上 下
3 / 10

第三話白い少女

しおりを挟む
 そして六年後。

メアリーの10歳を祝うパーティーが開催された。

「メアリー、おめでとう」

俺はメアリーにプレゼントを渡す。

「ありがとうございます、お兄さま!開けてもよろしいですか?」

「うん、いいよ」

メアリーが包みを開くと、メアリーそっくりの人形が出てくる。

「わ、お兄さま。もしかしてこれ」

「うん。僕が作ったんだ。我ながら上手くできたと思うんだけど」

「嬉しいです!一生の宝物にいたします!」

「あはは、そんな大げさな・・・ん?あれは・・・」

一人の少女が複数の少女に無理やり連れて行かれるのが見えた。

「あっ、お兄さま!?」

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」

そう言い残して俺は彼女らの後を追った。

そして人のいない中庭にやってきた。

「なんであんたみたいな魔女が姫のパーティーなんか来てるわけ?」

「姫が呪われたらどうすんの?」

やはりイジメだったようだ。

イジメられていたのは白い髪に白い肌、紅い瞳の少女だった。 

(あの子、どっかで見たことあるような・・・まぁいいか)

「今どきの貴族のご令嬢は寄ってたかって一人の少女を責めるのが流行ってるのかな?」

相手は女の子たちだ。できるだけ優しく話しかけた。

「王子!?」

「レアードさま!?」

突然の王子の登場に驚く少女たち。

「僕の城で不埒な真似は許さないよ?今回は見なかったことにしてあげるから一刻も早く消えてくれないかな?」

「は、はい!すみませんでした!」

虐めていた少女たちは脱兎の如く逃げ出した。

「全く・・・どこの世界もイジメってあるんだね。君、大丈夫?」

「は、はい!ありがとうございます!」

「綺麗な目・・・」

しまった。うっかり声に出てしまった。

メアリーの様な碧の瞳も綺麗だけど、この子の真紅の瞳もとても綺麗だった。

何より顔立ちがとても整っている。将来は美人になること間違いないだろう。

「あの、王子は私のこと気持ち悪くないんですか?」

「気持ち悪い?どうしてそう思うの?」

「だってみんな私を見て気持ち悪がります。この老婆のような白い髪に血のような紅い瞳・・・みんな私を魔女と呼びます」

「それはみんな見る目がないんだね。君のそのサラサラの輝く銀髪も、まるで宝石のような真紅の瞳もとても綺麗で美しいと思うよ。何よりすごく可愛い」

なんかどっかで聞いたようなセリフだったけどまぁいいか。

すると彼女の目から涙が出てきた。

あれ?素直な意見を言っただけだったけどなんかいけなかった?

「嬉しいです・・・そんなことを云われたのは生まれて初めてです」

「君は綺麗なんだから自信を持っていいよ。またいじめられたら僕が追っ払ってあげるからさ」

「ありがとうございます・・・王子」

「レアードでいいよ。君の名前は?」

「リディアです。リディア・アスカルトといいます」

リディア・・・?

(思い出した!攻略ヒロインの一人だ。確か今みたいに外見で虐められていたところを主人公が助けるんだっけ?そしてこう云うんだ『君の絹のように輝く銀髪もルビーのような真紅の瞳もとても綺麗だ』と。って、俺のセリフゲームの丸パクリやないかい!)

「あの、レアードさま?」

「あ、いや。何でもないよ。せっかく出会えたんだ、友達になろう」

「よろしいんですか!?」

「もちろん。君はこの世界での初めての友達だ」

「この世界?」

「いや、こっちの話だよ。気にしないで。いつでも遊びに来てくれ」

「はい!」

こうして俺に初めての友人ができたのだった。

(でも、確かゲーム内ではリディアとレアードに接点は無かったよな?ま、いいか)

それからと云うもの、リディアは毎日城にやってくるようになった。

最初はリディアに戸惑っていたメアリーだったが、次第に仲良くなっていった。

「リディア、そんな毎日来てくださるのも大変でしょう?たまにはおうちでゆっくりお休みいただくのも大切ですよ?」

「いいえ、メアリーさま。お構いなくーーこちらでもゆっくり休めていますわ。レアードさまにお会いするだけで心が休まりますもの。それよりも少しくっつき過ぎではありませんか?」

「あら、妹とはこういうものです。お兄さまにくっつけるのは妹の特権なのです」

(うんうん、すっかりメアリーもリディアと打ち解けたようで何よりだ)

「そういえばレアードさま、それは何ですか?」

俺が作っているものを見てリディアが訊ねる。

「ああ、これ?トランプだよ」

「トランプ?」

「よし、描けた!ゲームの一種だよ。今まではメアリーと二人だけだったから作るのを躊躇ってたんだけどね。さっそくやってみよう」

そして二人にルールを説明し、ババ抜きなどを楽しんだのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ
恋愛
アスラート帝国のカトル公爵家の長女リーナは、プラチナブロンドに青銀の瞳の美しく聡明な少女だったが、 母親と妹からの命令で、カツラを被り、肌を汚して生活していた。 そうしなければ暴力を振るわれたためである。 しかし、母親と妹はリーナの本当の姿も、自分たちが強制したことも忘れて、リーナを“醜い無能”と罵った。 自分の扱いに耐えられなくなったリーナは、ある決意をした。 ───── 「お父様、今日より私は、カトルの姓を捨て、平民として生きたく思います」 リーナの18歳の誕生日、リーナは父親である公爵にそう切り出す。 ───── リーナが公爵家を出た時、公爵家の財政管理、領地管理、他家との関係の保持─── ほとんどの仕事はリーナがしていたのだが…………。 貴族としての身分を捨て、街の食堂で働き始めたリーナはそこで幸せになれるのか!? 密かなにリーナに想いを寄せていて、リーナを追いかけて街に下りた皇子との恋の行方は!? 話、設定、登場人物の口調etc. 色々とブレブレですが、ご容赦くださいm(__)m 本編は最後まで執筆、公開予約済みです。本編完結後、のんびりと番外編を更新していく予定です! 3/18 : Hotランキング 60位→30位→15位→10位→6位 3/19~21 : Hotランキング1位 ありがとうございます!!

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます

兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。

処理中です...