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ファンタジー官能譚
忠誠騎士の淫猥な遊び
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~忠誠騎士の淫猥な遊び~
ヴァンリヒ王国。
大陸の中でも一、二を争う大国。市井は賑わい、民の懐は潤う桃源郷のような国は、偏に現国王であるトール・ヴァンリヒの政策のおかげだった。
トール・ヴァンヒリは齢二〇歳で即位し、二十五年経った今でもその手腕は衰えず、今なお民からの信頼は厚く、それは国王に仕える者も同じだった。
そして、その国王に傾倒する騎士がまたひとり。
「はあ、へい、か……。あ、んん」
まだ早朝のベッドの中で、ハーリンは甘い吐息を漏らした。
ベッドに横になっているハーリンはブランケットの中で大きく両膝を広げ淫蕩に耽っている。
「あん、は、あ、あ」
ブランケットから顔を出しているが、その頬は朱色に染まり、小さな桃色の声は部屋の雰囲気を濡らした。
「陛下、陛下……!」
ブランケットの中に潜む秘部を人差し指と中指、そして薬指で弄り、いやらしい音がグチュグチュと鳴っている。
想像するのは敬愛するトール・ヴァンヒリだ。
「あ、ひ、あぁん」
洪水のように濡れた秘部を擦りながら、その焦れったくも小さな快楽に、かれこれ一時間は悶えている。
パジャマにしている生成り色のワンピースを腰までたくし上げ、下着は左足の中央で捻れている。
「あぁ、ダメ、は、あん」
想像の中で傾倒する国王との淫行はクライマックスまで迫り、想像の男根がハーリンの蜜壺を穿つ。
「へい、か…!」
頭の中で国王の亀頭がハーリンの子宮口を叩く。
ハーリンはそれまで焦らしていた花芯を三本の指の腹で一心不乱に擦り上げる。
それまでの緩やかな快楽とは比べ物にならない刺激がハーリンの目をチカチカと眩ませた。
「イク、イク、へいか、へいかぁ!」
腰を弓なりに撓らせ、ハーリンは下半身をヒクヒクと震わせて達した。
「あ……」
ベッドサイドに置かれた目覚ましの音でハーリンは現実に戻される。
「いけない、時間が……」
自分が思っていたよりも一人遊びに夢中になっていたのか、もう交代の時間だ。
「やだ、シャワー浴びる時間ない……」
ハーリンの指は愛液がべっとりと付き、夜空のような黒色の髪は汗ばんでしっとりとしている。
「今日は陛下にお会いするのに……」
しかし時間に遅れることはハーリンには許されない行為だ。これまでの功績と品行方正な態度でハーリンは今の地位を築いた。それに傷をつけることは自分自身が許せなかった。
「濡らしたタオルで拭けばいいか」
出来れば身ぎれいにしていきたい。例えドレスではなくとも、慕っているトールにはよく見られたいと思うのは捨てたはずの女心だった。
ハーリン・ウィルソンは国王を警護する近衛騎士の一人だ。齢は二十五歳で、この王国では行き遅れの中に入る。
彼女の出身はヴァンヒリ王国の片田舎で父母と三人の妹と暮らしていた。父が若くして死没し、母と妹たちを食わすために騎士を目指した。
近衛騎士になるまでの道のりは厳しく、それこそ血反吐を吐くほどの困難と試練の連続だったが、ハーリンは国王の近衛騎士にまで上り詰めたのだ。
「ハーリンおはよう」
「隊長おはようございます」
近衛騎士団隊長のウィリー・レイドは仕事には厳しいが公平な目を持った騎士で、ハーリンを抜擢したのもこの男だった。
「今日はフォルトゥナ王国から使節団が到着される予定だ。陛下の警護を厳重に頼む」
「了解いたしました」
フォルトゥナ王国はヴァンヒリ王国と同じくらいの大国だ。ただ隣国のトゥーナ国と仲が思わしくなく、国境地帯は未だ紛争が止む気配はないと聞く。
ヴァンヒリ王国は外交手腕が優れているため、トゥーナ国とは物流や商団とのやり取りも行っている。きっとフォルトゥナ王国はトゥーナ国との停戦をヴァンヒリ王国に頼りたいのだろう。
「はあ……陛下にそのようなことを頼むとは……」
「まあこれでフォルトゥナ王国に貸しを作れる。そうなれば市井は更に潤うだろう」
「そうですが……」
「それと……」
ウィリーは乾いた唇を開き、ハーリンを一瞥すると溜息を吐いた。
「いや、お前の耳にもすぐ入るだろう」
「気になります」
ハーリンがウィリーに迫る前に、ウィリーは「もう交代の時間だ」とハーリンを執務室から追い出した。
「もう、教えてくださっても良いのに」
しかしウィリーが言ったことに嘘はないので、彼の言うとおりすぐにハーリンも知ることが出来るのだろう。
「ダン、交代します」
「おう、よろしく」
赤毛を短髪にしたダンは太陽のように明るい笑顔でハーリンと交代した。
場所は国王の寝室前だ。髪や服に汚れは無いか確認して姿勢を正した。
部屋の中では国王が身支度を整えているのか、侍女たちが忙しなく部屋を行き来している。
寝姿の国王はどんな格好をしているのか、ハーリンは想像した。起き抜けの沐浴後は白く上質なバスローブを羽織り、濡れた髪をタオルで拭かれているのだろう。髪から滴る雫がシワを刻んだ顔を擦り落ち、渓谷のように深く整った容姿を更に際立たせているに違いない。
その色っぽい姿を思い描き、ハーリンの胸は高鳴り、下腹部がじんわりと疼く。
いけない、職務中だ。
そうは思っても淫らな想いが灯った熱は一向に引いてくれず、内ももを擦り合わせた。
ギイ、と重い扉が両方に開け放たれたことでハーリンの胸の鼓動は最頂点に達した。
「あぁ、おはようハーリン」
「おはようございます陛下」
扉の横に立つハーリンを視界に捉えた国王のトールは笑いかける。
トール・ヴァンヒリは無人相ながら情の深い男で、側近だけでなく自身に従事する執事に侍女の名前を覚えて気安く接する男だった。勿論、近衛騎士のハーリンに対しても。
「今日は使節団が来る予定だったな」
「はい陛下、昼食は皇太子殿下が、夜は歓迎の舞踏会が開かれる予定です」
最側近のアーロン・ブラウンが今日も隙のない完璧な装いで国王に今日の予定を告げる。
「うむ、行くか」
陛下が向かうのは家族が揃う食堂だ。そこには皇太子と皇女が既に席についているはずだが、国王の足取りは緩やかだった。
正午に差し掛かる頃、城に使節団が到着した。
謁見の間では国王が玉座に鎮座しており、フォルトゥナ王国の皇太子は恭しく姿勢を正した。
「ヴァンヒリ王国トール陛下、使節団訪問の許可を頂き感謝いたします」
「フォルトゥナ王国の若き獅子であるアダルベルト・フォルトゥナよ、よくぞ参ったな」
「ご無沙汰しております陛下」
褐色の肌、透けるような金髪、サファイアのような瞳がキラリと輝く。肌の色が違うとしてもアダルベルトの容姿は男女問わず頬を染めるほど美しかった。
「昼食は皇太子であるラインハルトが主催する。夜は歓迎の舞踏会を開こう。それまで寛ぐが良い」
「ありがとうございます」
アダルベルトは胸に手を当て最大限の礼儀を尽くした。
謁見が終わり、トールは国賓であるフォルトゥナ国皇太子アダルベルトの歓迎舞踏会の準備を指示し、その間に国会を通った法案などに捺印を押す。
トールの仕事は凄まじく、歴代国王の中でも群を抜いていた。
ハーリンは執務室の外に待機しており、お茶や菓子を届けために部屋を出入りする侍女を羨ましそうに見やる。
私も侍女になればよかったな。
そんな夢みたいなことを思う。
侍女は教養を受けた貴族の女性しかなれない仕事だ。平民上がりのハーリンには叶わない夢だった。
せめてお顔が見たい。
そう願っても、国王が仕事中に部屋から出ることはない。
「ハーリン、休憩だ」
同期の近衛騎士がやってきてハーリンの代わりに扉の傍らに立った。
訓練を受けた騎士であっても腹は減るもので、空腹に鳴る腹を抱えて食堂へ向かった。
そして、昼食を食べ終わりハーリンがすることは、トイレに入って一人遊びに興じることだった。
「ん、ん」
声を抑えても快感に上がる息は抑えられず悩ましい吐息が上がる。
着込んだ軍服のパンツを下げ、顕になった下半身を弄れば、既に濡れきった恥裂の間から糸が引いている。
「はあ、こんなに……」
クチュクチュと愛液を確かめて中指に纏わせると、ハーリンは急かされるように肉芽をいじり始めた。
「ん、あ」
陛下が私に笑いかけてくださった。
鼻筋の通った精悍な顔がハーリンを見ると口角を上げた朝の出来事を思い出して、自然と肉壷からトロリと蜜が溢れる。
平時より大きく尖った花芯は撫でるだけで腰に痺れるような快感が走った。
「こんなに、大きく……」
肥大したクリトリスは触ってほしくて仕方ないと意思表示しているようだが、トイレは誰が入ってくるかもわからない。フーフー、と息を殺しながら優しく花芯をクルクルと撫でて指の腹で弾けば、ハーリンの両足はガクガクと震えた。
ハーリンに掛けられた国王の声が未だに頭を離れない。
低くベルベットのように厚みのある声は聞くだけでも安心感を与えながら、ハーリンの体の芯を熱くさせる。
あの声で名前を呼ばれた。
思い出すとゾクゾクと腰が甘く痺れる。
我慢できない、と軍服のボタンを外して隙間から胸へ手を入れる。
「ひ、あ、あ、あ」
コリコリと固くなった乳頭を摘みながら、涙を流す秘部を擦り、そのまま二本の指を蜜壺へ入れる。
花芯を愛撫するより大きな音が鳴るが、昼間の皇宮は忙しなく人が動いているのでこの程度ならば問題ないだろう。
「んん、は、あん……」
グチュグチュと蜜壺の中で指を出し入れして快感を追い続ける。
「はひ、はぁん」
――ハーリン、勤務中だというのに自慰に耽って悪い子だな。
陛下にお仕置きされる妄想をして、ハーリンは息を荒くした。
「あ、申し訳有りません、へいかあ」
――こんなに濡らして……。悪いハーリンには自慰で十分だろう?
「はあ、私は悪い子です、あ」
――ハーリン、私が見ている前で上手に達してごらん。
「はい、はい、へい、か、に、見られながら、イキます、悪い子のハーリンのオナニー、見ていて……あ、下さい」
ドロリと溢れた愛液を中で掻き混ぜるように動かし、ハーリンは国王に視姦される妄想をしながら、絶頂と同時に潮を噴いた。
「あ、仕事中なのに……」
しかしハーリンの表情に嫌悪の色は見えない。国王の顔を思い出して恍惚に蕩ける。
こうして休憩中にオナニーをすることは珍しくないのだ。特に国王の顔を見た日は必ずしてしまう。
「ふう、さて行こう」
頭を切り替えるとハーリンは仕事に戻るためトイレを出た。
「ねえ聞いた?」
「聞いたわよ」
トイレを出た廊下で侍女たちがこっそり離しているのが耳に入る。
「陛下に正室様がいらっしゃるかもしれないんでしょ?」
「フォルトゥナ国の皇女様ですって」
「使節団はその話もしに来たみたいね」
コソコソ話しているつもりだろうが、その声は興奮で大きくなっている。
ハーリンは正室と聞いて頭を殴られたような痛みが走った。
トールは即位と同時に皇后を設けたが十年前に亡くなり、それからその席は空いたままだ。
名君と名高い国王は四十五歳といえど後妻を狙うのは何もヴァンヒリ国内の貴族だけはなく、他国の王室も同じだった。
侍女ならまだしも、騎士であるハーリンは国王の正室はおろか、側室にもなれない。
ハーリンはそれを理解し、告げることすら許されない恋慕をひた隠しにしている。それでも耐えられるのは、国王が皇妃を置いていないことも大きかった。
だがそれも、今回使節団が訪れたことで揺らぐかもしれない。
「嘘よ、そんな……」
「ハーリン様!」
「どうされましたか」
ハーリンに気付いた侍女たちがキャア! と黄色い声を上げる。
ハーリンは女性で騎士になった珍しい人物だ。凛とした佇まい、女性特有の柔らかい微笑みにファンが多く、また羨望の視線を集めていた。
しかし今のハーリンには凛とした佇まいも、侍女たちに微笑む余裕もない。
陛下が結婚される……?
フォルトゥナ王国の皇女といえば一人娘のイライザ姫だろう。その美貌はヴァンヒリ王国まで届いている。年齢はまだ二十歳と聞いているが、貴族では歳の離れた婚姻などザラにある。問題などないのだ。
陛下、陛下……!
零れそうな涙をグッと堪えてハーリンは仕事に戻った。
太陽と宵闇と溶けて合わさる晩鐘に舞踏会は始まった。
天井から下がるクリスタルのシャンデリアがホールを照らし、貴婦人たちのドレスを彩る宝石に反射する。
国賓を歓迎する宴に集まった貴族たちは楽しそうに酒を酌み交わし会話に花を咲かせているが、その視線の先はこの舞踏会の主役であるアダルベルトと皇太子のラインハルトに注がれていた。
金の髪と褐色に似合うネイビーの礼服は、まるで夜空に輝く月のような光を放つアダルベルトと、プラチナブロンドに白磁の肌を持ち、白い礼服を身に着けているラインハルトは太陽のようだ。
正反対であり対のような魅力を持つ二人の皇太子はパーティーに参加している者の意識を掻っ攫っていた。
しかしハーリンの意識はトールにしか注がれていない。
チラリと見上げた玉座に座る国王は笑みを携えてその様子を見ていた。
今は王の玉座しかないその場所に、皇后のための席が誂えられる。その隣にハーリンは一生就けるわけがないのだ。
陛下……。
隣に座り仲睦まじく微笑み合うトールとイライザを想像して、ハーリンは目尻が湿るのを感じる。
いけない、仕事に集中しなきゃ!
頭を振って騎士として鋭い視線で警戒した。
そこでアダルベルトが国王の玉座の前に現れた。
「陛下、このように盛大なパーティーを開いて頂き、ありがとうございます」
「良い。フォルトゥナ国王とは長い付き合いだ」
ハッハッ、と快活に笑う国王に対し、アダルベルト真摯な目を向けた。
「ご厚意ありがたく頂戴いたします」
アダルベルトの国王への挨拶でパーティーは再開された。
ホールにはワルツが流れ、淑女たちはダンスの誘いを今か今かと待ちわびている。
「あの……」
「はい、なんでしょうか?」
警戒態勢だったハーリンに一人の淑女が声をかけてきた。パステルイエローのドレスに身を包んだ小柄で可愛らしい女性だった。
「あの、ウィルソン様……お仕事中とは分かっているのですが……もしよろしければ、わ、私と踊って頂けませんか……?」
彼女の胸の前で組んでいる手は震えている。勇気を出したことはハーリンだって理解したが、それでも仕事中だ。持ち場を離れるなんて出来るわけがない。
「申し訳ありませんが……」
「良いではないか」
ハーリンを見ていたのか国王が大きい声で玉座から声を上げた。
「ハーリン、踊って差し上げろ」
「……はい。では、お手をどうぞレディー」
「ありがとうございます!」
誘いを受け入れられた嬉しさに震える女性は感極まっているのか目尻に涙が浮かんでいる。
手を取ったハーリンはホールの真ん中までエスコートをしてワルツのポーズを取る。
優雅な音楽はまるで流星のように流れていく。ドレスの裾が翻り、ダンスに興じる男女は円を成して広がっていく。
「ハーリン様と踊れて嬉しいです」
「ありがとうございます。私の方こそレディーと踊れて光栄です」
ハーリンは貴族の出ではない。それなのにダンスを踊れるのは偏にハーリンの女性人気からだった。誉れ高き騎士でも評判は大切だ。特に国王の近衛騎士ならば信頼が不可欠で、人気騎士の筆頭ハーリンは男性パートだけ踊れるように訓練させられた。
陛下が私を見ていらっしゃる。
男役のステップを間違えず踏み、相手のレディーに愛想笑いも忘れないハーリンだが、意識は国王に向けられ、その視線をこの場では独り占めしていると思うとゾクゾクと脳髄を痺れさせる。
国王の視線がまるで全身を締め付けるかのように注がれ、ハーリンは股が濡れる感覚を覚えた。
ダメ、今濡れては……!
踊るステップで内腿が濡れた感触がする。足を開いたり閉じたりすることで肉芽が擦れ甘い吐息が上がった。
陛下が見ている前でいやらしい音を立てるなんて! でも気持ちいい、陛下に見られている!
曲が終わり互いにお辞儀をすると、女性は桃色に染まった頬を隠すことなく、ハーリンに微笑んだ。
「ハーリン様、ありがとうございます」
余程嬉しかったのか、ダンスの余韻に酔いしれるように、うっとりと瞳を蕩けさせる女性は友人のところへと帰っていった。
その後もハーリンは淑女たちにダンスの相手を頼まれ、仕事に戻ろうとすると同僚に送り出されるを繰り返した。
結局ハーリンが相手した女性は二桁にまでおよんだ。
――疲れた……。
クタクタだが訓練をされたハーリンはその疲れを周りには見せなかった。
舞踏会を一通り見つめ、後のことを皇太子に任せて途中で退席した国王は寝所に向かっている。随行するハーリンはその広い背中に熱い視線を送った。
警護は国王の意向により二人一組で行われるが、今日は舞踏会があったため人数が限られている。
今日は国王が寝静まるまでハーリンの仕事は続く。
国王のために灯りを最小限にされた廊下はひっそりとしており、同じく警護に立つ同僚とは目も合わせない。
何も話さない一夜が始まろうとしていた。
――お疲れの陛下をお守りしなければ。
ハーリンは気持ちを新たに背中を伸ばす。
その時、寝室の扉が控えめに開けられる。
「おや、ハーリンではないか」
「へ、陛下! どうされましたか?」
トールが夜の寝室から顔を出すのは珍しいことでハーリンだけではなく同僚も驚いている。
「いやなに、舞踏会の余韻が抜けなくてな……。そうだハーリン、少し話し相手になってくれんか?」
「わ、私ですか?」
「あぁ、今日は随分と楽しませてもらったからな。労わせてくれんか?」
「そんな、恐れ多いです」
「来なさい」
皇帝陛下の誘いを断ることなどハーリンには出来るはずもなく、好いた男の手招きに籠絡された。
「他の近衛騎士を呼んでくれ。ハーリンは私の話し相手になってくれるからな」
「かしこまりました陛下」
国王の後を追い、ハーリンは初めて自室へと足を踏み入れた。
部屋は皇宮とは違い国王の香りが染み付いて、どこか生活感が漂う。それでも調度品は美術館に飾られるような高価な物で、ビロードのカーテンひとつ取っても、そこは豪奢な部屋だった。
「そう強張るな。ただの部屋だ」
「そんな、陛下の寝室です。素晴らしいお部屋ですね」
まさか国王の自室へと通されるとは夢にも思わなかったハーリンは手持ち無沙汰になりながら国王の背中を見つめた。
「そこへ座ると良い。茶は私が淹れよう」
「私がやります! 陛下にお茶を淹れていただくなんて!」
慌てたハーリンは恐れ多いと言った風に声を上げる。しかし国王は頭を振った。
「命令だ、ソファーに座っていなさい」
「……かしこまりました」
命令と言われては従う他ないハーリンは、今までで一番座り心地のソファーに腰をかける。
「待たせたな」
「そんな、陛下自ら淹れて下さったお茶を頂けるだけでも光栄なことです」
「これでも若い頃は茶に拘りがあってな、今でも時々自分で淹れるのだ」
白磁のティーカップに淹れられた紅茶がふんわりと湯気を立てている。
「頂きます」
「うむ」
鼻腔をくすぐる芳醇な香りは春の草原を思わせ、口に含んだ味は爽やかに喉を通った。
「美味しいです」
「夜は気持ちを落ち着けるハーブティーが一番だ」
静かな部屋の中に、遠くで奏でられている音楽が聞こえてくる。
「とても素晴らしい舞踏会でした」
キラキラと煌くホールに、人の笑い声、軽やかに踏まれるステップは浮世離れした光景だ。片田舎で生まれ育ったハーリンはその雰囲気に今でも慣れない。
「はは、今夜は人気者だったなハーリン」
「恐れ入ります」
「皇太子より女性たちの視線を集めていたぞ?」
「そんな……!」
やはりダンスを見られていたのだ、とハーリンは恥ずかしい気持ちになった。
その気持ちに気付いているのか、トールは微笑ましいものを見るような目をしている。
「年寄りの要らん気遣いと思って聞き流してくれ」
「は、はい」
「お前もいつか嫁ぐ日が来るだろう、その時はたくさんの縁談が来るはずだ」
「陛下……」
ハーリンに結婚する意志はないが国王の言葉だ、一字一句聞き逃さないように耳を傾けた。
「意中以外の男に、私に向ける顔を見せてはいかんぞ。要らん虫が寄ってくる」
陛下に向ける顔、といわれてハーリンは自らの頬に触れた。
何を言われているのか分かっていないハーリンに国王は普段は豪胆な笑いとは別の微笑みを送る。
陛下のこんなに穏やかな微笑を初めて見たわ。
「いつも私は酷い顔をしておりましたか?」
国王の意向にそぐわない表情をしていたのなら、これからはもっと気を引き締めなければ、とハーリンはティーカップを持つ手に力をグッとこめる。
「いや、そういうことではないんだハーリン」
「では……」
「騎士だというのに気付いていないのか? それともわざとか?」
「仰っている意味が……」
胸に不安が広がっていくハーリンは口にする言葉が震えた。
「ふむ、無自覚か」
国王は青ざめているハーリンの表情に口角を上げると、その薄い唇を開いた。
「私を誘惑するような顔だよ。まるで抱いてほしいと言っているようだ」
「だ……!」
「おや、私の勘違いだったか?」
口ひげを蓄えた薄い唇が弧を描く表情を見て、ハーリンの胸が戸惑いを上書きしていく。
陛下に嘘はつけない……!
その忠誠心が仇になるとは思っていなかったハーリンは震える指先の温度が急激に下がっていくのを感じる。
「……いえ、勘違いではありません」
「私の警護に当たる日は特に頬を染めていたが、何をしていたのか聞いても良いか?」
そんなことまで気づかれていたの?
「……あの、」
「私は滅多なことでは怒らない。言ってみなさい」
国王の声色は優しいが、ハーリンの不安は拭えなかった。
「陛下を想って、ひ、一人遊びをしておりました……」
「ふむ……」
ハーリンの答えを聞いた国王はソファーの背もたれに凭れて、しげしげとハーリンを見つめた。
「今日もしていたな?」
「はい……」
顔を青ざめさせたハーリンは国王の次に言う言葉に恐怖を抱く。
しかしハーリンの予想は裏切られた。
「軍服の下を脱いで見せてごらん」
「へ、陛下に汚いものを見せるわけには!」
「見せなさい」
有無言わさない声にハーリンの肩がビクつく。
ギュッと目をつむったハーリンは、ティーカップをテーブルに置くと立ち上がり、軍服の下をもたつきながら脱いだ。
「下着に糸を引いているじゃないか……。舞踏会中に濡らしたか?」
羞恥に頬を染めるハーリンは肩をブルブルしながらコクリと頷いた。
「ダンスをしている時、陛下に見つめられていると思いながら濡らしました……」
「悪い子だなハーリン。そんな子には罰を与えなければ」
「はい……」
「そこでいつもどうやって慰めていたのか見せてごらん」
ハーリンは軍服の下を脱ぐとソファーに敷き、その上に腰をかけて両足を大きく広げた。
陛下に私の汚いところを見られている……!
失望される恐怖とは裏腹にハーリンの股は濡れ、指先で触れるとクチュリと水音を上げる。
「はぁ」
熱い吐息を吐き出し、指先を動かし始めた。
「ん、あ、あ」
肥大した花芯をゆるゆると撫でながら国王の視線が突き刺さるのを感じる。
「いつもそのような慎ましい触り方をしているのか?」
「い、え……もう少し激しく……」
「いつもみたいに、と言ったろう?」
陛下直々の命令に全身が熱くなり、自然と指先が自慰への速度を早めた。
コリコリとしたクリトリスを人差し指と中指で挟み上下に扱くと足がピクピクと動く。
「ハーリン、目を閉じないで私を見なさい」
「はい、陛下」
仕事中に見せる国王の厳しい目が今はハーリンだけに注がれている。
緑色の瞳はハーリンの内側を全て見透かすような美しさで、その双眸に痴態を見られていると思うと酷く興奮した。
グシュグシュに濡れた恥裂は糸を引き、泥濘んだ花芯を扱く手が中々定まらないが、国王の射抜くような視線だけでも達してしまいそうになる。
「可愛いハーリン、恥を捨てて私だけを感じるんだ」
ダメ、ダメ、お慕いしている陛下に達するところをお見せするなんて……!
しかし心の中とは裏腹に恥部を弄る手は早くなる。広げた両足を更に広げ、まるで国王に見せつけるように腰を突き出した。
「あ、あ、あ、達してしまいます……!」
「いい子だ」
イッてしまう! 陛下に見られながら! こんないやらしい私を! でも気持ち良いのが止まらない! 気持ち良い! 気持ち良い! イク、イク! 陛下に見られながらはしたなくアクメしちゃう! イク! イグぅ!!!
ぷっくりと腫れ上がった肉芽を一心不乱に擦り上げ、物欲しげにクパクパ引くつく肉壷の入り口をはしたなく見せつけながら、ハーリンは全身を痙攣させた。
「良くやったなハーリン」
目尻から流れる涙を拭うことも出来ず、今まで行ってきた一人遊びとは比べ物にならないほど大きな快感の余韻に浸るハーリン。
荒い呼吸を繰り返し、力の入らない両足を無様に広げたまま、達したクリトリスはまだ勃起し続けている。
「頑張ったハーリンにご褒美をやろう。なんでも一つ願い事を言ってみろ」
「……よ、よろしいのですか?」
心の底で蓋をしていた願いが叶うかもしれない期待に快楽に与えた脈の速さとは別のものが胸を高鳴らせる。
「ひ、一晩でいいのです……。陛下の温情を頂けませんか……?」
国王の正妻でもなければ側室でもない、侍女ですらないハーリンにはその願いはすぎたものだった。
しかし国王は頷き、ハーリンをベッドへ誘う。
「さあハーリン。お前の恥部を見せておくれ」
ハーリンは靴を脱いでベッドへ上がると、また大股を開いて国王へ自分の女の象徴を見せた。
「先程は随分とここが引くついていたな」
「申し訳ありません……」
「いいのだ、可哀想なくらい濡れて……」
国王の太い中指がハーリンの肉壷にプチュリと入る。
「あん! 陛下いけません、私のような者の汚れた場所に指など……!」
「いいのだハーリン、可愛いものだな」
ぬくー、ぬくー、と中指を前後させながら国王はナカの感触を確かめる。
「あ、あ、あ、あ」
ハーリンはナカでの国王の指の感触を忘れまいと神経を集中すると、灼熱の中を蠢く中指がハーリンの性感帯を探し当てた。
「へ、陛下! そこは!」
「ここが良いのか?」
クッ、と指を立ち上げた国王はそのまま蜜壺のザラついた上を擦ると重い快感がハーリンに甘い声をあげさせた。
「あん、あん! 陛下、あぁん!」
「指の動きに合わせて腰を揺らすなんて……。普段の凛々しいハーリンからは想像も出来なかったな」
「もう、しわけあ、りません、へいかあ!」
「ひとつ聞きたいのだが」
国王は快楽に戦慄くハーリンを見つめながらも、普段と変わらない声色で問うた。
「市井では女性器のことをなんと呼称するのだ? 貴族は欲深いわりに上品に繕っておってな」
絶対知っているのに……! 私を恥じらわせようとしていらっしゃる!
国王は優しく触れていた指の動きを止め、返答を急かすように小首を傾げた。
「あ、あ、」
止められた動きにハーリンは物足りなさと羞恥で泣きそうになりながら、固く目を瞑る。
「お、……おまんこ……」
消え入りそうな声は天蓋で閉ざされたベッドの中では鮮明に聞こえたのだろう。国王は穏やかに笑った。
「そうか、そうか。随分と可愛らしい響きだ。そのおまんことやらをハーリンはどうしてほしい?」
「陛下の指でグチュグチュかき混ぜて欲しいです。私のおまんこをイカせてください」
「男を寄せ付けない誇り高き騎士がこんなに淫乱だとは……。ほら、指を動かすから自分でも腰を揺らせ」
「はい陛下ぁ」
愛おしい国王の指が自分の愛液に濡れていくさまを見るのは罪悪感が湧くと同時に酷く興奮した。ハーリンはビクビクと身体が波打ち、最後には自ら腰を指に押し付けて絶頂した。
「は、はあ、」
気持ちよさに惚けるハーリンに国王は微笑む。
「さて次は何を望む? それとも私の騎士にとってはこれだけでも温情になるか?」
ハーリンの視線は国王の精悍な顔をみつめた後、下におろしていく。
「あ、陛下のを舐めさせて頂きたいです……」
高貴な男が急所を見せることなど滅多にないだろう。それを騎士であるハーリンはよく知っていた。
しかし国王は頷く。
「許す。さあ来なさい」
ハーリンを部屋に呼びこむ前まで風呂に入っていたのだろう。バスローブ一枚だけを羽織っていた国王の足の間に蹲ったハーリンはドクドクと痛いほど高鳴る鼓動を抑えて、バスローブの上から男根を触る。
そこはまだ反応が薄いが、屹立していない状態でも大きい。
上がる息を殺しながら、ハーリンはバスローブの合わせを開いてまだ柔らかい肉棒にふれる。
これが陛下のペニス……。
熱い息が男根に触れて僅かに匂いを嗅ぐと、石鹸の匂いに混じった男の強いフェロモンが鼻を突いた。
なんて素敵な香りなの……!
柔らかさを確かめるように両手で優しく触って国王を見れば「好きにしなさい」と頭を撫でられた。
その言葉を聞き、ハーリンは我慢していた欲望が爆発したようにペニスをむしゃぶる。
「ん、あ、んむ! ジュルル」
とめどなく溢れてくる唾液はまるで腹を空かせていた犬のようで、舌は水を舐めるようにピチャピチャと竿を攻め立てた。
「ぐ、んん」
くぐもった声に嬉しくなったハーリンは肉棒を喉奥まで誘い口蓋垂を収縮させて亀頭を締め付ける。
「は、ハーリンは口淫が上手いのだな」
「んぶ、ジュル、ジュポ、んお」
嬉しい、陛下が喜んでくださっている!
ハーリンが口淫をするのは国王が初めてだが、そのテクニックは凄まじいものがあった。
しかしそれも当たり前なのだ。ハーリンは妄想の中で幾度となく国王の肉竿にむしゃぶりついていたのだから。
唾液まみれの肉棒はテラテラと光り、亀頭は張り詰めている。既にペニスは腹に付かんばかりに屹立しており、赤黒い竿には無数の血管が青く筋を浮かべていた。
「ハーリンもういい。私の前で膝立ちになるんだ」
「あ……!」
もう少し舐めていたかったのに……。
大好きなお菓子を取り上げられた子供のような顔をしたハーリンを、国王は仕方ないと苦笑いを浮かべる。
「軍服の前を開けるんだ」
「はい陛下……」
ハーリンにはもう羞恥心はなかった。
今夜だけの寵愛を受けられる栄光に酔いしれ、そしてこれまでのフラストレーションを発散するように淫猥に振る舞う。
「なんだ、触ってもいないのに立っているのか?」
「申し訳ありません」
「ハーリンの謝罪は口だけだな」
軍服の下に着ている白いワイシャツの間から双丘が現れる。
下着の代わりとなるサラシは下へとずり下げ、顕になったピンク色の乳頭は既にぷっくりと立ち上がっていた。
「陛下……」
「ハーリン、そんな物欲しげな顔をするな」
懇願に似た声を上げたハーリンは近づいてくる国王の顔に鼓動がどうにかなってしまいそうになる。
「あん! はん! 陛下、陛下ぁ!」
国王の乳頭への愛撫は無骨な見た目とは裏腹に優しいものだった。
舌先を尖らせて突起の先端をツンツンと突き、分厚い舌で舐めあげる。
「ひ、陛下……!」
グリグリと乳頭を押しつぶされると泣き声に似た嬌声が口から上がってしまう。
「こんなに赤くして……可愛らしいものだ」
「んん、」
ジュルリと音を立てて乳頭を吸い上げられながら甘噛されてしまうとハーリンは喉を仰け反らせた。
大きく分厚い手のひらで胸の下から鷲掴みにされ形が変わるほど揉みしだかれる。
私の胸、変じゃないかしら……
男と関係を持ったことなどなかったハーリンは自身の身体を客観的に見られたことがないせいで、国王に幻滅されないか心配だった。
「どうした? 私以外のことを考えているのか?」
眉をしかめた国王に、ハーリンは首を振る。
「いえ、その……私の身体は変ではないでしょうか? 殿方に身体を見られるのは初めての経験でして……」
恥じらうように視線をそらせば、国王はハーリンの髪を撫でる。
「そうかそうか、ハーリンお前の身体は鍛えているので無駄な肉はなく、しなやかで美しいよ」
国王からの賛辞は安堵をもたらし、そして胸をときめかせた。
「嬉しいです。陛下」
「不安は取り除かれたか?」
「はい」
ハーリンがこの上なく幸せそうに微笑むと、国王はハーリンの手を握り、自分の方へと引き寄せた。
「さあハーリン、お前のナカへと私のモノを挿れてやってくれんか?」
「そんな、光栄なことです……」
口では畏まりながら、ハーリンは自身の内に渦巻く欲望に従う。
国王に馬乗りになり、そそり勃った剛直に腰を沈めていく。
「あぁ……」
ズププ、と泥濘んだ肉壷に押し入ってくる質量に歓喜の声を上げた。
陛下のモノが私のナカに……!
それは叶わないと嘆いていたハーリンへの褒美に間違いなく、あまりの感激に涙を流してしまう。
「痛いか?」
「いえ、いえ! 嬉しくて……!」
ハラハラと涙を流すハーリンの頬を撫でる国王は眉を下げる。
「私へのお前の気持ちは私が想像していた以上のようだな」
「幸せです陛下……」
熱り勃った肉棒はハーリンの蜜壺の中へと収まりきらない。
「申し訳有りません陛下……」
「構わん。私のが大きすぎるようだ」
その言葉通り、国王の一物は太く長い。並の女性では挿入しただけで苦しいだろう。
しかしハーリンにとってはその息苦しささえも快感になり、甘い吐息を漏らす。
「さあハーリン、私を気持ちよくさせてくれ」
国王の言葉にハーリンはゴクリと喉を鳴らした。それは幾度となく想像した願望が叶う瞬間だった。
「陛下、あぁ……!」
腰を上下左右に動かしては竿を肉壁に当て擦る。今まで知らなかった自身の性感帯に当たる度に腰が戦慄き、もっともっとと貪欲に淫猥に腰を押し付けた。
「あぁ、淫猥なお前は美しいな……」
天蓋の外に灯されたランプの光が汗ばんだハーリンの肌を妖しく照らす。その艶めかしい姿は男の所有欲を満たし、そして更なる渇望を生み出した。
「あん、陛下! あぁ」
大きな窓からランプの灯りに負けない輝く星を背景に、結合部を見せつけるように足を大きく開き、男の逸物を喰らう姿を見せるハーリンと微かに聞こえてくる舞踏会の音楽が背徳感を生む。
腰を撓らせながらジュブシュボ、と心ゆくまで肉欲を満たしていたハーリンに当てられた国王が熱っぽく囁いた。
「ハーリン、陛下ではない、名前で呼びなさい」
「そんな! いけません!」
皇族の名前を呼ぶことはデビュタントを果たした貴族のみに許されたものだ。デビュタントに出てもいないハーリンには到底許されることではない。
「ベッドの中での睦言だ。それとも私の名前を忘れているのか?」
「とんでもありません! と、トールさま……」
「いい子だ」
名前を口にしたハーリンの無礼を受け入れる国王にハーリンは泣き出しそうになる。
「こちらへ来なさい」
手首を引かれたハーリンの身体は国王の上半身にピッタリと近づいた。柔らかい双丘が筋肉のついた逞しい国王の胸板に押しつぶされ形を変えている。
「トール様、ん」
大きな手のひらで後頭部を押さえつけられ強引にキスをされる。
「ふ、んん」
無数の突起から成る海綿体がハーリンの舌を蹂躙し、ハーリンもそれを追うように舌を絡めされる。
接吻をしながら国王の手はハーリンの身体を撫で、その心地よさに酔いしれる。
「お前の痴態も良いが、ちと動きが細やかすぎるか」
「え?」
ギラリと光った国王の目。
ハーリンの尻を優しく撫でていた手が尻たぶを鷲掴み、逸物を蜜壺の奥へと突き刺す。
「んぐ!?」
「ハーリン、私を満足させたいのなら動きを覚えろ」
「は、い!」
ハーリンの奥まで淹れられた肉棒は鷲掴みされた尻を上げられてズロロ、と抜けていく。その空虚感と快楽は凄まじく、出ていく寂しさに声をあげてしまうほどだ。
「ひい!」
掴み上げられた尻を再度下へと押し付けられる。
パアン! と鳴る肌のぶつかり合いに、ハーリンは目をチカチカとさせた。
それまでの快楽がおままごとのように感じるほど、国王の力は強く、また男の欲望の強さに目眩を起こしそうになる。
これが、陛下のセックス……!
意識が追いつかないほどの激しさに、ハーリンは口の端から唾液を垂らし狂乱に声を上げる。
「あ、あ、あ! ひう、あぁん! あひん!」
出ていけば腰が抜けるほどの刺激が与えられ、穿たれれば子宮が喜ぶ。
鷲掴みにされているから逃げることも叶わず、その快楽に悶えては震えた。
「あぁ! トール様! トール様ぁ! 愛しております! 心の底から!」
「あぁ、可愛いハーリン、快楽に歪む顔を見せてくれ」
「はあん!」
一際大きく腰を穿たれ、ハーリンの全身が総毛立つ。
「あぁ! トール様、イッてしまいます……!」
「まだだハーリン、我慢しなさい」
「ひう、はい……!」
もうハーリンは限界だった。全身を投げ出してしまいたいような快感の中、必死に国王の肩に縋り付く。
「は、あぁん、あふう」
「は、はあ」
眼下の国王の顔は、普段は凛々しい眉が快楽に顰められ、頬は紅潮して歪んでいる。その様はハーリンの快感を煽って高ぶらせた。
「あぁぁぁ、もう、トール様、ハーリンのナカでイッて下さい……! ハーリンのいけないおまんこに子種をくださいぃ」
「ハーリン、お前の頼みならいくらでもやろう」
「あぁ嬉しい……! トール様のザーメン……!」
ハーリンはあらゆる淫らな言葉を使って国王の絶頂を誘う。
自ら腰を動かし、太く長い逸物を奥深くまで咥え込み、子宮口で亀頭を押し付ける。
汗をかいて湿った赤毛を掻き抱き、口ひげのこそばゆさが首元に当たって鼻を抜ける声を上げる。
「ハーリン出すぞ……!」
いよいよ国王の精子を貰える快感が迫るとハーリンは歓喜に震える。
やっと、トール様の子種を頂ける……!
グチュグチュと鳴る結合部は泡立ち、落ちた愛液がシーツを汚した。
「あん、あん、イキます! イク! イク! トール様、トール様ぁ!」
「く……!」
肉壺の中で震えた肉棒は打ち付けた強さそのまま、ハーリンの蜜壺の中へと精液を迸らせた。
汗ばんだ二人の身体は絶頂を迎えても離れず、荒い呼吸を繰り返してはビクビクと震える身体を支え合った。
一夜の寵幸はハーリンにとって人生で一番幸せな一時だった。
この思い出だけで一生を過ごせるわ……。
国王と一夜を共にしても、それで変わる関係ではない。主君と従者の立ち位置は変わらず、数日前に愛し合ったベッドの名残は残っていないだろう。
「おはようハーリン」
「おはようございます陛下」
名前を呼ぶのもあの時だけに許された睦言だ。
ハーリンは従者。そして国王も主君としての威厳に溢れている。それはあの夜を微塵も感じさせないものだった。
「そういえば陛下……」
恐れ多くも声をかけたのは同僚騎士であるダンだった。
ダンは良くも悪くも飾らない男で、そういう肝の座ったところが国王に気に入られているので、彼だけは国王の許可なく言葉をかけることを許されている部分がある。
「風の噂で聞きましたが、フォルトゥナ国の皇女様と御成婚なさるとは本当ですか?」
ギョッと目を剥いたのはハーリンだけではないく、周りにいる執事や侍女も同じだ。
誰もが気になっていたが、誰も聞けなかった話題は皇宮の廊下で頭を下げていた他の従事者の耳を大きくした。
「ダン! 陛下失礼しました!」
「なに、構わん」
慌ててダンの後頭部を掴み頭を下げさせたハーリンに笑う国王は、ふむ、と口ひげを指で撫でた。
「そのような話は来ていない」
「そうなんですか!」
「ダン!」
掴まれた後頭部を物ともせずに頭を上げるダンは太陽のような笑みを浮かべて国王の言葉を頷く。
「ははは、皆そのようなことを気にしていたのか」
「えぇ、なにせ我らが主君が后を迎えるかもしれませんから」
礼儀をしらないダンに、ハーリンは羨ましさと恨めしさが混ざった視線を送る。
しかし聞きたくとも聞けなかったハーリンとしては、今だけはダンの性格に感謝したかった。
「后か……」
チラリと国王の視線がハーリンとぶつかる。
「若い皇女には老いぼれは可哀想だろう」
「そんな……!」
ハーリンが声を上げようとして、力強く否定したダンが言葉を被せてきた。
「それに、最近は可愛いウサギを見つけてな。私が皇后を迎えたら寂しがるだろう」
「うさぎ……ですか?」
「そうだ、私のことが好きで好きで仕方ないようだ。よく鳴くものでな、すっかり愛着をもってしまった」
それって……!
「皇宮にウサギなんていましたか?」
「あぁ、よく見るよ」
含みを持たせた国王は微笑を浮かべ、ハーリンに背中を見せる。
ハーリンはにやける口元を引き締めて前を向き、その大きく広い背中に熱視線を送った。
ヴァンリヒ王国。
大陸の中でも一、二を争う大国。市井は賑わい、民の懐は潤う桃源郷のような国は、偏に現国王であるトール・ヴァンリヒの政策のおかげだった。
トール・ヴァンヒリは齢二〇歳で即位し、二十五年経った今でもその手腕は衰えず、今なお民からの信頼は厚く、それは国王に仕える者も同じだった。
そして、その国王に傾倒する騎士がまたひとり。
「はあ、へい、か……。あ、んん」
まだ早朝のベッドの中で、ハーリンは甘い吐息を漏らした。
ベッドに横になっているハーリンはブランケットの中で大きく両膝を広げ淫蕩に耽っている。
「あん、は、あ、あ」
ブランケットから顔を出しているが、その頬は朱色に染まり、小さな桃色の声は部屋の雰囲気を濡らした。
「陛下、陛下……!」
ブランケットの中に潜む秘部を人差し指と中指、そして薬指で弄り、いやらしい音がグチュグチュと鳴っている。
想像するのは敬愛するトール・ヴァンヒリだ。
「あ、ひ、あぁん」
洪水のように濡れた秘部を擦りながら、その焦れったくも小さな快楽に、かれこれ一時間は悶えている。
パジャマにしている生成り色のワンピースを腰までたくし上げ、下着は左足の中央で捻れている。
「あぁ、ダメ、は、あん」
想像の中で傾倒する国王との淫行はクライマックスまで迫り、想像の男根がハーリンの蜜壺を穿つ。
「へい、か…!」
頭の中で国王の亀頭がハーリンの子宮口を叩く。
ハーリンはそれまで焦らしていた花芯を三本の指の腹で一心不乱に擦り上げる。
それまでの緩やかな快楽とは比べ物にならない刺激がハーリンの目をチカチカと眩ませた。
「イク、イク、へいか、へいかぁ!」
腰を弓なりに撓らせ、ハーリンは下半身をヒクヒクと震わせて達した。
「あ……」
ベッドサイドに置かれた目覚ましの音でハーリンは現実に戻される。
「いけない、時間が……」
自分が思っていたよりも一人遊びに夢中になっていたのか、もう交代の時間だ。
「やだ、シャワー浴びる時間ない……」
ハーリンの指は愛液がべっとりと付き、夜空のような黒色の髪は汗ばんでしっとりとしている。
「今日は陛下にお会いするのに……」
しかし時間に遅れることはハーリンには許されない行為だ。これまでの功績と品行方正な態度でハーリンは今の地位を築いた。それに傷をつけることは自分自身が許せなかった。
「濡らしたタオルで拭けばいいか」
出来れば身ぎれいにしていきたい。例えドレスではなくとも、慕っているトールにはよく見られたいと思うのは捨てたはずの女心だった。
ハーリン・ウィルソンは国王を警護する近衛騎士の一人だ。齢は二十五歳で、この王国では行き遅れの中に入る。
彼女の出身はヴァンヒリ王国の片田舎で父母と三人の妹と暮らしていた。父が若くして死没し、母と妹たちを食わすために騎士を目指した。
近衛騎士になるまでの道のりは厳しく、それこそ血反吐を吐くほどの困難と試練の連続だったが、ハーリンは国王の近衛騎士にまで上り詰めたのだ。
「ハーリンおはよう」
「隊長おはようございます」
近衛騎士団隊長のウィリー・レイドは仕事には厳しいが公平な目を持った騎士で、ハーリンを抜擢したのもこの男だった。
「今日はフォルトゥナ王国から使節団が到着される予定だ。陛下の警護を厳重に頼む」
「了解いたしました」
フォルトゥナ王国はヴァンヒリ王国と同じくらいの大国だ。ただ隣国のトゥーナ国と仲が思わしくなく、国境地帯は未だ紛争が止む気配はないと聞く。
ヴァンヒリ王国は外交手腕が優れているため、トゥーナ国とは物流や商団とのやり取りも行っている。きっとフォルトゥナ王国はトゥーナ国との停戦をヴァンヒリ王国に頼りたいのだろう。
「はあ……陛下にそのようなことを頼むとは……」
「まあこれでフォルトゥナ王国に貸しを作れる。そうなれば市井は更に潤うだろう」
「そうですが……」
「それと……」
ウィリーは乾いた唇を開き、ハーリンを一瞥すると溜息を吐いた。
「いや、お前の耳にもすぐ入るだろう」
「気になります」
ハーリンがウィリーに迫る前に、ウィリーは「もう交代の時間だ」とハーリンを執務室から追い出した。
「もう、教えてくださっても良いのに」
しかしウィリーが言ったことに嘘はないので、彼の言うとおりすぐにハーリンも知ることが出来るのだろう。
「ダン、交代します」
「おう、よろしく」
赤毛を短髪にしたダンは太陽のように明るい笑顔でハーリンと交代した。
場所は国王の寝室前だ。髪や服に汚れは無いか確認して姿勢を正した。
部屋の中では国王が身支度を整えているのか、侍女たちが忙しなく部屋を行き来している。
寝姿の国王はどんな格好をしているのか、ハーリンは想像した。起き抜けの沐浴後は白く上質なバスローブを羽織り、濡れた髪をタオルで拭かれているのだろう。髪から滴る雫がシワを刻んだ顔を擦り落ち、渓谷のように深く整った容姿を更に際立たせているに違いない。
その色っぽい姿を思い描き、ハーリンの胸は高鳴り、下腹部がじんわりと疼く。
いけない、職務中だ。
そうは思っても淫らな想いが灯った熱は一向に引いてくれず、内ももを擦り合わせた。
ギイ、と重い扉が両方に開け放たれたことでハーリンの胸の鼓動は最頂点に達した。
「あぁ、おはようハーリン」
「おはようございます陛下」
扉の横に立つハーリンを視界に捉えた国王のトールは笑いかける。
トール・ヴァンヒリは無人相ながら情の深い男で、側近だけでなく自身に従事する執事に侍女の名前を覚えて気安く接する男だった。勿論、近衛騎士のハーリンに対しても。
「今日は使節団が来る予定だったな」
「はい陛下、昼食は皇太子殿下が、夜は歓迎の舞踏会が開かれる予定です」
最側近のアーロン・ブラウンが今日も隙のない完璧な装いで国王に今日の予定を告げる。
「うむ、行くか」
陛下が向かうのは家族が揃う食堂だ。そこには皇太子と皇女が既に席についているはずだが、国王の足取りは緩やかだった。
正午に差し掛かる頃、城に使節団が到着した。
謁見の間では国王が玉座に鎮座しており、フォルトゥナ王国の皇太子は恭しく姿勢を正した。
「ヴァンヒリ王国トール陛下、使節団訪問の許可を頂き感謝いたします」
「フォルトゥナ王国の若き獅子であるアダルベルト・フォルトゥナよ、よくぞ参ったな」
「ご無沙汰しております陛下」
褐色の肌、透けるような金髪、サファイアのような瞳がキラリと輝く。肌の色が違うとしてもアダルベルトの容姿は男女問わず頬を染めるほど美しかった。
「昼食は皇太子であるラインハルトが主催する。夜は歓迎の舞踏会を開こう。それまで寛ぐが良い」
「ありがとうございます」
アダルベルトは胸に手を当て最大限の礼儀を尽くした。
謁見が終わり、トールは国賓であるフォルトゥナ国皇太子アダルベルトの歓迎舞踏会の準備を指示し、その間に国会を通った法案などに捺印を押す。
トールの仕事は凄まじく、歴代国王の中でも群を抜いていた。
ハーリンは執務室の外に待機しており、お茶や菓子を届けために部屋を出入りする侍女を羨ましそうに見やる。
私も侍女になればよかったな。
そんな夢みたいなことを思う。
侍女は教養を受けた貴族の女性しかなれない仕事だ。平民上がりのハーリンには叶わない夢だった。
せめてお顔が見たい。
そう願っても、国王が仕事中に部屋から出ることはない。
「ハーリン、休憩だ」
同期の近衛騎士がやってきてハーリンの代わりに扉の傍らに立った。
訓練を受けた騎士であっても腹は減るもので、空腹に鳴る腹を抱えて食堂へ向かった。
そして、昼食を食べ終わりハーリンがすることは、トイレに入って一人遊びに興じることだった。
「ん、ん」
声を抑えても快感に上がる息は抑えられず悩ましい吐息が上がる。
着込んだ軍服のパンツを下げ、顕になった下半身を弄れば、既に濡れきった恥裂の間から糸が引いている。
「はあ、こんなに……」
クチュクチュと愛液を確かめて中指に纏わせると、ハーリンは急かされるように肉芽をいじり始めた。
「ん、あ」
陛下が私に笑いかけてくださった。
鼻筋の通った精悍な顔がハーリンを見ると口角を上げた朝の出来事を思い出して、自然と肉壷からトロリと蜜が溢れる。
平時より大きく尖った花芯は撫でるだけで腰に痺れるような快感が走った。
「こんなに、大きく……」
肥大したクリトリスは触ってほしくて仕方ないと意思表示しているようだが、トイレは誰が入ってくるかもわからない。フーフー、と息を殺しながら優しく花芯をクルクルと撫でて指の腹で弾けば、ハーリンの両足はガクガクと震えた。
ハーリンに掛けられた国王の声が未だに頭を離れない。
低くベルベットのように厚みのある声は聞くだけでも安心感を与えながら、ハーリンの体の芯を熱くさせる。
あの声で名前を呼ばれた。
思い出すとゾクゾクと腰が甘く痺れる。
我慢できない、と軍服のボタンを外して隙間から胸へ手を入れる。
「ひ、あ、あ、あ」
コリコリと固くなった乳頭を摘みながら、涙を流す秘部を擦り、そのまま二本の指を蜜壺へ入れる。
花芯を愛撫するより大きな音が鳴るが、昼間の皇宮は忙しなく人が動いているのでこの程度ならば問題ないだろう。
「んん、は、あん……」
グチュグチュと蜜壺の中で指を出し入れして快感を追い続ける。
「はひ、はぁん」
――ハーリン、勤務中だというのに自慰に耽って悪い子だな。
陛下にお仕置きされる妄想をして、ハーリンは息を荒くした。
「あ、申し訳有りません、へいかあ」
――こんなに濡らして……。悪いハーリンには自慰で十分だろう?
「はあ、私は悪い子です、あ」
――ハーリン、私が見ている前で上手に達してごらん。
「はい、はい、へい、か、に、見られながら、イキます、悪い子のハーリンのオナニー、見ていて……あ、下さい」
ドロリと溢れた愛液を中で掻き混ぜるように動かし、ハーリンは国王に視姦される妄想をしながら、絶頂と同時に潮を噴いた。
「あ、仕事中なのに……」
しかしハーリンの表情に嫌悪の色は見えない。国王の顔を思い出して恍惚に蕩ける。
こうして休憩中にオナニーをすることは珍しくないのだ。特に国王の顔を見た日は必ずしてしまう。
「ふう、さて行こう」
頭を切り替えるとハーリンは仕事に戻るためトイレを出た。
「ねえ聞いた?」
「聞いたわよ」
トイレを出た廊下で侍女たちがこっそり離しているのが耳に入る。
「陛下に正室様がいらっしゃるかもしれないんでしょ?」
「フォルトゥナ国の皇女様ですって」
「使節団はその話もしに来たみたいね」
コソコソ話しているつもりだろうが、その声は興奮で大きくなっている。
ハーリンは正室と聞いて頭を殴られたような痛みが走った。
トールは即位と同時に皇后を設けたが十年前に亡くなり、それからその席は空いたままだ。
名君と名高い国王は四十五歳といえど後妻を狙うのは何もヴァンヒリ国内の貴族だけはなく、他国の王室も同じだった。
侍女ならまだしも、騎士であるハーリンは国王の正室はおろか、側室にもなれない。
ハーリンはそれを理解し、告げることすら許されない恋慕をひた隠しにしている。それでも耐えられるのは、国王が皇妃を置いていないことも大きかった。
だがそれも、今回使節団が訪れたことで揺らぐかもしれない。
「嘘よ、そんな……」
「ハーリン様!」
「どうされましたか」
ハーリンに気付いた侍女たちがキャア! と黄色い声を上げる。
ハーリンは女性で騎士になった珍しい人物だ。凛とした佇まい、女性特有の柔らかい微笑みにファンが多く、また羨望の視線を集めていた。
しかし今のハーリンには凛とした佇まいも、侍女たちに微笑む余裕もない。
陛下が結婚される……?
フォルトゥナ王国の皇女といえば一人娘のイライザ姫だろう。その美貌はヴァンヒリ王国まで届いている。年齢はまだ二十歳と聞いているが、貴族では歳の離れた婚姻などザラにある。問題などないのだ。
陛下、陛下……!
零れそうな涙をグッと堪えてハーリンは仕事に戻った。
太陽と宵闇と溶けて合わさる晩鐘に舞踏会は始まった。
天井から下がるクリスタルのシャンデリアがホールを照らし、貴婦人たちのドレスを彩る宝石に反射する。
国賓を歓迎する宴に集まった貴族たちは楽しそうに酒を酌み交わし会話に花を咲かせているが、その視線の先はこの舞踏会の主役であるアダルベルトと皇太子のラインハルトに注がれていた。
金の髪と褐色に似合うネイビーの礼服は、まるで夜空に輝く月のような光を放つアダルベルトと、プラチナブロンドに白磁の肌を持ち、白い礼服を身に着けているラインハルトは太陽のようだ。
正反対であり対のような魅力を持つ二人の皇太子はパーティーに参加している者の意識を掻っ攫っていた。
しかしハーリンの意識はトールにしか注がれていない。
チラリと見上げた玉座に座る国王は笑みを携えてその様子を見ていた。
今は王の玉座しかないその場所に、皇后のための席が誂えられる。その隣にハーリンは一生就けるわけがないのだ。
陛下……。
隣に座り仲睦まじく微笑み合うトールとイライザを想像して、ハーリンは目尻が湿るのを感じる。
いけない、仕事に集中しなきゃ!
頭を振って騎士として鋭い視線で警戒した。
そこでアダルベルトが国王の玉座の前に現れた。
「陛下、このように盛大なパーティーを開いて頂き、ありがとうございます」
「良い。フォルトゥナ国王とは長い付き合いだ」
ハッハッ、と快活に笑う国王に対し、アダルベルト真摯な目を向けた。
「ご厚意ありがたく頂戴いたします」
アダルベルトの国王への挨拶でパーティーは再開された。
ホールにはワルツが流れ、淑女たちはダンスの誘いを今か今かと待ちわびている。
「あの……」
「はい、なんでしょうか?」
警戒態勢だったハーリンに一人の淑女が声をかけてきた。パステルイエローのドレスに身を包んだ小柄で可愛らしい女性だった。
「あの、ウィルソン様……お仕事中とは分かっているのですが……もしよろしければ、わ、私と踊って頂けませんか……?」
彼女の胸の前で組んでいる手は震えている。勇気を出したことはハーリンだって理解したが、それでも仕事中だ。持ち場を離れるなんて出来るわけがない。
「申し訳ありませんが……」
「良いではないか」
ハーリンを見ていたのか国王が大きい声で玉座から声を上げた。
「ハーリン、踊って差し上げろ」
「……はい。では、お手をどうぞレディー」
「ありがとうございます!」
誘いを受け入れられた嬉しさに震える女性は感極まっているのか目尻に涙が浮かんでいる。
手を取ったハーリンはホールの真ん中までエスコートをしてワルツのポーズを取る。
優雅な音楽はまるで流星のように流れていく。ドレスの裾が翻り、ダンスに興じる男女は円を成して広がっていく。
「ハーリン様と踊れて嬉しいです」
「ありがとうございます。私の方こそレディーと踊れて光栄です」
ハーリンは貴族の出ではない。それなのにダンスを踊れるのは偏にハーリンの女性人気からだった。誉れ高き騎士でも評判は大切だ。特に国王の近衛騎士ならば信頼が不可欠で、人気騎士の筆頭ハーリンは男性パートだけ踊れるように訓練させられた。
陛下が私を見ていらっしゃる。
男役のステップを間違えず踏み、相手のレディーに愛想笑いも忘れないハーリンだが、意識は国王に向けられ、その視線をこの場では独り占めしていると思うとゾクゾクと脳髄を痺れさせる。
国王の視線がまるで全身を締め付けるかのように注がれ、ハーリンは股が濡れる感覚を覚えた。
ダメ、今濡れては……!
踊るステップで内腿が濡れた感触がする。足を開いたり閉じたりすることで肉芽が擦れ甘い吐息が上がった。
陛下が見ている前でいやらしい音を立てるなんて! でも気持ちいい、陛下に見られている!
曲が終わり互いにお辞儀をすると、女性は桃色に染まった頬を隠すことなく、ハーリンに微笑んだ。
「ハーリン様、ありがとうございます」
余程嬉しかったのか、ダンスの余韻に酔いしれるように、うっとりと瞳を蕩けさせる女性は友人のところへと帰っていった。
その後もハーリンは淑女たちにダンスの相手を頼まれ、仕事に戻ろうとすると同僚に送り出されるを繰り返した。
結局ハーリンが相手した女性は二桁にまでおよんだ。
――疲れた……。
クタクタだが訓練をされたハーリンはその疲れを周りには見せなかった。
舞踏会を一通り見つめ、後のことを皇太子に任せて途中で退席した国王は寝所に向かっている。随行するハーリンはその広い背中に熱い視線を送った。
警護は国王の意向により二人一組で行われるが、今日は舞踏会があったため人数が限られている。
今日は国王が寝静まるまでハーリンの仕事は続く。
国王のために灯りを最小限にされた廊下はひっそりとしており、同じく警護に立つ同僚とは目も合わせない。
何も話さない一夜が始まろうとしていた。
――お疲れの陛下をお守りしなければ。
ハーリンは気持ちを新たに背中を伸ばす。
その時、寝室の扉が控えめに開けられる。
「おや、ハーリンではないか」
「へ、陛下! どうされましたか?」
トールが夜の寝室から顔を出すのは珍しいことでハーリンだけではなく同僚も驚いている。
「いやなに、舞踏会の余韻が抜けなくてな……。そうだハーリン、少し話し相手になってくれんか?」
「わ、私ですか?」
「あぁ、今日は随分と楽しませてもらったからな。労わせてくれんか?」
「そんな、恐れ多いです」
「来なさい」
皇帝陛下の誘いを断ることなどハーリンには出来るはずもなく、好いた男の手招きに籠絡された。
「他の近衛騎士を呼んでくれ。ハーリンは私の話し相手になってくれるからな」
「かしこまりました陛下」
国王の後を追い、ハーリンは初めて自室へと足を踏み入れた。
部屋は皇宮とは違い国王の香りが染み付いて、どこか生活感が漂う。それでも調度品は美術館に飾られるような高価な物で、ビロードのカーテンひとつ取っても、そこは豪奢な部屋だった。
「そう強張るな。ただの部屋だ」
「そんな、陛下の寝室です。素晴らしいお部屋ですね」
まさか国王の自室へと通されるとは夢にも思わなかったハーリンは手持ち無沙汰になりながら国王の背中を見つめた。
「そこへ座ると良い。茶は私が淹れよう」
「私がやります! 陛下にお茶を淹れていただくなんて!」
慌てたハーリンは恐れ多いと言った風に声を上げる。しかし国王は頭を振った。
「命令だ、ソファーに座っていなさい」
「……かしこまりました」
命令と言われては従う他ないハーリンは、今までで一番座り心地のソファーに腰をかける。
「待たせたな」
「そんな、陛下自ら淹れて下さったお茶を頂けるだけでも光栄なことです」
「これでも若い頃は茶に拘りがあってな、今でも時々自分で淹れるのだ」
白磁のティーカップに淹れられた紅茶がふんわりと湯気を立てている。
「頂きます」
「うむ」
鼻腔をくすぐる芳醇な香りは春の草原を思わせ、口に含んだ味は爽やかに喉を通った。
「美味しいです」
「夜は気持ちを落ち着けるハーブティーが一番だ」
静かな部屋の中に、遠くで奏でられている音楽が聞こえてくる。
「とても素晴らしい舞踏会でした」
キラキラと煌くホールに、人の笑い声、軽やかに踏まれるステップは浮世離れした光景だ。片田舎で生まれ育ったハーリンはその雰囲気に今でも慣れない。
「はは、今夜は人気者だったなハーリン」
「恐れ入ります」
「皇太子より女性たちの視線を集めていたぞ?」
「そんな……!」
やはりダンスを見られていたのだ、とハーリンは恥ずかしい気持ちになった。
その気持ちに気付いているのか、トールは微笑ましいものを見るような目をしている。
「年寄りの要らん気遣いと思って聞き流してくれ」
「は、はい」
「お前もいつか嫁ぐ日が来るだろう、その時はたくさんの縁談が来るはずだ」
「陛下……」
ハーリンに結婚する意志はないが国王の言葉だ、一字一句聞き逃さないように耳を傾けた。
「意中以外の男に、私に向ける顔を見せてはいかんぞ。要らん虫が寄ってくる」
陛下に向ける顔、といわれてハーリンは自らの頬に触れた。
何を言われているのか分かっていないハーリンに国王は普段は豪胆な笑いとは別の微笑みを送る。
陛下のこんなに穏やかな微笑を初めて見たわ。
「いつも私は酷い顔をしておりましたか?」
国王の意向にそぐわない表情をしていたのなら、これからはもっと気を引き締めなければ、とハーリンはティーカップを持つ手に力をグッとこめる。
「いや、そういうことではないんだハーリン」
「では……」
「騎士だというのに気付いていないのか? それともわざとか?」
「仰っている意味が……」
胸に不安が広がっていくハーリンは口にする言葉が震えた。
「ふむ、無自覚か」
国王は青ざめているハーリンの表情に口角を上げると、その薄い唇を開いた。
「私を誘惑するような顔だよ。まるで抱いてほしいと言っているようだ」
「だ……!」
「おや、私の勘違いだったか?」
口ひげを蓄えた薄い唇が弧を描く表情を見て、ハーリンの胸が戸惑いを上書きしていく。
陛下に嘘はつけない……!
その忠誠心が仇になるとは思っていなかったハーリンは震える指先の温度が急激に下がっていくのを感じる。
「……いえ、勘違いではありません」
「私の警護に当たる日は特に頬を染めていたが、何をしていたのか聞いても良いか?」
そんなことまで気づかれていたの?
「……あの、」
「私は滅多なことでは怒らない。言ってみなさい」
国王の声色は優しいが、ハーリンの不安は拭えなかった。
「陛下を想って、ひ、一人遊びをしておりました……」
「ふむ……」
ハーリンの答えを聞いた国王はソファーの背もたれに凭れて、しげしげとハーリンを見つめた。
「今日もしていたな?」
「はい……」
顔を青ざめさせたハーリンは国王の次に言う言葉に恐怖を抱く。
しかしハーリンの予想は裏切られた。
「軍服の下を脱いで見せてごらん」
「へ、陛下に汚いものを見せるわけには!」
「見せなさい」
有無言わさない声にハーリンの肩がビクつく。
ギュッと目をつむったハーリンは、ティーカップをテーブルに置くと立ち上がり、軍服の下をもたつきながら脱いだ。
「下着に糸を引いているじゃないか……。舞踏会中に濡らしたか?」
羞恥に頬を染めるハーリンは肩をブルブルしながらコクリと頷いた。
「ダンスをしている時、陛下に見つめられていると思いながら濡らしました……」
「悪い子だなハーリン。そんな子には罰を与えなければ」
「はい……」
「そこでいつもどうやって慰めていたのか見せてごらん」
ハーリンは軍服の下を脱ぐとソファーに敷き、その上に腰をかけて両足を大きく広げた。
陛下に私の汚いところを見られている……!
失望される恐怖とは裏腹にハーリンの股は濡れ、指先で触れるとクチュリと水音を上げる。
「はぁ」
熱い吐息を吐き出し、指先を動かし始めた。
「ん、あ、あ」
肥大した花芯をゆるゆると撫でながら国王の視線が突き刺さるのを感じる。
「いつもそのような慎ましい触り方をしているのか?」
「い、え……もう少し激しく……」
「いつもみたいに、と言ったろう?」
陛下直々の命令に全身が熱くなり、自然と指先が自慰への速度を早めた。
コリコリとしたクリトリスを人差し指と中指で挟み上下に扱くと足がピクピクと動く。
「ハーリン、目を閉じないで私を見なさい」
「はい、陛下」
仕事中に見せる国王の厳しい目が今はハーリンだけに注がれている。
緑色の瞳はハーリンの内側を全て見透かすような美しさで、その双眸に痴態を見られていると思うと酷く興奮した。
グシュグシュに濡れた恥裂は糸を引き、泥濘んだ花芯を扱く手が中々定まらないが、国王の射抜くような視線だけでも達してしまいそうになる。
「可愛いハーリン、恥を捨てて私だけを感じるんだ」
ダメ、ダメ、お慕いしている陛下に達するところをお見せするなんて……!
しかし心の中とは裏腹に恥部を弄る手は早くなる。広げた両足を更に広げ、まるで国王に見せつけるように腰を突き出した。
「あ、あ、あ、達してしまいます……!」
「いい子だ」
イッてしまう! 陛下に見られながら! こんないやらしい私を! でも気持ち良いのが止まらない! 気持ち良い! 気持ち良い! イク、イク! 陛下に見られながらはしたなくアクメしちゃう! イク! イグぅ!!!
ぷっくりと腫れ上がった肉芽を一心不乱に擦り上げ、物欲しげにクパクパ引くつく肉壷の入り口をはしたなく見せつけながら、ハーリンは全身を痙攣させた。
「良くやったなハーリン」
目尻から流れる涙を拭うことも出来ず、今まで行ってきた一人遊びとは比べ物にならないほど大きな快感の余韻に浸るハーリン。
荒い呼吸を繰り返し、力の入らない両足を無様に広げたまま、達したクリトリスはまだ勃起し続けている。
「頑張ったハーリンにご褒美をやろう。なんでも一つ願い事を言ってみろ」
「……よ、よろしいのですか?」
心の底で蓋をしていた願いが叶うかもしれない期待に快楽に与えた脈の速さとは別のものが胸を高鳴らせる。
「ひ、一晩でいいのです……。陛下の温情を頂けませんか……?」
国王の正妻でもなければ側室でもない、侍女ですらないハーリンにはその願いはすぎたものだった。
しかし国王は頷き、ハーリンをベッドへ誘う。
「さあハーリン。お前の恥部を見せておくれ」
ハーリンは靴を脱いでベッドへ上がると、また大股を開いて国王へ自分の女の象徴を見せた。
「先程は随分とここが引くついていたな」
「申し訳ありません……」
「いいのだ、可哀想なくらい濡れて……」
国王の太い中指がハーリンの肉壷にプチュリと入る。
「あん! 陛下いけません、私のような者の汚れた場所に指など……!」
「いいのだハーリン、可愛いものだな」
ぬくー、ぬくー、と中指を前後させながら国王はナカの感触を確かめる。
「あ、あ、あ、あ」
ハーリンはナカでの国王の指の感触を忘れまいと神経を集中すると、灼熱の中を蠢く中指がハーリンの性感帯を探し当てた。
「へ、陛下! そこは!」
「ここが良いのか?」
クッ、と指を立ち上げた国王はそのまま蜜壺のザラついた上を擦ると重い快感がハーリンに甘い声をあげさせた。
「あん、あん! 陛下、あぁん!」
「指の動きに合わせて腰を揺らすなんて……。普段の凛々しいハーリンからは想像も出来なかったな」
「もう、しわけあ、りません、へいかあ!」
「ひとつ聞きたいのだが」
国王は快楽に戦慄くハーリンを見つめながらも、普段と変わらない声色で問うた。
「市井では女性器のことをなんと呼称するのだ? 貴族は欲深いわりに上品に繕っておってな」
絶対知っているのに……! 私を恥じらわせようとしていらっしゃる!
国王は優しく触れていた指の動きを止め、返答を急かすように小首を傾げた。
「あ、あ、」
止められた動きにハーリンは物足りなさと羞恥で泣きそうになりながら、固く目を瞑る。
「お、……おまんこ……」
消え入りそうな声は天蓋で閉ざされたベッドの中では鮮明に聞こえたのだろう。国王は穏やかに笑った。
「そうか、そうか。随分と可愛らしい響きだ。そのおまんことやらをハーリンはどうしてほしい?」
「陛下の指でグチュグチュかき混ぜて欲しいです。私のおまんこをイカせてください」
「男を寄せ付けない誇り高き騎士がこんなに淫乱だとは……。ほら、指を動かすから自分でも腰を揺らせ」
「はい陛下ぁ」
愛おしい国王の指が自分の愛液に濡れていくさまを見るのは罪悪感が湧くと同時に酷く興奮した。ハーリンはビクビクと身体が波打ち、最後には自ら腰を指に押し付けて絶頂した。
「は、はあ、」
気持ちよさに惚けるハーリンに国王は微笑む。
「さて次は何を望む? それとも私の騎士にとってはこれだけでも温情になるか?」
ハーリンの視線は国王の精悍な顔をみつめた後、下におろしていく。
「あ、陛下のを舐めさせて頂きたいです……」
高貴な男が急所を見せることなど滅多にないだろう。それを騎士であるハーリンはよく知っていた。
しかし国王は頷く。
「許す。さあ来なさい」
ハーリンを部屋に呼びこむ前まで風呂に入っていたのだろう。バスローブ一枚だけを羽織っていた国王の足の間に蹲ったハーリンはドクドクと痛いほど高鳴る鼓動を抑えて、バスローブの上から男根を触る。
そこはまだ反応が薄いが、屹立していない状態でも大きい。
上がる息を殺しながら、ハーリンはバスローブの合わせを開いてまだ柔らかい肉棒にふれる。
これが陛下のペニス……。
熱い息が男根に触れて僅かに匂いを嗅ぐと、石鹸の匂いに混じった男の強いフェロモンが鼻を突いた。
なんて素敵な香りなの……!
柔らかさを確かめるように両手で優しく触って国王を見れば「好きにしなさい」と頭を撫でられた。
その言葉を聞き、ハーリンは我慢していた欲望が爆発したようにペニスをむしゃぶる。
「ん、あ、んむ! ジュルル」
とめどなく溢れてくる唾液はまるで腹を空かせていた犬のようで、舌は水を舐めるようにピチャピチャと竿を攻め立てた。
「ぐ、んん」
くぐもった声に嬉しくなったハーリンは肉棒を喉奥まで誘い口蓋垂を収縮させて亀頭を締め付ける。
「は、ハーリンは口淫が上手いのだな」
「んぶ、ジュル、ジュポ、んお」
嬉しい、陛下が喜んでくださっている!
ハーリンが口淫をするのは国王が初めてだが、そのテクニックは凄まじいものがあった。
しかしそれも当たり前なのだ。ハーリンは妄想の中で幾度となく国王の肉竿にむしゃぶりついていたのだから。
唾液まみれの肉棒はテラテラと光り、亀頭は張り詰めている。既にペニスは腹に付かんばかりに屹立しており、赤黒い竿には無数の血管が青く筋を浮かべていた。
「ハーリンもういい。私の前で膝立ちになるんだ」
「あ……!」
もう少し舐めていたかったのに……。
大好きなお菓子を取り上げられた子供のような顔をしたハーリンを、国王は仕方ないと苦笑いを浮かべる。
「軍服の前を開けるんだ」
「はい陛下……」
ハーリンにはもう羞恥心はなかった。
今夜だけの寵愛を受けられる栄光に酔いしれ、そしてこれまでのフラストレーションを発散するように淫猥に振る舞う。
「なんだ、触ってもいないのに立っているのか?」
「申し訳ありません」
「ハーリンの謝罪は口だけだな」
軍服の下に着ている白いワイシャツの間から双丘が現れる。
下着の代わりとなるサラシは下へとずり下げ、顕になったピンク色の乳頭は既にぷっくりと立ち上がっていた。
「陛下……」
「ハーリン、そんな物欲しげな顔をするな」
懇願に似た声を上げたハーリンは近づいてくる国王の顔に鼓動がどうにかなってしまいそうになる。
「あん! はん! 陛下、陛下ぁ!」
国王の乳頭への愛撫は無骨な見た目とは裏腹に優しいものだった。
舌先を尖らせて突起の先端をツンツンと突き、分厚い舌で舐めあげる。
「ひ、陛下……!」
グリグリと乳頭を押しつぶされると泣き声に似た嬌声が口から上がってしまう。
「こんなに赤くして……可愛らしいものだ」
「んん、」
ジュルリと音を立てて乳頭を吸い上げられながら甘噛されてしまうとハーリンは喉を仰け反らせた。
大きく分厚い手のひらで胸の下から鷲掴みにされ形が変わるほど揉みしだかれる。
私の胸、変じゃないかしら……
男と関係を持ったことなどなかったハーリンは自身の身体を客観的に見られたことがないせいで、国王に幻滅されないか心配だった。
「どうした? 私以外のことを考えているのか?」
眉をしかめた国王に、ハーリンは首を振る。
「いえ、その……私の身体は変ではないでしょうか? 殿方に身体を見られるのは初めての経験でして……」
恥じらうように視線をそらせば、国王はハーリンの髪を撫でる。
「そうかそうか、ハーリンお前の身体は鍛えているので無駄な肉はなく、しなやかで美しいよ」
国王からの賛辞は安堵をもたらし、そして胸をときめかせた。
「嬉しいです。陛下」
「不安は取り除かれたか?」
「はい」
ハーリンがこの上なく幸せそうに微笑むと、国王はハーリンの手を握り、自分の方へと引き寄せた。
「さあハーリン、お前のナカへと私のモノを挿れてやってくれんか?」
「そんな、光栄なことです……」
口では畏まりながら、ハーリンは自身の内に渦巻く欲望に従う。
国王に馬乗りになり、そそり勃った剛直に腰を沈めていく。
「あぁ……」
ズププ、と泥濘んだ肉壷に押し入ってくる質量に歓喜の声を上げた。
陛下のモノが私のナカに……!
それは叶わないと嘆いていたハーリンへの褒美に間違いなく、あまりの感激に涙を流してしまう。
「痛いか?」
「いえ、いえ! 嬉しくて……!」
ハラハラと涙を流すハーリンの頬を撫でる国王は眉を下げる。
「私へのお前の気持ちは私が想像していた以上のようだな」
「幸せです陛下……」
熱り勃った肉棒はハーリンの蜜壺の中へと収まりきらない。
「申し訳有りません陛下……」
「構わん。私のが大きすぎるようだ」
その言葉通り、国王の一物は太く長い。並の女性では挿入しただけで苦しいだろう。
しかしハーリンにとってはその息苦しささえも快感になり、甘い吐息を漏らす。
「さあハーリン、私を気持ちよくさせてくれ」
国王の言葉にハーリンはゴクリと喉を鳴らした。それは幾度となく想像した願望が叶う瞬間だった。
「陛下、あぁ……!」
腰を上下左右に動かしては竿を肉壁に当て擦る。今まで知らなかった自身の性感帯に当たる度に腰が戦慄き、もっともっとと貪欲に淫猥に腰を押し付けた。
「あぁ、淫猥なお前は美しいな……」
天蓋の外に灯されたランプの光が汗ばんだハーリンの肌を妖しく照らす。その艶めかしい姿は男の所有欲を満たし、そして更なる渇望を生み出した。
「あん、陛下! あぁ」
大きな窓からランプの灯りに負けない輝く星を背景に、結合部を見せつけるように足を大きく開き、男の逸物を喰らう姿を見せるハーリンと微かに聞こえてくる舞踏会の音楽が背徳感を生む。
腰を撓らせながらジュブシュボ、と心ゆくまで肉欲を満たしていたハーリンに当てられた国王が熱っぽく囁いた。
「ハーリン、陛下ではない、名前で呼びなさい」
「そんな! いけません!」
皇族の名前を呼ぶことはデビュタントを果たした貴族のみに許されたものだ。デビュタントに出てもいないハーリンには到底許されることではない。
「ベッドの中での睦言だ。それとも私の名前を忘れているのか?」
「とんでもありません! と、トールさま……」
「いい子だ」
名前を口にしたハーリンの無礼を受け入れる国王にハーリンは泣き出しそうになる。
「こちらへ来なさい」
手首を引かれたハーリンの身体は国王の上半身にピッタリと近づいた。柔らかい双丘が筋肉のついた逞しい国王の胸板に押しつぶされ形を変えている。
「トール様、ん」
大きな手のひらで後頭部を押さえつけられ強引にキスをされる。
「ふ、んん」
無数の突起から成る海綿体がハーリンの舌を蹂躙し、ハーリンもそれを追うように舌を絡めされる。
接吻をしながら国王の手はハーリンの身体を撫で、その心地よさに酔いしれる。
「お前の痴態も良いが、ちと動きが細やかすぎるか」
「え?」
ギラリと光った国王の目。
ハーリンの尻を優しく撫でていた手が尻たぶを鷲掴み、逸物を蜜壺の奥へと突き刺す。
「んぐ!?」
「ハーリン、私を満足させたいのなら動きを覚えろ」
「は、い!」
ハーリンの奥まで淹れられた肉棒は鷲掴みされた尻を上げられてズロロ、と抜けていく。その空虚感と快楽は凄まじく、出ていく寂しさに声をあげてしまうほどだ。
「ひい!」
掴み上げられた尻を再度下へと押し付けられる。
パアン! と鳴る肌のぶつかり合いに、ハーリンは目をチカチカとさせた。
それまでの快楽がおままごとのように感じるほど、国王の力は強く、また男の欲望の強さに目眩を起こしそうになる。
これが、陛下のセックス……!
意識が追いつかないほどの激しさに、ハーリンは口の端から唾液を垂らし狂乱に声を上げる。
「あ、あ、あ! ひう、あぁん! あひん!」
出ていけば腰が抜けるほどの刺激が与えられ、穿たれれば子宮が喜ぶ。
鷲掴みにされているから逃げることも叶わず、その快楽に悶えては震えた。
「あぁ! トール様! トール様ぁ! 愛しております! 心の底から!」
「あぁ、可愛いハーリン、快楽に歪む顔を見せてくれ」
「はあん!」
一際大きく腰を穿たれ、ハーリンの全身が総毛立つ。
「あぁ! トール様、イッてしまいます……!」
「まだだハーリン、我慢しなさい」
「ひう、はい……!」
もうハーリンは限界だった。全身を投げ出してしまいたいような快感の中、必死に国王の肩に縋り付く。
「は、あぁん、あふう」
「は、はあ」
眼下の国王の顔は、普段は凛々しい眉が快楽に顰められ、頬は紅潮して歪んでいる。その様はハーリンの快感を煽って高ぶらせた。
「あぁぁぁ、もう、トール様、ハーリンのナカでイッて下さい……! ハーリンのいけないおまんこに子種をくださいぃ」
「ハーリン、お前の頼みならいくらでもやろう」
「あぁ嬉しい……! トール様のザーメン……!」
ハーリンはあらゆる淫らな言葉を使って国王の絶頂を誘う。
自ら腰を動かし、太く長い逸物を奥深くまで咥え込み、子宮口で亀頭を押し付ける。
汗をかいて湿った赤毛を掻き抱き、口ひげのこそばゆさが首元に当たって鼻を抜ける声を上げる。
「ハーリン出すぞ……!」
いよいよ国王の精子を貰える快感が迫るとハーリンは歓喜に震える。
やっと、トール様の子種を頂ける……!
グチュグチュと鳴る結合部は泡立ち、落ちた愛液がシーツを汚した。
「あん、あん、イキます! イク! イク! トール様、トール様ぁ!」
「く……!」
肉壺の中で震えた肉棒は打ち付けた強さそのまま、ハーリンの蜜壺の中へと精液を迸らせた。
汗ばんだ二人の身体は絶頂を迎えても離れず、荒い呼吸を繰り返してはビクビクと震える身体を支え合った。
一夜の寵幸はハーリンにとって人生で一番幸せな一時だった。
この思い出だけで一生を過ごせるわ……。
国王と一夜を共にしても、それで変わる関係ではない。主君と従者の立ち位置は変わらず、数日前に愛し合ったベッドの名残は残っていないだろう。
「おはようハーリン」
「おはようございます陛下」
名前を呼ぶのもあの時だけに許された睦言だ。
ハーリンは従者。そして国王も主君としての威厳に溢れている。それはあの夜を微塵も感じさせないものだった。
「そういえば陛下……」
恐れ多くも声をかけたのは同僚騎士であるダンだった。
ダンは良くも悪くも飾らない男で、そういう肝の座ったところが国王に気に入られているので、彼だけは国王の許可なく言葉をかけることを許されている部分がある。
「風の噂で聞きましたが、フォルトゥナ国の皇女様と御成婚なさるとは本当ですか?」
ギョッと目を剥いたのはハーリンだけではないく、周りにいる執事や侍女も同じだ。
誰もが気になっていたが、誰も聞けなかった話題は皇宮の廊下で頭を下げていた他の従事者の耳を大きくした。
「ダン! 陛下失礼しました!」
「なに、構わん」
慌ててダンの後頭部を掴み頭を下げさせたハーリンに笑う国王は、ふむ、と口ひげを指で撫でた。
「そのような話は来ていない」
「そうなんですか!」
「ダン!」
掴まれた後頭部を物ともせずに頭を上げるダンは太陽のような笑みを浮かべて国王の言葉を頷く。
「ははは、皆そのようなことを気にしていたのか」
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しかし聞きたくとも聞けなかったハーリンとしては、今だけはダンの性格に感謝したかった。
「后か……」
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