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「一体どういうつもりだ! 前もって言っておいただろ!
 王太子殿下が屋敷に来るから余計なことはするなと。
 なのにお前は呑気に畑を耕しやがって……!
 お前のせいで俺が恥をかいただろうが!
 あぁ……っ、くそ……! お前みたいな芋女は大嫌いだ! お前との婚約は破棄する。
 今すぐこの屋敷から出て行け!」

 ……と、そう怒鳴られましても…………。
 どうして怒っているのか、まったくわかりません。
 私はただ趣味である土いじりをしていただけだし、別にそれが恥ずかしいわけでもないと思うし……。

 それに、

「婚約を破棄するって言っても、結婚式はもうすぐそこまで迫っているのですよ?
 もしかして、キャンセルなさるのですか? 式場のキャンセル料金も高いでしょうし、招待している方たちにはどのように説明するのです?」

 まぁ、私としては婚約を破棄されても構いません。
 しかし、さっき言ったように、ほかの方に迷惑がかかるようなことはしたくないのですけれど……。

「ハッ、バカかお前は。俺が何の対策もなしに、婚約破棄を言い渡すわけないだろう?
 俺はお前の妹――シスと婚約を結び直し、結婚する!
 これは、前々から2人で話し合っていたことだ。
 お前との結婚式を、2人の式にしようってな!」

「そ、それだけはやめた方がいいです。
 あの子と結婚するのだけは、本当に。
 確かにあの子は可愛いし、表向きはいい子です。
 ですが、あの子は――」

「――あー、はいはい。そういうの、見っともないから。
 俺との婚約破棄が嫌だからって、自分の妹にケチつけるとか、ほんとお前はクズだな。
 これだから芋女は嫌なんだよ!」

 ち、違うのに……。私はこの人のことなんてまったく愛していませんし、事実を言っているだけ。
 あの子は……私の妹はもう首が回らないぐらい、いろいろな所からお金を借りていて。
 そのせいで、何人もの恋人から捨てられてる。

 そして、次の被害者は婚約者のあなただって、言いたかっただけなのに……。

 まさか、もうここまで根回しされていたなんて。

 もう、婚約者はダメです。
 妹は借金すべてこの人に押しつけるつもりだし、結婚した暁にはさらに借金をするつもりです。

 あの子はもの凄い金遣いが荒いから……。

 というか、妹とどこで知り合ったのかしら?
 妹はとっくに、家を勘当されているのに……。



 あれから、本当に私は屋敷を追い出され、婚約者は妹と結婚してしまった。

 風の噂で聞いた話では、元・婚約者の屋敷にあった財産は、すべて借金返済で消えたそう。
 どれだけ借金してたの、あの子……。と、戦々恐々していたのは束の間、やっぱりすぐに借金し始めた……。

 絶対、元・婚約者は破産寸前だから、夜逃げする日もそう遠くないかもしれない。

 ……なんて。

 他人事のように思う、他人になった私は今、あの日屋敷に来ていた王太子と良好な関係を築いています。

 ほら見たことか。やっぱり、土いじりは恥ずかしいことじゃないし、好きだとも言ってもらえた。

 だから、私は今、とても幸せです!

                    ~完~
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