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貴族になったけど大丈夫だよね?

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◇◇◇

 魔王城ーー。

「ま、魔王様~!!」

王の間に入ってきたのは鬼の魔人だった。

「オシムか。また随分と小さくなって」

「はい、とてつもなく強い人間にしてやられました。残った魔力でなんとか分身体を作り逃げ延びて・・・」

そして近くで見ていた他の魔人が口を開いた。

「あらあら、魔王軍四天王のあなたが人間ごときにやられるなんて傑作だわ。まあ私達四天王の中でも最弱なあなたならお似合いだわ」

「ミリムよ、口を慎め。魔王様の御前だぞ」

「まあよい。それでオシムよ、魔塔の笛で操っていた魔物はどうした?」

「それも全滅させられました。しかも一人の少女に・・・」

「なんだと!?ではエルフ側に被害はないというのか!?」

「全く・・・」

「うぬぬ。人族に攻め入る前にエルフを支配する計画が・・・」

するとそこへ一人の少女の魔人が入ってきた。

「なんじゃ?面白そうなことをやっておるのう。どれ、ちょっと見せてみい」

少女がオシムの頭に手を当てる。

「ほう、これはこれは。この黒髪の少年と少女・・・気になるのじゃ。ちょっと会いに行ってみるかのう」

少女はそう言うと一瞬で姿を消した。

「ちょ、大魔王様!?」

◇◇◇

 転移魔法陣を使って一瞬で王都シュバルツにやってきた。

そこはかなり文明が発達した街みたいで、日本にあるようなビルが並んでいた。

「わー、かなり都会だねお兄ちゃん」

「だな。建築技術はなかなかのものだ」

道はきちんと舗装されているし街灯まで設置してある。

「しかもこの馬車めちゃめちゃ揺れが感じないよ?」

「たぶんスプリングが使われてるんだろうな」

すると御者が話しかけてきた。

「ユータ様、ヒナタ様、まもなく王城に到着いたします」

馬車を降りるとたくさんの兵士に出迎えられた。

その中でも幹部っぽい人が私達に近寄る。

「はじめまして、ユータ様、ヒナタ様。私はミッドガル王国近衛兵騎士団長ロイドと申します」

あ、この国ミッドガル王国って名前なんだ。

「謁見の間まで私がご案内いたします」

ロイドさんに連れられて私達は王様がいる広間に入る。

事前に言われた通り、私達は片膝をついて下を向く。

「面を挙げよ。ふむ、本当に若いのう」

見上げるとエルフの王様が偉そうに肩肘をついて座っていた。

「此度の魔物襲撃の件、見事であった。今回の功績をもってユータ・タカナシ及びヒナタ・タカナシ両名には名誉子爵の位を授ける」

え、今なんて?めーよししゃく?何それ美味しいの?

「お二人とも!先程お教えしたようにお願いします!」

ロイドさんが小声で叫ぶ。

「あっ、はい!」

私達は用意された剣を持つ。

「「この剣は国のため、民のために振るわれる」」

すると王様が口を開いた。

「子爵と言っても名誉子爵であるから領地を与えることはできないが、他に望むものはあるか?」

「では俺達がここに来た目的でもある、『お米』をいただけますか」

「なんじゃ、そんなことで良いのか?よかろう。ではそなたらには米100俵を授けよう」

「100俵!?いえいえ、そんなには持ち運べませんから・・・」

「安心せよ。ついでにアーティファクトである魔導具『次元の蔵』を授ける。持って行くがよい」

「は!ありがたく頂戴いたします」

こうして私達は念願である『収納』の魔導具と6000kgの白米、子爵の位を手に入れた。

この世界の貴族の位も地球と同じ『公・侯・伯・子・男』である。つまり下から2番目の貴族になってしまったのである。お兄ちゃんと一緒に。

「まさか米を食べに来て叙爵されるとは思わなかったな」

「だね~。でもこの『次元の蔵』って便利だよね。色々実験してみたけど、この中に入れた物質は時間が経過しないみたい。松明の火は燃えたままだしさっき買った肉まんも温かいままだし」

「うん、いい物を手に入れたな」

転移魔法陣でウィードに戻ってきた私達は宿屋に泊まっていた。

タラタッタタタ~(宿屋のメロディ)

朝起きるとお兄ちゃんの姿はなかった。

早朝ランニングに出かけているのだろう。

私は朝ごはんを食べ終わると街を散策することにした。

シュバルツで頂いた貴族っぽいドレスを着て。

「これ可愛いんだけどちょっと歩きづらいんだよね・・・」

すると目の前に一匹の子猫が現れた。

「わ、何めっちゃ可愛い!」

私は子猫を追って裏路地に入っていた。それが罠とも知らずに。

突然足元に魔法陣が現れると体の力が抜けていく。

「な、何!?ウソ・・・魔術がつかえ・・・」

そのまま私は意識を失ってしまった。

「成功しやしたマスター」

「よし、とりあえず魔封じの枷と隷属の首輪を嵌めておけ。こいつは高く売れるぞ」

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