7 / 48
第一章 現代過去転生編
異世界侵攻軍
しおりを挟む
(名誉の戦死って、どういうことなんですか?)
安東要は晴明に向けて心話で再び尋ねた。
(東日本大震災を起こした本当の敵である≪異世界侵攻軍≫との戦いで、おねしの親父さん、安東龍一郎は戦死したのだ)
(≪異世界侵攻軍≫? それは一体、何なんですか?)
(安東君、それは私たち秘密結社≪天鴉≫のメンバーが何千年、いや、何万年にも渡って戦ってきた相手よ。その名の通り、異世界からの侵略者よ)
神沢優は晴明の声も要の心話も聞こえるらしくて、心話に混じって疑問に答えてくれた。
(そう、おねしは親父さんが亡くなってから、その地盤を引き継いで政治家の道を歩みはじめた。だが、この事実は伏せられた。それが親父さんの遺言だったからだ)
(どうして、そんな重要なことを隠したんですか?)
(親心というやつだろう。その戦いにお前を巻き込みたくなかったんだろうと思う)
(でも、もう、今は巻き込まれていますよ)
(そうじゃな。それはお前が真実に気づいて、それを願ったからじゃ。すでに不退転の覚悟ができている。そんなに恥ずかしい二―ハイソックスをはいた男の娘になってもお前の心は揺らぐことはなくたったということじゃ)
(いや、できれば脱ぎたいです。いつまでこんな恰好してればいいんですか? 男の娘になることが東日本を救うことに繋がるとは思えないんですが……)
(わかってないのう。男の娘になることで、お前は神沢優と月読波奈という最強の仲間を得た)
(そうよ。波奈はそんなかなめちんがとっても好き☆)
(申し訳ないが、わたしもそのスタイル以外のかなめちんを受け入れつもりはない)
(神沢先輩! あなたまで! 硬派なセリフ回しでとんでもないことを言うのはやめてください!)
(そうそう。私たちはカリスマレイヤーグループ≪神波安≫として今後も活動の予定です。新曲のCD&DVDもすでに予約でいっぱいよ)
(グループ名が変わっちゃってるじゃないですか! いつのまに僕はデビューしちゃったんですか? あの悪夢のコスプレ映像がDVDになって永久に保存されるとか、勘弁してください!)
(すでにライブ映像はネット経由のPPVで全世界に配信され、ユーチューブでもハイライト映像の再生回数が100億回を突破、満を持してのDVD発売よ。全世界のファンが待ってるのよ)
(≪天鴉≫には神沢家のような戦士の家系である『剣の民』、月読家のような『鏡の民』があるが、おぬしは『勾玉の民』だった安東龍一郎の血を引いている。人を魅了するカリスマ性は半端ないようじゃな)
(全然、褒められてる気がしないんですが)
そういえば、さっきから皮膚が火照って焼けるような、ギラつくような視線が安東要の身体に向けられていた。
彼らは要たちを包囲するように冥途カフェの席を占領していたが、東京ビックサイトから流れてきた女装カメラ小僧やオタクのコスプレーヤーのようだった。
今は何故かその衣装は安東要と同じブルーのミニスカポリスに黒い二―ハイソックスに統一されていた。制帽には星印に≪KSS≫という文字が重ねられたマークがある。
こんな短時間にお揃いの制服をどうやって大量に調達できたのか謎であるが、熱狂的なファンなのかもしれない。
安東要は自分の男の娘としての魅力に戦慄した。
「お客さま、そろそろお時間となりました。延長されますか?」
清楚な黒服に白いエプロン姿の冥途が声をかけてきた。
そういえば、この冥途カフェは時間制であった。
(話もあらかた終ったし、そろそろ、お会計するかのう)
要は晴明の言葉で席を立った。
「行ってらしゃいませ、ご主人様。冥途の土産にお菓子のプレゼントです。お持ちください」
冥途がにっこりと笑って、唐草模様の風呂敷づつみを手渡してくれた。
古風過ぎる。高齢者は一発でやられそうな粋なサービスである。
「プレゼント、嬉しい。かなめちん、波奈がもらっとくね」
月読波奈はプレゼントを両手いっぱいに抱えてご満悦である。
神沢優も無言でついてきている。
ザザッ!
要が店を出ようとした瞬間、女装カメラ小僧やオタクのコスプレーヤーが一斉に立ち上がり、会計に向かった。それはまるで鉄の規律で鍛えられた軍隊のような統率であった。
外に出ると空は晴れていて、アキバは歩行者天国になっていた。
この世界では3月1日から3日まで女の子の祝日となっていて、それに連動して数年前から『女だらけのコミックマーケット』が開催されていると波奈ちゃんが教えてくれた。
東日本の大震災や父親の安東龍一郎の死の謎を知って、安東要の心は空のように晴れやかではなかった。
だが、何か自分の心境が徐々に変化しているように思えた。
それはかつてへタレでダメダメだった安東要にとってはいい変化の兆しであるのは間違いなかった。
「ああっ! プレゼントがーーーーー!」
月読波奈がすっとんきょうな声で叫んだ。
安東要が振り返ると、冥途カフェでもらった唐草模様のプレゼントの包みが空に舞い上がってしまっていた。
と思ってるうちに、唐草模様の風呂敷づつみが開いて中から無数の虫のようなものが空にばら撒かれる。
「まずい、安東君、伏せて!」
神沢優が安東要に飛びついてきて、彼を守るように道路に伏せた。
そこへ、上空から無数の虫たちが急降下して襲いかかってきた。
絶体絶命の危機に無数の影が駆けつけてきて、安東要を守護する壁を作った。
直後、爆発音と共に何かがさく裂するような風圧が襲ってきた。
「ドローン爆弾よ。大丈夫だった? 安東君」
神沢優に支えられて顔を上げると、青いミニスカポリスの制服に黒の二―ハイソックス姿のオタクたちが、強化アルミ合金製の盾を構えて、安東要を守るように守備円陣を組んでいた。
(そして、彼らこそが、わしの組織した安東要親衛隊じゃ。彼らの手首にはめた≪妄想式超光速7Dプリンター≫で衣装も武器も盾も念じるだけで一瞬で出現させることができるのじゃ。わしの陰陽道も凄いが、≪天鴉≫の超科学力も侮れんのう)
確かに、オタクたちの手首には青いモバイルウォッチがはめられている。
そんな超科学兵器を妄想たくましいオタクに持たして大丈夫なのか?
そして、たった数時間でそんな部隊を組織してしまう安倍清明の実力に、安東要はあきれて空いた口が塞がらなかった。
-----------あとがき---------------------------------------------------
超兵器である≪妄想式超高速7Dプリンター≫ですが、要は某人気アニメの空中窒素固定装置のようなものです。意味が分からない人はググってみよう。
ノーベル賞とキューティーハニー
http://hama-1987.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-d3d5.html
3Dプリンタの次は、もちろん4Dプリンタだ…ぐにゃぐにゃのソフトロボットも作れる
http://jp.techcrunch.com/2015/04/25/20150424welcome-to-the-age-of-4d-printers/
3Dプリンターはおなじみですが、4Dプリンタも開発されているようです。
7Dプリンターも夢ではないかも?
次回は『激闘! アキバの戦い!』になる予定です。
安東要は晴明に向けて心話で再び尋ねた。
(東日本大震災を起こした本当の敵である≪異世界侵攻軍≫との戦いで、おねしの親父さん、安東龍一郎は戦死したのだ)
(≪異世界侵攻軍≫? それは一体、何なんですか?)
(安東君、それは私たち秘密結社≪天鴉≫のメンバーが何千年、いや、何万年にも渡って戦ってきた相手よ。その名の通り、異世界からの侵略者よ)
神沢優は晴明の声も要の心話も聞こえるらしくて、心話に混じって疑問に答えてくれた。
(そう、おねしは親父さんが亡くなってから、その地盤を引き継いで政治家の道を歩みはじめた。だが、この事実は伏せられた。それが親父さんの遺言だったからだ)
(どうして、そんな重要なことを隠したんですか?)
(親心というやつだろう。その戦いにお前を巻き込みたくなかったんだろうと思う)
(でも、もう、今は巻き込まれていますよ)
(そうじゃな。それはお前が真実に気づいて、それを願ったからじゃ。すでに不退転の覚悟ができている。そんなに恥ずかしい二―ハイソックスをはいた男の娘になってもお前の心は揺らぐことはなくたったということじゃ)
(いや、できれば脱ぎたいです。いつまでこんな恰好してればいいんですか? 男の娘になることが東日本を救うことに繋がるとは思えないんですが……)
(わかってないのう。男の娘になることで、お前は神沢優と月読波奈という最強の仲間を得た)
(そうよ。波奈はそんなかなめちんがとっても好き☆)
(申し訳ないが、わたしもそのスタイル以外のかなめちんを受け入れつもりはない)
(神沢先輩! あなたまで! 硬派なセリフ回しでとんでもないことを言うのはやめてください!)
(そうそう。私たちはカリスマレイヤーグループ≪神波安≫として今後も活動の予定です。新曲のCD&DVDもすでに予約でいっぱいよ)
(グループ名が変わっちゃってるじゃないですか! いつのまに僕はデビューしちゃったんですか? あの悪夢のコスプレ映像がDVDになって永久に保存されるとか、勘弁してください!)
(すでにライブ映像はネット経由のPPVで全世界に配信され、ユーチューブでもハイライト映像の再生回数が100億回を突破、満を持してのDVD発売よ。全世界のファンが待ってるのよ)
(≪天鴉≫には神沢家のような戦士の家系である『剣の民』、月読家のような『鏡の民』があるが、おぬしは『勾玉の民』だった安東龍一郎の血を引いている。人を魅了するカリスマ性は半端ないようじゃな)
(全然、褒められてる気がしないんですが)
そういえば、さっきから皮膚が火照って焼けるような、ギラつくような視線が安東要の身体に向けられていた。
彼らは要たちを包囲するように冥途カフェの席を占領していたが、東京ビックサイトから流れてきた女装カメラ小僧やオタクのコスプレーヤーのようだった。
今は何故かその衣装は安東要と同じブルーのミニスカポリスに黒い二―ハイソックスに統一されていた。制帽には星印に≪KSS≫という文字が重ねられたマークがある。
こんな短時間にお揃いの制服をどうやって大量に調達できたのか謎であるが、熱狂的なファンなのかもしれない。
安東要は自分の男の娘としての魅力に戦慄した。
「お客さま、そろそろお時間となりました。延長されますか?」
清楚な黒服に白いエプロン姿の冥途が声をかけてきた。
そういえば、この冥途カフェは時間制であった。
(話もあらかた終ったし、そろそろ、お会計するかのう)
要は晴明の言葉で席を立った。
「行ってらしゃいませ、ご主人様。冥途の土産にお菓子のプレゼントです。お持ちください」
冥途がにっこりと笑って、唐草模様の風呂敷づつみを手渡してくれた。
古風過ぎる。高齢者は一発でやられそうな粋なサービスである。
「プレゼント、嬉しい。かなめちん、波奈がもらっとくね」
月読波奈はプレゼントを両手いっぱいに抱えてご満悦である。
神沢優も無言でついてきている。
ザザッ!
要が店を出ようとした瞬間、女装カメラ小僧やオタクのコスプレーヤーが一斉に立ち上がり、会計に向かった。それはまるで鉄の規律で鍛えられた軍隊のような統率であった。
外に出ると空は晴れていて、アキバは歩行者天国になっていた。
この世界では3月1日から3日まで女の子の祝日となっていて、それに連動して数年前から『女だらけのコミックマーケット』が開催されていると波奈ちゃんが教えてくれた。
東日本の大震災や父親の安東龍一郎の死の謎を知って、安東要の心は空のように晴れやかではなかった。
だが、何か自分の心境が徐々に変化しているように思えた。
それはかつてへタレでダメダメだった安東要にとってはいい変化の兆しであるのは間違いなかった。
「ああっ! プレゼントがーーーーー!」
月読波奈がすっとんきょうな声で叫んだ。
安東要が振り返ると、冥途カフェでもらった唐草模様のプレゼントの包みが空に舞い上がってしまっていた。
と思ってるうちに、唐草模様の風呂敷づつみが開いて中から無数の虫のようなものが空にばら撒かれる。
「まずい、安東君、伏せて!」
神沢優が安東要に飛びついてきて、彼を守るように道路に伏せた。
そこへ、上空から無数の虫たちが急降下して襲いかかってきた。
絶体絶命の危機に無数の影が駆けつけてきて、安東要を守護する壁を作った。
直後、爆発音と共に何かがさく裂するような風圧が襲ってきた。
「ドローン爆弾よ。大丈夫だった? 安東君」
神沢優に支えられて顔を上げると、青いミニスカポリスの制服に黒の二―ハイソックス姿のオタクたちが、強化アルミ合金製の盾を構えて、安東要を守るように守備円陣を組んでいた。
(そして、彼らこそが、わしの組織した安東要親衛隊じゃ。彼らの手首にはめた≪妄想式超光速7Dプリンター≫で衣装も武器も盾も念じるだけで一瞬で出現させることができるのじゃ。わしの陰陽道も凄いが、≪天鴉≫の超科学力も侮れんのう)
確かに、オタクたちの手首には青いモバイルウォッチがはめられている。
そんな超科学兵器を妄想たくましいオタクに持たして大丈夫なのか?
そして、たった数時間でそんな部隊を組織してしまう安倍清明の実力に、安東要はあきれて空いた口が塞がらなかった。
-----------あとがき---------------------------------------------------
超兵器である≪妄想式超高速7Dプリンター≫ですが、要は某人気アニメの空中窒素固定装置のようなものです。意味が分からない人はググってみよう。
ノーベル賞とキューティーハニー
http://hama-1987.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-d3d5.html
3Dプリンタの次は、もちろん4Dプリンタだ…ぐにゃぐにゃのソフトロボットも作れる
http://jp.techcrunch.com/2015/04/25/20150424welcome-to-the-age-of-4d-printers/
3Dプリンターはおなじみですが、4Dプリンタも開発されているようです。
7Dプリンターも夢ではないかも?
次回は『激闘! アキバの戦い!』になる予定です。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
戦国を駆ける軍師・雪之丞見参!
沙羅双樹
歴史・時代
川中島の合戦で亡くなった軍師、山本勘助に嫡男がいた。その男は、山本雪之丞と言い、頭が良く、姿かたちも美しい若者であった。その日、信玄の館を訪れた雪之丞は、上洛の手段を考えている信玄に、「第二啄木鳥の戦法」を提案したのだった……。
この小説はカクヨムに連載中の「武田信玄上洛記」を大幅に加筆訂正したものです。より読みやすく面白く書き直しました。「武田信玄上洛の巻」の後は、「明智光秀の本能寺の変の巻」、さらにそのあとは鎌倉の商人、紅屋庄右衛門が登場する「商売人、紅屋庄右衛門の巻」、そして下野の国宇都宮で摩耶姫に会う「妖美なる姫君、摩耶姫の巻」へと展開していきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第13章を夏ごろからスタート予定です】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章は16世紀後半のフランスが舞台になっています。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる