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天空の騎士

破天剣  《デメンションソード》

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「<破天剣はてんけん>、全開!」

 <青騎士>は黒槍ナイトスピアーで剣を受けようとするが、一瞬で槍ごと蒸発する。
 慌てて<青騎士>は剣をかわそうとしたが、左手もごっそり消滅する。

「おいおい、冗談だろう? 何なんだ!」

 だが、<破天剣はてんけん>を切り返したシスティーナは、容赦なく<青騎士>の右腕も切り落とした。
 <青騎士>はなおも後退するが、両足も持っていかれ、だるま状態になってしまう。
 最後は脱出ポットで緊急離脱するしかなかった。

「ちっ、覚えてろよ……」

 捨てゼリフは一見、強気だが、あまりの力量差に語尾が震えている。
 <破天剣はてんけん>、触れるものことごとく両断し、消滅させてしまう<次元剣>こそがその本質である。

「さて、どうしますか、システィーナ様?」

 天工精霊ルナが涼しい顔で訊いてくる。
 エメラルドグリーンの髪と双眸が揺れる。

「無論、シルバーソードの救援に向かうわ。"エデン"は後で奪還しましょう。アイヴィー、ワープで直行して」

  システィーナは指示を出す。

「了解です。システィーナ様」

  天工精霊アイヴィーはソードシップ≪アポクリュフォン≫を長距離ワープさせた。



      †



「海馬が暴れるという表現は的確だな」

 コーシ・ムーンサイトは痛い頭を軽く叩きながら意識をはっきりさせた。
 超急速睡眠学習というものをやったはずだが、全く意識の上では記憶が残っていない。
 これで大丈夫なんだろうか?
 おそらく、無意識的に身体が動くとか、必要になったら記憶が蘇るとか、ご都合主義なことになるんだろうと思う。

「天工精霊のエルで~す。お目覚めになりましたか?」

 青い瞳をした黒髪の二枚ばねの妖精が微笑んでいる。

「おう、目は覚めたが、そろそろ戦場かな?」

「はい、まもなく、到着ですよ」

 紅い目の妖精エルザがサブモニターに映る。
 まもなく、ソードシップ≪クリムゾンソード≫がワープアウトした。
 
 そこには左手、左翼が大破した天翼の騎士ウィングナイトシルバーソードがいた。
 あれほど圧倒的な強さを見せていた機体だったが、魔天騎士ルシファーナイトナンバー5、【黒騎士】の前に苦戦を強いられていた。

 ソードシップ≪クリムゾンソード≫の上部甲板が開く。
 天翼の騎士ウィングナイトクリムゾンハートがその全貌を現す。
 真紅の機体、胸には太陽と十二枚の翼が重ねられた、天軍総司令官の大天使長ミカエルの称号が輝く。

(システィーナ様!)

 フェアリー隊の天軍の天使たちが目を輝かす。
 天軍の戦闘時専用回線で通信している。

(申し訳ない。システィーナじゃないんだ。彼女もそのうち来るが、コーシ・ムーンサイトという者だ)

(ええ! コーシ隊長? 死んだんじゃないんですか?)

 今度はリー・ファ・リーをはじめ、≪白き魔女≫フェアリー隊の面々が驚く。 

(まあ、一度、死んだんだけど……話が長くなるので省略だ。フェアリー、なかなか苦戦してるようだな)

(―――あなた、また、死にに来たの? まったく………)

 フェアリーの胸に万感の想いが去来する。

(待たせたな。もう大丈夫だ)

 相変わらず、死地でも軽口を叩く男である。 
 肩の荷がすっと軽くなるフェアリーであった。
 そこにいるだけで、もう大丈夫だという気になる不思議な男である。
 それがコーシ・ムーンサイトという将であった。
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