魔法使いの弟子は楽じゃない

風水

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第1話 異世界転移

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 爽やかな風が吹く気持ちの良い五月晴れ。運動部に所属している生徒達が軽く汗を浮かべながら部活に勤しんでいる横を通り過ぎ帰路に就く。退屈な授業も乗り越えたし早く家に帰っていつものようにかわいい女の子の画像探したり、チャットで女の子のかわいさについて熱く議論したい。今日はどんなかわいい女の子を拝めることができるだろう、と胸を躍らせながら早歩きをする。この俺、武田優真にとって何も変化がない、いつも通りの日常だ。

 帰宅するなりパソコンの電源をつけ、好きなイラストレーターのホームページなどいつも見ているサイトを開く。
「さーて、新しい絵はアップされているかな? おっ、エマ先生新作絵アップしているじゃん!」
 今回はどんなかわいい女の子だろう。獣耳っ娘かな?それとも夏も近いし水着姿?などと期待で胸を膨らませつつページを開く。ページを開くとそこには身長は少し低めで銀髪、三角帽子にローブ姿のかわいらしい魔法使いの少女の姿が表示された。身長に対してローブが大きいせいで袖が余る、いわゆる萌袖になっていて、恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべている。
 やばい、超好みだ。めちゃくちゃかわいい。顔の筋肉が緩みにやけてしまう。やっぱりさぁ、魔法使いの女の子っていいよね。しかもエマ先生ぶかぶかのローブを着させるとはよく分かっていらっしゃる。さすがエマ先生。
 さっそく画像を保存して新作絵についていつもの面子で語りおうかな。と思いSkypoを起動しようとする。
『ポーン』
「おっとメールか。話が盛り上がっちゃって見るのが遅くなるのも可能性もあるし先に見とくか」
 Skypoを起動するのを後回しにし、メールを確認する。すると新着メールフォルダに差出人不明、題名なしのメールが一通あった。
「メールアドレス変更の報告かな」
 そう思いメールを開けるとメールには、
『異世界でかわいい魔法使いの弟子になって素晴らしい日々を過ごさないか?
           はい/いいえ                   』
と書かれていた。
「なんだただの悪戯メールか」
 馬鹿馬鹿しい。……いや、でも仮に異世界でかわいい魔法使いの弟子になれるとしたら?ただでさえ異世界に行けるってだけでも最高なのに、しかもかわいい魔法使いの弟子になれるんだぞ?弟子ということは四六時中一緒にいるわけだろ?弟子として過ごすうちにその女の子との恋が始まるかもしれない!そんなの行くしかないだろ!(ここまでの所要時間0.3秒)
 かわいい女の子の画像を見たせいでテンションが高まっていたせいもあり、冷静さを欠いている俺は『はい』の部分をクリックした。
 クリックをしたその直後、いきなり部屋が暗くなり足元には淡く輝く魔法陣が浮かんできた。
「え、ちょっと待って。これって本当に異世界行っちゃうやつ?嘘でしょ!?」
 慌てて部屋から出ようとドアに駆け寄るが、鍵がないはずのドアは何故か開かない。必死にドアを開けようとしているうちに魔法陣は益々複雑な模様を描き始め、最初は淡かった輝きも段々と明るさを増してきている。
「ストップストップ!まだ心の準備とか出来てないから!そもそも本当に行けるなんて思ってなかったんだって!」
 必死に叫ぶが魔法陣の複雑化、そして輝きが増すのは止まらず、ついに俺の部屋は目を開けられないほどの光に包まれた。

 しばらくすると自分が倒れていることに気付いた。爽やかな風が吹き、草の匂いがする。……風が吹いて草の匂いがする?
 慌てて飛び起き周りを見渡すとそこは全く見覚えのない平原だった。
「どこだよここ……」
 呆然としながらあたりを見渡していると一瞬自分の真上を"何か"が横切り太陽光を遮った。ただその"何か"が落とした影の大きさが鳥にしてはあまりにも大きすぎた。
「まさかな、そんな訳ないよな」
 恐る恐る空を見上げると、ファンタジー物の小説やゲームなどでしか見たことのない生物が飛び去っていくのが見えた。
「あれって、ドラゴンだよな……?ということは……」
 間違いない。あのメールの『はい』を押したせいで俺は異世界に来てしまった。
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