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「んっ、んっ、はぁっ、……あんっ」
椅子のうえ、身動きがとりにくいところに胸と性器をいっしょに弄られ、そのあいまにキスされ舌を甘噛みされる。すると、肉体にゆるく物理的なストレスがかかることを好むらしい自分の身体が、篠山に与えられるそれらの柔らかい苦しさと痛みに歓喜していく。
「あんっ、やぁっ、ああっんっ……」
篠山の首に腕をまわして彼の身体に胸を擦りつけると、強い力で腰を抱かれて座面から引きあげられた。その逞しさに安堵し、彼への愛しさで胸がいっぱいになる。
椅子を退けた篠山に手を机のうえにつくよう促され素直に応じた神野は、背後から腹を引き寄せられると、尻の谷間に触れた彼の下腹部の熱に、はふっと吐息を漏らした。
硬く屹立した篠山のペニスに期待して、疼いた歯を噛みしめる。多量に分泌された唾液を飲みくだすと、コクッと鳴った。
背後で篠山の笑った気配がして、指さきで喉を揶揄うように突かれた。恥ずかしい。かぁっと身体が火照ると同時に、じわりと汗が滲む。
「んー、んんっ」
布越しに彼のペニスを数回擦りつけられ、脚から力が抜けた。篠山がちゃんと腰を支えてくれていたが、神野の上体は前にのめってしまい、咄嗟についた肘でノートや書類を払ってしまった。バサリと音がたち、ぎょっとする。
「あっ!」
「ノートっ」と口にして、顧客からの預かりものに疵をつけていないかと慌てた神野と対照的に、篠山はたいしたことでもないように、神野の耳を甘噛みしながら伸ばした右手でそれらを隣の机に移動させた。そのまま続行しようとするが、生真面目な神野はいまの出来事で頭がすっかり冷えてしまって――。
「待ってくださいっ。やめてくださいっ、篠山さんっ」
「なんだよ?」
「お仕事っ。遼太郎さんに頼まれたお仕事、まだ終わっていませんっ」
「ああ。残りは俺が明日やるよ」
「だめですっ。私が頼まれたんですから」
「じゃあ、明日起きてからやれよ」
「いいえっ、だめですっ。朝は掃除しに一度アパートに帰るつもりなんです」
ぐいぐい彼の胸を押しかえし躍起になって抵抗を続けていたら、漸くわかってくれたのか篠山の身体が少し離れてくれた。
「あのなぁ、祐樹」
「はい?」
「お前察しろよ? 遼太郎は気を利かせてくれたんだよ」
「……?」
「俺とお前がはやくふたりきりになれるように」
「え? ええっ⁉」
溜息交じりに云われて、びっくりする。
「そもそも遼太郎は自分の仕事を他人に任せるような性格じゃない。放っておいてもそれは明日あいつがやるから、だから気にすんな」
「……でも。やるって答えたんですから、ちゃんとやらないと……」
遼太郎が他人に仕事を押しつけるような無責任な性格じゃないとしても、自分だって頼まれて一度やると云ったことを、簡単に放棄できるような無責任なことができない性格だ。しかしそれを伝えようとした神野のセリフは、もにょもにょと尻切れになってしまった。
自宅とはいえ仮にも職場にしている部屋で性行為に突入するにしては、あまりにスムーズな展開で。篠山のその慣れた所作にひっかかるものがあったのだ。そのうえ、親密な時間に元カレである遼太郎の名まえをだしてきた。しかも現恋人である自分の性分よりもさきに遼太郎を讃する発言をし、篠山は彼を優先したのだ。まるで自分が蔑ろにされた気がして、すこし惨めだ。
もやもやする胸に手をあてて俯いた神野は、ついぞ存在しなかった新しい想いが自分に生まれていることに気づいて狼狽えた。
(くやしい……)
自分は遼太郎の有能さには勝てないのだろう。彼に与えられた仕事は事実、遼太郎には容易いものなのかもしれない。でもせめてそれを自分がちゃんとできたなら――。頼まれた仕事くらいはきちんとやりとげられると証明したい。
「仕事、ちゃんとやりたいです。約束は守りたいです」
そう口にすると、篠山は正面からゆるく抱きしめてくれて頬にキスをくれた。
「そっか。わかった」
篠山に気持ちをわかってもらうことができた? と、嬉々と顔をあげた神野は、しかし。
「……でも、コレどうする?」
スエットの生地を伸ばしその在り処を主張していたペニスを撫でられると、「あんっ」と声を上げて篠山の腕にしがみついた。
所詮、男なんてこんなものなのか。これほど頭が冷え、心が塞いでしまっていても神野の身体の火照りだけは冷めやらず、しかも彼にたったひと撫でされただけで脳が蕩けてしまう。もうすべてがどうでもいいと思えるくらいに。
「やっ、やっ、あんっ、あんっ」
「だから、コレ、どうするって?」
「そんなこと云いながら、そんなこと……、しないで、ああんっ」
下着のなかの冷えた体液が不快だとか、もうどうでもよくなってくる。自身の熱とぎゅっと握りしめてくる彼の体温で下腹部が燃えそうなほどだ。ヌチャヌチャと音まで聞こえてくるので、耳をも侵された気分になってくる。
「ああっ、ああんっ……」
「なぁ? やっぱり残りの仕事は明日でいいよな?」
耳もとで囁かれて、彼の吐息に背筋を震わせながら、神野はこくこくと頷いた。もうどうにでもしてと、掠れる声でお願いしたのだ。「脱がせてっ」と。
「だよな? 好きだよ、祐樹のそういうところ」
椅子のうえ、身動きがとりにくいところに胸と性器をいっしょに弄られ、そのあいまにキスされ舌を甘噛みされる。すると、肉体にゆるく物理的なストレスがかかることを好むらしい自分の身体が、篠山に与えられるそれらの柔らかい苦しさと痛みに歓喜していく。
「あんっ、やぁっ、ああっんっ……」
篠山の首に腕をまわして彼の身体に胸を擦りつけると、強い力で腰を抱かれて座面から引きあげられた。その逞しさに安堵し、彼への愛しさで胸がいっぱいになる。
椅子を退けた篠山に手を机のうえにつくよう促され素直に応じた神野は、背後から腹を引き寄せられると、尻の谷間に触れた彼の下腹部の熱に、はふっと吐息を漏らした。
硬く屹立した篠山のペニスに期待して、疼いた歯を噛みしめる。多量に分泌された唾液を飲みくだすと、コクッと鳴った。
背後で篠山の笑った気配がして、指さきで喉を揶揄うように突かれた。恥ずかしい。かぁっと身体が火照ると同時に、じわりと汗が滲む。
「んー、んんっ」
布越しに彼のペニスを数回擦りつけられ、脚から力が抜けた。篠山がちゃんと腰を支えてくれていたが、神野の上体は前にのめってしまい、咄嗟についた肘でノートや書類を払ってしまった。バサリと音がたち、ぎょっとする。
「あっ!」
「ノートっ」と口にして、顧客からの預かりものに疵をつけていないかと慌てた神野と対照的に、篠山はたいしたことでもないように、神野の耳を甘噛みしながら伸ばした右手でそれらを隣の机に移動させた。そのまま続行しようとするが、生真面目な神野はいまの出来事で頭がすっかり冷えてしまって――。
「待ってくださいっ。やめてくださいっ、篠山さんっ」
「なんだよ?」
「お仕事っ。遼太郎さんに頼まれたお仕事、まだ終わっていませんっ」
「ああ。残りは俺が明日やるよ」
「だめですっ。私が頼まれたんですから」
「じゃあ、明日起きてからやれよ」
「いいえっ、だめですっ。朝は掃除しに一度アパートに帰るつもりなんです」
ぐいぐい彼の胸を押しかえし躍起になって抵抗を続けていたら、漸くわかってくれたのか篠山の身体が少し離れてくれた。
「あのなぁ、祐樹」
「はい?」
「お前察しろよ? 遼太郎は気を利かせてくれたんだよ」
「……?」
「俺とお前がはやくふたりきりになれるように」
「え? ええっ⁉」
溜息交じりに云われて、びっくりする。
「そもそも遼太郎は自分の仕事を他人に任せるような性格じゃない。放っておいてもそれは明日あいつがやるから、だから気にすんな」
「……でも。やるって答えたんですから、ちゃんとやらないと……」
遼太郎が他人に仕事を押しつけるような無責任な性格じゃないとしても、自分だって頼まれて一度やると云ったことを、簡単に放棄できるような無責任なことができない性格だ。しかしそれを伝えようとした神野のセリフは、もにょもにょと尻切れになってしまった。
自宅とはいえ仮にも職場にしている部屋で性行為に突入するにしては、あまりにスムーズな展開で。篠山のその慣れた所作にひっかかるものがあったのだ。そのうえ、親密な時間に元カレである遼太郎の名まえをだしてきた。しかも現恋人である自分の性分よりもさきに遼太郎を讃する発言をし、篠山は彼を優先したのだ。まるで自分が蔑ろにされた気がして、すこし惨めだ。
もやもやする胸に手をあてて俯いた神野は、ついぞ存在しなかった新しい想いが自分に生まれていることに気づいて狼狽えた。
(くやしい……)
自分は遼太郎の有能さには勝てないのだろう。彼に与えられた仕事は事実、遼太郎には容易いものなのかもしれない。でもせめてそれを自分がちゃんとできたなら――。頼まれた仕事くらいはきちんとやりとげられると証明したい。
「仕事、ちゃんとやりたいです。約束は守りたいです」
そう口にすると、篠山は正面からゆるく抱きしめてくれて頬にキスをくれた。
「そっか。わかった」
篠山に気持ちをわかってもらうことができた? と、嬉々と顔をあげた神野は、しかし。
「……でも、コレどうする?」
スエットの生地を伸ばしその在り処を主張していたペニスを撫でられると、「あんっ」と声を上げて篠山の腕にしがみついた。
所詮、男なんてこんなものなのか。これほど頭が冷え、心が塞いでしまっていても神野の身体の火照りだけは冷めやらず、しかも彼にたったひと撫でされただけで脳が蕩けてしまう。もうすべてがどうでもいいと思えるくらいに。
「やっ、やっ、あんっ、あんっ」
「だから、コレ、どうするって?」
「そんなこと云いながら、そんなこと……、しないで、ああんっ」
下着のなかの冷えた体液が不快だとか、もうどうでもよくなってくる。自身の熱とぎゅっと握りしめてくる彼の体温で下腹部が燃えそうなほどだ。ヌチャヌチャと音まで聞こえてくるので、耳をも侵された気分になってくる。
「ああっ、ああんっ……」
「なぁ? やっぱり残りの仕事は明日でいいよな?」
耳もとで囁かれて、彼の吐息に背筋を震わせながら、神野はこくこくと頷いた。もうどうにでもしてと、掠れる声でお願いしたのだ。「脱がせてっ」と。
「だよな? 好きだよ、祐樹のそういうところ」
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