コンビ二家族とAIの妖精

坂崎文明

文字の大きさ
上 下
15 / 24
コンビニ家族編

祭りの後始末

しおりを挟む
「<8-12>本部に対して公正取引委員会より業務改善命令を出しました。内容的には廃棄食品、返品、万引き商品などロイヤリティを課す『ロスチャージ会計』の廃止、同じチェーン店内での過当競争を生み出す『ドミナント戦略』の規制などです。以上です。何か質問があれば答えます」

 安東要総理はあっさりとした口調で言ったが、今までの政府の意向と比べると革新的な発言であった。
 福島の天山原発事故で首都を名古屋に移して、東日本、関東からの撤退を決断した安東要である。
 その政治手法は疾風怒涛、思い切った政策を打つ総理だと評判である。

「安東総理、今回の公正取引委員会より業務改善命令ですが、あなたの親戚の神沢財閥総帥の神沢仁氏への『忖度そんたく』ではないかという話がありますが、如何でしょう?」

 毎朝新聞記者から核心をついた鋭い質問が飛ぶ。
 <8-12>本部の仕込みかもしれないが。

「いや、確かに神沢仁氏は私の親戚ではありますが、今回の業務改善命令は公明正大なものだと、天地神明に誓って宣言することができます。以上です」

 と言うと、そそくさと記者会見を切り上げて引き上げていく。

「総理、総理! ちょっとそれは無いんじゃないですか!」

 記者から追いすがるような怒声が飛ぶが、安東要総理はSP、秘書官に護られつつ、強行突破して総理室に逃げ込んだ。

「あれで良かったんでしょうか? 安東総理」

 野村秘書官が言わずもがなの念押しをしてくる。

「いいんだよ。事実なのだから、誤魔化すしかない。神沢の爺さんは怖いんだよ。業務改善命令を出さなければ、『衛星兵器の<天照アマテラス>で<8-12>本部を蒸発させる』とか言ってきたから、俺は<8-12>本部とその社員を守ったのだから、感謝して欲しいくらいだ」

 神沢仁は古代から日本を守護している秘密結社<天鴉アマガラス>の剣の民の長老でもあり、地球周回軌道に時折、現れる妖星<クルド>という亜空間要塞惑星から放たれる超古代兵器<天照アマテラス>の発射権限を持っている。
 さすがに、国民を守る総理大臣が<8-12>本部を蒸発させる訳にはいかなかった。
 安東要は秘密結社<天鴉アマガラス>の勾玉の民であり、組織の人員をまとめる立場にあった。

「そうですね。神沢翁はそういう人でしたね」

 幼い頃から永年、安東要に仕える執事でもある野村秘書官は、いつものことではあるのだが呆れて言葉が続かなかった。
 彼も<天鴉アマガラス>の勾玉の民である。

「とはいえ、<8-12>本部も調子に乗りすぎた。世の中、やり過ぎては叩かれる。空気を読んで忖度そんたく、いや、配慮してもらわないと困るんだよ」

 安東要は嘆いた。
 名古屋の清明神社に参拝してから後、何だか逞しくなった気がする野村秘書官であった。
 まさか安倍清明や織田信長と共に戦国時代などで一緒に戦ってきたことは彼はまだ知らなかった。











(あとがき)


安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚 坂崎文明
https://www.alphapolis.co.jp/novel/771049446/809038308

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボイス~常識外れの三人~

Yamato
ライト文芸
29歳の山咲 伸一と30歳の下田 晴美と同級生の尾美 悦子 会社の社員とアルバイト。 北海道の田舎から上京した伸一。 東京生まれで中小企業の社長の娘 晴美。 同じく東京生まれで美人で、スタイルのよい悦子。 伸一は、甲斐性持ち男気溢れる凡庸な風貌。 晴美は、派手で美しい外見で勝気。 悦子はモデルのような顔とスタイルで、遊んでる男は多数いる。 伸一の勤める会社にアルバイトとして入ってきた二人。 晴美は伸一と東京駅でケンカした相手。 最悪な出会いで嫌悪感しかなかった。 しかし、友人の尾美 悦子は伸一に興味を抱く。 それまで遊んでいた悦子は、伸一によって初めて自分が求めていた男性だと知りのめり込む。 一方で、晴美は遊び人である影山 時弘に引っ掛かり、身体だけでなく心もボロボロにされた。 悦子は、晴美をなんとか救おうと試みるが時弘の巧みな話術で挫折する。 伸一の手助けを借りて、なんとか引き離したが晴美は今度は伸一に心を寄せるようになる。 それを知った悦子は晴美と敵対するようになり、伸一の傍を離れないようになった。 絶対に譲らない二人。しかし、どこかで悲しむ心もあった。 どちらかに決めてほしい二人の問い詰めに、伸一は人を愛せない過去の事情により答えられないと話す。 それを知った悦子は驚きの提案を二人にする。 三人の想いはどうなるのか?

【完結】ある神父の恋

真守 輪
ライト文芸
大人の俺だが、イマジナリーフレンド(架空の友人)がいる。 そんな俺に、彼らはある予言をする。 それは「神父になること」と「恋をすること」 神父になりたいと思った時から、俺は、生涯独身でいるつもりだった。だからこそ、神学校に入る前に恋人とは別れたのだ。 そんな俺のところへ、人見知りの美しい少女が現れた。 何気なく俺が言ったことで、彼女は過敏に反応して、耳まで赤く染まる。 なんてことだ。 これでは、俺が小さな女の子に手出しする悪いおじさんみたいじゃないか。

40歳を過ぎても女性の手を繋いだことのない男性を私が守るのですか!?

鈴木トモヒロ
ライト文芸
実際にTVに出た人を見て、小説を書こうと思いました。 60代の男性。 愛した人は、若く病で亡くなったそうだ。 それ以降、その1人の女性だけを愛して時を過ごす。 その姿に少し感動し、光を当てたかった。 純粋に1人の女性を愛し続ける男性を少なからず私は知っています。 また、結婚したくても出来なかった男性の話も聞いたことがあります。 フィクションとして 「40歳を過ぎても女性の手を繋いだことのない男性を私が守るのですか!?」を書いてみたいと思いました。 若い女性を主人公に、男性とは違う視点を想像しながら文章を書いてみたいと思います。 どんなストーリーになるかは... わたしも楽しみなところです。

鬼を斬る君と僕の物語

大林 朔也
ライト文芸
中学生の夏に、主人公(一樹)は、鬼と戦う不思議な力を持つ男の子(晴夜)と出会った。その出会いで、この世界には鬼が存在していると実感する。やがて大学生になった一樹は気になる女性ができたが、その女性はなんとも不思議な女性だった。その女性の事を晴夜に相談すると、晴夜は彼女が「鬼」である可能性を告げたのだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ブエン・ビアッヘ

三坂淳一
ライト文芸
タイトルのブエン・ビアッヘという言葉はスペイン語で『良い旅を!』という決まり文句です。英語なら、ハヴ・ア・ナイス・トリップ、仏語なら、ボン・ヴォアヤージュといった定型的表現です。この物語はアラカンの男とアラフォーの女との奇妙な夫婦偽装の長期旅行を描いています。二人はそれぞれ未婚の男女で、男は女の元上司、女は男の知人の娘という設定にしています。二人はスペインをほぼ一ヶ月にわたり、旅行をしたが、この間、性的な関係は一切無しで、これは読者の期待を裏切っているかも知れない。ただ、恋の芽生えはあり、二人は将来的に結ばれるということを暗示して、物語は終わる。筆者はかつて、スペインを一ヶ月にわたり、旅をした経験があり、この物語は訪れた場所、そこで感じた感興等、可能な限り、忠実に再現したつもりである。長い物語であるが、スペインという国を愛してやまない筆者の思い入れも加味して読破されんことを願う。

ユメ/うつつ

hana4
ライト文芸
例えばここからが本編だったとしたら、プロローグにも満たない俺らはきっと短く纏められて、誰かの些細な回想シーンの一部でしかないのかもしれない。 もし俺の人生が誰かの創作物だったなら、この記憶も全部、比喩表現なのだろう。 それかこれが夢であるのならば、いつまでも醒めないままでいたかった。

マキノのカフェで、ヒトヤスミ ~Café Le Repos~

Repos
ライト文芸
田舎の古民家を改装し、カフェを開いたマキノの奮闘記。 やさしい旦那様と綴る幸せな結婚生活。 試行錯誤しながら少しずつ充実していくお店。 カフェスタッフ達の喜怒哀楽の出来事。 自分自身も迷ったり戸惑ったりいろんなことがあるけれど、 ごはんをおいしく食べることが幸せの原点だとマキノは信じています。 お店の名前は 『Cafe Le Repos』 “Repos”るぽ とは フランス語で『ひとやすみ』という意味。 ここに訪れた人が、ホッと一息ついて、小さな元気の芽が出るように。 それがマキノの願いなのです。 - - - - - - - - - - - - このお話は、『Café Le Repos ~マキノのカフェ開業奮闘記~』の続きのお話です。 <なろうに投稿したものを、こちらでリライトしています。>

処理中です...