安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚

坂崎文明

文字の大きさ
上 下
42 / 48
第三章 飛鳥戦国時代編

黒き疾風、白き旋風

しおりを挟む
「アリス・テスラ、こやつらをやっておしまい!」

 魔女ベアトリスの使い魔は、最強の魔導師アリス・テスラを呼び寄せる。
 
「はい、クリスティーナ様の仰せのままに」

 魔導師アリス・テスラは空中で胸に手を当ててクリスティーナに一礼すると、真田丸の正面に躍り出た。
 黒いフード、マント姿で胸に銀色の十字架が輝いている。

「ほう。伴天連バテレンの魔女か」

 真田幸村は聖銃<種子島>の銃撃をやめてアリス・テスラに呼びかけた。

「お前の相手は俺だ」

 夜桜が叫ぶ。
 漆黒の機体<ニンジャハインドGRゴールドレア>で躍り出た。

「いつかの小僧か」

 魔導師アリス・テスラは無言で六本の針金のように長い銀色の指でプラズマを発生させる。
 
「幸村様、ここはお任せを」

「おう。夜桜、そいつは任せた!」

 幸村は夜桜の気迫に応える。

 魔導師アリス・テスラの無数のプラズマ光球が夜桜の機体を襲う。
 夜桜の機体が分身する。
 プラズマ光球は夜桜をすり抜けている。
 <真田影流>の秘伝のひとつ、<影月えいげつ>という技であった。
 
「小僧、やるようになったな」

 アリス・テスラは少し感心している。

「どうも。では、これはどうかな!」

 夜桜はアリス・テスラに肉薄して、聖刀<天羽羽斬剣あまのはばきりのつるぎ>を振るった。
 しかし、刀がすり抜けてしまう。
 何の手応えもない。

「なんだ」

 夜桜は方向感覚を失って危うく大地に激突しそうになり、何とか着陸する。
 そこへアリス・テスラのプラズマが集中する。
 大地がプラズマで吹き飛ぶ。
 夜桜は一瞬で別の場所に現れた。
 またも<影月えいげつ>という技らしい。

「やはり、時空を操る能力か?」

 夜桜は魔導師アリス・テスラの力を見抜きつつあった。
 以前、敵の空中要塞<ブラックナイト>で戦った時も一瞬で外へ飛ばされてしまったが、そうだとしたら非常に厄介な能力である。
 月読波奈つくよみはなの<時空眼>と同じものなんだろうが、もう少し広範囲に効果があるもののようだ。
  
「お前も妙な技を使うな?」

 アリス・テスラも探りを入れてくる。

「………」 

「まあ、いい。真田もろとも、さっさと死んでもらおうか」

 魔導師アリス・テスラの左手の六本指の上でプラズマが巨大化していく。
 どうやら<真田丸>もろとも消してしまうつもりらしい。

「それはまずいな」

 幸村は少し困った表情をしたが、にやりと破顔する。

「死ね」

 アリス・テスラは真田丸に向かって巨大なプラズマを投げつけた。
 真田丸の周囲が凄まじい爆発音に包まれ、土煙が上がる。
 視界がしばらくゼロになる。
 そして、霧が晴れるようにそれが消滅した時、真田丸はなおも健在だった。
 
「……なんだと!?」 
 
 魔導師アリス・テスラは驚愕している。
 真田丸の上空に無数の光の球のようなものが浮遊している。
 それが真田丸をプラズマから守ったようだ。

「三成、いつもすまんな」

 幸村が盟友の名を呼んだ。
 石田三成にとっても幸村は無二の親友であった。

「いつものことですから」

 石田三成は白色の愛機<ホワイトナイト ドローンマスター>を駆っている。
 その名の通り白い騎士のような<ボトムストライカー>の背中には天使のような二枚の翼があった。
 光の球が<ホワイトナイト>の周囲に幾重にも円陣を巡らせている。

「幸村さん、一掃しますか?」

 三成はそう言いながら、魔導師アリス・テスラに視線を移す。

「そうだな。やってしまうか」

 幸村は聖銃<種子島>を構え直す。
 三成は大一大万大吉だいいちだいまんだいきちの旗印を掲げ、それを左右に一振りした。

「殲滅旗技<大一大万大吉ワンフォーオール>、聖銃複製レプリカ!」

 突如、夜桜や信長軍団の兵たちの手に聖銃<種子島>が現れた。
 大一大万大吉だいいちだいまんだいきちとは「万人が一人のために、一人が万人のために尽くせば、政治や国、みんなが大吉(幸せ)になる」という三成の理想を掲げた旗印である。

 殲滅旗技<大一大万大吉ワンフォーオール>は、あらゆる物を複製コピーして、兵士ひとりひとりに分け与えることができる超絶能力である。
 物資の調達能力に長けた石田三成らしい能力だが、その殲滅旗技は文字通り自軍能力を数十倍、数百倍に拡大することができた。

「皆の者、一斉射撃せよ! 敵を一気に打ち払え!」

 真田幸村の聖銃<種子島>が火を噴くのを合図に、信長軍団の兵たちが聖銃<種子島レプリカ>を一斉射撃した。
 関ケ原に豪砲が響き渡り、家康軍団の先鋒が総崩れになった。
 魔導師アリス・テスラ、黒騎士も爆煙の中に姿を消していった。










(あとがき)

 大一大万大吉だいいちだいまんだいきちとは「万人が一人のために、一人が万人のために尽くせば、政治や国、みんなが大吉(幸せ)になる」という三成の理想を掲げた旗印だったとは。

 『ワンフォーオール、オールフォーワン』の精神だったとは!
 実に石田三成らしい殲滅旗技ですね。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

戦国を駆ける軍師・雪之丞見参!

沙羅双樹
歴史・時代
川中島の合戦で亡くなった軍師、山本勘助に嫡男がいた。その男は、山本雪之丞と言い、頭が良く、姿かたちも美しい若者であった。その日、信玄の館を訪れた雪之丞は、上洛の手段を考えている信玄に、「第二啄木鳥の戦法」を提案したのだった……。 この小説はカクヨムに連載中の「武田信玄上洛記」を大幅に加筆訂正したものです。より読みやすく面白く書き直しました。「武田信玄上洛の巻」の後は、「明智光秀の本能寺の変の巻」、さらにそのあとは鎌倉の商人、紅屋庄右衛門が登場する「商売人、紅屋庄右衛門の巻」、そして下野の国宇都宮で摩耶姫に会う「妖美なる姫君、摩耶姫の巻」へと展開していきます。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...