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目を見張る俊明に、
「いやっ。先輩、そんな俺に気を遣わないで。それはふつうに先輩の部屋に飾ってくれたらいいからね。好きにしてくれていいんですよ? カーテンに吊るしたり棚とかに巻きつけたりしてね、電気つけたら、とってもきれいだから、『はぁ、うっとり』って、その日あった嫌なことなんて忘れて、ストレス解消!」
「……へ、へぇ」
「お前がコレを部屋に飾ってうっとりするのなら、俺はちょっとはこのアパートに帰ってきてやってもいい」
「うん、大智は卒業まで帰って来なくていいよ」
そこで潤太は重要なことに気がついて「あっ」と叫ぶと、申しわけない気持ちいっぱいで「大智先輩ごめんなさいっ」と、頭を下げた。
「へ? いきなりなんだ?」
「大智先輩も、これ欲しかったよね? どうしよ? 俺、今度買ってくる?」
しかし大智は首をぶんぶん振って、「い、いやいや、いらないいらない!」と遠慮する。
「ううん。次に会うときには、ちゃんと大智先輩のやつも用意しておくから!」
「いや、ほんといらねぇって、勘弁して」
「だからスネたらダメだよ? 斯波先輩と取り合いのケンカもしちゃダメ!」
「するかっ、こんなもんで! マジいらねぇから!」
「これね、毎日寝るまえに部屋を暗くして電気つけると、ホントにホント―に『はぁ』って癒されるんだから。まずは斯波先輩、さきに癒されててね」
「吉野、お前、ひとの話を聞け!」
「大智先輩は次に会う時に渡すから、楽しみにしていて」
そう決めると潤太は手に持った電飾のコードを手繰り寄せて、箱の中にぎゅっぎゅっと収め、それを俊明に「はい」と返した。
「吉野、もしかしてお前、コレ自分でも持ってんのか?」
大智に訊かれて、潤太は「当たり前でしょ」と頷く。
「もう、めっちゃいいから。で、ず
っといつか斯波先輩にもあげようって思ってたんだ。やっと渡せてよかった」
潤太はにへら、と笑った。
俊明に恋した春から、潤太はずっとこの素敵に光り輝く星の飾りを、大好きな彼にあげたくてしかたがなかったのだ。これでやっと念願がひとつ叶った。
毎夜部屋で点灯して自分の心を弾ませてくれるこの星を、俊明や大智も同じように愉しんでくれたらいい。それに夜、自分がベッドの中でこの光る星を眺めるたびに、彼らもまた同じようにしているんだと思うと、それだけでうれしいじゃないか。
「だから、これはクリスマスプレゼントとは、また別なの」
キリッとした顔をして云った潤太に、俊明がやさしく目を細める。
「そうなんだ。ありがとうね、吉野」
自分のためでもあるような贈り物なので多少疚しい気持ちがあったが、でも俊明ににっこりと笑ってお礼を云われると、どうでもよくなってしまう。潤太はポッと目もとを朱に染めた。
「あと、コレも」
潤太はプレゼントの入った紙袋に手を突っこむと、今度は手のひらサイズの真四角の箱を取りだす。すでに一度俊明が開封しているので、ふたに着いていたテープは剥がれていた。
「いまは冬だから、やっぱりそれっぽいものがいるかなって思って用意したんです」
潤太は箱からだしたスノードームを、俊明の顔のまえで揺らして見せた。
ガラスでできたボールの内部には、小さな家や木や雪だるまが配置されていて、辺りには無色透明な液体が充満している。ボールを揺すると、中で雪をイメージした白い粒がキラキラ舞った。
「ね、きれいでしょ?」
「……そうだね。きれいだね。大切にするよ」
にこっ。
微笑む俊明のはじめの「……」の間がなにを意味するかなんて、潤太はわかっていない。
「俊、お前、笑顔がすっげ嘘くさいよ?」
「大智、黙れ」
「ピンクのキラキラとかもあるんだよ。こんど先輩がウチに来たときに見せてあげるね」
そう云った潤太は俊明だけを誘っては悪いと思い、大智を振り返った。
「いやっ。先輩、そんな俺に気を遣わないで。それはふつうに先輩の部屋に飾ってくれたらいいからね。好きにしてくれていいんですよ? カーテンに吊るしたり棚とかに巻きつけたりしてね、電気つけたら、とってもきれいだから、『はぁ、うっとり』って、その日あった嫌なことなんて忘れて、ストレス解消!」
「……へ、へぇ」
「お前がコレを部屋に飾ってうっとりするのなら、俺はちょっとはこのアパートに帰ってきてやってもいい」
「うん、大智は卒業まで帰って来なくていいよ」
そこで潤太は重要なことに気がついて「あっ」と叫ぶと、申しわけない気持ちいっぱいで「大智先輩ごめんなさいっ」と、頭を下げた。
「へ? いきなりなんだ?」
「大智先輩も、これ欲しかったよね? どうしよ? 俺、今度買ってくる?」
しかし大智は首をぶんぶん振って、「い、いやいや、いらないいらない!」と遠慮する。
「ううん。次に会うときには、ちゃんと大智先輩のやつも用意しておくから!」
「いや、ほんといらねぇって、勘弁して」
「だからスネたらダメだよ? 斯波先輩と取り合いのケンカもしちゃダメ!」
「するかっ、こんなもんで! マジいらねぇから!」
「これね、毎日寝るまえに部屋を暗くして電気つけると、ホントにホント―に『はぁ』って癒されるんだから。まずは斯波先輩、さきに癒されててね」
「吉野、お前、ひとの話を聞け!」
「大智先輩は次に会う時に渡すから、楽しみにしていて」
そう決めると潤太は手に持った電飾のコードを手繰り寄せて、箱の中にぎゅっぎゅっと収め、それを俊明に「はい」と返した。
「吉野、もしかしてお前、コレ自分でも持ってんのか?」
大智に訊かれて、潤太は「当たり前でしょ」と頷く。
「もう、めっちゃいいから。で、ず
っといつか斯波先輩にもあげようって思ってたんだ。やっと渡せてよかった」
潤太はにへら、と笑った。
俊明に恋した春から、潤太はずっとこの素敵に光り輝く星の飾りを、大好きな彼にあげたくてしかたがなかったのだ。これでやっと念願がひとつ叶った。
毎夜部屋で点灯して自分の心を弾ませてくれるこの星を、俊明や大智も同じように愉しんでくれたらいい。それに夜、自分がベッドの中でこの光る星を眺めるたびに、彼らもまた同じようにしているんだと思うと、それだけでうれしいじゃないか。
「だから、これはクリスマスプレゼントとは、また別なの」
キリッとした顔をして云った潤太に、俊明がやさしく目を細める。
「そうなんだ。ありがとうね、吉野」
自分のためでもあるような贈り物なので多少疚しい気持ちがあったが、でも俊明ににっこりと笑ってお礼を云われると、どうでもよくなってしまう。潤太はポッと目もとを朱に染めた。
「あと、コレも」
潤太はプレゼントの入った紙袋に手を突っこむと、今度は手のひらサイズの真四角の箱を取りだす。すでに一度俊明が開封しているので、ふたに着いていたテープは剥がれていた。
「いまは冬だから、やっぱりそれっぽいものがいるかなって思って用意したんです」
潤太は箱からだしたスノードームを、俊明の顔のまえで揺らして見せた。
ガラスでできたボールの内部には、小さな家や木や雪だるまが配置されていて、辺りには無色透明な液体が充満している。ボールを揺すると、中で雪をイメージした白い粒がキラキラ舞った。
「ね、きれいでしょ?」
「……そうだね。きれいだね。大切にするよ」
にこっ。
微笑む俊明のはじめの「……」の間がなにを意味するかなんて、潤太はわかっていない。
「俊、お前、笑顔がすっげ嘘くさいよ?」
「大智、黙れ」
「ピンクのキラキラとかもあるんだよ。こんど先輩がウチに来たときに見せてあげるね」
そう云った潤太は俊明だけを誘っては悪いと思い、大智を振り返った。
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