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第二章 安土桃山時代編
疑惑の愛宕山連歌会
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「信長さま、こうでしょうか?」
明智光秀は式鬼≪銀鋼 零≫に乗り込み、機体を三回転させて天に向って拳を突き上げた。
「まあまあだな。悪くないぞ。それが<トリプルアクセル 天龍昇>という技だ」
信長は光秀の成長に対して、満足げにうなづいた。
(あれ、また、いろいろとイケない動画を見たんでしょうかね?)
安東要は興味深げにささやいた。
(自分の子孫の演技は間違いなく見てるようじゃ。最後の奴は適当だろう)
晴明はいい加減な推理で断言した。
「だが、光秀、わしにはとっておきがあるのじゃ。<スクエアアクセル! 超天龍昇!> しかも、これを技を発動すれば10秒間無敵タイムで、さらに動く速さが通常の4倍になるのじゃ!」
信長は四回転ジャンプから、超天龍昇を放っていた。
(あれ、何か混じってません? 普通は四回転ジャンプとか、クアドループジャンプというのが正式名称のはず?)
安東要が鋭い突っ込みをした。
(たぶん、あれは英霊とかでバトルするあれとか、機動なんとかが混じっておる。もう何が元ネタか解らないというある意味、オリジナル必殺技じゃな)
清明が何を言いたいかは、かなりのアニメオタクしか解らない話であった。
「信長さま、私も動画を見ていて、実は必殺技を思いつきました」
明智光秀は黒い碁石のようなものを自分の周囲にばら撒いて、刀を地面に突き刺した。
黒い石は光秀を中心に同心円状に広がり、まるで光秀を護る守護陣のようだった。
光秀の愛刀は備前近景で、備前は日本刀の聖地と言われ、護り刀としてほとんどの武将が所持していた。日本刀の約半分が備前刀といわれている。
「これが攻防一体の技<黒石陣>です。この黒い霊石は姿の見えない敵に反応して炙り出し、攻撃は背中の銃<種子島>で行います」
光秀は得意げに技の解説をした。
「光秀、おぬしもやるようになったの。なかなかじゃな」
信長は光秀の工夫に満足げにうなづく。
(あれもわかる人には解るし、なかなか高度なネタだな。しかも、技の弱点を克服する工夫もされている。ハイセンスオタクにしか解らない技と言えよう)
晴明が説明してくれたが、そもそも意味がわからない。
(僕も何が何だか分からなくなってきました。確か、車〇〇〇の風〇の〇〇〇ですかね?)
メガネ君が謎解きに加わる。
(そのあたりじゃな。明智光秀は清和源氏、清和天皇の流れを汲む武家の名門で美濃で栄えた土岐氏の末裔じゃ。土岐氏は一介の油売り斉藤道三に国を乗っ取られて、光秀は道三に仕えていたが、弘治2年〔1556年〕に長良川の戦い〔道三、義龍父子の争い〕で義龍に明智城を攻められ一族が離散して、その後、越前の朝倉義景に10年間仕え、将軍足利義昭に仕えたり、信長に見出されるまでは結構、大変な人生を歩んでいる。で、明智光秀の先祖に源頼光という武将がいて、藤原保昌と四天王 の渡辺綱と坂田公時、碓井貞光と卜部季武などと大江山の酒呑童子討伐したり、土蜘蛛を退治したり、京都の一条戻り橋で鬼を切ったりと妖怪バスターズ的活躍をしている。ちなみに、坂田公時は相模国の足柄山でクマと相撲を取ったという金太郎だけど、その怪力無双の噂を聞いた源頼光がスカウトしたらしい。明智光秀は結構、正当な源氏の血筋で、実は<天鴉>の剣の民かもしれないということじゃな。しかも、妖怪バスターズ的能力も秘めてるということじゃ。それはともかく、この福知山市の大江山の酒呑童子討伐ルートと、明智光秀の本能寺進軍ルートがぴったり重なるんじゃ。どちらも京都から北西の方向で『老の坂』を必ず通るのだが、古代からここは関所があったり、交通の要衝でもある)
晴明はここでお茶をすすって一息入れた。
声だけの存在の神霊のはずだが、実体があるのかもしれない。
(それはどういことなんですか?)
安東要はちょっと身を乗り出した。
(まあ、単ある偶然とも言えるが、6月2日の本能寺の変の数日前、5月27日に明智光秀は愛宕山の勝軍地蔵に戦勝祈願に向かっておみくじを何回も引いていたりする。一説においては凶ばかりでたとか。そして、28日に愛宕百韻の連歌会であの有名な『ときは今天が下しる五月哉』という発句を詠むことになる)
晴明の話をメガネ君が引き継ぐ。
(明智光秀が本能寺の変を起こす決意を詠んだという句ですね。『ときは今天が下しる五月哉』は『土岐氏の末裔である光秀がまさに今天下を治める五月になった』という意味に解釈されていますね。その続きは『水上まさる庭の夏山』行祐という句で光秀の決意に念を押し、『花落つる池の流れをせきとめて』紹巴と詠まれて、当時の人気連歌師の紹巴が「暗殺計画は失敗するのでやめた方がいい」と忠告したという解釈もあるといいますね)
(そうじゃ、連歌師の紹巴は後に本能寺の変を察知しながら報告しなかったと秀吉から詰問され、自らの日記を改ざんして『ときは今天が下なる五月哉』という5月の情景を詠んだ句だったと弁明した。連歌や和歌は暗号を含んでいて、過去の出来事と重ねあわせることによって、余人に知られることなく真意を伝えることができるという。その解釈の秘伝を伝えたものを『古今伝授』といい、天皇家や公家の間で一子相伝で伝えられている。今はその『古今伝授』は細川藤孝〔幽斎〕に伝えられてるそうじゃ)
その時、信長が突然、話に割り込んできた。
(清明殿、今、光秀に問いただしていたのだが、その愛宕山連歌会に碧い目をした金髪の女がいたらしい。イエスズ会代表として)
(まさか、それはイスパニア帝国の手の者では?)
晴明もあまりの展開に少し驚いていた。
(その連歌会、怪しいことこの上ない。どうにか乗り込むことはできぬか?)
(わかりました。移動迷宮をそちらの時代に転移させてみます。さて、本能寺の変の本当の黒幕に会えるかもしれませんのう)
急展開に安東要も言葉がでなかった。
『古今伝授』の伝承者、細川幽斎、人気連歌師の紹巴、謎の金髪碧眼の女、本能寺の変のすべての謎を解くために安倍清明とオタク軍団と織田信長は時を少し遡る。
明智光秀が涙目であるのは言うまでもないが、意外とこの方も何者かにハメられた説が有力になってきた。
東日本を崩壊から救うという目的はどうなったんだ?という話もあるが、ちゃんと話は繋がるので安心してねと言っておく。
-----------あとがき---------------------------------------------------
次回、『愛宕山連歌会の戦い』とかですかね。
ついに敵の正体が少しは明らかになってくるかも?
和歌というのは結構、奥深いと言うか、過去に詠まれた和歌の意味を重ねあわせることによって、解釈が違ってきます。
『古今伝授』の話もなろうでは数件ヒットするけど、あまりその謎には触れられていない感じもしますが、結構、面白いです。
明智光秀は式鬼≪銀鋼 零≫に乗り込み、機体を三回転させて天に向って拳を突き上げた。
「まあまあだな。悪くないぞ。それが<トリプルアクセル 天龍昇>という技だ」
信長は光秀の成長に対して、満足げにうなづいた。
(あれ、また、いろいろとイケない動画を見たんでしょうかね?)
安東要は興味深げにささやいた。
(自分の子孫の演技は間違いなく見てるようじゃ。最後の奴は適当だろう)
晴明はいい加減な推理で断言した。
「だが、光秀、わしにはとっておきがあるのじゃ。<スクエアアクセル! 超天龍昇!> しかも、これを技を発動すれば10秒間無敵タイムで、さらに動く速さが通常の4倍になるのじゃ!」
信長は四回転ジャンプから、超天龍昇を放っていた。
(あれ、何か混じってません? 普通は四回転ジャンプとか、クアドループジャンプというのが正式名称のはず?)
安東要が鋭い突っ込みをした。
(たぶん、あれは英霊とかでバトルするあれとか、機動なんとかが混じっておる。もう何が元ネタか解らないというある意味、オリジナル必殺技じゃな)
清明が何を言いたいかは、かなりのアニメオタクしか解らない話であった。
「信長さま、私も動画を見ていて、実は必殺技を思いつきました」
明智光秀は黒い碁石のようなものを自分の周囲にばら撒いて、刀を地面に突き刺した。
黒い石は光秀を中心に同心円状に広がり、まるで光秀を護る守護陣のようだった。
光秀の愛刀は備前近景で、備前は日本刀の聖地と言われ、護り刀としてほとんどの武将が所持していた。日本刀の約半分が備前刀といわれている。
「これが攻防一体の技<黒石陣>です。この黒い霊石は姿の見えない敵に反応して炙り出し、攻撃は背中の銃<種子島>で行います」
光秀は得意げに技の解説をした。
「光秀、おぬしもやるようになったの。なかなかじゃな」
信長は光秀の工夫に満足げにうなづく。
(あれもわかる人には解るし、なかなか高度なネタだな。しかも、技の弱点を克服する工夫もされている。ハイセンスオタクにしか解らない技と言えよう)
晴明が説明してくれたが、そもそも意味がわからない。
(僕も何が何だか分からなくなってきました。確か、車〇〇〇の風〇の〇〇〇ですかね?)
メガネ君が謎解きに加わる。
(そのあたりじゃな。明智光秀は清和源氏、清和天皇の流れを汲む武家の名門で美濃で栄えた土岐氏の末裔じゃ。土岐氏は一介の油売り斉藤道三に国を乗っ取られて、光秀は道三に仕えていたが、弘治2年〔1556年〕に長良川の戦い〔道三、義龍父子の争い〕で義龍に明智城を攻められ一族が離散して、その後、越前の朝倉義景に10年間仕え、将軍足利義昭に仕えたり、信長に見出されるまでは結構、大変な人生を歩んでいる。で、明智光秀の先祖に源頼光という武将がいて、藤原保昌と四天王 の渡辺綱と坂田公時、碓井貞光と卜部季武などと大江山の酒呑童子討伐したり、土蜘蛛を退治したり、京都の一条戻り橋で鬼を切ったりと妖怪バスターズ的活躍をしている。ちなみに、坂田公時は相模国の足柄山でクマと相撲を取ったという金太郎だけど、その怪力無双の噂を聞いた源頼光がスカウトしたらしい。明智光秀は結構、正当な源氏の血筋で、実は<天鴉>の剣の民かもしれないということじゃな。しかも、妖怪バスターズ的能力も秘めてるということじゃ。それはともかく、この福知山市の大江山の酒呑童子討伐ルートと、明智光秀の本能寺進軍ルートがぴったり重なるんじゃ。どちらも京都から北西の方向で『老の坂』を必ず通るのだが、古代からここは関所があったり、交通の要衝でもある)
晴明はここでお茶をすすって一息入れた。
声だけの存在の神霊のはずだが、実体があるのかもしれない。
(それはどういことなんですか?)
安東要はちょっと身を乗り出した。
(まあ、単ある偶然とも言えるが、6月2日の本能寺の変の数日前、5月27日に明智光秀は愛宕山の勝軍地蔵に戦勝祈願に向かっておみくじを何回も引いていたりする。一説においては凶ばかりでたとか。そして、28日に愛宕百韻の連歌会であの有名な『ときは今天が下しる五月哉』という発句を詠むことになる)
晴明の話をメガネ君が引き継ぐ。
(明智光秀が本能寺の変を起こす決意を詠んだという句ですね。『ときは今天が下しる五月哉』は『土岐氏の末裔である光秀がまさに今天下を治める五月になった』という意味に解釈されていますね。その続きは『水上まさる庭の夏山』行祐という句で光秀の決意に念を押し、『花落つる池の流れをせきとめて』紹巴と詠まれて、当時の人気連歌師の紹巴が「暗殺計画は失敗するのでやめた方がいい」と忠告したという解釈もあるといいますね)
(そうじゃ、連歌師の紹巴は後に本能寺の変を察知しながら報告しなかったと秀吉から詰問され、自らの日記を改ざんして『ときは今天が下なる五月哉』という5月の情景を詠んだ句だったと弁明した。連歌や和歌は暗号を含んでいて、過去の出来事と重ねあわせることによって、余人に知られることなく真意を伝えることができるという。その解釈の秘伝を伝えたものを『古今伝授』といい、天皇家や公家の間で一子相伝で伝えられている。今はその『古今伝授』は細川藤孝〔幽斎〕に伝えられてるそうじゃ)
その時、信長が突然、話に割り込んできた。
(清明殿、今、光秀に問いただしていたのだが、その愛宕山連歌会に碧い目をした金髪の女がいたらしい。イエスズ会代表として)
(まさか、それはイスパニア帝国の手の者では?)
晴明もあまりの展開に少し驚いていた。
(その連歌会、怪しいことこの上ない。どうにか乗り込むことはできぬか?)
(わかりました。移動迷宮をそちらの時代に転移させてみます。さて、本能寺の変の本当の黒幕に会えるかもしれませんのう)
急展開に安東要も言葉がでなかった。
『古今伝授』の伝承者、細川幽斎、人気連歌師の紹巴、謎の金髪碧眼の女、本能寺の変のすべての謎を解くために安倍清明とオタク軍団と織田信長は時を少し遡る。
明智光秀が涙目であるのは言うまでもないが、意外とこの方も何者かにハメられた説が有力になってきた。
東日本を崩壊から救うという目的はどうなったんだ?という話もあるが、ちゃんと話は繋がるので安心してねと言っておく。
-----------あとがき---------------------------------------------------
次回、『愛宕山連歌会の戦い』とかですかね。
ついに敵の正体が少しは明らかになってくるかも?
和歌というのは結構、奥深いと言うか、過去に詠まれた和歌の意味を重ねあわせることによって、解釈が違ってきます。
『古今伝授』の話もなろうでは数件ヒットするけど、あまりその謎には触れられていない感じもしますが、結構、面白いです。
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