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7.檻に眠る愛奴(ペット)

許さない!

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 金曜日。煌びやかな週末の夜。

 繁華街の路地裏に立つビルの地下、ハプニング・バー「DEEP LOVERディープラヴァー」は夜更け毎に盛況な人入りを見せていた。

 ブース内はムンムンとせ返るような〝オンナの匂い〟が立ち込め、今宵も色欲の解放を目的とした倒錯的な催しが開かれている。

 舞台で踊る妖艶なダンサー、フロアを行き交う刺激的なコスチュームのスタッフ。

 そして身体を寄せ合い愛を語り、奥の〝逢引き部屋〟へと消えてゆく、互いの名前さえ知らない女たち……。

 普段と変わらぬ光景、変わらぬ熱気。

 だが、彼女たちはまだ知らない。

 今宵、この舞台で壮絶なる〝女の情念〟が、燃え盛る炎となって激突することを……。



 愛理が〝保護〟された翌日のこと。

 プルル……

 恭子のスマホに掛かってきた相手は、腐れ縁の同業者だった。

 「もしもし夏樹!昨日は……」

 「あー、あのさ、恭子って金曜のDEEP LOVERディープラヴァー来てるんだっけ?」

 昨日のに感謝を伝えようとした矢先、意外な言葉で機先を制された。

 電話越しの不躾ぶしつけな質問は、夏樹のいつもの事だ。

 「え?うん、スタッフやってるよ。今El Doradoエルドラードのシーズン中だしね。なんで?」

 恭子は慣れた様子で夏樹の問い掛けに返事をする。
 だが返ってきた夏樹の言葉に、恭子は思わず叫んだ。

 「アタシさー、今週のEl Doradoで愛理とヤるから!史織さんも了承済み!」

 「はぁ!?えっ、何それ!?」

 恭子は何も聞かされていない。夏樹が参加することも、その相手が愛理だということも。

 (史織さん、わざと伝えてないな……!)

 心の中で憤る恭子だが、まだ名ばかりでその活動が名実相伴わないことは認めざるを得ない。

 このバーの支配人である史織の影響が未だ色濃いEl Doradoの舞台で、これからは愛理と二人三脚、ゼロからともに歩んでいかなければならないのだ。

 「……で、恭子にお願い何だけどさぁ」

 「えぇ……?」

 夏樹のお願いがろくなものであった試しがない。

 いぶかしがる恭子だったが、受話器の向こうの夏樹の声はいつになく真面目な様子だった。

 「最前列で私の戦いを観てて。アンタが〝天才〟だって言った愛理と、アタシの本気、どっちがスゴイかその目で見ててよ」



 恭子は夏樹の声から、並々ならぬ〝覚悟〟を汲み取った。

 負けん気や闘争心はもとから強い夏樹だが、それにも増して熱く、そして深い、悲愴感すら漂わせる声。

 まるで決闘に赴く戦士のような。

 「……夏樹、何かあった?」

 恭子は思わず問い掛ける。
 普段と異なる夏樹の様子に、不穏な空気を感じた。

 「へ?何もないけど?ナンパ師夏樹の超絶エロテクをお披露目するんだから、特等席で見てってよ♪」

 だが返ってきたのは、普段の夏樹と変わらない冗談めかした一言だった。

 「あはっ……分かった、楽しみにしてる」

 恭子は夏樹にねぎらいの言葉をかけると、通話を終えた。

 「夏樹……」

 (言うべきだったかな。今の私、「愛理の教育係」って……)



 今宵もEl Doradoエルドラードの舞台では、女同士の白熱のせめぎ合いが行われていた。

 女たちによる〝オンナのプライド〟を懸けた真剣勝負に、会場であるパプニングバー〝DEEP LOVERディープラヴァー〟は大いに賑わいを見せる。

 だが、今宵はいつもと様子が違う。

 盛り上がっている事は確かだが、フロアの〝空気〟はどこか張り詰めた緊張感に満ちていた。

 「愛理、今日勝てば3連勝でグループ昇格かぁ」

 薄暗いテーブル席に溶け込むように座る、肌もドレスも黒い女。

 暗闇に目立つのはその明るい金髪と、分厚い唇から微かに溢れる白い歯だ。

 「デビューから注目されてたけど、前回のハルミとのバトルで完全にEl Doradoエルドラードの看板になったもんね~❤︎」

 「侑菜も愛理さんの試合観てた?ヤバイよね!やっぱりマジのだよ!」

 侑菜は今宵のである女の腰に手を回しながらグラスを一気に傾ける。
 
 「そ。実はさ、偉いヒトに言われて試合前にちょーっとだけイタズラしたの!媚薬……ってヤツ?」

 「え~?それヤバくない?」

 「でも全然意味なかった!愛理、元からドスケベなんだもん!パワーアップしただけ!」

 「アハハハッ!ウケるッ!」

 女は大口を開け、手を叩いて笑う。

 侑菜も一緒になり笑うが、ふと真顔になると、女たちが激しく戦うステージを見つめながら小さく呟く。

 「ただ……今日はなーんかするんだよね」

 「え?何?」

 フロアの喧騒の中で女は聞き返すが、侑菜はそれに応じず女を抱えるようにテーブル席から立ち上がると、プレイルームへと足を向ける。

 「……ま、とりあえずメインの前に一発ヤリだよねー❤︎」

 「やァン❤︎侑菜だってドスケベなんだから……❤︎」



 時刻は午前0時過ぎ。

 控え室の愛理はシャワーを済ませ、ドレッサーの前でメイクをしていた。

 真っ赤なアイラインを目尻まで施し、オーバーリップで厚めの唇をさらに強調する。

 メイクで「強いオンナ」を演出してゆくその様子は、一世一代の大勝負に挑む愛理の覚悟の表れだ。

 そんな彼女を後ろのソファに座りながら見守るケイは、たまに控え室の外の様子を気にしつつ、愛理の心理状態も気に掛けていた。

 「愛理、緊張してる?」

 「そりゃもちろん。でも、特別な事は無いわ。いつも通りやるだけよ?」

 「そう?……ま、愛理らしいけど」

 ケイの問い掛けに愛理は微笑んで応じるが、ケイには一抹の不安があった。

 (この控え室で〝事件〟が起きたのがたった1週間前……いくら愛理だって、内心はまだ恐怖を拭えていないはず)

 「恭子は今週もスタッフでフロアに駆り出されてるから、代わりに愛理の面倒見てやってくれって」

 「へぇ、恭子ったら私専属の教育係じゃなかったのかしら?だったらこれは放置プレイ?いい趣味してるわね」
 
 「ふふっ、確かに……先が思いやられるけどね」

 愛理が笑うと、ケイも鏡越しに小さく笑う。張り詰めた緊張と不安が、ほんの少しだけほぐれる。

 カッ、カッ、カッ……

 「!」

 その時、廊下を駆けてくるヒールの足音が聞こえてきた。
 その音は控え室の前で止まり、愛理とケイは無言でドアを見つめる。

 「愛理……」

 ケイは咄嗟に愛理のそばに寄り、後ろから愛理の手を握った。

 愛理は放心したようにドアを一点に見つめたまま、ケイの手を強く握り返す。

 (愛理、やっぱり……)

 ガチャッ

 「ハァ、ハァ……ごめん愛理!準備してる!?」

 控え室のドアが開かれ、入ってきたのは白いボンデージ姿の恭子だった。

 「恭子ッ!」

 先程まで青ざめていた愛理の表情は一気に血色が戻り、大きな瞳には爛々らんらんとした光が宿る。

 「恭子、スタッフの仕事は?」

 「ハァ、ハァ、うん、ちょっとだけ抜け出してきた!」

 ケイの問いに息を弾ませながら応える恭子は、片手に持った紙袋を愛理に差し出した。

 「コレ……愛理に渡そうと思って!」



 「私に?」

 恭子が差し出す紙袋を、愛理は不思議そうに受け取ると、中身を開封してゆく。

 「!?……コレ……!!」

 その中身を見て愛理は驚きの声をあげる。

 「チャイナドレス……しかも、と同じ色の……!」

 愛理と恭子が二度目にあった日……あのラブホテルで着用したゴールドのミニチャイナドレス……。

 それは愛理がサークル参加を決意した、〝運命の日〟でもあった。

 「愛理、いつまでもそのロンググローブとニーソックスだけだからさ……そろそろコスチューム着るのもアリじゃない?って」

 フェイクレザーのロンググローブとニーソックスは、愛理がサークル加入後に「研修」と称して1ヶ月間、マンションの一室で客を取らされていた際に史織から強要されたプレイコスチュームだ。

 愛理はEl Doradoエルドラード参戦の際、その忌まわしいコスチュームを〝復讐の象徴〟として自らかせのように着用してきた。

 「着てみてよ。ラブホのチャチなコスプレじゃないよ?ドレス専門の仕立ての店で、愛理に合わせて作ってもらったから」

 「……うん」

 恭子に促され、袖を通すチャイナドレス。

 愛理の豊かな胸も、腰のくびれも、弾むような尻も、ピッタリと包み込み「オンナのカラダ」を飾り立てる、愛理のためのプレイスーツ。

 「どうかしら?イイ感じ?」

 愛理はその場でくるりと一回転、腰に手を当ててポーズを取ってみせる。

 「うんうん、似合ってる!」

 恭子も大きく頷きながら、満足そうに愛理のコスチューム姿を見つめる。

 「……ちょっと丈が短すぎない?大股に開いたら見えちゃうわよ」

 「見せてるくらいが丁度良いんじゃない?そのためのでしょ?」

 「……恭子って、そういうトコあるわよね」

 愛理は手で前後を気にする仕草をするが、あっけらかんと応える恭子に小さく溜め息をついた。

 「ふふっ……でも嬉しいわ。恭子、ありがとう。今日は絶対に勝たないとね!」

 「試合の前に渡せてよかったよ。じゃあ私、また戻るから!」

 恭子は愛理の頭をポンポンと2度撫でると、せわしなく控え室のドアへと向かう。

 「そうだ、愛理……」

 「?」

 ドアノブを握った恭子はふと立ち止まると愛理の方を振り向き、顔の前で拳を握って小さくガッツポーズをした。

 「今日が、私と愛理の〝出発の日〟だからね!がんばれ!」

 「恭子……!」

 そう言うと恭子は手を振り、控え室を出て再び賑わいのフロアへと急いでいった。



 ザワザワ……

 深夜1時を過ぎてもなお、フロアの客は増え続けていた。

 彼女らは皆一様に、El Doradoエルドラードで戦う「愛理」の姿を目当てに来ている客だ。

 「ねぇ、今日の愛理の相手って誰?」

 「愛理、今日勝てばDランク昇格でしょ?強い娘を当てるんじゃない?」

 「ハルミにも勝ったんだから、このランクでは愛理の敵いないでしょ!」

 観客らは口々に試合の展望を語り、始まりの時を待ち焦がれていた。

 外は1月の零下の気温だが、フロアはむせ返るようなオンナの熱気が、肌にまとわりつく程にムンムンと立ち込める。

 その時、ステージを照らすライトが暗転する。

 「愛理ちゃーん!!」

 「愛理!!愛理!!」

 いよいよ〝その瞬間〟が訪れようとした時、誰ともなく観客からは愛理の名が叫ばれる。

 『皆様お待たせしましたッ!今シーズンのラストバトル、本日のメインイベントを行いますッ!!』

 舞台上でマイクを握るのは恭子ではない、別のスタッフだ。

 愛理はそのアナウンスを舞台袖で聴きながら、ゆっくりと目を閉じて深呼吸する。

 (すべて……私の手で決着をつける……!)

 プライドを踏み躙った、憎い女の顔がまぶたに浮かぶ。

 その女は今、反対側の舞台袖でどんな顔をしているだろう。その女のせいで、幾つの眠れない夜を過ごしただろう。

 だが、それも今日で終わらせる。

 恭子と再び歩み出す「今日」という日に、もはや過去の因縁はいらない。

 『昇格を懸けた一戦……〝孤高の淫乱〟!!愛理、入場ッ!!』



 「はぁッ!!」

 パシッ!パシッ!

 コールを受け、大きく腹から声を出し、自らの頬を2度叩いて気合いを注入する愛理。

 いつもと変わらない、入場時のルーティン・ワーク。

 だが、ステージへと向かう足取りはいつもより大きな歩幅で力強い。

 ドワァァァァッ!!

 「愛理ィィィィッ!」

 愛理の姿が見えるとフロアのボルテージは一気に最高潮へと高まり、観客らは狂ったような歓声を愛理へ向けて叫ぶ。

 短いチャイナドレスの裾をはためかせながら堂々とステージ中央に立つと、愛理のシンボルでもある腰まで長い黒髪を、両手で背中へと掻き上げた。

 その仕草、振る舞いはまるで〝女王クイーン〟のように気高く、先の2試合とは全く異なる落ち着きを見せている。

 「ハルミとの闘いが自信になったようね……余計な緊張や恐怖を背負っていない、今までで〝最高の愛理〟だわ」

 ステージ下に群がる観客の最後方で、ケイは恭子に耳打つように呟いた。

 「あんな事があった後だもの、普通なら棄権したっておかしくないはず……今の愛理は、私たちが思ってるよりも遥かにタフネスな精神を持っているわ」

 参戦して1ヶ月、このEl Doradoエルドラードという舞台で愛理が成長し続けていることを、ケイも恭子もはっきりと実感として認識していた。

 恭子は眉間に力を込め、闘いに挑む愛理の背中を見つめている。

 「……今日がその一つの集大成になるかもね」



 愛理の入場に未だ冷めやらぬ観客席の歓声に割り込むように、アナウンスは対角線を指差してコールをする。

 『続いてニューカマー!愛理の挑戦に立ちはだかる、運命の相手……〝褐色の弾丸娘〟夏樹、入場ッ!!』

 オォォォォォォォッ!!!

 先程の愛理への声援に負けないくらいの大きなどよめきがフロアを揺らした。

 「愛理の相手って、夏樹ッ!?」

 「夏樹ってEl Dorado初参戦なんだ!?意外!!」

 〝ナンパ師〟というのはいわばサークルの表看板でもあり、会員たちの間では夏樹のことはよく知られた存在であった。

 そればかりか、このフロアには夏樹本人に口説かれてサークル加入した観客も少なくなかった。

 「夏樹ーッ!秒速ピストン魅せてーッ!!❤︎」

 「夏樹の〝オンナ殺し〟テクが見たいーッ!!❤︎」

 観客の声援の中、花道を入場してくる夏樹の姿が現れる。

 控えめな乳輪がぷっくりと浮かび上がるシースルーな豹柄のレオタードは、夏樹の細い脇腹まで深く切り込んだハイレッグのTバックだ。

 そこから伸びる筋張った褐色の細い脚を黒のハイソックスが包み、足首丈の黒いショートブーツはヒールの低いストレッチタイプだ。

 煌びやかさと妖艶さを演出する愛理のチャイナドレス風のプレイスーツとはまるで正反対の、運動機能性を重視した夏樹のプレイスーツ。

 「よッ!……と」

 夏樹は観客の大歓声を一瞥いちべつにもせず、真っ直ぐに愛理の待つステージへと向かうと、4段ある舞台へのステップを一歩で駆け上がり、猫のように柔らかく降り立った。

 ワァァァァッ!!

 (夏樹……!)

 「ふふッ……」

 両者が相対した瞬間、地響きにも似た歓声がフロア全体を包み込む。

 会場にいる誰もが、今宵の闘いが尋常ではない「特別なもの」であることを理解していた。

10

 耳をつんざくような女たちの歓声の渦の中で、ステージの2人だけは暫し無言のまま睨み合い、〝その瞬間〟を待ち続けていた。

 「へぇ……逃げずに来たのね、夏樹」

 先にステージで待ち構えていた愛理は、夏樹に対して吐き捨てるように言う。

 それを受けた夏樹は気怠けだるそうに小指で耳を掻きながら2回小さく頷くと、鼻で笑って応える。

 「ハッ……それ、こっちのセリフなんだけど?恥知らずのマゾ豚が〝公開レイプ〟されに来たんでしょ?」

 「くッ……!!」

 夏樹の挑発に思わず奥歯を噛み締める愛理。

 すでに舌戦によるマウンティングの攻防が始まっていた。

 「みんなも見たいよねーッ!?愛理ちゃんが膣内射精なかだしキメられちゃうトコーッ❤︎」

 ドワァァァァッ!!

 夏樹が振り向いてステージ下の観客を煽ると、それに呼応するように女たちが手を叩いて囃し立てる。

 「みたーい!夏樹みせてェーッ!❤︎」

 「愛理のいろんな〝穴〟に射精してあげてェーッ!!❤︎」

 「アハハッ!だってさ?どうする愛理ィ?❤︎」

 観客たちによるの反応に、夏樹はケラケラと笑って愛理を睨む。

 (ダメよ、夏樹のペースに飲まれちゃ……!)

 愛理は無言で夏樹を睨み返したまま何とか平静を保とうと深呼吸するが、真一文字に固く結んだ唇が精神の動揺を浮き彫りにしていた。

 そんな愛理の表情をうかがうように、夏樹が正面に回って愛理の顔を覗き込む。

 「何その不貞腐れたみたいな顔?マゾ豚扱いされんのが不服なの?超ナマイキじゃんね?」

 プッ!!

 「あうッ!?」

 突如、夏樹が愛理の顔面に唾を吐いた。

 急襲的な唾吐きをまともに被弾した愛理はうずくまり、両手で必死に顔を拭う。

 「こッ……この……!!」

 「ハハッ、こないだのお返し❤︎」

 ステージ上はにわかに、「夏樹の色」へと染まり始めていた。

11

 『夏樹!まだ試合は始まっていないわ!待機位置に戻って!』

 「はいはーい♪……ふふッ……❤︎」

 語気を強めたアナウンスの注意に、夏樹は手のひらをヒラヒラと振りながらきびすを返して戻ってゆく。

 反省の様子など微塵もなく、ニヤニヤとした薄ら笑いを浮かべながら、不敵に愛理の顔を睨み続けていた。

 (絶ッ対に許さない……!)

 顔に付着するネバついた唾液をチャイナドレスの襟元で何度も拭き取る愛理は、眉間の鼻筋に深い皺を刻みながら湧き上がる怒りと戦っていた。

 すべては夏樹の策略、愛理を苛立たせ平常心を狂わせる事が目的の稚拙な挑発に過ぎない。

 しかし、そうと分かっていても愛理の怒りは限界点に達していた。

 (あんな女、秒殺してやるわ。私が味わった屈辱と惨めさ、全部倍にして返してやる)

 観客席が暗転し静寂が訪れると、スポットライトに当てられたステージ上の2人の女が同時に身構える。

 互いに憎しみ合う女と女が、〝オンナ〟を競って肌を重ねる。

 誇りの為でも、名誉の為でもなく、すべては「あの女を倒す」というたった一つの明確にして単純な目的……。

 『Ready……Goッ!』

 ゴォォォン……!!

 「はァァァッ!」

 「うァァァッ!!」

 闘いのときを告げる銅鑼どらの音がフロアに響くと同時に、女たちが雄叫びをあげて互いの運命へと向けて駆け出した──!
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