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005 ネメシス
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<ゴールデンライオン>は白銀の機体に黄金の獅子の甲冑をまとい疾走する。
ブレードローラーが荒野の砂塵を巻き上げながら、数秒で浮遊する黒い球形のドローン兵器に肉薄していた。
黄金甲冑はドローン兵器のブルーレーザーを跳ね返して無効化している。
<ゴールデンライオン>にはレーザーなどの光学兵器は全く効果がないし、少々のミサイル攻撃も無効化する。
三重の重装甲ボトムストライカー<ゴールデンライオン>は普通の機体の二倍の巨体でありながら速度は三倍を誇る。
高速機動の重戦車の如きバケモノ機体であった。
光学兵器無効化装甲に気づいドローン兵器の人工知能は、レーザーから追尾ミサイル攻撃に切り替えたが、<ゴールデンライオン>の高速機動に翻弄され、全く標準を定めることができない。
ミサイルは全て外れている。
信長は腰の聖刀<獅子心剣>を抜き去って、ドローン兵器を次々と両断していく。
聖刀<獅子心剣>は炎が揺らめくような黄金の刀身で、不思議な煌めきを放ちながらドローン兵器を粉砕していく。
斬るというより、見えないエネルギー波がドローン兵器を溶かしながら寸断してるようにも見える。
電磁波を放つ<波動剣>の一種で周波数振動兵器だが原理は不明だ。
その光は揺らめく炎のようにも見えた。
それでも<ゴールデンライオン>に時折、接近するドローン兵器があって、それはアキラがきっちりステルスレーザーで打ち落としていた。
「スナイパー小僧、なかなかやる」
信長も少し感心しながらアキラの射撃に助けられていた。
生意気な小僧だが、少なくともスナイパーとしての腕だけは認めはじめていた。
「信長のおっさん、なかなかやるなあ」
アキラは隠蔽装甲を展開したままレーザー射撃を続けていたが、信長のあまりにも見事な戦い振りに舌を巻いていた。
戦いはこのまま、ふたりの圧勝に終わるかにみえた。
アキラも流石にそれは楽観的過ぎだと思ったが、予感はすぐに的中して、ドローン兵器が自爆攻撃を仕掛けてくるようになった。
<ゴールデンライオン>の回避運動の癖も人工知能の高速機械学習で解析され、自爆するドローン兵器の攻撃が黄金甲冑に損害を与えはじめていた。
アキラのステルスレーザーもかわされはじめる。
微妙なタイミングで信長の攻撃の歯車も狂い始めてドローン兵の撃墜数も減少し、自爆攻撃で黄金甲冑の一次装甲が剥がされはじめていく。
「まずいな。このままじゃ、ジリ貧だ。ワトソンも指揮機体の位置を割り出せない」
アキラも少し焦りはじめていた。
順調に数を減らしていたとはいえ、まだ600機あまりのドローン兵器が健在であり、それをコントロールしているはずの指揮機体の位置も索敵できていなかった。
(呼ばれて飛び出す、じゃじゃじゃ、じゃーん!)
何かの空耳か、女の子のような声が聴こえる。
「え? 誰の声?」
アキラは操縦席でキョロキョロしながら、全天型外部モニターを見回した。
何も見当たらない。
おかしいなあと思いながら、正面を向いたとたんに、目の前に赤いドレスを着た妖精のような少女が現れた。
(シカトかい! メネシス様をシカトするとはいい度胸じゃないか)
妖精のような美少女がヤクザ口調で恫喝してくる。
よく見ると、黒髪に青い瞳の不吉な感じの天使のような容姿に、二つの蝶々のような透明な羽根を生やした妖精のような生き物だった。
「ところで、あんた、誰?」
アキラは幻覚かと思ったが、ゲームのイベントや仕様かもしれないので冷静になって聞いてみた。
「この機体の専用人工知能だよ! 知らんのかい!」
しゃべり方が乱暴だが、たぶん、そういう仕様なのだろう。
「ネメシス様はスナイパーアレイ専用人工知能です。少し口は悪いですが、私にはスナイパーアレイシステムを動かす権限はありません」
人工知能ワトソンが答える。
「スナイパーアレイシステム? それはなんだ?」
アキラは問い返す。
「アレイは『配列、整列、大群』などの意味がありますが、スナイパーアレイシステムとは今回のような大規模な敵兵器を同時殲滅できるシステムだと聞いています」
人工知能ワトソンが解説する。
「で、どうするの? スナイパーアレイシステムを起動するの?」
メネシスが認証を取ろうとする。
赤い服の妖精の青い瞳が妖しく瞬く。
「このままではジリ貧だし、信長のおっさんが撃墜されたら目覚めが悪いし……、そのスナイパーアレイシステムを起動してくれ」
「了解、マスター」
その瞬間のメネシスの何とも言えない邪悪で可憐な笑顔をアキラは一生、忘れることができなかった。
まるで悪魔と契約したように感じて少し身震いをした。
とはいえ、局面を打開する手段をアキラは持ってはいなかったので、メネシスに頼るしかなかった。
もう後悔しても遅いだろうし。
スナイパーアレイの背中のバックパックの排気口からキラキラとした魚の鱗のようなものが空気中に散布される。
それはスナイパーアレイの背後に後光のように広がると、静かに『整列』した。
自動制御された特殊な超小型ドローンがその正体である。
一陣の風が吹いたように、煌めく超小型ドローンが敵機に向けて殺到する。
スナイパーアレイの背中のステルスレーザー砲が自動で起動して出力が上がって発射された。
ステルスレーザーが超小型ドローンの反射鏡に次々と命中して、細かくレーザー光線が分化していく。
それが一瞬にして、敵の小型ドローンに次々と命中して消滅していく。
瞬く間に600機の敵小型ドローンが地上から消えていた。
後には呆然として機動を止めた信長の<ゴールデンライオン>が立ちつくしていた。
キラキラとした燐光のような雪が空から降ってきた。
そして最後に、敵の指揮機らしいボトムストライカーが爆発して飛散した。
「隠蔽装甲を展開してる機体をどうやって見つけた?」
アキラも唖然としていたが、何とか質問を喉から絞りだした。
「メネシス様に不可能は何もないのだよ」
またも不吉に笑う赤い服の妖精は、邪眼じみた青い目を輝かせながら言った。
それが悪魔のようなロリコン妖精人工知能のネメシスとアキラの最初の出会いだった。
ブレードローラーが荒野の砂塵を巻き上げながら、数秒で浮遊する黒い球形のドローン兵器に肉薄していた。
黄金甲冑はドローン兵器のブルーレーザーを跳ね返して無効化している。
<ゴールデンライオン>にはレーザーなどの光学兵器は全く効果がないし、少々のミサイル攻撃も無効化する。
三重の重装甲ボトムストライカー<ゴールデンライオン>は普通の機体の二倍の巨体でありながら速度は三倍を誇る。
高速機動の重戦車の如きバケモノ機体であった。
光学兵器無効化装甲に気づいドローン兵器の人工知能は、レーザーから追尾ミサイル攻撃に切り替えたが、<ゴールデンライオン>の高速機動に翻弄され、全く標準を定めることができない。
ミサイルは全て外れている。
信長は腰の聖刀<獅子心剣>を抜き去って、ドローン兵器を次々と両断していく。
聖刀<獅子心剣>は炎が揺らめくような黄金の刀身で、不思議な煌めきを放ちながらドローン兵器を粉砕していく。
斬るというより、見えないエネルギー波がドローン兵器を溶かしながら寸断してるようにも見える。
電磁波を放つ<波動剣>の一種で周波数振動兵器だが原理は不明だ。
その光は揺らめく炎のようにも見えた。
それでも<ゴールデンライオン>に時折、接近するドローン兵器があって、それはアキラがきっちりステルスレーザーで打ち落としていた。
「スナイパー小僧、なかなかやる」
信長も少し感心しながらアキラの射撃に助けられていた。
生意気な小僧だが、少なくともスナイパーとしての腕だけは認めはじめていた。
「信長のおっさん、なかなかやるなあ」
アキラは隠蔽装甲を展開したままレーザー射撃を続けていたが、信長のあまりにも見事な戦い振りに舌を巻いていた。
戦いはこのまま、ふたりの圧勝に終わるかにみえた。
アキラも流石にそれは楽観的過ぎだと思ったが、予感はすぐに的中して、ドローン兵器が自爆攻撃を仕掛けてくるようになった。
<ゴールデンライオン>の回避運動の癖も人工知能の高速機械学習で解析され、自爆するドローン兵器の攻撃が黄金甲冑に損害を与えはじめていた。
アキラのステルスレーザーもかわされはじめる。
微妙なタイミングで信長の攻撃の歯車も狂い始めてドローン兵の撃墜数も減少し、自爆攻撃で黄金甲冑の一次装甲が剥がされはじめていく。
「まずいな。このままじゃ、ジリ貧だ。ワトソンも指揮機体の位置を割り出せない」
アキラも少し焦りはじめていた。
順調に数を減らしていたとはいえ、まだ600機あまりのドローン兵器が健在であり、それをコントロールしているはずの指揮機体の位置も索敵できていなかった。
(呼ばれて飛び出す、じゃじゃじゃ、じゃーん!)
何かの空耳か、女の子のような声が聴こえる。
「え? 誰の声?」
アキラは操縦席でキョロキョロしながら、全天型外部モニターを見回した。
何も見当たらない。
おかしいなあと思いながら、正面を向いたとたんに、目の前に赤いドレスを着た妖精のような少女が現れた。
(シカトかい! メネシス様をシカトするとはいい度胸じゃないか)
妖精のような美少女がヤクザ口調で恫喝してくる。
よく見ると、黒髪に青い瞳の不吉な感じの天使のような容姿に、二つの蝶々のような透明な羽根を生やした妖精のような生き物だった。
「ところで、あんた、誰?」
アキラは幻覚かと思ったが、ゲームのイベントや仕様かもしれないので冷静になって聞いてみた。
「この機体の専用人工知能だよ! 知らんのかい!」
しゃべり方が乱暴だが、たぶん、そういう仕様なのだろう。
「ネメシス様はスナイパーアレイ専用人工知能です。少し口は悪いですが、私にはスナイパーアレイシステムを動かす権限はありません」
人工知能ワトソンが答える。
「スナイパーアレイシステム? それはなんだ?」
アキラは問い返す。
「アレイは『配列、整列、大群』などの意味がありますが、スナイパーアレイシステムとは今回のような大規模な敵兵器を同時殲滅できるシステムだと聞いています」
人工知能ワトソンが解説する。
「で、どうするの? スナイパーアレイシステムを起動するの?」
メネシスが認証を取ろうとする。
赤い服の妖精の青い瞳が妖しく瞬く。
「このままではジリ貧だし、信長のおっさんが撃墜されたら目覚めが悪いし……、そのスナイパーアレイシステムを起動してくれ」
「了解、マスター」
その瞬間のメネシスの何とも言えない邪悪で可憐な笑顔をアキラは一生、忘れることができなかった。
まるで悪魔と契約したように感じて少し身震いをした。
とはいえ、局面を打開する手段をアキラは持ってはいなかったので、メネシスに頼るしかなかった。
もう後悔しても遅いだろうし。
スナイパーアレイの背中のバックパックの排気口からキラキラとした魚の鱗のようなものが空気中に散布される。
それはスナイパーアレイの背後に後光のように広がると、静かに『整列』した。
自動制御された特殊な超小型ドローンがその正体である。
一陣の風が吹いたように、煌めく超小型ドローンが敵機に向けて殺到する。
スナイパーアレイの背中のステルスレーザー砲が自動で起動して出力が上がって発射された。
ステルスレーザーが超小型ドローンの反射鏡に次々と命中して、細かくレーザー光線が分化していく。
それが一瞬にして、敵の小型ドローンに次々と命中して消滅していく。
瞬く間に600機の敵小型ドローンが地上から消えていた。
後には呆然として機動を止めた信長の<ゴールデンライオン>が立ちつくしていた。
キラキラとした燐光のような雪が空から降ってきた。
そして最後に、敵の指揮機らしいボトムストライカーが爆発して飛散した。
「隠蔽装甲を展開してる機体をどうやって見つけた?」
アキラも唖然としていたが、何とか質問を喉から絞りだした。
「メネシス様に不可能は何もないのだよ」
またも不吉に笑う赤い服の妖精は、邪眼じみた青い目を輝かせながら言った。
それが悪魔のようなロリコン妖精人工知能のネメシスとアキラの最初の出会いだった。
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