシガシと頭を掻いた後、ノエルの手を掴み、アナベルたちの後ろをついて行くのだった。
……はぁ。ようやく休めると思ったのになぁ。ツイてねぇよ、ほんと……。
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