上 下
30 / 48
第二章 安土桃山時代編

<ブラックナイト>侵入

しおりを挟む
「メガネ君、例のコンビネーションやるわよ!」 

 神沢優が叫ぶ。

「了解」

 メガネが答える。

「五色龍の術! 火龍召喚!」

 神沢優はサイバーグラスを外した。
 黄金の双眸が煌き、<火龍>を出現させて、その炎が<ブラックナイト>の船底を焼く。
 <ブラックナイト>の装甲が加熱していく。
 
「水龍剣、氷龍斬!」 

 そこへ、メガネの水龍剣から放たれた氷龍が襲いかかる。
 温度差によりさすがの<ブラックナイト>の装甲にも亀裂が走る。
 神沢隊の30機がそこにハンドミサイルの集中攻撃を仕掛けた。
 装甲が破損し穴が開いた。

「神沢隊、メガネ隊、全機、破損部から突入するぞ!」

 メガネの号令で<ボトムストライカー>全機、<ブラックナイト>内部に突入する。
 メガネ隊の30機はローラーブレード機動で<ブラックナイト>の内部を縦横に走り回って破壊していく。
 神沢隊はホバー機動の<ボトムストライカー>が多かった。
 
「メガネ隊長、お客さんの歓迎ですよ」

 副隊長のザクロがレーダーを見ながら報告する。
 レーダーに赤い光点が数十機、映っている。
 おそらく、<薔薇十字騎士団>だろう。

「ザクロ、お前に迎撃は任せる。俺は夜桜と一緒に<ブラックナイト>のエンジンルームを目指す。なるべく全機生還させろ」

「無茶な命令ですが、了解です」

「無事を祈る」

 メガネと夜桜は<ブラックナイト>の内部壁を破壊して、別ルートに外れていった。
 <薔薇十字騎士団>と遭遇しないように、敢えて迂回ルートを取ってエンジンルームに向かっていく。

 <ブラックナイト>は反重力エンジンを使用してると思われるのだが、その情報は信長の<魔人眼>によってもたらされていた。
 両翼にひとつづつ、中央にひとつ存在するらしい。

「夜桜、左翼のエンジンを破壊するぞ」 

「はい」

 メガネ機に夜桜機が追従していく。
 ブレードローラーが軋み声を上げて<ブラックナイト>の内部通路を走行していく。
 ザクロの率いるメガネ隊が壁となって、メガネの所には<薔薇十字騎士団>は一騎も現れなかった。
 
 だが、しばらくしてメガネ機はレーザー兵器の様な光線を左手の盾で受けた。
 球体のような兵器が空中に浮かんでいる。
 自律動作する防衛兵器のようだった。
 
 メガネは<ボトムストライカー>の速度を上げて突進し、<水龍剣>で球体を切り裂いていく。
 夜桜機も同様に聖刀<天羽羽斬剣あまのはばきりのつるぎ>で球体を破壊していった。

 だが、エンジンルームに迫ったメガネ機の前に意外な敵が視界に入ってきた。

 黒いフードを被った魔導師のような者が現れたのだ。

 メガネは構わず突進しようとしたが、機体が動力を失ったように動かなくなってしまう。
 夜桜機も同様のようだった。

「お前は誰だ?」

 メガネはその魔導師に話しかけて時間を稼ごうとした。

「我は魔導師アリス・テスラ」

 機械的なAIのような声音が返ってきた。

「そこを通してもらえないかな?」

 無駄だと思ったが、話が続かないので質問してみる。

「あなたたちは<ブラックナイト>から出て行ってもらいます」

 アリス・テスラは黒いフードから左手を出した。
 六本の針金のように多関節の長い銀色の指が見えない球体を持て遊ぶように動いた。
 掌の中にプラズマのような光球が浮かび、そこから象形文字のようなものが空間に流れていく。

 メガネと夜桜の<ボトムストライカー>が象形文字の光に包まれて、そのまま<ブラックナイト>の外に飛ばされていた。

「メガネ隊長、大丈夫ですか?」

 夜桜が訊いてくる。

「大丈夫のようだ」

 何とか機体は動くようになっているし、墜落しないで済んでいるようだった。
 見上げると、<ブラックナイト>の船底に<ボトムストライカー>数十機が見えた。
 どうやら全機、<ブラックナイト>から放り出されたようだ。

「振り出しに戻ってしまったようですね」

「そのようだ。だが、あのチート魔導師を何とかしないと、勝ち目はないぞ」

 確かにこちらの戦力で同じような能力をもつのは月読波奈ぐらいなものである。
 
「波奈ちゃん、何とかなりそうか?」

 メガネは波奈に話しかけた。
 波奈の乗る式鬼<銀鋼シロガネ ゼロ>がメガネ機の隣に上昇してきた。

「俺たちが突撃するから、あのチート魔導師の力を抑えてくれ」

「自信ないけど、やってみる!」 

 頼りなさげだが、ここは当てにするしかない。 

「では、いくぞ!」
 
   メガネの号令で夜桜、波奈の三人は<ボトムストライカー>のエンジンを全開にして、<ブラックナイト>船底の戦場へと上昇していくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

新木下藤吉郎伝『出る杭で悪いか』

宇治山 実
歴史・時代
天正十年六月二日未明、京都本能寺で、織田信長が家臣の明智光秀に殺された。このあと素早く行動したのは羽柴秀吉だけだった。備中高松城で、秀吉が使者から信長が殺されたことを聞いたのが、三日の夜だといわれている。堺見物をしていた徳川家康はその日に知り、急いで逃げ、四日には自分の城、岡崎城に入った。秀吉が、自分の城である姫路城に戻ったのは七日だ。家康が電光石火に行動すれば、天下に挑めたのに、家康は旧武田領をかすめ取ることに重点を置いた。この差はなにかー。それは秀吉が機を逃がさず、いつかくる変化に備えていたから、迅速に行動できたのだ。それは秀吉が、他の者より夢を持ち、将来が描かける人物だったからだ。  この夢に向かって、一直線に進んだ男の若い姿を追った。  木曽川で蜂須賀小六が成敗しょうとした、若い盗人を助けた猿男の藤吉郎は、その盗人早足を家来にした。  どうしても侍になりたい藤吉郎は、蜂須賀小六の助言で生駒屋敷に住み着いた。早足と二人、朝早くから夜遅くまで働きながら、侍になる機会を待っていた。藤吉郎の懸命に働く姿が、生駒屋敷の出戻り娘吉野のもとに通っていた清洲城主織田信長の目に止まり、念願だった信長の家来になった。  藤吉郎は清洲城内のうこぎ長屋で小者を勤めながら、信長の考えることを先回りして考えようとした。一番下っ端の小者が、一番上にいる信長の考えを理解するため、尾張、美濃、三河の地ノ図を作った。その地ノ図を上から眺めることで、大国駿河の今川家と、美濃の斎藤家に挟まれた信長の苦しい立場を知った。  藤吉郎の前向きに取り組む姿勢は出る杭と同じで、でしゃばる度に叩かれるのだが、懲りなかった。その藤吉郎に足軽組頭の養女ねねが興味を抱いて、接近してきた。  信長も、藤吉郎の格式にとらわれない発想に気が付くと、色々な任務を与え、能力を試した。その度に藤吉郎は、早足やねね、新しく家来になった弟の小一郎と、悩み考えながら難しい任務をやり遂げていった。  藤吉郎の打たれたも、蹴られても、失敗を恐れず、常識にとらわれず、とにかく前に進もうとする姿に、木曽川を支配する川並衆の頭領蜂須賀小六と前野小右衛門が協力するようになった。  信長は藤吉郎が期待に応えると、信頼して、より困難な仕事を与えた。  その中でも清洲城の塀普請、西美濃の墨俣築城と、稲葉山城の攻略は命懸けの大仕事だった。早足、ねね、小一郎や、蜂須賀小六が率いる川並衆に助けられながら、戦国時代を明るく前向きに乗り切っていった若い日の木下藤吉郎の姿は、現代の私たちも学ぶところが多くあるのではないだろうか。

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

えっちのあとで

奈落
SF
TSFの短い話です

【R18】アリスエロパロシリーズ

茉莉花
ファンタジー
家族旅行で訪れたロッジにて、深夜にウサギを追いかけて暖炉の中に落ちてしまう。 そこは不思議の国のアリスをモチーフにしているような、そうでもないような不思議の国。 その国で玩具だったり、道具だったり、男の人だったりと色んな相手にひたすらに喘がされ犯されちゃうエロはファンタジー!なお話。 ストーリー性は殆どありません。ひたすらえっちなことしてるだけです。 (メインで活動しているのはピクシブになります。こちらは同時投稿になります)

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

処理中です...