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第五話遠征

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 「ウォーターボール!」 

お城の中庭で、メアリーが魔術を放った。

「今のはどうでしょう、お兄さま」

「うん、上等だよ。なかなかの威力だ」

俺たちは魔術の練習をしていた。

「はぁ、ダメです・・・どうしてもイメージできません」

ため息をつきながら落ち込むリディア。

「しょうがないさ。メアリーは5歳から魔術を教えたんだから。それにリディアだってさっきちゃんと同じウォーターボールができたじゃないか」

「それは詠唱をしたからですわ。レアードさまやメアリーさまのように無詠唱でできるようになりたいんです」

「うーん・・・こればっかりはなぁ」

どうやら無詠唱のイメージは幼い頃からやらないとできないみたいだった。

「んじゃあ、そろそろ戻ろうか。ゲート!」

そう唱えると、光の扉が現れる。

そこをくぐると俺の部屋に戻ってきた。

「相変わらず不思議な魔術ですわね。転移の魔術なんて凄すぎますわ」

「んー、転移とはちょっと違うんだけどね。場所と場所を繋げるゲートを作っただけだよ」

「よくわかりませんわ」

「さすがはお兄さまです」

俺が作ったオリジナル魔術『ゲート』。

行ったことのある場所に行くことができる魔術だ。

まぁ、行ったことのある場所が限られてるんだけど。

そしてある日のことだった。

俺はお父さまに呼び出された。

「お父さま。お話とはなんでしょうか?」

「お前を呼んだのは他でもない。レアード、転移魔術が使えるそうだな?」

「いえ、お父さま。正確には転移ではありません。行ったことのある場所と場所を繋ぐだけです」

「それでも十分だ。そこでレアードに頼みがある」

「なんでしょうか」

「パナマ皇国へ行って欲しいのだ」

パナマ皇国。

隣に位置する国だ。


「この度、パナマ皇国と同盟を結ぶことになったのだが、いかんせん遠くてな。そこでお前にそのゲートとやらを繋げてほしいのだ。もちろん護衛をつけるから道中の安全は保証する。どうだろうか?」

願ってもない話である。

ようやくこの城を出て外の世界に行けるのだから。

「わかりました。行ってまいります」

「うむ。頼んだぞ」

そして、俺は王国騎士団とともにパナマ皇国に行くことになった。

「お父さま!わたくしもお兄さまについてゆきます!」

「メアリー!?いや、別にメアリーが行く必要はないのだが」

「そうだよメアリー?」

「いいえ、わたくしとお兄さまは一心堂帯・・・離れることなどありえないのです。お兄さまもわたくしと一緒でなければ行かないと申しております」

「いや、別にそんなことはーー」

「そうですわよね?お兄さま?」

メアリーが俺を見て訊ねる。目が怖い・・。

「はい・・・」

「うーむ・・・しかたあるまい。大人しくしておるのだぞ?」

「もちろんです!」

メアリーはこの日満面の笑顔だった。

そして、早速パナマ皇国に向けて出発したのだった。

馬車の中は以外と乗り心地が悪かった。椅子にクッションはひいてあるものの、振動がかなり伝わってくる。

夜はというと、騎士団は野営だが俺とメアリーは魔術で一時帰宅している。

途中、サンタローズ村に立ち寄った時のことである。

俺とメアリーは村の中を散策していた。

すると、聞き覚えのある声が聞こえてきたのだ。

「ようやく追いつきました!」

それは美しい銀髪をなびかせた美少女の姿だった。

「リディア!?」

「リディアさん!?何故ここに?」

「ひどいですレアードさま!私に内緒で遠征なんて。追いつくの大変だったのよ」

「ああ、ごめん。云う機会がなくて・・・」

「まあいいです。今からは私も同行させていただいてもいいかしら?」

「わかったよ。一緒に行こう」

こうしてリディアも一緒に旅をすることになった。


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