【R18】怪盗アシュリーは、美青年探偵に捕まる

もなか@まいこ

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1章 名画と探偵

いざ、侵入

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 私の名前は怪盗アシュリー。世界をまたにかける天才的な大怪盗……の卵だ。まだ、怪盗としてはちんまいだけど、将来はアルセーヌ・ルパンも顔負けの大大大怪盗になる予定である。


 今宵は、Y市にある博物館に来ていた。私の目当ては1枚の絵画。パリからやってきた、有名な画家の晩年の作が、ここに来ているのだ。その名も『碧の未来』。教科書に載っちゃうくらい、有名な作品だ。『碧の未来』は、碧の吹雪の中にある、小屋の絵画だ。美しくも哀愁漂う景色の絵である。


 『碧の未来』は、普段は一般公開されていない、貴重な作品だ。その作品が、表にでる機会なんて、滅多にないこと。しかも、私の本拠地である日本に。ここを逃しちゃうと、次いつ表に出てくるか、分からない。


 「狙うしかないでしょ」


 お高い一品のはずだ。裏オークションに出せば、かなりのお値段になるはず。それに、ここで『碧の未来』を盗めば、怪盗としての名誉を得ることが出来る。世界的大怪盗としての1歩を進むことが出来るのだ。


 私は、博物館の屋上に立つ。満点の星空の下、地上に光るパトカーの光。豆粒のように小さくなっている光たちを、私は眺める。私を捕らえる為にやってきた、警察たちだ。昨晩、私は警察に犯行予告状を出した。怪盗と言えど、コソコソと盗みを働くなんて、ナンセンス。大怪盗候補生なんだから、やっぱり、犯行予告状を出して、警察との熱い戦いを勝ち抜いて、華麗に盗まなきゃ。


 「よし! いくわよ!」


 私は、手にピストルを持った。このピストルから放たれるのは弾では無い。とても頑丈なロープだ。私は、柵にそのピストルを打つ。ピストルの先から、放たれたのは銀製のフックであった。フックは、器用に柵に引っかかる。


 よし、準備万端。


 私はピストルをしっかりと握りしめながら、屋上から、飛び降りる。ピストルのロープが、命綱代わりになっているのだ。


 「怪盗アシュリーだ!」


 「捕まえろ!」 


 博物館の下にいる警察たちは、すぐに私の存在に気がつく。私は、屋上から急降下している途中、再び、ピストルを取り出す。こっちの中に入っているのは弾だ。しかし、人を殺すほどの威力はない。私は、そのピストルを、窓に向かって打った。パリーンと音を立てて、窓が割れた。私は、割れた窓から中に入り込む。


 「よし、入れたわ」


 さすが私。今日も、超スマートな仕事だ。


 「さてと……」


 私は周りを見渡す。おっ、ラッキー。ここには、誰もいない。私が降り立ったのは、豪華な廊下だった。さすが、都会の博物館。お金がかかっている。


 私は、頭の中で地図を開く。確か、『碧の未来』があるのは、3階の展示室のはずだ。私は、パチンと指を鳴らす。すると、私の体は煙に包まれた。次に私の身体が煙から抜けた時、私は若い男の警官の姿となっていた。私は天才的な怪盗なのだ。変身なんて、お手の物だ。


 私は、すぐさま、足を進めた。セキュリティに関してはしっかりと頭に入っている。ヘマはしないはずだ。


 館内で警察たちを発見したので、合流し、溶け込む。さすが、私。なにごともなく、敵地まで来ることができた。


 あっさりと、『碧の未来』の元まで来ることが出来る。『碧の未来』は、頑丈なガラスのケースの中に入っている。事前にこの博物館のセキュリティは、仲間がハッキングしている。ポケットの中に手を入れ、そこにあるボタンをポチリと押した。


 博物館内が暗転した。 


 「おい! 何があった!」


 「気をつけろ!」


 警戒する警官たち。私は、そのさり気ない混乱に乗じて、もう一個ボタンをポチリと押す。今度はガラスのショーケースが、ガバッと開く。その音に、警官たちは敏感に反応した。


 「おい! 気をつけろ!」


 私は、一瞬にして『碧の未来』を取り、その場から逃亡する。よしよし、隠密行動も完璧。


 しばらくして。私は、再び、屋上に戻る。変身を解いて、元の怪盗としてのコスチュームに戻った。星空の下、私は帰るためのヘリコプターを呼ぶため、スマホを開く。


 刹那──


 「やあ、お嬢さん」


 突然、誰かに語りかけられた。


 「誰!?」


 振り返る。そこにいたのは、長身の男だった。黒い髪に、黒い瞳。カッコイイと言うよりは、美しいというような言葉が似合うイケメンであった。正直、私好みの美青年である。私は、思わず、見とれてしまった。 


 本当に誰だろうか……?


 白いシャツにジーンズという、ラフな出で立ちの男であった。警察のようには思えない。私は首を傾げる。


 「ああ、驚かせちゃった?」


 余裕のある笑みで、私を見る男。私は、彼と距離を置く。


 「ああ、ごめんね。僕の名前は宇都宮怜。探偵だよ」


 彼が、自己紹介をする。丁寧なお辞儀をひとつ、私に向けてした。私の喉から、「えっ!?」と、素っ頓狂な声が漏れる。


 「探偵!?」


 「うん、警察に頼まれてね。君を捕まえろってね」


 敵じゃないか。早く逃げないと! 私は、すぐさま、縄を放つ方のピストルを手に持ち、屋上から逃亡する準備をする。


 「ああ、待って。お嬢さん」


 「嫌よ。捕まるじゃない」


 「ははは。それは君次第だよ。待ってくれないかな」


 「やだね! あばよ!」


 私は、探偵に向かって、あっかんべーをする。そして、屋上から降りようとした。その時。後ろから、彼のわざとらしいため息が聞こえた。


 「あーあ。君みたいな天才と、話してみたかったんだけどね」


 天才……? 私と話したい……? 思わず、動きをとめ、怪訝な顔で彼を見てしまう。


 「運動神経良くて、変身能力もあって、可憐で……いやぁ、才能に溢れた怪盗さんだな」

 
 彼が、私のことを褒めちぎる。口元を弓形にして。瞳には人を安堵させるような光を宿らせながら。そんな彼を見て、私は……


 「でしょう!」


 すんなりと、彼を受け入れた。


 こいつ、私の事、よく分かっている。いいね、いいね。見る目、あるじゃん。もっと、褒めてくれたって構わないんだよ。


 目の前で、探偵がクツクツと笑う。怪しい笑みではあるが、こいつは見る目あるし、悪いやつなわけが無い。


 彼に興味を持った私は、彼の元に歩み寄る。彼の方からも、こちらに近寄ってきた。手を伸ばせば、届くほどの距離になった時。彼が、ゆっくりと私の顔に右手を伸ばした。そして、彼は左手をポケットに入れて、何かを取り出し──


 ぶつり。


 首筋に電撃が走って。私の意識は、そこで無くなってしまった。

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