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8.月下に微笑(わら)う女
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1
愛理の初ステージが幕を開ける。
幻想的なピアノ曲が流れる中、ステージには真っ赤な十字架を背負う愛理の姿があった。
だが、そこに観客の歓声や囃し立てるような言葉はない。
ただ皆が一心に、ステージの上の成り行きを見守るだけだった。
(何……?始まってる……?)
視界を奪われた愛理には、観客の様子はまだ分からない。
だが、暗闇の中で研ぎ澄まされた感覚が、無数の女たちの視線を痛いほどに感じ取っていた。
(やァァ……見られてるッ……こんな姿ァ……)
まるで品定めされる奴隷のように、好色な女たちの射るような視線に視姦され続ける愛理の美しい肢体。
それはまるで心さえ見透かされているようで、赤の他人に自らの恥部すべてを曝け出してしまっているかのような錯覚に陥る。
「んふッ……んゥゥン……!」
(奈美さんッ!早く来て……!)
この羞恥の水底で掴まれる唯一の救いが、今宵自らを辱めるサディストの名前とは……。
コツッ……コツッ……
ヒールの音が高らかに響く。
肌の熱さと、吐息の匂い。
(なッ……奈美さん……)
「んッ……んゥゥッ!」
愛理は顔を左右に振って、奈美の存在を探してしまう。
見えるはずもない視覚に頼ろうとしてしまう、人間としての本能。
だが奈美はそんな愛理の必死な振る舞いを嘲笑うように、十字架の周りをゆっくりと周回する。
コツッ……コツッ……
「ふふッ、私を探しているの?愛理……」
「うゥ……ッ!」
腹にズシリと響く、低く鋭い声。
(本当に奈美さん……よね?)
「アハッ、愚かな娘……まるで親の乳を探し求める、産まれたての仔豚のようね」
先程までの柔らかな姿勢とはまるで違う、他者を侮蔑する高慢で尊大な口振り。
女としての自分に絶対的な自信を抱く、まさに〝女帝〟の振る舞いだ。
2
近付いては遠ざかる、奈美の肉体のその輪郭。
そうしている間にも、愛理の全身に観客の視線が突き刺さる。
恐怖で膝が笑い、肌は脂汗で輝く。
ボールギャグを咬まされた口元からは涎がダラダラと糸を引き、豊かな胸元の谷間へと滑って落ちる。
「くゥンッ……うゥッ!」
(お願いッ!見ないで……こんな恥ずかしい姿……!)
何もされぬまま、自らの弱さが生み出す不安と恐怖のみで気が狂れそうになる愛理。
不意に、首輪の鎖を力任せに引っ張られる。
「ぐゥッ!?」
「愛理……可愛い娘ね。その顔も身体も、心さえも繋ぎ止めてやりたいわ❤︎」
鼻と鼻が触れる距離に、奈美の顔がある。
「んむゥッ……❤︎」
無意識に、愛理が顔を近付ける。
だが、奈美は愛理の頬を手で押さえてそれを拒絶する。
「何を甘えてるの?おあずけよ」
「うッ……」
自由と尊厳を奪われてなお、この期に及んで女王様に愛をねだってしまう愚かな奴隷……。
羞恥と惨めさに、愛理の顔が紅潮する。
「さぁ、お洒落しましょうか?私の可愛い愛理❤︎」
そう言うと奈美は首輪に手を掛けて鎖を外す。
3
カチンッ……ジャラ……
錠が開かれ、鎖が解かれる。
「うッ……おぅ……」
放心になった愛理は、その場にへたり込んでしまう。
だが、束の間の解放はすぐさま終わりを告げる。
背後から乳房をグイッと持ち上げられ、両腕を後ろに折り畳まれる。
そこからの奈美の動きは、まさしく〝神速〟とも呼べる職人技であった。
真っ赤な麻縄を愛理の首、乳房、股間を通して背後に回すと、腰の辺りで手首を固定する。
息もつかさぬ早業で、愛理の上半身は自由を奪われた。
(こッ、これ……まったく動けない……!?)
親指すら固定され、手を握ることさえままならない。
もがけばもがく程、麻縄は愛理の柔らかな肌に深く食い込んで、ますます肉体の自由は狭まってゆく。
「ボーッとしないのよ?立ちなさい、愛理」
ピシャッ!
「ひゥッ!?」
平手で太ももを叩かれ、愛理は反射的に立ち上がる。
「そう、いい子……皆様にご挨拶よ。歩きなさい」
(あ、歩く……?)
奈美の命令に愛理は戸惑いながらも、一歩、一歩、ゆっくりと前に歩き出す。
ヒタッ……ヒタッ……
(何……何があるの……?)
何も見えない闇の中を、奈美にコントロールされながら裸足でヨチヨチと歩く愛理。
あまりの心細さに何度も立ち止まりそうになるが、その度に奈美は愛理の尻を叩く。
「歩きなさい。聞こえなかった?」
ピシャッ!
「うゥッ……くゥゥ……」
10歩ほど歩んだ先で、奈美が愛理の背中を抱きかかえる。
「さぁ愛理、しゃがみなさい。お客様にご挨拶❤︎」
4
奈美がそう言った瞬間、愛理は眩しい光に包まれる。
「あッ!?ひィ……」
咄嗟に顔を背ける愛理だが、奈美は愛理の髪を無理矢理に掴んで、再び正面を向かせた。
「愛理の可愛いお顔、心ゆくまで見てあげてちょうだい❤︎」
アイマスクを剥ぎ取られた愛理の眼前に、無数の視線が注がれていた。
客だけではない。キャストの女王様、M嬢、果てはカクテルカウンターのスタッフまで、この空間にいるすべての女の視線は今、愛理ひとりの顔を見つめていた。
(あ……私……見られてる……こんな無様ではしたない姿……みんなに全部見られちゃってる……)
好奇の目、情欲の目、侮蔑の目……。
愛理は直感的に、自分こそが今この空間で間違いなく〝最も惨めで卑猥な女〟だと悟った。
「おッ……おぐッ……ぷふゥゥ……」
悲壮の嗚咽を漏らそうにも、ボールギャグの呼吸穴から粘ついた涎が泡となって吹き飛ぶのみだった。
「必死に何か言ってるわねぇ?自己紹介したいのかしら?偉いわ愛理❤︎」
奈美は愛理の顎にダラダラと糸を引く涎を手のひらで掬うと、それを愛理の顔面に塗りたくった。
「ん"ン“ーーッ!?」
「自慢の可愛いお顔がヨダレでテカテカ❤︎似合ってるわよマゾ愛理❤︎」
何度も、何度も、汚されてゆく……。
誰にも愛されない、無様で醜いマゾの顔。
5
キュッポン❤︎
散々に弄ばれたあと、ボールギャグが外された。
「ぷはッ、はァッ、はァッ、はァッ……」
「愛理、自分の言葉で自己紹介しなさい」
奈美に顎と額を掴まれ、強制的に客に顔を向けさせられる。
(見ないで……こんな汚い私を……)
愛理は、震える声を必死に絞り出す。
「み、皆様、初めまして……今夜……奈美女王様に可愛がって頂く……あ、愛理です……淫乱な私の本性……是非……ご覧下さい……」
「はい、よく言えました❤︎ご褒美をあげるわ❤︎」
奈美は手に持つボールギャグを客席に目掛けて放り投げると、愛理を抱擁して頭を撫でつつ、愛理の口に舌をねじ込んだ。
ジュルッ❤︎チュパッ❤︎ズルル……❤︎
(あッ……❤︎キス……好きィ……❤︎)
耐え難い孤独と羞恥の最中、初めて女王様から与えられる甘美な愛……。
涎まみれ、汗まみれの愛理の身体を、奈美は躊躇なく抱き締めて官能的な接吻を愛理に授ける。
その時、ふと愛理の瞳から大粒の涙が溢れた。
(ウソ……なんで……なんでこんなに嬉しいの……?)
ポロポロと零れ落ちる涙の理由も分からぬまま、愛理は奈美の胸に顔をうずめた。
奈美は愛理の身体を痛いくらいに強く抱き締めて、耳元で小さく囁いた。
「愛理、頑張ったわね……素敵……誰よりも美しいわ……離したくないくらいに……」
6
ギシッ……ギシッ……
愛理と奈美、2人による〝20分の物語〟はクライマックスへと突入する。
右脚の膝に麻縄を掛けられ、愛理がゆっくりと吊るされてゆく。
「あッ……くぅ……あッ、あッ……」
軸足となっていた左のつま先が床から離れ、遂に愛理は全身を縄で飾られた〝卑猥なオブジェ〟と化してしまう。
(おぉ……喰い込む……ッ)
小柄な愛理といえど、全体重が負荷となれば縄の喰い込みもかなりのものだ。
「痛くはない?ふふッ、目がトロンとしてるわよ。気に入ったみたいね❤︎」
「んんッ❤︎……そんな……❤︎」
だらしない顔の惚けを奈美に指摘された愛理は、恥ずかしそうに口を強く結んで首を横に振る。
だが、愛理の意思とは裏腹に、縄が肌に喰い込むたびに、肉体の奥底がジンジンと熱を帯びてゆく感覚を愛理自身も感じていた。
(縛られて……どうしてこんな気持ちイイのよ……ッ❤︎)
思考がモザイクを施したようにぼやけ、息はどんどん荒くなる。
妖しげな赤色のスポットライトに愛理の身体は余す所なく照らし出され、この美しい鑑賞品の一点に女たちの目が注がれていた。
吊るす位置が高くなるにつれ、右脚と左脚の距離は遠くなる。
愛理の肉体が完全に宙に浮いた時、愛理の〝秘所〟はぱっくりと客席に向けられていた。
「あッ❤︎イヤッ……❤︎あハァ……❤︎」
恥ずかしさに漏らす吐息も、先程までの不安や恐怖の色は無い。
ただ今は全身で、この倒錯的な世界を愉しむ〝目覚めたオンナ〟の姿があるだけだ。
7
不意に奈美が、愛理の股間を撫でつける。
「ひゃうッ!?❤︎やぁぁ……❤︎」
「愛理、パンツがぐっしょりじゃない?汗のせいかしら?それとも……❤︎」
奈美はストッキングの裾からハサミを抜き出すと、愛理のパンツに刃を立てる。
「あッ❤︎ダメぇぇッ❤︎」
ジョキッ、ジョキッ……
シースルーな薄地のショーツはいとも簡単に切り裂かれ、愛理は秘所の護りを失う。
ツルツルに輝く陰唇には愛液がベットリと付着し、言い逃れ無用のピンチが愛理に訪れる。
「愛理、虐められて興奮していたのかしら?それとも、お姉サマ方に見られてオマンコを濡らしてしまう変態なの?」
「うゥ……ちが……❤︎」
愛理は耳まで紅潮しながら、力無く首を横に振る。
「何が違うのかしら?お客様に確かめてもらおうかな?ふふッ……それッ!」
奈美は手にした愛理のショーツを客席に向けて投げつける。
「やッ……ダメぇッ!!」
奈美の行為に愛理は驚いて身体を揺るが、緊縛された肉体は当然宙でプラプラと情けなく揺れるだけだ。
最前席にいた客が、それを空中でキャッチすると、なんの躊躇いもなく鼻に近付けて大きく息を吸う。
「スゥー……はァッ❤︎臭ッさ❤︎ありえないくらい濃厚なメス臭❤︎とんでもないマゾね、愛理❤︎」
客は次々にショーツを回して、愛理に〝マゾ〟の烙印を押してゆく。
「すっごい匂い❤︎このオマンコフェロモンで一体、何人の女をたぶらかしてきたのかしらね❤︎」
「天然レズビッチのメス臭ね❤︎こんなエロ臭プンプンで街歩いてたら、ソッコーでハメてやるわよマゾ愛理❤︎」
「やめてッ……お願い嗅がないでェェ……」
涙を浮かべて懇願する愛理を、冷たく嘲る客席の笑い。
「嗅ぐのは恥ずかしいみたいね❤︎なら、味はどうかしら?同じマゾの意見が聞きたいわね❤︎」
「嫌ァァァッ!!」
奈美の気まぐれな提案に、客席のM嬢がショーツを手に取る。
彼女はすぐさまショーツを口に含み、音を立ててしゃぶりだした。
ジュパッ❤︎ジュルッ❤︎チュパッ❤︎
「んはッ❤︎こ、コレ……すっごいヤラシー味……です……愛理さんの興奮……伝わってきて……本気汁……?」
愛理は即座に否定する。
「違うのッ!ホントに……やめて……」
もはや〝共有玩具〟と化した愛理は羞恥と屈辱で我を忘れて泣きじゃくる。
そんな愛理の唇に、奈美が再びキスをする。
チュッ❤︎チュパッ❤︎ムチュゥゥ……❤︎
「はァッ❤︎……感じてくれて嬉しいわ愛理❤︎今夜魅せた愛理は、正真正銘〝本気の愛理〟だったワケね❤︎」
「ぐすッ……奈美さぁん……いじわるぅぅ……❤︎」
8
「愛理……これで最後よ?一番ヤラしい姿、見せてみなさい❤︎」
奈美は先程ショーツを裂いたハサミで、今度は愛理のブラジャーを切ってゆく。
ジャキッ……ジャキッ
素早く引き抜かれたブラジャーの内側から、愛理の豊かで張りのある乳房が勢いよくまろび出た。
ぷるんッ❤︎
「おッ❤︎乳首ッ……やァッ❤︎」
愛理は思わず隠そうと身を悶えるが、麻縄で引き上げられた乳房は「見てくれ」とばかりにツンと上を向いている。
「素っ裸の愛理……恥も、弱さも、汚さも……すべてを曝け出してなお美しい最高の女よ❤︎」
「はァッ❤︎はァッ❤︎……私……」
衆目に露わとなった愛理の肉体のそのすべて……。
陶器のように白い肌を、朱色の荒縄が掴んで離さない。
まるで、熟れて食べ頃の瑞々しい〝果実〟のように、皆が舌舐めずりをして吊るされた愛理の肉体を仰ぎみる。
ジュパッ……❤︎
ツンと張った乳頭に、奈美が唾液いっぱいに舐めて舌先で弄ぶ。
「おォッ❤︎いいッ❤︎乳首ッ❤︎気持ちイイ……んァッ❤︎」
「ぷはァッ❤︎……愛理、最後の命令よ。乳首でイキなさい?」
9
奈美女王様、最後の命令。
自慢の美乳を縄で歪められ、無抵抗に舐られる愛理に、奈美が与えた最後の試練。
「へッ……?ちッ、乳首でぇッ?あンッ❤︎そ、そんなッ❤︎無理ィッ❤︎オマンコでッ❤︎お願いしますッ❤︎」
「マゾのくせに口答えできる立場かしら?もう一度言うわ。愛理、乳首だけでイクのよ」
宙に吊るした愛理の身体を、指先で撫でつける奈美。
心地良く、くすぐったいような感覚に、愛理は身を捩って抵抗する。
「あッ❤︎はァッ❤︎やァンッ❤︎あはッ❤︎おほォォォ気持ちいッ……❤︎」
奈美は悶える愛理の頭を手荒く掴まえると、耳に口元を近付けて吐息混じりに囁く。
「今の愛理は、どこを触ってもイケる全身性感帯よ。イキ方はあなたのカラダが知ってるわ。乳首だけに集中して……ほらッ❤︎」
10
ギュウッ❤︎
「んひィィィッ!?❤︎あッはァァァッ❤︎乳首ダメぇぇぇッ!!❤︎❤︎」
ギシッ……ギシッ……
奈美が愛理の両乳首を真下に向けて抓り上げると、愛理は快感に暴れ狂う。
「愛理イけッ❤︎乳首でイけッ❤︎みんなが見てるわッ❤︎あなたの最高にはしたないカラダッ❤︎魅せてやりなさいッ❤︎」
グリッ❤︎グリッ❤︎グリッ❤︎
「ひァァァァッ❤︎乳首そんなッ❤︎グリグリだめッ❤︎おっぱいダメになるッ❤︎❤︎」
「綺麗な自慢のおっぱいダメになっちゃうわねぇ?❤︎自慢のおっぱいが弱点になっちゃうッ❤︎悔しいわねぇ?❤︎恥ずかしいわねぇ?❤︎愛理ッ❤︎〝乳首でイキます〟と叫びなさいッ❤︎ほらッ!❤︎」
ギリギリギリギリィィィ……ッ
奈美は渾身の力で愛理の乳首を引っ張り上げる。
「んァァァァァァァァッ!?!?❤︎❤︎乳首ィィィィッ!?❤︎乳首取れちゃうゥゥゥゥゥッ❤︎私の乳首ッ❤︎死ぬゥゥゥゥッ❤︎❤︎❤︎」
責められる愛理が全身汗まみれなら、責める奈美も額に背中に、玉のような汗が浮かんで滴る。
(イクイクイクッ❤︎乳首でイクッ❤︎乳首でイクッ❤︎乳首でイクッ❤︎)
(イけイけイけッ❤︎乳首でイけッ❤︎乳首使いものにならないくらいッ❤︎ド派手にイッちゃえッ❤︎)
サドとマゾ。女同士の本気の狂宴。
だが遂に、乳首を徹底的に嬲られ続けた愛理の肉体に〝異変〟が起こる。
下腹部が熱くなり、吊るされた両脚に小刻みな痙攣が起こり始めた。
(えッ❤︎うそヤダヤダッ❤︎ホントッ❤︎ホントにッ❤︎ホントに乳首でイクッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎)
「やだ怖ッ……あ待ってッ!❤︎ホントにイクッ❤︎ウソウソウソッ❤︎ホントに乳首ッ❤︎乳首もうダメッ❤︎ホント乳首イクッ❤︎……お~~~ッ?❤︎ほォォォッ!?❤︎❤︎❤︎……ッッ……あ"ァ"ァ“─────ッ❤︎ちくびちくびちくびイグイグイグイグイグッ❤︎愛理ッ❤︎マゾ愛理ッ❤︎乳首でイ"キ"ま"す"ゥ"────ッ❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」
プシャッ❤︎プシャァァァ……❤︎❤︎❤︎
「あッ!❤︎スッゴいッ❤︎ホントに乳首でイッたわッ!❤︎こんな……本当にステキよ、愛理ッ!❤︎❤︎❤︎」
縄で宙に吊るされたままの愛理は、ヒクヒクと痙攣しながら潮を吹く。
オォォォ……!!
その姿に、今まで固唾を飲んで見守っていた客席からも響めきが起こる。
そのクライマックスに合わせるように、BGMのピアノ独奏曲も終焉を迎え、ここに2人の女の〝物語〟は幕を閉じた──。
11
吊るされた愛理が、ゆっくりと降ろされる。
左脚から床に着地したが、体重を支えきれぬままにぺシャリと横向けに倒れ込んでしまった。
「はァッ❤︎はァッ❤︎……あァ……❤︎」
「愛理……ありがとう、最高の舞台だったわ❤︎」
奈美はすかさず愛理の身体を抱き起こし、手早く緊縛の縄を解いてやる。
愛理の肌には、生々しい荒縄の喰い込みが、全身に跡として残っていた。
「痺れとかない?具合は大丈夫?」
奈美は仕切りに愛理の体調を気遣う。
SMプレイ、中でも緊縛というのは、実際それだけ危険が付き物の行為なのだろう。
「あァッ❤︎うんッ❤︎大丈夫……なんかッ……まだふわふわしてるけど……あンッ❤︎」
絶頂の深い深い余韻……SEXとはまた異なる、長く難解な迷路を抜け出したような達成感と解放感。
奈美と愛理は見つめ合い、どちらともなくキスを交えると、互いの身体を強く抱きしめ合った。
「奈美さん……私、やってよかったです……こんな気持ち……今でも夢みたい……」
「私もよ、愛理……信じられないくらい……期待以上のパフォーマンス……今までで最高のショーだったわ……間違いなくね❤︎」
愛理は溢れ出る涙で頬を濡らしながら、奈美の胸に抱かれてゆっくりと立ち上がる。
奈美と愛理が客席へ向け一礼すると、客席からは万雷の拍手が送られ、それは2人がステージを降りた後も鳴り止むことはなかった。
12
深夜1時。SMバー「Sodom」閉店。
スタッフ、キャストが閉店作業をする中で、愛理は一番端のテーブル席のソファに座り、先程まで自分が立っていたステージをぼんやりと眺めていた。
(なんだか今でも夢の中にいるみたい。SMが、こんな充実感を与えてくれるものだなんて……)
「愛理さーん、お待たせしましたー♪」
先程と同じボンデージ衣装の上から白いバスローブを羽織った姿の奈美が、笑顔で愛理の隣に座る。
「やっぱり初めて本格的なSMを体験した感想、愛理さんに聞いてみたくて。こんな時間まで待ってもらっちゃって、ごめんなさいね」
「大丈夫です!私も……奈美さんとお話したかった。この興奮が冷めやらないうちに、ね」
愛理がそう話すと、奈美は目を細めて笑った。
「なんだか奈美さん、ステージでは別人みたいでした。本当に女王様の貫禄と気品があって……カッコいいな、って」
「ふふっ、それよく言われます!〝憑依してる〟って。私としては普段通りですけど」
「えっ……じゃあ、本当の奈美さんって……」
「さぁー、どっちでしょう?それは、愛理さんのご想像にお任せします❤︎」
悪戯っぽく微笑んだ唇に人差し指を当て、はにかむ奈美。
「でも……ひとつ確かなのは、私も愛理さんのおかげで最高のパフォーマンスができた、ってことですね!」
「私のおかげ?」
「愛理さんが本心から私を信じてくれたから、ですよ!」
「あっ……」
13
今宵、このステージに立つ前の不安と緊張、そして恐怖……。
奈美の言葉に、愛理はその意味を理解した。
「……私、緊縛が怖いとか、ちゃんとショーを演じられるかとか、そんな事を恐れていたワケじゃなかった。演技なんて自信ないし、今日私がステージで見せたのは〝むきだしの私〟そのものだった」
「……うん」
奈美は、愛理が確かめる様に紡ぐ一言一句に耳を傾け、小さく頷く。
「私が怖かったのは、むしろ逆。ショーの雰囲気に呑まれて、私自身そのものを隠してしまう事だったのかも……」
El Doradoという舞台で華を咲かせた愛理の才能。
相手と対峙し、がむしゃらに自らを奮い立たせて駆け抜ける〝真剣勝負〟の世界。
そこに演技やまやかしなどの入る余地は無い。
愛理は無自覚にEl Doradoと比較して、「ショーとしてのSM」を侮っていたのだと気付いた。
「初めてのSMショー……どんな娘でも、羞恥や恐怖は必ずあります。それを取り除いて〝欲望の深淵〟へと導いてあげるのが、私たちmistressの仕事ですから❤︎」
「はい、SMの奥深さ……私自身に眠る〝未知の悦び〟……見事に、奈美女王様に魅せられてしまいました……❤︎」
〝丸裸の愛理〟は今宵、自らの手で新たなる扉を開いてみせた。
14
「愛理!」
不意に、背後から呼びかけられて振り返る愛理。
その聞き慣れた声の主に、愛理は驚いて思わず声をあげる。
「え、恭子!?来てたの!?」
「当たり前じゃん、私が頼んだ事だし?愛理ちゃんのお仕事っぷりを見てあげないとね」
恭子は飄々とした口振りで、愛理の隣に腰を下ろす。
「ならはじめに言ってよ!……あんな恥ずかしい姿見られて……」
「だって観に行くって言ったら愛理、私のこと意識しちゃうでしょ?」
「それは……」
愛理は不服ながらも返す言葉に窮し、悔しげに唇を尖らせた。
ふと、恭子が真顔になって愛理の目を見つめながら呟く。
「愛理、本当に素敵だったよ。私が観たショーの中でも一番。妖しげで、儚げで、何よりとても美しくて……」
「ぅ……何よそんな……」
いきなり真面目なトーンで恭子に褒めそやされ、愛理はどこかむず痒くも、胸が大きく高鳴るのを感じていた。
「やっぱり恭子さんもですよね!私も言ったんです!今まで経験した中で最高のショーになったよ、って!」
そんな愛理の心境を知ってか知らずか、奈美も無邪気に恭子の言葉に同意して小さく拍手をする。
愛理は途端に顔の火照りを感じて、両手で扇いだ。
「あ~……なんか急に恥ずかしくなってきたわ!お客さんの前であんなに泣きじゃくって……」
「そう?可愛かったよねー?」
「ねー!」
「もうっ!2人してからかって!」
恭子と奈美は見合いながらケラケラと笑い、愛理も呆れたようにつられて笑った。
「とにかく、大成功に終わって良かったよ。また次回もあるんじゃない?」
「そうですね、是非!あと、ふふ……愛理さん……」
「え?あっ……」
突然、奈美が愛理に擦り寄ると、愛理の左手を握って自らの股間へと導く。
(うッ!硬ぁ……❤︎)
エナメルのショーツの下に、確かな芯の硬さを感じる突起が脈打って、愛理の手のひらに伝わる。
「言ってませんでしたけど私……コッチもあるんで……次回は〝SEXショー〟なんかも……ね?❤︎」
耳打ちする奈美の吐息の甘さに、愛理は思わず身震いする。
「は、はいッ……是非……❤︎」
戸惑いながらも唾を飲み込み、コクリと頷く愛理。
「愛理、El Doradoですっかりチンポ慣れしてるからね~。今は色んな娘の、味見したくてしょうがないんだよねー?」
「ちょっ!?そんな……変なこと言わないでよッ!」
揶揄う恭子を一喝する愛理だが、期待に疼くカラダは正直だ。
(次回の楽しみが増えたわね……❤︎)
眠らぬ都心の路地裏に、女3人の笑い声はいつまでも響いていた──。
愛理の初ステージが幕を開ける。
幻想的なピアノ曲が流れる中、ステージには真っ赤な十字架を背負う愛理の姿があった。
だが、そこに観客の歓声や囃し立てるような言葉はない。
ただ皆が一心に、ステージの上の成り行きを見守るだけだった。
(何……?始まってる……?)
視界を奪われた愛理には、観客の様子はまだ分からない。
だが、暗闇の中で研ぎ澄まされた感覚が、無数の女たちの視線を痛いほどに感じ取っていた。
(やァァ……見られてるッ……こんな姿ァ……)
まるで品定めされる奴隷のように、好色な女たちの射るような視線に視姦され続ける愛理の美しい肢体。
それはまるで心さえ見透かされているようで、赤の他人に自らの恥部すべてを曝け出してしまっているかのような錯覚に陥る。
「んふッ……んゥゥン……!」
(奈美さんッ!早く来て……!)
この羞恥の水底で掴まれる唯一の救いが、今宵自らを辱めるサディストの名前とは……。
コツッ……コツッ……
ヒールの音が高らかに響く。
肌の熱さと、吐息の匂い。
(なッ……奈美さん……)
「んッ……んゥゥッ!」
愛理は顔を左右に振って、奈美の存在を探してしまう。
見えるはずもない視覚に頼ろうとしてしまう、人間としての本能。
だが奈美はそんな愛理の必死な振る舞いを嘲笑うように、十字架の周りをゆっくりと周回する。
コツッ……コツッ……
「ふふッ、私を探しているの?愛理……」
「うゥ……ッ!」
腹にズシリと響く、低く鋭い声。
(本当に奈美さん……よね?)
「アハッ、愚かな娘……まるで親の乳を探し求める、産まれたての仔豚のようね」
先程までの柔らかな姿勢とはまるで違う、他者を侮蔑する高慢で尊大な口振り。
女としての自分に絶対的な自信を抱く、まさに〝女帝〟の振る舞いだ。
2
近付いては遠ざかる、奈美の肉体のその輪郭。
そうしている間にも、愛理の全身に観客の視線が突き刺さる。
恐怖で膝が笑い、肌は脂汗で輝く。
ボールギャグを咬まされた口元からは涎がダラダラと糸を引き、豊かな胸元の谷間へと滑って落ちる。
「くゥンッ……うゥッ!」
(お願いッ!見ないで……こんな恥ずかしい姿……!)
何もされぬまま、自らの弱さが生み出す不安と恐怖のみで気が狂れそうになる愛理。
不意に、首輪の鎖を力任せに引っ張られる。
「ぐゥッ!?」
「愛理……可愛い娘ね。その顔も身体も、心さえも繋ぎ止めてやりたいわ❤︎」
鼻と鼻が触れる距離に、奈美の顔がある。
「んむゥッ……❤︎」
無意識に、愛理が顔を近付ける。
だが、奈美は愛理の頬を手で押さえてそれを拒絶する。
「何を甘えてるの?おあずけよ」
「うッ……」
自由と尊厳を奪われてなお、この期に及んで女王様に愛をねだってしまう愚かな奴隷……。
羞恥と惨めさに、愛理の顔が紅潮する。
「さぁ、お洒落しましょうか?私の可愛い愛理❤︎」
そう言うと奈美は首輪に手を掛けて鎖を外す。
3
カチンッ……ジャラ……
錠が開かれ、鎖が解かれる。
「うッ……おぅ……」
放心になった愛理は、その場にへたり込んでしまう。
だが、束の間の解放はすぐさま終わりを告げる。
背後から乳房をグイッと持ち上げられ、両腕を後ろに折り畳まれる。
そこからの奈美の動きは、まさしく〝神速〟とも呼べる職人技であった。
真っ赤な麻縄を愛理の首、乳房、股間を通して背後に回すと、腰の辺りで手首を固定する。
息もつかさぬ早業で、愛理の上半身は自由を奪われた。
(こッ、これ……まったく動けない……!?)
親指すら固定され、手を握ることさえままならない。
もがけばもがく程、麻縄は愛理の柔らかな肌に深く食い込んで、ますます肉体の自由は狭まってゆく。
「ボーッとしないのよ?立ちなさい、愛理」
ピシャッ!
「ひゥッ!?」
平手で太ももを叩かれ、愛理は反射的に立ち上がる。
「そう、いい子……皆様にご挨拶よ。歩きなさい」
(あ、歩く……?)
奈美の命令に愛理は戸惑いながらも、一歩、一歩、ゆっくりと前に歩き出す。
ヒタッ……ヒタッ……
(何……何があるの……?)
何も見えない闇の中を、奈美にコントロールされながら裸足でヨチヨチと歩く愛理。
あまりの心細さに何度も立ち止まりそうになるが、その度に奈美は愛理の尻を叩く。
「歩きなさい。聞こえなかった?」
ピシャッ!
「うゥッ……くゥゥ……」
10歩ほど歩んだ先で、奈美が愛理の背中を抱きかかえる。
「さぁ愛理、しゃがみなさい。お客様にご挨拶❤︎」
4
奈美がそう言った瞬間、愛理は眩しい光に包まれる。
「あッ!?ひィ……」
咄嗟に顔を背ける愛理だが、奈美は愛理の髪を無理矢理に掴んで、再び正面を向かせた。
「愛理の可愛いお顔、心ゆくまで見てあげてちょうだい❤︎」
アイマスクを剥ぎ取られた愛理の眼前に、無数の視線が注がれていた。
客だけではない。キャストの女王様、M嬢、果てはカクテルカウンターのスタッフまで、この空間にいるすべての女の視線は今、愛理ひとりの顔を見つめていた。
(あ……私……見られてる……こんな無様ではしたない姿……みんなに全部見られちゃってる……)
好奇の目、情欲の目、侮蔑の目……。
愛理は直感的に、自分こそが今この空間で間違いなく〝最も惨めで卑猥な女〟だと悟った。
「おッ……おぐッ……ぷふゥゥ……」
悲壮の嗚咽を漏らそうにも、ボールギャグの呼吸穴から粘ついた涎が泡となって吹き飛ぶのみだった。
「必死に何か言ってるわねぇ?自己紹介したいのかしら?偉いわ愛理❤︎」
奈美は愛理の顎にダラダラと糸を引く涎を手のひらで掬うと、それを愛理の顔面に塗りたくった。
「ん"ン“ーーッ!?」
「自慢の可愛いお顔がヨダレでテカテカ❤︎似合ってるわよマゾ愛理❤︎」
何度も、何度も、汚されてゆく……。
誰にも愛されない、無様で醜いマゾの顔。
5
キュッポン❤︎
散々に弄ばれたあと、ボールギャグが外された。
「ぷはッ、はァッ、はァッ、はァッ……」
「愛理、自分の言葉で自己紹介しなさい」
奈美に顎と額を掴まれ、強制的に客に顔を向けさせられる。
(見ないで……こんな汚い私を……)
愛理は、震える声を必死に絞り出す。
「み、皆様、初めまして……今夜……奈美女王様に可愛がって頂く……あ、愛理です……淫乱な私の本性……是非……ご覧下さい……」
「はい、よく言えました❤︎ご褒美をあげるわ❤︎」
奈美は手に持つボールギャグを客席に目掛けて放り投げると、愛理を抱擁して頭を撫でつつ、愛理の口に舌をねじ込んだ。
ジュルッ❤︎チュパッ❤︎ズルル……❤︎
(あッ……❤︎キス……好きィ……❤︎)
耐え難い孤独と羞恥の最中、初めて女王様から与えられる甘美な愛……。
涎まみれ、汗まみれの愛理の身体を、奈美は躊躇なく抱き締めて官能的な接吻を愛理に授ける。
その時、ふと愛理の瞳から大粒の涙が溢れた。
(ウソ……なんで……なんでこんなに嬉しいの……?)
ポロポロと零れ落ちる涙の理由も分からぬまま、愛理は奈美の胸に顔をうずめた。
奈美は愛理の身体を痛いくらいに強く抱き締めて、耳元で小さく囁いた。
「愛理、頑張ったわね……素敵……誰よりも美しいわ……離したくないくらいに……」
6
ギシッ……ギシッ……
愛理と奈美、2人による〝20分の物語〟はクライマックスへと突入する。
右脚の膝に麻縄を掛けられ、愛理がゆっくりと吊るされてゆく。
「あッ……くぅ……あッ、あッ……」
軸足となっていた左のつま先が床から離れ、遂に愛理は全身を縄で飾られた〝卑猥なオブジェ〟と化してしまう。
(おぉ……喰い込む……ッ)
小柄な愛理といえど、全体重が負荷となれば縄の喰い込みもかなりのものだ。
「痛くはない?ふふッ、目がトロンとしてるわよ。気に入ったみたいね❤︎」
「んんッ❤︎……そんな……❤︎」
だらしない顔の惚けを奈美に指摘された愛理は、恥ずかしそうに口を強く結んで首を横に振る。
だが、愛理の意思とは裏腹に、縄が肌に喰い込むたびに、肉体の奥底がジンジンと熱を帯びてゆく感覚を愛理自身も感じていた。
(縛られて……どうしてこんな気持ちイイのよ……ッ❤︎)
思考がモザイクを施したようにぼやけ、息はどんどん荒くなる。
妖しげな赤色のスポットライトに愛理の身体は余す所なく照らし出され、この美しい鑑賞品の一点に女たちの目が注がれていた。
吊るす位置が高くなるにつれ、右脚と左脚の距離は遠くなる。
愛理の肉体が完全に宙に浮いた時、愛理の〝秘所〟はぱっくりと客席に向けられていた。
「あッ❤︎イヤッ……❤︎あハァ……❤︎」
恥ずかしさに漏らす吐息も、先程までの不安や恐怖の色は無い。
ただ今は全身で、この倒錯的な世界を愉しむ〝目覚めたオンナ〟の姿があるだけだ。
7
不意に奈美が、愛理の股間を撫でつける。
「ひゃうッ!?❤︎やぁぁ……❤︎」
「愛理、パンツがぐっしょりじゃない?汗のせいかしら?それとも……❤︎」
奈美はストッキングの裾からハサミを抜き出すと、愛理のパンツに刃を立てる。
「あッ❤︎ダメぇぇッ❤︎」
ジョキッ、ジョキッ……
シースルーな薄地のショーツはいとも簡単に切り裂かれ、愛理は秘所の護りを失う。
ツルツルに輝く陰唇には愛液がベットリと付着し、言い逃れ無用のピンチが愛理に訪れる。
「愛理、虐められて興奮していたのかしら?それとも、お姉サマ方に見られてオマンコを濡らしてしまう変態なの?」
「うゥ……ちが……❤︎」
愛理は耳まで紅潮しながら、力無く首を横に振る。
「何が違うのかしら?お客様に確かめてもらおうかな?ふふッ……それッ!」
奈美は手にした愛理のショーツを客席に向けて投げつける。
「やッ……ダメぇッ!!」
奈美の行為に愛理は驚いて身体を揺るが、緊縛された肉体は当然宙でプラプラと情けなく揺れるだけだ。
最前席にいた客が、それを空中でキャッチすると、なんの躊躇いもなく鼻に近付けて大きく息を吸う。
「スゥー……はァッ❤︎臭ッさ❤︎ありえないくらい濃厚なメス臭❤︎とんでもないマゾね、愛理❤︎」
客は次々にショーツを回して、愛理に〝マゾ〟の烙印を押してゆく。
「すっごい匂い❤︎このオマンコフェロモンで一体、何人の女をたぶらかしてきたのかしらね❤︎」
「天然レズビッチのメス臭ね❤︎こんなエロ臭プンプンで街歩いてたら、ソッコーでハメてやるわよマゾ愛理❤︎」
「やめてッ……お願い嗅がないでェェ……」
涙を浮かべて懇願する愛理を、冷たく嘲る客席の笑い。
「嗅ぐのは恥ずかしいみたいね❤︎なら、味はどうかしら?同じマゾの意見が聞きたいわね❤︎」
「嫌ァァァッ!!」
奈美の気まぐれな提案に、客席のM嬢がショーツを手に取る。
彼女はすぐさまショーツを口に含み、音を立ててしゃぶりだした。
ジュパッ❤︎ジュルッ❤︎チュパッ❤︎
「んはッ❤︎こ、コレ……すっごいヤラシー味……です……愛理さんの興奮……伝わってきて……本気汁……?」
愛理は即座に否定する。
「違うのッ!ホントに……やめて……」
もはや〝共有玩具〟と化した愛理は羞恥と屈辱で我を忘れて泣きじゃくる。
そんな愛理の唇に、奈美が再びキスをする。
チュッ❤︎チュパッ❤︎ムチュゥゥ……❤︎
「はァッ❤︎……感じてくれて嬉しいわ愛理❤︎今夜魅せた愛理は、正真正銘〝本気の愛理〟だったワケね❤︎」
「ぐすッ……奈美さぁん……いじわるぅぅ……❤︎」
8
「愛理……これで最後よ?一番ヤラしい姿、見せてみなさい❤︎」
奈美は先程ショーツを裂いたハサミで、今度は愛理のブラジャーを切ってゆく。
ジャキッ……ジャキッ
素早く引き抜かれたブラジャーの内側から、愛理の豊かで張りのある乳房が勢いよくまろび出た。
ぷるんッ❤︎
「おッ❤︎乳首ッ……やァッ❤︎」
愛理は思わず隠そうと身を悶えるが、麻縄で引き上げられた乳房は「見てくれ」とばかりにツンと上を向いている。
「素っ裸の愛理……恥も、弱さも、汚さも……すべてを曝け出してなお美しい最高の女よ❤︎」
「はァッ❤︎はァッ❤︎……私……」
衆目に露わとなった愛理の肉体のそのすべて……。
陶器のように白い肌を、朱色の荒縄が掴んで離さない。
まるで、熟れて食べ頃の瑞々しい〝果実〟のように、皆が舌舐めずりをして吊るされた愛理の肉体を仰ぎみる。
ジュパッ……❤︎
ツンと張った乳頭に、奈美が唾液いっぱいに舐めて舌先で弄ぶ。
「おォッ❤︎いいッ❤︎乳首ッ❤︎気持ちイイ……んァッ❤︎」
「ぷはァッ❤︎……愛理、最後の命令よ。乳首でイキなさい?」
9
奈美女王様、最後の命令。
自慢の美乳を縄で歪められ、無抵抗に舐られる愛理に、奈美が与えた最後の試練。
「へッ……?ちッ、乳首でぇッ?あンッ❤︎そ、そんなッ❤︎無理ィッ❤︎オマンコでッ❤︎お願いしますッ❤︎」
「マゾのくせに口答えできる立場かしら?もう一度言うわ。愛理、乳首だけでイクのよ」
宙に吊るした愛理の身体を、指先で撫でつける奈美。
心地良く、くすぐったいような感覚に、愛理は身を捩って抵抗する。
「あッ❤︎はァッ❤︎やァンッ❤︎あはッ❤︎おほォォォ気持ちいッ……❤︎」
奈美は悶える愛理の頭を手荒く掴まえると、耳に口元を近付けて吐息混じりに囁く。
「今の愛理は、どこを触ってもイケる全身性感帯よ。イキ方はあなたのカラダが知ってるわ。乳首だけに集中して……ほらッ❤︎」
10
ギュウッ❤︎
「んひィィィッ!?❤︎あッはァァァッ❤︎乳首ダメぇぇぇッ!!❤︎❤︎」
ギシッ……ギシッ……
奈美が愛理の両乳首を真下に向けて抓り上げると、愛理は快感に暴れ狂う。
「愛理イけッ❤︎乳首でイけッ❤︎みんなが見てるわッ❤︎あなたの最高にはしたないカラダッ❤︎魅せてやりなさいッ❤︎」
グリッ❤︎グリッ❤︎グリッ❤︎
「ひァァァァッ❤︎乳首そんなッ❤︎グリグリだめッ❤︎おっぱいダメになるッ❤︎❤︎」
「綺麗な自慢のおっぱいダメになっちゃうわねぇ?❤︎自慢のおっぱいが弱点になっちゃうッ❤︎悔しいわねぇ?❤︎恥ずかしいわねぇ?❤︎愛理ッ❤︎〝乳首でイキます〟と叫びなさいッ❤︎ほらッ!❤︎」
ギリギリギリギリィィィ……ッ
奈美は渾身の力で愛理の乳首を引っ張り上げる。
「んァァァァァァァァッ!?!?❤︎❤︎乳首ィィィィッ!?❤︎乳首取れちゃうゥゥゥゥゥッ❤︎私の乳首ッ❤︎死ぬゥゥゥゥッ❤︎❤︎❤︎」
責められる愛理が全身汗まみれなら、責める奈美も額に背中に、玉のような汗が浮かんで滴る。
(イクイクイクッ❤︎乳首でイクッ❤︎乳首でイクッ❤︎乳首でイクッ❤︎)
(イけイけイけッ❤︎乳首でイけッ❤︎乳首使いものにならないくらいッ❤︎ド派手にイッちゃえッ❤︎)
サドとマゾ。女同士の本気の狂宴。
だが遂に、乳首を徹底的に嬲られ続けた愛理の肉体に〝異変〟が起こる。
下腹部が熱くなり、吊るされた両脚に小刻みな痙攣が起こり始めた。
(えッ❤︎うそヤダヤダッ❤︎ホントッ❤︎ホントにッ❤︎ホントに乳首でイクッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎)
「やだ怖ッ……あ待ってッ!❤︎ホントにイクッ❤︎ウソウソウソッ❤︎ホントに乳首ッ❤︎乳首もうダメッ❤︎ホント乳首イクッ❤︎……お~~~ッ?❤︎ほォォォッ!?❤︎❤︎❤︎……ッッ……あ"ァ"ァ“─────ッ❤︎ちくびちくびちくびイグイグイグイグイグッ❤︎愛理ッ❤︎マゾ愛理ッ❤︎乳首でイ"キ"ま"す"ゥ"────ッ❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」
プシャッ❤︎プシャァァァ……❤︎❤︎❤︎
「あッ!❤︎スッゴいッ❤︎ホントに乳首でイッたわッ!❤︎こんな……本当にステキよ、愛理ッ!❤︎❤︎❤︎」
縄で宙に吊るされたままの愛理は、ヒクヒクと痙攣しながら潮を吹く。
オォォォ……!!
その姿に、今まで固唾を飲んで見守っていた客席からも響めきが起こる。
そのクライマックスに合わせるように、BGMのピアノ独奏曲も終焉を迎え、ここに2人の女の〝物語〟は幕を閉じた──。
11
吊るされた愛理が、ゆっくりと降ろされる。
左脚から床に着地したが、体重を支えきれぬままにぺシャリと横向けに倒れ込んでしまった。
「はァッ❤︎はァッ❤︎……あァ……❤︎」
「愛理……ありがとう、最高の舞台だったわ❤︎」
奈美はすかさず愛理の身体を抱き起こし、手早く緊縛の縄を解いてやる。
愛理の肌には、生々しい荒縄の喰い込みが、全身に跡として残っていた。
「痺れとかない?具合は大丈夫?」
奈美は仕切りに愛理の体調を気遣う。
SMプレイ、中でも緊縛というのは、実際それだけ危険が付き物の行為なのだろう。
「あァッ❤︎うんッ❤︎大丈夫……なんかッ……まだふわふわしてるけど……あンッ❤︎」
絶頂の深い深い余韻……SEXとはまた異なる、長く難解な迷路を抜け出したような達成感と解放感。
奈美と愛理は見つめ合い、どちらともなくキスを交えると、互いの身体を強く抱きしめ合った。
「奈美さん……私、やってよかったです……こんな気持ち……今でも夢みたい……」
「私もよ、愛理……信じられないくらい……期待以上のパフォーマンス……今までで最高のショーだったわ……間違いなくね❤︎」
愛理は溢れ出る涙で頬を濡らしながら、奈美の胸に抱かれてゆっくりと立ち上がる。
奈美と愛理が客席へ向け一礼すると、客席からは万雷の拍手が送られ、それは2人がステージを降りた後も鳴り止むことはなかった。
12
深夜1時。SMバー「Sodom」閉店。
スタッフ、キャストが閉店作業をする中で、愛理は一番端のテーブル席のソファに座り、先程まで自分が立っていたステージをぼんやりと眺めていた。
(なんだか今でも夢の中にいるみたい。SMが、こんな充実感を与えてくれるものだなんて……)
「愛理さーん、お待たせしましたー♪」
先程と同じボンデージ衣装の上から白いバスローブを羽織った姿の奈美が、笑顔で愛理の隣に座る。
「やっぱり初めて本格的なSMを体験した感想、愛理さんに聞いてみたくて。こんな時間まで待ってもらっちゃって、ごめんなさいね」
「大丈夫です!私も……奈美さんとお話したかった。この興奮が冷めやらないうちに、ね」
愛理がそう話すと、奈美は目を細めて笑った。
「なんだか奈美さん、ステージでは別人みたいでした。本当に女王様の貫禄と気品があって……カッコいいな、って」
「ふふっ、それよく言われます!〝憑依してる〟って。私としては普段通りですけど」
「えっ……じゃあ、本当の奈美さんって……」
「さぁー、どっちでしょう?それは、愛理さんのご想像にお任せします❤︎」
悪戯っぽく微笑んだ唇に人差し指を当て、はにかむ奈美。
「でも……ひとつ確かなのは、私も愛理さんのおかげで最高のパフォーマンスができた、ってことですね!」
「私のおかげ?」
「愛理さんが本心から私を信じてくれたから、ですよ!」
「あっ……」
13
今宵、このステージに立つ前の不安と緊張、そして恐怖……。
奈美の言葉に、愛理はその意味を理解した。
「……私、緊縛が怖いとか、ちゃんとショーを演じられるかとか、そんな事を恐れていたワケじゃなかった。演技なんて自信ないし、今日私がステージで見せたのは〝むきだしの私〟そのものだった」
「……うん」
奈美は、愛理が確かめる様に紡ぐ一言一句に耳を傾け、小さく頷く。
「私が怖かったのは、むしろ逆。ショーの雰囲気に呑まれて、私自身そのものを隠してしまう事だったのかも……」
El Doradoという舞台で華を咲かせた愛理の才能。
相手と対峙し、がむしゃらに自らを奮い立たせて駆け抜ける〝真剣勝負〟の世界。
そこに演技やまやかしなどの入る余地は無い。
愛理は無自覚にEl Doradoと比較して、「ショーとしてのSM」を侮っていたのだと気付いた。
「初めてのSMショー……どんな娘でも、羞恥や恐怖は必ずあります。それを取り除いて〝欲望の深淵〟へと導いてあげるのが、私たちmistressの仕事ですから❤︎」
「はい、SMの奥深さ……私自身に眠る〝未知の悦び〟……見事に、奈美女王様に魅せられてしまいました……❤︎」
〝丸裸の愛理〟は今宵、自らの手で新たなる扉を開いてみせた。
14
「愛理!」
不意に、背後から呼びかけられて振り返る愛理。
その聞き慣れた声の主に、愛理は驚いて思わず声をあげる。
「え、恭子!?来てたの!?」
「当たり前じゃん、私が頼んだ事だし?愛理ちゃんのお仕事っぷりを見てあげないとね」
恭子は飄々とした口振りで、愛理の隣に腰を下ろす。
「ならはじめに言ってよ!……あんな恥ずかしい姿見られて……」
「だって観に行くって言ったら愛理、私のこと意識しちゃうでしょ?」
「それは……」
愛理は不服ながらも返す言葉に窮し、悔しげに唇を尖らせた。
ふと、恭子が真顔になって愛理の目を見つめながら呟く。
「愛理、本当に素敵だったよ。私が観たショーの中でも一番。妖しげで、儚げで、何よりとても美しくて……」
「ぅ……何よそんな……」
いきなり真面目なトーンで恭子に褒めそやされ、愛理はどこかむず痒くも、胸が大きく高鳴るのを感じていた。
「やっぱり恭子さんもですよね!私も言ったんです!今まで経験した中で最高のショーになったよ、って!」
そんな愛理の心境を知ってか知らずか、奈美も無邪気に恭子の言葉に同意して小さく拍手をする。
愛理は途端に顔の火照りを感じて、両手で扇いだ。
「あ~……なんか急に恥ずかしくなってきたわ!お客さんの前であんなに泣きじゃくって……」
「そう?可愛かったよねー?」
「ねー!」
「もうっ!2人してからかって!」
恭子と奈美は見合いながらケラケラと笑い、愛理も呆れたようにつられて笑った。
「とにかく、大成功に終わって良かったよ。また次回もあるんじゃない?」
「そうですね、是非!あと、ふふ……愛理さん……」
「え?あっ……」
突然、奈美が愛理に擦り寄ると、愛理の左手を握って自らの股間へと導く。
(うッ!硬ぁ……❤︎)
エナメルのショーツの下に、確かな芯の硬さを感じる突起が脈打って、愛理の手のひらに伝わる。
「言ってませんでしたけど私……コッチもあるんで……次回は〝SEXショー〟なんかも……ね?❤︎」
耳打ちする奈美の吐息の甘さに、愛理は思わず身震いする。
「は、はいッ……是非……❤︎」
戸惑いながらも唾を飲み込み、コクリと頷く愛理。
「愛理、El Doradoですっかりチンポ慣れしてるからね~。今は色んな娘の、味見したくてしょうがないんだよねー?」
「ちょっ!?そんな……変なこと言わないでよッ!」
揶揄う恭子を一喝する愛理だが、期待に疼くカラダは正直だ。
(次回の楽しみが増えたわね……❤︎)
眠らぬ都心の路地裏に、女3人の笑い声はいつまでも響いていた──。
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