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第二章 安土桃山時代編

禁断!パンツは白作戦!

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「私のパンツは……」

 月読波奈はゴスロリメイド服姿でオタクたちの前に立った。
 メガネを取った姿はなかなかの美少女で、隠れ巨乳と相まってオタクたちの期待の視線が熱く集中していた。

「波奈ちゃん、勇気を出すんだ! オタクたちの暴走を止めれるのは波奈ちゃんしかいない!」

 安東要が激励のエールを送る。

「───やっぱり、恥ずかしい」

 そのエールが逆効果になったのか、波奈は内股気味に両手でスカートを押さえて躊躇していた。

「しかし、大和撫子というものは古来よりノーパンが基本なんだが、パンツなんか穿くからかえってエロくなるのじゃないかな?」

 信長が疑問を差し挟む。

(信長さま、わしもそう思いますが、これもイエズス会の陰謀で文明開化などしてしまったのが原因です。未来世界では日本人に洋風の生活が定着していくのです。嘆かわしい!)

 安部清明も嘆く。

「そうなのか! 清明殿! それはいかんな。そうだ、バウワー殿はどう思う?」

 信長は<ブラックナイト>に搭乗している敵を魔神眼で睨みつけた。

「───急に話を振ってきたな。まあ、答えてやろう。俺はパイパン派だ!」

 リカルド・バウワーは高らかに宣言した。

「パイパン!」

 オタクたちの間にどよめきが広がった。

「敵ながらあっぱれじゃ。リカルド・バウワー殿、さすがじゃ」

 信長もその潔い姿勢に共感した。

「だけど、武士は真っ白なふんどしがトレードマークなんだから、女子が白いパンティはいてても、決して不純だとは僕は思いませんけど」

 安東要は正論を唱えた。
 その発言でオタクたちが一斉に鼻血を出した。
 <TOKOYO DRIVE>の左回転は最高潮に達して、邪悪な暗黒の邪気に<ボトムストライカー>が包まれていく。

「確かに、それも一理あるな。要、お前も大人になったな」

 信長も妙に感心している。

「信長様、事情があって24歳に若返ってますが、僕は元々35歳ですし」

 安東要が言い訳をする。

「何でもいいけど、オタクたちの<ボトムストライカー>が真っ黒になってますけど」

 神沢優はいつも冷静である。
 
(これはいかん! 波奈殿、ここは思い切って『パンツは白作戦』を決行するしかないぞ)

 安部清明もここはその作戦にかけてみるしかないと思っていた。

「でも、やだ、やっぱり、恥ずかしい」

「何してるのよ! 波奈ちゃん、あなたが出来ないなら私がするわ!」

 意外な人物であるハネケ・ブロンソンが<ボトムストライカー>を降りて、月読波奈の隣に躍り出た。
 ハネケ・ブロンソンといえば、帰国子女で素晴らしい金髪で碧眼、モデルのような体型の女性である。
 彼女の今日の装いは純白の軍服にミニスカ、やはり純白のブーツを履いていた。

「まずい、これはまずい。ハネケさん、パンツを見せてはダメだ!」

 その時、メガネが叫んだ。
 彼は一体、何に気づいたのか。
 何故か彼は正気で<ボトムストライカー>は全く暴走してなかった。
 
 ハネケは<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤーの中では屈指の美少女で、月読波奈がメガネを取ったら美少女だったという事実が発覚する前から男性プレーヤーの憧れの存在である。
 彼女と一緒にプレーしたいと思って、メガネの<飛礼同盟>に加入してくる新隊員が後を絶たない。
 確かにメガネはリアルのハネケとも同盟の秘密作戦の打ち合わせで面識もあるが、彼は一体、何を知ってるのだろうか。
 
「私のパンツは虎柄よ!」

 ハネケは大胆にもミニスカを両手でめくって、虎柄パンツを誇示した。

「ヒョウ柄ならともかく……」

「俺の純情はどうなる?」

「俺の青春を返せ!」

「―――ハネケさんには失望した」

「これだから帰国子女は……男子の心が分かってない!」

 大ブーイングの嵐である。

「これはいかんなあ」

 信長もちょっと絶句して二の句が継げない。

「ハネケさん、だからダメだとあれほど……」

 メガネが泣きそうになっている。
 何故かこの事実を知っていたらしい。

「暴走は止まってるわね。でも、ちょっと元気なくなってきたみたいだけど」

 神沢優は冷静に状況を見ていた。

 確かに<TOKOYO DRIVE>の左回転は停止して邪気は消えてるが、<ボトムトライカー>が<ブラックナイト>の重力波攻撃に膝を屈して成す術がない状態に戻っていた。
 中には両手をついて土下座してるように見える機体もあった。

(これは、どうしたもんじゃろなあ)

 と安部清明ものんきなことを言ってる場合ではない。

「うーん、恥ずかしいけど仕方ない。<ブラックナイト>を倒した人には波奈の生パンツをプレゼントするわ。もちろん、パンツは白よ!」

 月読波奈は思い切って宣言した。

「メガネ隊長、やっぱり、女子のパンツは白ですよね」

 副隊長のザクロは泣きながらつぶやいた。
 神の声を聴いたジャンヌダルクのような何ともいえない神々しい表情をしている。

「そうだ。波奈ちゃん、偉いぞ! 女子のパンツは白でなければならない。やはり、ドイツ帰りの帰国子女にはオタク男子の心は分からない」

 メガネも高らかに宣言した。
 ハネケはしょんぼりしていた。

「全機抜刀、<ブラックナイト>に突撃するぞ。飛行ユニット展開、<TOKOYO DRIVE>を全開で回せ!」

 メガネの号令の元、オタクたちの<ボトムトライカー>隊の生体エンジン<TOKOYO DRIVE>は右回転で全開稼動していた。
 <ボトムトライカー>が白銀の光に包まれていく。

 『パンツは白!』それはオタク魂を起動する魔法の言葉であった。
 

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