安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚

坂崎文明

文字の大きさ
上 下
44 / 48
第三章 飛鳥戦国時代編

魔女ランダ VS 西郷隆盛軍団

しおりを挟む
「まったく、私のかわいいゾンビちゃんをどんどん殺してくれるわね」

 黒髪で赤い瞳の魔女ランダは14歳ぐらいの少女の姿で空中を浮遊している。
 その身体は黒いマントにすっぽりと覆われていた。
 西郷隆盛の<天牛>部隊を睨みつけている。
 
「といわれても、薩摩ん兵は強かでな」

 西郷は豪快に笑いながら答える。

「こんな可愛い女の子をいじめるなんて、西郷殿は酷いなあ」

 作戦を変えたのか、ちょっと可愛いこぶりっこになっている。

「すまんのう」

 西郷が素直に謝る。
 人が良すぎる。

「仕方ない、あれ、呼んじゃうかな」

「あれだと?」

 西郷は釣られて訊いてしまう。

「黒騎士ゾンビ13サーティーン!」

 魔女ランダは高らかに宣言した。
 黒騎士は確か一体しかいないはずなのに、13体の黒騎士が現れた。
 そのまま<天牛>部隊に襲いかかる。
 黄金色に輝く重機動ボトムストライカー<天牛>が、盾を揃えて十三機の黒騎士の剣戟けんげきを防ぎ切る。
 白銀色に輝く高速ボトムストライカー<天狼>がその隙間から躍り出て抜刀攻撃を仕掛ける。
 その中でも桐野利秋こと人斬り半次郎の動きは凄まじく、神速の機動力で黒騎士に斬撃を叩き込んでいく。
 
「一丁あがり」

 桐野がつぶやくと、一体の黒騎士が膝を折って崩れ落ちた。
 装甲はボロボロになっていて、桐野の白銀の聖刀<黒霧くろきり>の前に切り刻まれていた。
 
「不死身の騎士か。厄介ね」

 ゾンビマスター魔女ランダでも苦手なものはあるらしい。

「魔女殿、そろそろ降参してはどげんけ?」

 西郷がとぼけた口調でいう。

「黒騎士ちゃんを全部倒してからいいなさい」

 魔女ランダはちょっとイラっとしていう。

「まあ。時間ん問題じゃっどんね」

 のんきな薩摩弁が魔女ランダの感情をかえって逆撫でしている。
 だが、西郷の言うことももっともだった。
 <天牛>の鉄壁の防御、<天狼>の攻撃力、そして不死身であることを考え合わせると、黒騎士ゾンビであっても倒されるのは時間の問題だった。

「さて、そろそろ私が決着をつけるかな」

 そして、ここで更なる戦力が投入されることになる。
 ハネケの純白の<ボトムドール>である。
 華奢な美少女型の<ボトムストライカー>なのだが、元々<ねじまき姫>から貰った特殊な機体であり、今ではハネケの愛機になっている。

 ハネケは背中の聖刀をゆっくりと抜き去った。
 銀色に輝く聖刀の名は<オリハルコン>という。
 十二聖刀のひとつで、古代ギリシャの哲学者プラトンによれば、伝説の古代アトランティス大陸にあったという幻の金属の名前に由来する。

「攻城刀技<グレートソード>!」

 ハネケの聖刀<オリハルコン>が黄金色に輝き、巨大な光に包まれた。
 エネルギーが膨張して巨大化した聖刀を一気に横にいだ。
 残り十二機の黒騎士が上下に見事に両断されて、爆炎につつまれていく。
 あまりのエネルギー量に分断された機体が一瞬で蒸発した。

「一体、なに?」

 魔女ランダが一瞬、何が起こったのか把握できないでいる。
 数千年の時を生きていた彼女にしても滅多にないことである。 

「嘘じゃろ?」

 西郷もさすがに開いた口がふさがらない。

「十二丁あがり、かしらね」

 ハネケは久々に気分がすっきりしているようだ。

「凄かおなごがおっもんだ」

 いつもクールな桐野もあまりの出来事に薩摩弁が出てしまっていた。

「……まあ、仕方ないか。時間は十分稼げたし、この勝負、次回に持ち越しね」

 魔女ランダは負け惜しみ言いながら、瞬間移動テレポーテーションで姿をかき消す。
 遥か数十キロ先に徳川家康軍団と<ブラックナイト>が撤退していく姿が見えていた。
 もう追いつきそうになかった。
 その時、旗艦<天龍>に<ブラックナイト>からの通信が入った。

「信長殿、今回は引き分けに終わったが、鉄壁の要塞『小田原城』で待っている。また会おう!」

 一方的にそう言い放つのはベアトリスナイトのリカウド・バウアーだった。

「バウアー殿、また会えるのを楽しみにしている」

 信長も余裕の笑みで答える。
 お互いに被害は甚大なのだが、そこは大人のやり取りであった。
 通信が切れると、流石の信長も胸を撫で下ろした。
 それほど薄氷の引き分けであった。
 
 ここに関ケ原の戦いは決着した。
 意外な伏兵、ハネケの聖刀<オリハルコン>の豪刀伝説は信長たちの西軍で長く語り継がれることになる。
 その実情がグタグタのドローだとしても、信長軍団の被害も甚大で追撃する余力がなかったのだ。
 その晩は金髪のオランダ人美少女ハネケを囲んで、信長、真田幸村たち戦国武将たちが酒宴で隠し芸など繰り出して賞賛したのは言うまでもないことであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

武田義信に転生したので、父親の武田信玄に殺されないように、努力してみた。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 アルファポリス第2回歴史時代小説大賞・読者賞受賞作 原因不明だが、武田義信に生まれ変わってしまった。血も涙もない父親、武田信玄に殺されるなんて真平御免、深く静かに天下統一を目指します。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

楽将伝

九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語 織田信長の親衛隊は 気楽な稼業と きたもんだ(嘘) 戦国史上、最もブラックな職場 「織田信長の親衛隊」 そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた 金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか) 天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第13章を夏ごろからスタート予定です】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章は16世紀後半のフランスが舞台になっています。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

王になりたかった男【不老不死伝説と明智光秀】

野松 彦秋
歴史・時代
妻木煕子(ツマキヒロコ)は親が決めた許嫁明智十兵衛(後の光秀)と10年ぶりに会い、目を疑う。 子供の時、自分よりかなり年上であった筈の従兄(十兵衛)の容姿は、10年前と同じであった。 見た目は自分と同じぐらいの歳に見えるのである。 過去の思い出を思い出しながら会話をするが、何処か嚙み合わない。 ヒロコの中に一つの疑惑が生まれる。今自分の前にいる男は、自分が知っている十兵衛なのか? 十兵衛に知られない様に、彼の行動を監視し、調べる中で彼女は驚きの真実を知る。 真実を知った上で、彼女が取った行動、決断で二人の人生が動き出す。 若き日の明智光秀とその妻煕子との馴れ初めからはじまり、二人三脚で戦乱の世を駆け巡る。 天下の裏切り者明智光秀と徐福伝説、八百比丘尼の伝説を繋ぐ物語。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...