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第二章
エルベールの目的
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「何か勘違いをされているようだが」
エルベールは椅子の背もたれに体を預け、足を組んだ。
「僕はあなたの気の強さに惹かれて求婚したんだ。もちろん弟も一緒に来てくれないかとは思っていたが、そこを疑わないでもらいたい」
そうしてにっこりと微笑む。
ヴィクトリアは一瞬言葉を失くし、紅茶を一口飲むことで誤魔化した。そして、呆れた顔と声を作り上げる。
「まさか、そんな上辺の言葉でわたくしを丸め込めるとでも? 冗談はお名前だけにして欲しいものだわ」
「僕は本気なのだが」
「なおさら悪いわ。結婚の条件として愛だけを提示するだなんて、取引をするつもりがないと主張しているのと同じことでしょう。随分と安く見られたものね」
この男から差し出される愛に、ヴィクトリアを買えるほどの価値などない。それを承知の上で煙に巻こうとしているのか、まさか言葉通り本気で求愛をしているのか。
はしたなくも舌打ちしてしまいそうだ。馬鹿にしている、と何度思ったか知れない。
内心の苛立ちを悟られないよう、けれど機嫌を損ねたことは伝わるように、ヴィクトリアはカップを置いて視線を険しくさせた。
そこへ、これまで黙っていたリアムが口を開いた。
「貴殿が私の兄であるかどうかはどうでもいいが。内定の段階とはいえ婚約者のいる相手に対する言葉とは思えない。撤回していただこう」
ヴィクトリアの従者としてではなく、リアム・バルフォアという貴族としての言葉だった。エルベールはリアムに視線を向け、大袈裟なほど親しげに声を和らげる。
「今の名前はリアム、だったな。それは失礼した」
そして、どこか面白がるように目を細めた。
「正直なところ、弟を見つけられたなら、すぐにでも連れ帰るつもりだった。悪い環境にいると思っていたから。ところが、それと確信する相手は貴族家の養子となり、恵まれた立場にいる。予想していなかったから困惑したとも。しかも、血縁関係などどうでもいいと言う。僕は一体どうしたらいいんだろうね?」
「弟はもう死んだものと諦めていただくほかない。私はお嬢様に一生を捧げると誓っている。……申し訳ないが、記憶にない家族のことは身内と思えない。貴殿が弟を探す理由も聞かないうちなら、なおさら」
軽快に言葉を紡いでいたエルベールは、ここで初めて口を閉ざした。
この男がハーバートとして接触してきた当初は、ただ弟を探しているだけなのだろうと考えていた。だが、その正体がエルベールだと判明すれば、その予想は覆る。
帝国の軍事を担うと期待された男が、それだけのために動くはずがない。
「……まったく。信頼されていないな、僕は」
「信頼に足る態度を見せてもらっていないのだもの」
「僕の言葉に嘘はない。生き別れの弟を探してここに来た。身分を偽っていたのは、その方がいろいろと動きやすいからだ。高貴な立場では行ける場所も限られる。しかし、ヴィクトリア嬢」
まっすぐとした視線が突き刺さって、ヴィクトリアはすました顔でそれを受け流した。
「あなたと出会って考えが変わったんだ。これは、僕が欲しいものをまとめて手に入れられるチャンスだと」
「欲しいもの?」
「有能な妻、生き別れの弟、それに、豊かな領地」
フォルジュ家はイザリア帝国の宮廷貴族だ。もとは地方の領主に仕える男爵だったところを、その有能さから時の皇帝に召し上げられ、代々のし上がってきた。
実力ひとつで上り詰めた家系。それ故に、領地を持つ大貴族との確執は強いのだと聞く。帝国の軍事を一手に引き受ける大臣の肩書きを持ち、皇族の血を引いてさえいるのに、発言力はほかの貴族たちに劣る。フォルジュ家が帝国領土を広げたがっているのも、手に入れた土地を治めることで権力を強めたいからだという噂だ。
「アイラ領は素晴らしい。人々は活発で治安もよく、肥沃な土地、発展した文化、どれも得難いものばかりだ」
アイラの後継はヴィクトリア一人。そのヴィクトリアを、フォルジュ家に迎え入れる。――領地ごと。
ヴィクトリアは立ち上がった。
「話にならないわ」
「そうかな?」
「わたくしに利がないもの」
「僕からの愛と、帝国の名前。十分な利益だと思うが」
自信に満ちた笑みを浮かべるエルベールに見せつけるように、ヴィクトリアは傍らのリアムを引き寄せた。白い頬に手を滑らせ軽く摘まむと、それまで毅然としていた顔が緩み、嬉しそうに細められた目元がほんのりと赤らむ。
「わたくし、かわいいリアム以外からの愛は必要ないの」
「……僕よりも弟がいいと?」
「そうよ。ほかの男なんていらないの」
いつもの鬱々とした表情を落っことしたリアムが、「お嬢様……」と幸せそうにしている。
そのやりとりを見たエルベールが、すうっと笑みを消した。
「……ともかく、よく考えることだ。何が本当に利となるか、あなたなら判断できるはずだ」
何がエルベールの気に障ったのか。それまでは快活な紳士の皮を被っていたのに、今目の前にいるのはどこまでも冷徹な軍人だった。
ここで答えを出すつもりのないヴィクトリアは、退出のエスコートを求めてリアムに目配せをした。それに答えて腕を差し出したリアムは、ふと思いついた、という口調で尋ねる。
「エルベール殿。私の以前の名前は、なんと?」
「今の君に、昔の名前が必要か?」
エルベールは冷ややかに鼻を鳴らして、質問に答えないまま二人を送り出した。
行きと同じように馬車に揺られながら、ヴィクトリアは額を押さえた。
「最悪の予想が当たったわね」
まさかここまで素直に目的を吐くとは思っていなかった。弟を探しているだけなら、どれだけ良かったことか。
だが、アイラ領を狙っているという目的を簡単に明かすあたり、彼は根本的にヴィクトリアを、そしてタディリス王国を下に見ているのだろう。
「ただの結婚であっても受け入れ難いのに、領地を狙っていると分かっていて許す訳がないわ。それに、リアムのことも。……あの男、本当に弟を探しているの?」
最初に彼と出会ったときは、確かにリアムだけしか目に入っていない様子だった。しかし今日のエルベールは、どちらかと言えばヴィクトリアだけを気にしていた。リアムはついでと言わんばかりに。
ヴィクトリアを落とせばリアムがついてくると確信してのことか。それにしては不可解な反応をしていたが。
「わたくしがリアム以外いらない、と言った時、リアムを睨んだように見えたわ」
探していた生き別れの弟を、見知らぬ女が手中に収めて飼い慣らしていたなら。兄としては、その女に敵意を向ける方が理屈として通るのではないだろうか。
「私もそう思いました。それに……、弟の名前、覚えていないのではないでしょうか」
リアムの言葉に、ヴィクトリアは頷いた。
「エルベールの弟が存在しない、とまでは言わないわ。あなたと似すぎているもの。けれど、弟を探している理由は答えなかったし、弟の名前は一度も出していない。リアムを狙うのにも、何か理由がありそうね」
「個人的な恨みのように思えましたが」
何か感じるところがあったのか、リアムは眉間に皺を寄せたままだ。手を伸ばして指先で皺を伸ばしてやる。ついでに頭を撫でれば、すぐにふわりと顔が綻んだ。
「それが本当だとしたら狭量な男ね。リアムが本物の弟だとして、一緒に過ごしていたのなんてせいぜい五歳以下まででしょうに」
リアムは物心ついたときにはスラムにいたのだから、確執があったにしてもそれ以前の話だ。
ヴィクトリアはため息を零した。エルベールの目的はある程度把握できたが、謎も問題も増えるばかりだ。
リアムを取られるかと怯えていた頃の方が、家同士の話しで収まる分まだ良かった。
「ユージェニーと遊べないわ……。せっかく長期休みの半分をこちらで過ごしてくれているのに」
「早く解決してしまいましょう。どのような仕事でもこなしますので」
「ありがとう、リアム。策を練らなければいけないわね」
休暇にならない、というぼやきは、二度目のため息に溶けた。
エルベールは椅子の背もたれに体を預け、足を組んだ。
「僕はあなたの気の強さに惹かれて求婚したんだ。もちろん弟も一緒に来てくれないかとは思っていたが、そこを疑わないでもらいたい」
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ヴィクトリアは一瞬言葉を失くし、紅茶を一口飲むことで誤魔化した。そして、呆れた顔と声を作り上げる。
「まさか、そんな上辺の言葉でわたくしを丸め込めるとでも? 冗談はお名前だけにして欲しいものだわ」
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はしたなくも舌打ちしてしまいそうだ。馬鹿にしている、と何度思ったか知れない。
内心の苛立ちを悟られないよう、けれど機嫌を損ねたことは伝わるように、ヴィクトリアはカップを置いて視線を険しくさせた。
そこへ、これまで黙っていたリアムが口を開いた。
「貴殿が私の兄であるかどうかはどうでもいいが。内定の段階とはいえ婚約者のいる相手に対する言葉とは思えない。撤回していただこう」
ヴィクトリアの従者としてではなく、リアム・バルフォアという貴族としての言葉だった。エルベールはリアムに視線を向け、大袈裟なほど親しげに声を和らげる。
「今の名前はリアム、だったな。それは失礼した」
そして、どこか面白がるように目を細めた。
「正直なところ、弟を見つけられたなら、すぐにでも連れ帰るつもりだった。悪い環境にいると思っていたから。ところが、それと確信する相手は貴族家の養子となり、恵まれた立場にいる。予想していなかったから困惑したとも。しかも、血縁関係などどうでもいいと言う。僕は一体どうしたらいいんだろうね?」
「弟はもう死んだものと諦めていただくほかない。私はお嬢様に一生を捧げると誓っている。……申し訳ないが、記憶にない家族のことは身内と思えない。貴殿が弟を探す理由も聞かないうちなら、なおさら」
軽快に言葉を紡いでいたエルベールは、ここで初めて口を閉ざした。
この男がハーバートとして接触してきた当初は、ただ弟を探しているだけなのだろうと考えていた。だが、その正体がエルベールだと判明すれば、その予想は覆る。
帝国の軍事を担うと期待された男が、それだけのために動くはずがない。
「……まったく。信頼されていないな、僕は」
「信頼に足る態度を見せてもらっていないのだもの」
「僕の言葉に嘘はない。生き別れの弟を探してここに来た。身分を偽っていたのは、その方がいろいろと動きやすいからだ。高貴な立場では行ける場所も限られる。しかし、ヴィクトリア嬢」
まっすぐとした視線が突き刺さって、ヴィクトリアはすました顔でそれを受け流した。
「あなたと出会って考えが変わったんだ。これは、僕が欲しいものをまとめて手に入れられるチャンスだと」
「欲しいもの?」
「有能な妻、生き別れの弟、それに、豊かな領地」
フォルジュ家はイザリア帝国の宮廷貴族だ。もとは地方の領主に仕える男爵だったところを、その有能さから時の皇帝に召し上げられ、代々のし上がってきた。
実力ひとつで上り詰めた家系。それ故に、領地を持つ大貴族との確執は強いのだと聞く。帝国の軍事を一手に引き受ける大臣の肩書きを持ち、皇族の血を引いてさえいるのに、発言力はほかの貴族たちに劣る。フォルジュ家が帝国領土を広げたがっているのも、手に入れた土地を治めることで権力を強めたいからだという噂だ。
「アイラ領は素晴らしい。人々は活発で治安もよく、肥沃な土地、発展した文化、どれも得難いものばかりだ」
アイラの後継はヴィクトリア一人。そのヴィクトリアを、フォルジュ家に迎え入れる。――領地ごと。
ヴィクトリアは立ち上がった。
「話にならないわ」
「そうかな?」
「わたくしに利がないもの」
「僕からの愛と、帝国の名前。十分な利益だと思うが」
自信に満ちた笑みを浮かべるエルベールに見せつけるように、ヴィクトリアは傍らのリアムを引き寄せた。白い頬に手を滑らせ軽く摘まむと、それまで毅然としていた顔が緩み、嬉しそうに細められた目元がほんのりと赤らむ。
「わたくし、かわいいリアム以外からの愛は必要ないの」
「……僕よりも弟がいいと?」
「そうよ。ほかの男なんていらないの」
いつもの鬱々とした表情を落っことしたリアムが、「お嬢様……」と幸せそうにしている。
そのやりとりを見たエルベールが、すうっと笑みを消した。
「……ともかく、よく考えることだ。何が本当に利となるか、あなたなら判断できるはずだ」
何がエルベールの気に障ったのか。それまでは快活な紳士の皮を被っていたのに、今目の前にいるのはどこまでも冷徹な軍人だった。
ここで答えを出すつもりのないヴィクトリアは、退出のエスコートを求めてリアムに目配せをした。それに答えて腕を差し出したリアムは、ふと思いついた、という口調で尋ねる。
「エルベール殿。私の以前の名前は、なんと?」
「今の君に、昔の名前が必要か?」
エルベールは冷ややかに鼻を鳴らして、質問に答えないまま二人を送り出した。
行きと同じように馬車に揺られながら、ヴィクトリアは額を押さえた。
「最悪の予想が当たったわね」
まさかここまで素直に目的を吐くとは思っていなかった。弟を探しているだけなら、どれだけ良かったことか。
だが、アイラ領を狙っているという目的を簡単に明かすあたり、彼は根本的にヴィクトリアを、そしてタディリス王国を下に見ているのだろう。
「ただの結婚であっても受け入れ難いのに、領地を狙っていると分かっていて許す訳がないわ。それに、リアムのことも。……あの男、本当に弟を探しているの?」
最初に彼と出会ったときは、確かにリアムだけしか目に入っていない様子だった。しかし今日のエルベールは、どちらかと言えばヴィクトリアだけを気にしていた。リアムはついでと言わんばかりに。
ヴィクトリアを落とせばリアムがついてくると確信してのことか。それにしては不可解な反応をしていたが。
「わたくしがリアム以外いらない、と言った時、リアムを睨んだように見えたわ」
探していた生き別れの弟を、見知らぬ女が手中に収めて飼い慣らしていたなら。兄としては、その女に敵意を向ける方が理屈として通るのではないだろうか。
「私もそう思いました。それに……、弟の名前、覚えていないのではないでしょうか」
リアムの言葉に、ヴィクトリアは頷いた。
「エルベールの弟が存在しない、とまでは言わないわ。あなたと似すぎているもの。けれど、弟を探している理由は答えなかったし、弟の名前は一度も出していない。リアムを狙うのにも、何か理由がありそうね」
「個人的な恨みのように思えましたが」
何か感じるところがあったのか、リアムは眉間に皺を寄せたままだ。手を伸ばして指先で皺を伸ばしてやる。ついでに頭を撫でれば、すぐにふわりと顔が綻んだ。
「それが本当だとしたら狭量な男ね。リアムが本物の弟だとして、一緒に過ごしていたのなんてせいぜい五歳以下まででしょうに」
リアムは物心ついたときにはスラムにいたのだから、確執があったにしてもそれ以前の話だ。
ヴィクトリアはため息を零した。エルベールの目的はある程度把握できたが、謎も問題も増えるばかりだ。
リアムを取られるかと怯えていた頃の方が、家同士の話しで収まる分まだ良かった。
「ユージェニーと遊べないわ……。せっかく長期休みの半分をこちらで過ごしてくれているのに」
「早く解決してしまいましょう。どのような仕事でもこなしますので」
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