人妻嬲り

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覗き

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  母が不在なことを美奈から告げられた優花は,普段着に着替えて,フラリと庭へ降りた。夕食にはまだ間のある時間で,陽は西に傾いたものの外は明るかった。

 庭をこんな時間に散步するなどということはめったにないことだ。いつもは手元が見えなくなるほど暗くなるまでテニスの練習をして帰るのだが,今日は来週から始まる中間考査の勉強のため,早く帰ってきた。

 だが,勉強が手につきそうにもない。

(将紀さんたら,ひどい……)

 そんな想いが胸にたぎって,ノートを拡げても身に入らないのだ。

 こうして庭の中をブラブラしていても,想いは晴れるどころか,かえって重苦しくなるばかりだ。自然に頭を垂れ,地面ばかり見て步いた。

 原因は将紀が,真弓という女と同棲しているという噂を聞いたことにある。

(わたしの気持ちをしっているはずなのに…・・)

 自分をさしおいて,真弓という女とそのまま一緒に暮らしているというのである。

(あたしの方が魅力がないのかしら)

 そんな羞ずかしいことまで考えてみる。

(何もかもあげていいと思ってるのに)

 まだ子供だと思ってるのかしら――と考えると泣きたくなる。

 あれやこれや考えあぐねつつ,優花の足は自然に孤独を求めて,庭の奥に踏み込んでいた。庭は奥になるほど都心とは思えないほど木立ちが深くなる。傾き弱まった陽射しが透らないほど青葉の茂りが濃くなり,足元の雑草が小径を隠すほどになった。

 気がついた時には,平素足を踏み込んだこともない場所に来ていた。小鳥のさえずりがなにやら怪しげにさえ聞えた。

 急ぎ足で戻りの小径をたどっていると,離れの傍に出た。たてきった障子が西陽を受けて,そこだけが救いのように明るい。

 なにげなく通り過ぎようとした優花の耳に,なんとも淫らな女の喘ぎ声が聞えてきた。今は,ネットでいつでも,男女の営みについての映像が目にすることができる。高校生ともなれば,好奇心で目に触れることも何度かあった。そのときの,胸を掻きむしりたくなるような,せつない声に似た声が明らかに聞こえてくるのである。

 一瞬心臓が凍り付いて,足が止まった。

(誰かしら……こんなところで,S,SEXなんてしているのは…・・)

 呻きは,かぼそいながら甘えるような声が,長く尾を曳くかと思うと,重く恨むような呻きに変わる。身をよじって苦しみにのたうつ気配もある。

 大声をあげて逃げ出したいのに,喉も足もまったく言うことをきかない。心臓が喉から飛び出さんばかりで,あぶら汗が流れる。

「どうだ」

 男の声が女の喘ぎに追いかぶさった。

「あ,もう……」

 かぼそく美しいためにかえってものすごさを感じさせる女の声が喘ぎに加わった。

 優花はガクガク慄えるつつ,カアーッと血を頭にのぼらせた。

(おじさまと,そして,お母さま……)

 異様に緊張した声だったが,聞き違えるはずがなかった。

 女子高生の知らない倒錯の世界だった。何も知らない優花にも,それが何を意味しているかはわかった。

(いや)

 両手で耳を覆ってそこにしゃがみ込んだ。が,いったん聞いてしまった声は執拗に脳裏にこだまを繰り返した。

(あれがお母さまの声……・?)

 考えただけでも気が遠くなった。

 おじさまと母とが愛し合って結婚することを優花は願っていた。それが自然だと納得するくらいの心持ちは今の優花にはある。

「おじさま」が「お父さま」になったらどんなにいいだろうと思ってもいた。

 だが,このあからさまなSEXの声はショックだった。

(いや,いや)

 両手で耳をふさいで,優花は激しく頭を振った。しゃがんだ腰が抜けたようになってしまっていた。

 だが人間というものはいつまでも眼をふさいだり耳をふさいだりしていることができない動物だ。いつしか手がゆるみ,妖しい声を聞いてあわてて手に力を入れるという動作を繰り返していた。

 母のあげる声は呻きと喘ぎとすすり泣き,それに鋭い悲鳴と,さっきよりは辺りはばからぬものになっていた。それにおじさまの低い呻きが重なる。

(いやよ……いやぁぁ)

 叫ぶ胸の裡が息苦しくなり,早鐘を打つような動悸が身悶えを呼ぶようだ。

「あ……もう,かんにんして下さいまし……」

 すすり泣くような声で母が訴えている。

「いいのかい」

「は,はい……あ,そんなところは……」

 まるで稚い子供のような甘い声であらがうのが,母とはとても思えない。

 優花はそっと頸をのばして白い障子をうかがった。さっきまで西陽を受けて耀いていた障子が翳りはじめている。その障子が内部の雰囲気に震えているようだ。

 優花はしゃがんだまま離れの横にまわった。そこに一間幅の小障子がある。床の間の傍に造られた明り取りの障子である。背伸びすると眼の高さだ。

(いけないわ,こんなことしちゃ)

 自分を叱りながら,優花は何かに憑かれたように小障子の下に忍び寄った。

 母は上ずった泣き声を潮が満ち干するように,高く低く慄わせている。その昂ぶった音が優花の胸線を妖しく掻き鳴らすようだ。

 爪先立ちになり,人差し指に唾をつけて,障子に小さな穴をあけた。熱にうなされているような行動であった。片眼をつぶった顔をその穴に押しつけて中を覗いた。

 激しい動悸のため,はじめは何も見えなかった。障子にぶつかる自分の荒れた息づかいだけが耳に鳴った。

 ボウと明るんだ障子を透かした光の中に布団が敷きのべられ,シーツがしわくちゃになっているのが,まず眼に入った。

 そのシーツの上に母の横顔が投げ出され,乱れ髪を波打たせて喘いでいた。

 シーツによじりつけられているのは頬ばかりではなく肩もそうだった。そして肩の付け根から二の腕にぎりぎり繩が巻きつけられ,高々と肩甲骨のあたりまで析り曲げられた両腕が手首を交叉させられて縛られ,十本の指をしっかと握り締めているのを見たとき,優花は息が止まった。

(縛られて無理やり……・・?)

 母は頬と肩をシーツによじりつけ,尻を高々とかかげた浅間しい恰好で,おじさまにその尻を抱えられているのだ。

 だが,強姦の疑念はすぐ消えた。禍々しいほど大きく白い母の腰が浅黒く引き締まったおじさまの下腹に密着して,自ら蠢いているのをはっきり見ることができたからだ。

 母の絞り出す呻きや喘ぎも,無理やり犯されているようには見えなかった。それに気もそぞろに昂ぶった歔き声――

 おじさまが動く腰を抉り込むたびに,母は背すじをたわめ,あごを衝き上げ,たまらなげに声を放つ。その顔がふと優花の方に捻じられた。

 優花は思わず顔をそむけずにはいられなかった。

(あれが,お母さま……)

 まったく別人の貌がそこにあった。美しい眉を八の字にひそめ,閉じた瞼を吊り上げ,とおった鼻すじを吹きひろげて,シーツをキリキリ噛みしばっている。真っ赤に上気してあぶら汗に光るその貌は,恍惚と苦悶にさいなまれて,かつて優花の知らない相貌を剥き出しにしているのだ。

「……もう……もう,死んで,しまう……」

 哀しげにさえ聞こえる声を洩らした。

「気持ちいいんだね? はっきり言うまで許してやらないよ」

 荒々しく喘ぎながら,おじさまの両手が繩で締め上げられた乳房を引つ掴んだ。

「……そんな羞ずがしいこと,言わせないで……」

 ヒッ,ヒッ,とかすれた息づかいを聞かせながら,しっとり重った乱れ髪をザワザワゆすりたてる。

「もう何度も気を遣っているのに,自分から腰を振っているじゃないか」

「ああ……また……ぁああああ,いいっ……いっ,いくっ……・」

 聞いていてさえおかしくなるような声だ。

 優花は揉み抜かれえような心持ちにおそわれて,ズルズルそこにしゃがみ込んだ。股の間が熱く濡れそぼり,全身ビッショリの汗になっていることに,気づくのだった。

 その日は,どこをどうやって母屋にたどりついたのか,優花には記憶がない。母屋の灯を身近に感じてやっと我に返った。

 ベッドの上に寝転ぶと,さっきの映像がくっきりと頭の中で思い出されてしまう。振り払おうにも振り払えず,逆にムズムズとした疼きに駆られ,濃厚なシーンを思い出し,自慰行為にふけってしまった。

 今まで胸や秘部を触ったことはあったが,気持ちが良いという感覚止まりだった。それが,この日初めて気が遠くなるような,感覚に包まれた。終わったあとは,身体がぐったりとして,気怠い中,いつの間にか眠りについていた。

 


 翌日,学校から戻って着替えると,離れが気になって仕方がなかった。とても試験の勉強をする気にはなれなかった。好奇心からちょっとだけ覗いたら帰ると決めて,離れに行くと,昨日開けた障子の穴から中を覗いた。

「綺麗だよ,鈴音」

 おじさまが,お母さまを正常位の上からじっと見つめ,愛を囁いているところだった。いきなりの場面に出くわし,優花は,頬を赤らめた。格好良く素敵な男性として憧れていたおじさまだが,優しくはあっても,軽々しく愛を語るような男性には見えなかった。

 どちらかというと,冷静沈着で,すべてをそつなくこなし,女性から見たらさぞやモテるだろう思われるだけに,自分から告白するなぞ,想像できなかった。

 それが,今は,胸の中が甘さでとろけるような思いでいっぱいになり,優花まで幸せな気持ちにさせる。

「南川様……」

 口と口が重なり,やがて舌と舌が濃厚に絡み合っていく。あんっ,ぅぅんというお母さまの悩ましげな声が漏れ,妖しい気持ちになってくる。優花は,半開きの唇から熱い息を吐いた。興奮でか口の中が乾き,唇を舌で舐める。

「今日もいっぱい感じるところを見せて。鈴音の乱れたところをみたい」

「いやぁ,見ないでください…・・」

 羞じらいの声が甘く響く。お母さまの引き締まった足首を肩に担ぎ,おじさまはぐっと腰を突き入れた。肝心な部分がよく見えないが,深く挿入されているのが分かる。

「ぁああんっ,ぁぁっ,ぃ,ぃいいっ」

「すごく綺麗だ。もっと感じ……」

 お母さまのシミ一つない白い手が,おじさまの背中をひしっと抱き締めていた。おじさまの腰が,大きく動くたびに淫らな音が,優花の耳まで届いてくる。

ぐちゅっ  ぬちゅっ  じゅぶっ  すぶっっ

「ぃぃ゛~~~~,アァ~~~,か,感じる……ぅんんっ,はぁあああっ」

 優花は,気付いたら制服の上から胸を揉み,スカートの中に手を入れていた。下着の上から触ると,ピリピリと心地よい電流が走り,可憐な唇からさらに熱い吐息が溢れる。

『ハァ…・・ハァ…ハァ…・だ,だめなのに……』

 おじさまの逞しい体が,上から貫くように突いていく。その度にお母さまの双臀がうれしそうに弾み,淫水で卑猥な音が立った。

「南川様……ぁぁ~~,も,もうぅ……」

 感極まったのか,お母さまは腕だけでなく,両足をおじさまの身体に挟み,ぎゅっとしがみついた。

『お母さま,すごく気持ちよさそう……』

 優花は下着の上からの焦れったさでは我慢できず,下着の中に入れ,直接秘部に指を当てた。すでにそこは,ねっとりと糸を引いており,指を動かすだけでピチャピチャと音が鳴るほど濡れていた。陰核に触れると,身体の芯を一瞬貫き,甘い感覚に脳が痺れた。

『ぅぅんんっ,いいっ』

 欲望に逆らえないとばかりに,目を凝らしながら,下着の中で手を必死に動かした。子猫がミルクを舐めるような音が,お母様の喘ぎ声と重なる。

「もう気を遣るのか。勝手にイッてはだめだよ。わたしと一緒にイクように」

「ぅぅぅっ,はぁ~~ぁ」

 お母さまはせつなげに細眉をたわめ,紅唇を噛みしばってガクガクとかぶりを振っている。せつないようなもどかしような顔に,優花は,魂が奪われるように心惹かれた。控えめながら美しく気高い母を自慢に思ってきたが,これほど美しいものとは思いもしなかった。濡れきった指で,陰核を激しく嬲る。

「ぁああ~~~ぁぁ,ぃ,ぃきそう……んっ,ぁ,ぁああ」

 お母さまの声が,すでにどうにもならないところまで高まっているのが分かる。お母さまの手がおじさまの背中で爪を立て,気を遣るのを抑えようと必死に堪えている。それなのに,細腰は,もっと,もっとと貪欲に快楽を貪るように,激しく動いていた。

「南川様……アァ~~,ぁああっ,み,南川様……イッて…・・いいですか……」

「ダメに決まってるだろう,まだダメだぞ」

 おじさまは,そう言って,お母さまを追い詰める。お母さまの顔が,苦しそうに歪む。だが,それが何よりも気持ちが良いのだと,本能的に優花は直感した。

『ぅんっ,ぁぁ,わ,わたしも…・・されてみたい…』

 処女というのに大胆に陰核を弄りながら,将紀に同じようなことをされているところを想像した。それだけで,身体がプルプルと震え,愛液が溢れ出た。すでに下着は,下着の役割を果たせないほど濡れている。

 おじさまは,イクなと言いながら,ドスンドスンと容赦なく肉杭を打ち込んでいる。蜜壺をこれでもかと抉られ,お母さまは,凄艶な表情に変わっていった。いいっーーと唇を噛みしばってまなじりを引き攣らせ,美しい玉水を頬や額に浮かばせていた。

『ぅ,ぅんんっ,ぅ゛う゛~~~んっ,イ,イくっ』

 あまりに激しい情交に,優花は,立ったまま気を遣ってしまう。身体が,ピクッピクッンっと小刻みに揺れる。昨日初めて気を遣れたが,今回はあっという間だった。しかも,あれほど昨日はぐったりしたのに,今日は残り火がすぐに燃え上がり,指を止めることができないでいた。

『ぁ~,ぁあ~~ん,んんっ,と,止まらない……きっ,気持ちいいっ……』

「ヒィ,ヒィイイイイーーーーー」
 
 お母さまはあられもなく矯声を放った。すさまじい肉の快楽と,気を遣りたくても遣れない苦悶が交錯して,慎ましやかな美貌が,すべての人間を虜にするような妖艶さを誇っていた。

「ぁ゛あ゛~~~,ぅああ゛あ゛,も,もうダメ……ひっ,ひぃい……ぅ~~~ん゛,ぁあああっ,お,お願い…・・ぉぉおおっ,ぉ゛~~~」

 せっぱつまった声をあげて,おじさまの筋肉のよく発達した背中に爪を立て,ギィィイイーーと引っ掻いた。

「よし,イこう。一緒にイクんだ」

 燃えたぎって爆発寸前のお母さまは,歯を噛みしばり,ひしっと抱き締めて,狂ったように腰を振った。

『お母さま…・・やっと,やっとイケるのね』

 優花は,将紀に突かれることを想像して,指で陰核をブルブルブルと小刻みに揺らした。開いた足をさらに開き,腰をやや落として,イクことに集中する。

『ぁぁあ,ぃいいっ,もっと,もっと突いて……将紀さん…・・ぁあああっ』

 さらに腰を踏ん張って,だらしない顔をしながら,欲望に忠実に陰核を嬲る。

「イ゛ィ゛~~~~ぃ゛,ぃ゛く゛っ,い゛く゛っ,い゛く゛っ~~~,い゛く゛ぅうううううーーーーーーーひぃ,ひぃぎぃいいいいいいーーーー」

 お母さまが,おじさまの射精を受け止めながら,取り憑かれたように腰を振り,悦びの声を絞り出している。お母さまの美しい裸体が激しく痙攣するや,顎を反らし,白眼を剥いた。

「ぁ゛~~~ぁあ゛あ゛,ぅぅんんっ」

 おじさまの背中に食い込んだ爪によって,赤い血がツゥーーと滴り落ちた。焙られたような裸体が撓みうねっていて,天井を向いた足の爪先がぎゅっと反り返った。

「あああっ……ぁ,ぁんっ………」

 大波が引いた後も,生々しい痙攣が続いていた。

『わ,わたしも…・ぁあああっ,イクッ,イクッ,イクぅううううーー』

 優花は,高速で陰核を擦り,絶頂とともに全身がビクッと跳ねた。膝まで下げていた下着に,オマンコからタラリと愛液が糸を引いて垂れ落ちた。

「ハァ…・・ハァ……ハァ……」

 お母さまは,絶頂の余韻に浸り,おじさまにしがみついていた。

 優花は,下着を元通りにして,はだけたシャツノボタンを閉じ,指をハンカチで拭く,静かにそこから立ち去った。


 

 もう灯の入る時刻になって,台所の方からはしきりに料理の物音と女中たちの屈託のないおしゃべりが聞えてくる。

 優花はまだ灯の入ってないベランダから足音を忍ぶように中に入った。

 と,不意に背後の暗い所から,声をかけられて,棒立ちになった。

「やあ,優花ちゃん,こっそりと何をしているの?」

 将紀の声だ。将紀の声と知って優花は金縛りになった。

 薄暗がりのソファに掛けていた将紀が,ゆっくり背後から近づいてきた。

「優花ちゃんに会いたくて待っていたんだよ。美奈に聞くとブラブラどこかへお出かけと言うからね」

 肩に手を置かれて,優花ほビクンとなった。

 あれほど会いたい,会って恨みごとのひとつも言ってやりたいと思っていたのに,今は悪い所を見つけられた者のようにおびえ切っている。

「どうしたの? 汗ビッショリだよ。それにブルブル慄えている」

 優花は何か激しい言葉を口走って,将紀の手を振りほどいた。

「さわらないで。きたないわ,将紀さんって」

「おやおや,これは平素の優花ちゃんとも思えないきつい言葉だね。どうしたの?」

 優花は追いつめられてかえって攻撃に転じた。

 波立った感情が怒りに変化した。クルリと向き直ると,将紀の顔にたたきつけるように言った。

「将紀さんには,真弓さんって人がいらっしゃるんでしょ。それも一緒のお部屋に……」

 口に出すと同時に口惜しさが涙になって噴きこぼれた。

「たしかに一緒にいたよ。しかしあれは傷がなおるまでのことで,今はいないよ」

「嘘」

「嘘なもんか。何なら今から一緒に行って調べたらいい」

 平然とした将紀の応対に,優花の方がかえって怒りのやり場に窮した。

「もうすぐ晚ごはんだけど,すぐそこだからこのまま見に行こうじゃないか。優花ちゃんにそんなにまで疑われているなんて,心外だよ」

 将紀は進み出て優花の腕をとった。今度は振りもぎらなかった。引きずられるように優花はベランダから外へ出た。

 優花の胸の裡で,将紀と真弓との関係に対する疑念が消えてしまったわけではない。しかし,同じアパートに暮らしていないとわかるだけでも心の晴れることであった。

 途中,将紀は何かと優花の気を引き立てるようなことをしゃべりながら,事がトントン拍子に運びそうな予感に口笛でも吹きたい気分だった。



 大学の授業が終わり,珍しく午後から予定が空いたので,優花に会いにきた。家に入り,美奈に叔父の居所を訊くと,眼くばせで離れの方を教えてくれた。

(ははは)

 陽の高いうちからお盛んなことだと,からかい半分に離れの方ヘブラブラ步いていった。そしてそこに覗き見をしながら,オナニーをしている優花を見つけたのである。

(これはこれは)

 ひとり胸に呑み込んだ将紀はすぐ母屋に引き返し,暗い居間で優花の帰って来るのを待っていたというわけだ。

(まさにチャンスだな)

 待ちながらも,ほくそ笑みが止まらなかった。

(いよいよ優花ちゃんをオレの女に……・・)

 どこかけだるい中秋の夜気の中に,甘い優花の髪の匂いが鼻をくすぐってくる。優花は黙り勝ちにうなだれて並んで步いているのだ。

 その手をそっと取った。

 一瞬おびえたように引きかけたが,すぐ委ねられた。優花の掌はしっとり汗ばんでいた。

「優花ちゃん,ぼくは優花ちゃんのことが本当に好きなんだよ」

「…………」

「優花ちゃんもぼくのこと好きだろう?彼女になってくれるよね」

 返事の代わりに手がそっと握り返されてきた。握られた手をしっとり汗ばませ,どこが夢見心地で步いているようだった。





「さあどうぞ。真弓がいないか戸棚の中までも気のすむまで調べて下さい」

 マンションに着くと,将紀は優花を中に押し込むようにして言った。

 そう言われると,優花はかえって自分の稚い嫉妬心が羞ずかしい。

「もういいの。わかりました」

 広い居間の中をオズオズ見渡しながら,言わざるを得ない。

 ここの居間は二十畳くらいの広さのフロアに椅子や寝椅子やクッションを点在させ,低いテーブルを置き,隅にはステレオやホームバーがあり,腰高の戸棚をヘだててキッチンがあるという形式になっている。大勢の若者が集ってワイワイ騒ぐのにつごうのよい造りだ。一枚ガラスの窓の外はベランダで,ようやくネオンがまたたきだした街が見降ろせる。

「納得した?」

 覗き込まれて,優花は赤くなりながらうなずいて見せた。

「じゃ,お詫びのキスだ」

 細腰を不意に抱き寄せられて,優花はもがいた。

 優花は「いやぁ」っと声をあげると,顔を隠すようにして将紀の胸の中に入った。やっと正式に将紀と付き合えるという想いがこみ上がり,将紀の胸の中で身悶えした。

 将紀は両手をそっと顔から引き離し,あごに指をかけて仰向けた。可憐な貌が白い頬を薔薇色に染めて,伏せた長い睫毛を顫わせていた。

 グッとたおやかな細腰を抱き寄せ,激しく喘ぐ胸のふくらみを押しつぶしながら,口を寄せた。

「あ……」

 熱い吐息を将紀の頬に吐きかけつつ,なかばゆるんだ唇がおののいた。

「好きだよ」

 羽根でこするような口づけを与えた。優花はすすり泣くような喘ぎになって自分から唇を押しつけてくる。両腕を将紀の頸にきつくからみつけ仰向けになって口を開いた。

 はじめての口づけにしては激し過ぎるくらい積極的なのは優花の出方だった。母とおじさまの交わりを見て受けた衝撃を,将紀との口づけの中で溶かし去ろうとでもしているかのようだ。

 将紀が舌をさし入れると,小さく呻きつつ羞ずかしげにからませてくる。流し込まれる唾液をほとんどすすり呻くようにして飲み下した。そして誘われるままに将紀の口中に舌をさし込み,チロチロ動かした。雑誌か何かで読んだ接吻のテクニックをいじらしいほどに実行するそのたどたどしさが,女に慣れた将紀にはかえって新鮮だった。

 細腰を抱えた手をそろそろ下に降ろした。爪先立って緊張した尻の張りがそこにあった。まだ少女らしいかぼそい体つきなから,さすがにそこだけは女らしく熟して,将紀の吟味の手を楽しませてくれた。

 優花は奪われた口の奥で喘ぎを高め,腰を揺すりはじめた。ふとおびえたように腰を引くのは,将紀の股間の硬いものに下腹が触れるからだ。将紀はわざとそれを押しつけるようにして,優花に呻きを上げさせた。

 長い長い口づけが終ったときには,優花はフラフラになって,将紀にもたれないと立っていられないほどになっていた。将紀の手がスカートの上からお尻をさすっているのにもあらがわない。

 将紀は肩先まである髪を優しく撫でてやりながら,

「お詫びの口づけはすんだけれど,次はお仕置きだ」

「お仕置きって?」

 優花はなかば霞のかかった瞳を将紀の胸の中でもたげた。

「いけないことをした子を罰するんだよ」

「優花が何かいけないことをしたとおっしゃるの?」

「そうだよ」

「何のことをおっしゃってるのか,わからないわ」

「じゃ,思い出させてあげよう」

 将紀は美貌に甘い笑みを浮かべて,優花を抱えたまま,ブラ下り健康器の方へ移動した。
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