好色一代ふたなり娘!〜栗ノ花青春譚〜

本庄こだま

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「10歳、精通」

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 私、吾妻川千佳あずまがわちかには悩みがある。

 それは生まれながらの、私自身のの悩み。

 幼い頃は、男の子に混じって泥んこ遊びや木登りをするような、いつも生傷が絶えないわんぱく少女。

 それが、いつの頃から〝女〟が芽生え、自らの性を意識し始めた時、私は、私自身の心に宿った「ひどく不安定で、確かな存在」に悩まされるようになった。

 日に日に成長する、女としての肉体と精神。
 
 そんな少女の日常に、忽然こつぜんと姿を現した、私が知らなかったもう一人の「私」。

 今ここに、告白したい。

 これは、そんな「私」によって「私」の常識を塗り替えてゆく……

 ちょっと恥ずかしくて、堪らなくキモチイイ青春の物語──。



 ある日、ふと不思議に感じた。

 「なぜ、女の私にがあるのだろう」と。

 生まれながらに両性の生殖器を併せ持つ私は、長らくそれを当たり前の事として生活してきたし、男性器があるからといって何らかの面倒や不利益、理不尽をこうむった事などは一度も無かった。

 それどころか、幼少期の私はこの股間にぷらんとぶら下がった可愛いつぼみを、男の子相手に見せ合いっこしたり、河川敷のテトラポットで立ち小便をしてみたり……。

 そしてそれは、なにか他の女の子にはない、私だけに許された「特別な能力」のようにも感じられて……。

 だが、ある出来事をきっかけに、私の可愛い「おちんちん」との関係性は儚くも終わりを告げ、今後私を終生悩ませるであろう、凶暴な「男性器」としての片鱗を突如覗かせたのだった。



 あれは小学4年の林間学校。

 私たちは某県にある湖畔のコテージに泊まり、飯盒炊爨はんごうすいさんや釣り体験、キャンプファイヤー等の予定されたプログラムを行っていた。

 自然が織りなす開放的な時間や、「夜中に学校の先生や友人たちと時間を共有している」という非日常的な空間。

 そういう場所で、日頃は蓋をして他人に見せる事のない人間の一面を垣間見る時がある、という事は往々にしてよくある事だ。

 今にして思えば、は恐らくそういう類いのモノだったのだろう。

 夜のレクリエーションが終わり、各班の長が明日の連絡を先生に聞き、男女が各々のコテージに戻った折のこと。

 誰でも経験はあるだろうがこのような場で、消灯後素直に就寝する児童など恐らく皆無だろう。

 私たちの班も御多分に漏れず、見廻りの先生が揺らす懐中電灯の灯りの行方を気にしつつ、布団の中から声を殺して友人たちと会話をしていた。

 「あの先生がムカつく」だの、「誰ちゃんは誰君が好きらしい」だの、さも女子小学生にはよくある会話の内容で盛り上がる中、隣の布団に丸まってクスクスと笑う由衣ゆいちゃんが、不意にを切り出した。

 「ねぇ、みんなさ。〝オナニー〟って知ってる?」



 由衣ちゃんは可愛く明朗活発な女子で、成績も良く、クラス委員も務める名実ともにクラスの中心的な人物だった。

 もちろん可愛いので異性からも人気があるらしく、ある日同じクラスの男子から告白を受けたが、「ガキっぽ過ぎて無理」と言って振ってみせたという逸話もあった。

 一時は学年中がその噂で持ちきりだった。

 そんな由衣ちゃんの繰り出した突飛な話題に、一同は無言のまま、頭の上にはてなマークを作っていた。

 「え……オナニー……?オナニーって何?」

 「あのね、これ絶対男子とかの前で言っちゃダメだよ?多分……エッチなことだから」

 由衣ちゃんはそう断りを入れると、囁く声のボリュームをさらに小さく絞った。

 「エッチなこと」と聞いて、友人たちは色めき立つ。

 二次性徴を迎え、性的な話題に興味を持ち始めたばかりの小学生には、それは単純に「性的興奮」を抱かせるものではなく、周りの大人が隠したがる禁忌タブーに切り込む罪悪感に触れたという、いわば「反抗」という快楽だ。

 「ウチのお兄ちゃんが持ってた漫画でさ、女の人が指でお股を触ると気持ちいい……って書いてあってね。それがオナニーって言うんだって」

 その時、うつ伏せに聞いていた私の身体が、うなる心臓の鼓動で大きく一回、跳ね上がったような錯覚があったのを今でも忘れない。

 嬉々として「オナニーの話」をする由衣ちゃんは、同性から見ても可愛くてオシャレで優等生で、とても羨ましい存在。

 そんな彼女が今宵、友人たちの前で普段は絶対するはずのない「エッチな話」を披露している。

 単なるクラスメイトだった彼女という存在が、私の中で何者かに変わろうとしていた。



 林間学校の一夜から、何日か経ったある日の放課後。

 あの夜の一件以来、「オナニー」という言葉と、暗がりの中で薄っすら聴こえる由衣ちゃんのささやき声が、あの瞬間を切り取ってリピート再生するみたいに、頭の中から離れない。

 さらに、あの時の事を思い浮かべるたびに、何か私の心と身体の「汚い部分」が、ひどくむず痒くなるような感覚に襲われ始めたのだ。

 そしてそれは、きっと「よくない事」なのだと、自らを騙すように言い聞かせていた。

 私は掃除当番を終えると、クラスメイトの奈央なおちゃんと一緒に下校の途に就いていた。

 奈央ちゃんは家が近い幼馴染という事もあり、一番仲の良い友人だ。

 ただ、男子に混じってひたすら校庭を駆け回る私とは対照的に、いささか内向的で読書とお絵描きが好きなインドア派の子だ。

 下校途中にあるマンションの中庭、そこにあるベンチに座っておしゃべりするのが、私と奈央ちゃんの日課だった。

 他愛無い会話の最中、ふと奈央ちゃんが言い辛そうに話し始めた。

 「あの、この前の話さ、みんなで寝る時に由衣ちゃんが話してたの……千佳ちゃん覚えてる?」

 言葉を濁して、照れ臭そうに話す奈央ちゃん。

 私はすぐにピンと来たが、私自身もを自分の口から言うことは、何となく避けたい気持ちがあった。

 「あー……うん。覚えてる。でもよく分かんなくなかった?由衣ちゃんって、あーいうことも知ってるんだね」

 私はその時、奈央ちゃんに同意を求めるように話したが、その実、私自身が何となくこの話題をの人の口から聞きたくなくて、話題の進行をさえぎりたかったのでは、と、今になって思う。

 だが、奈央ちゃんが発した言葉は、私の想像の遥か上を行くものだった。

 「あの……絶対ナイショだよ?由衣ちゃんとかにも……あと、絶対笑わないでね」

 「?」

 絶対ナイショ、という言葉が出た時、なぜか私は堪らなく嫌な予感がした。

 「聞きたくない」という気持ちと、「全てを知りたい」という二つの気持ち。

 「私さ……オナニー?……やってたかも……」

 「……え!?」

 うつむいたまま、奈央ちゃんは恥ずかしそうに唇を噛んでいた。



 「えっ……お股擦ってみたの?気持ち良くなった?」

 自分でも意外なほど、先程まで抱いていた嫌悪感が何処かへと消え去っていた。

 最も身近な友人が「オナニー」という摩訶不思議な儀式を、実際にやってみたという衝撃の事実。

 羞恥心や背徳心を、少女の興味本位が凌駕した。

 「いや、由衣ちゃんが言ってたやり方じゃないんだけどね……」

 奈央ちゃんは、事のあらましを身振り手振りで教えてくれた。

 「布団をこう…丸めるじゃん?それをさ、うつ伏せになってお股に挟むの」

 「うん……」

 頭の中で、裸の奈央ちゃんが布団を股に挟んでいるビジョンが浮かぶ。

 「それでね、布団を抱きながらね、お股をこう、布団にグリグリ擦り付けてるとね、足の先とかお腹の下がムズムズしてきて、頭がフワーってなって……なんかすごい気持ちいい……」

 「すごいね……」

 「オナニー、ってのは知らなかったけど、多分同じだよね。私、これ小1からやってた……」

 「小1で!?」

 私が驚いたその時、なぜか奈央ちゃんは少し嬉しそうな顔をしたのを覚えている。

 だが、聞かされた私はというと、奈央ちゃんの「オナニーの告白」のあと、その場にじっとしていられないくらい、ひどく恥ずかしい気持ちになった。

 あの日の夜、由衣ちゃんが「オナニー」という言葉を発した時と、恐らく同じ気持ち。

 (ダメだ、こんなエッチなこと、考えちゃダメ)

 ベンチに座りながら足をバタバタと動かして、心に生まれた不安定の波動が引いてゆくのをひたすらに待つ。

 心臓がバクバクする。気持ちがソワソワして堪らない。

 (オナニー……オナニー……)

 奈央ちゃんと別れて家路を急ぐ私は、脳裏にまとわりつく「羞恥の言葉」を必死に振り払おうと、家までの下り坂を全速力で走った。



 家に居ても落ち着かない。

 両親の笑い声、弟の文句、リビングにある家族の写真。

 入学式の時の、笑顔で写る私の写真──。

 それらを見聞きした瞬間、私は何故か「とても恥ずかしい存在」に成り果てたような気がして、今すぐにでも一人だけの世界へ逃げ出したい衝動に駆られていた。

 風呂に入って夕飯を済ませ、いつもならば家族団欒の時間を過ごす時間だが、その日私は自室に閉じこもった。

 由衣ちゃんと奈央ちゃんの顔が頭に浮かぶ。

 (あの二人は、オナニーしてるんだ……)

 私はベッドに寝転ぶと、下校時に奈央ちゃんから教わった通りに掛け布団を抱き枕のように丸めて抱きつく。

 「ふーッ、ふーッ……」

 股間に意識を集中させていると、ある違和感に気付く。

 (なんか痛い……?)

 部屋着のハーフパンツを下着と一緒にずり下ろして股間を確認する。

 「え……どういうこと……?」

 パンツの中で私の「おちんちん」は、見た事もないくらい固く膨らんでいた。

 「なんか……チンチンが腫れてる……」

 大人の親指大の「おちんちん」は、つるんと真っ白な球根のように包皮を被ったまま、それでも健気けなげに震えながらピン、と上を向いていた。

 ズキズキと脈打つ感触に、私は言いようのない恐怖を覚えた。

 「どうしよう……」

 過去にも「おちんちん」が膨らんだ事はあるが、こんなに肥大化し、しかも長時間というのは前例がない。

 何か病気だろうか。それとも「オナニー」のことを考えるだけに飽き足らず、果てにはそれを決行しようとした罰なのか。

 (でも、由衣ちゃんも、奈央ちゃんだって……)

 「はぁッ、んんッ……んッ!」

 二人の顔が浮かぶと、なおさら股間が疼き出す。

 行き場のない苦しみに、悶えることしかできない。

 (私だってオナニーしていいじゃん……みんなしてるから……)

 だが、二人と私には決定的に異なる部分がある。

 今まさに、私を苦しめている股間のだ。

 (チンチンがあったら……オナニーしちゃダメ……?)



 由衣ちゃんは「女の子はお股を擦ると気持ち良くなる」と言っていた。

 それが「オナニー」である、と。

 だから「おちんちん」のことは何も言っていない。

 (男子はオナニーしないのかな)

 ベッドに寝転がりながら考えても、意識の大半が疼く「おちんちん」に奪われてゆく。

 ふと、頭に浮かんだのは下校の時の奈央ちゃんの顔。

 自らのオナニー体験を告白したあと、なぜか彼女は満足そうな顔をしていた。

 (……やっぱり、シたい)

 いけない事だと分かっても、股間の疼きがどうしても止まらない。

 あの夜「オナニー」という言葉さえ知らなければ、こんな苦しまずに済んだのに。

 私はもう一度布団を抱えてうつ伏せになり、股間の気持ちいい部分を探るように腰を前後左右にひたすら動かす。

 ズリッ、ズリッ、ズリッ……

 「ふーッ、ふーッ、はァ……あぅッ」

 一心不乱。

 カチカチに強張こわばった「おちんちん」で、えぐるように布団を擦りまくる。

 「んふーッ……んぅッ!」

 下に居る家族に悟られないよう、タオルケットを噛んで声を押し殺す。

 (気持ちいい……チンチン気持ちいい……!!)

 気付けば私は、私自身のを探り当て、そこに意識と神経を集中させる事に没頭していた。

 「うんッ、あァンッ、はぁッ……はァァッ!?」

 頭がボーッとしてゆく。股間を擦る以外、今は何も考えたくない。

 (オナニーきもちイイッ❤︎オナニーきもちイイッ❤︎)

 腰の動きは無意識に速くなり、知識など無いながらも、少女である私なりの「ゴール」のようなものを目指して、ただひたすらに覚えたての快楽の味を楽しむ。

 ズッ、ズッ、ズッ、ズッ……

 「ぉ~……きもちぃッ❤︎オナニーきもちぃッ❤︎チンチンきもちぃッ❤︎オナニーッ❤︎オナニーッ❤︎オナニーきもちぃぃよォォォ……❤︎」

 堪らない性感の刺激に、思わず快感を声に出した時、私の中でくすぶっていた〝何か〟が加速度的に迫り来る感覚があった。

 鳥肌が立つような快感の訪れが、目と鼻の先にある。

 「マズい」と思ったが、同時に初めて手に入れたこの快楽を、手放したくないと思った。

 「オナニーッ❤︎オナニーッ❤︎由衣ちゃんッ❤︎チンチンッ❤︎オナニーッ❤︎由衣ちゃん由衣ちゃんッ❤︎チンチンッ❤︎オナニーオナニーオナニーぃぃ……❤︎❤︎」

 もはや声を抑えることなど忘れて、思うままに叫んでいる自分がいた。

 〝性欲の奴隷〟が誕生した瞬間だった。



 「はッ❤︎くるッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎なんかくるッ❤︎ふわぁぁぁくるくるくるくる……❤︎❤︎」

 布団を細い両腕と太ももで力一杯に締め上げながら、腰をコツコツと小刻みに揺らすように振り続けた。

 (あ、なんかオシッコ出そう)

 と、思った矢先、放尿とはまるで異なる快感の電流が、股間から脊髄、さらに脳へと突き抜けていった。

 コスコスコスコスコスコスッ❤︎

 「ん"ン"~~……おッ❤︎❤︎❤︎」

 ビクンッ❤︎

 ピュッ❤︎ピュッ❤︎トロ……❤︎

 少女の華奢な身体では抱えきれないほどの性的快楽。

 全身を駆け巡る快感に身震いするばかりで、呼吸すら上手くできない。

 「ぁ~……❤︎おッ、オナニーッ、すッ、すごいきもひぃ……❤︎❤︎」

 呂律の回らない呟きが静かな自室に響くと同時に、股間にまとわりつく不快な感触が、一気に現実世界へと私を引き戻した。

 (……なんかヤバイかも)

 すぐさま真顔になり、勢いよく上半身を起き上がらせる。

 ハーフパンツの中に、ジットリとした湿り気と温もりを感じる。

 「オシッコ出ちゃった……?」

 快感のあまり失禁したと思った私は、急いで下を脱いで股間まわりを確認する。

 「ん?……んん!?えっ、な、何これ……??」

 下着には、片栗粉を溶いたようなぬめり気のある粘液がベッタリと付着していた。

 これは少女の私にとって、恐怖だった。
 
 「自分は病気だ」と絶望した。

 リビングにいる家族に隠れて洗面所で汚れたパンツを洗いながら、「もう二度とオナニーなどするまい」と、その日は震えて床に就いた。

10

 次の日、昨夜の出来事をどうしても話したい人がいた。

 奈央ちゃんだ。

 登校したのち、ランドセルを机に置くと、真っ先にクラスの窓際の奈央ちゃんの座る席に向かう。

 「おはよー」

 「あ……千佳ちゃんおはよ。あの、向こうで話さない?」

 「え?あ、うん……」

 図書室で借りた児童書から目線を上げた奈央ちゃんは、私の顔を見て何かを察したように、開いていた本を閉じて席から立ち上がると、私の服の裾を掴んだまま廊下へと促した。

 「千佳ちゃん、昨日のアレ….…」

 「あっ!えっと……私……昨日……」

 まさか奈央ちゃんの方から聞いてくるとは思わなかったので、私は不自然に言い淀むが、恐らく勘付いているであろう奈央ちゃんを前に、意を決して告白する。

 「昨日……奈央ちゃんが言ってた……オナニー……してみた……」

 「やっぱり!?なんか、そんな気がしたの!これも二人だけの秘密だからね」

 奈央ちゃんは辺りをキョロキョロと気にする素振りを見せながら、私に小さく耳打ちをしてクスクスと口を押さえて笑った。

 「……気持ちよかった?」

 「うん、なんか……身体が浮いちゃいそうだった」

 「同じ!私もフワーってなるの」

 階段の踊り場近くで、私と奈央ちゃんは同じ秘密の共有者として、恐らく朝には相応しくない「ちょっとエッチな話」で盛り上がる。

 だが、私は奈央ちゃんに確認しなければならないことがあった。

 「奈央ちゃんって、小1の時からオナニーしてたんだよね?」

 「うん」

 「いつもやってるの?」

 「いつもじゃないけど……たまに」

 「オナニーしたあと、パンツとかお股ビシャビシャになるからイヤじゃない?」

 「え?ビシャビシャ?なんで?」

 「……え???」

 私がそれを尋ねた時の、奈央ちゃんの耳を疑うような驚き顔を、私は今も忘れない。
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