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3.堕ちてゆくオンナたち

恐怖と自尊心

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 ダブルサイズのベッドに裸の女が3人ひしめき合う。
 ベッドの上の体感温度は妙に暑く、皆一様に全身が汗に濡れていた。

 「愛理、来な❤︎」

 夏樹が名を呼ぶと、愛理は無言で夏樹に抱きつく。そのまま言葉を交わさず、夏樹と唇を重ねた。

 「んんッ…んむッ……チュッ……」

 「ムチュッ……ふふっ、がっついちゃって……❤︎」

 夏樹も応えて愛理の腰を抱き寄せる。互いに目を瞑らず、睨み合ったまま舌を絡める。

 「んん……❤︎わっ、私も……❤︎」

 しばらく2人のキスを傍観していたはるかだったが、堪らず2人の合間に割って入り、強引に顔を近付けてキスに参戦した。

 「ジュルッ…❤︎チュッ❤︎ぷはァ❤︎」

 「んむっ❤︎チュパ……❤︎」

 「ふーッ❤︎んんッ❤︎ジュルル……❤︎」

 三つ巴のキスバトル。互いに吸い合い、舐り合い、汚し合う。それはいよいよ熾烈を極め、顔面の舐め合いへと発展していた。

 ツンと鼻を突く生臭い唾液の匂い、ヌルヌルと顔中を這いずる舌の感触、熱い吐息の温もり──。

 もはや3人、誰が相手とも分からない。

 接吻という、愛を誓い合うための神聖な行為が、倒錯した性欲の女たちの前では、下品過ぎるマーキング合戦に変貌してしまった。

 こんなキス、ありえない。

 でも……気持ちいい──。

 「クチュ……プッ!!」

 「んァ……!」

 夏樹が愛理の顔に目掛けて唾を吐く。正面からベッタリとへばりついた唾を、横からはるかが舌を伸ばして舐め取る。

 「はむッ❤︎んジュル……❤︎」

 「んごォッ❤︎んぐッ❤︎おォォ❤︎」

 愛理の形の良い鼻を、はるかが猛烈にしゃぶる。舌を鼻の中まで挿入し、涎をダラダラと流し込んできた。

 愛理は一瞬、呼吸できずに怯む。その瞬間、はるかが愛理に抱きついて仰向けに押し倒した。

 「あっ……!」

 ドサァ……

 愛理は目を見開いてはるかの顔を見た。
 愛理の胸に顔を埋めて、たおやかな美乳の弾力を愉しみながら上目遣いで愛理を見つめるはるかと目が合う。

 「すっごいヤラしい匂い……❤︎愛理さんと私、絶対カラダの相性良いですよ❤︎」

 はるかは指をしゃぶりながら、顔をくしゃくしゃにして微笑んだ。濡らした指先で愛理の乳首を撫でつけると、愛理はピクンと肩をすくめた。

 「くゥんッ❤︎にっ……匂い……?」

 「私と同じ匂いがするんです❤︎変態で狂ったようなセックスが好きで好きで堪らない、の匂い……❤︎」

 「淫……乱……?」

 はるかの言葉に愛理は戸惑いを隠せない。淫乱だなんて下品な言葉を、実生活の中で聞いたのは初めてだった。ましてや、それを〝自称〟するだなんて。

 「やめて……私そんなんじゃ……」

 否定する愛理の口を、はるかが唇で遮る。

 「んん?❤︎んッ……❤︎」

 「チュッ❤︎……ふふっ、でもこうやってキスだけで感じちゃうんですよね?経験したことないアブノーマルなセックスを知りたくて、このサークル入ったんですよね?❤︎」

 「それは……」

 はるかは愛理の耳元に唇を寄せる。湿り気のある熱い吐息が掛かり、愛理の肌が粟立つ。

 「はゥッ!?❤︎あッ……あァァ……❤︎」

 「恥ずかしいコトが気持ちイイ……汚いコトに興奮する……苦しいほどイキたくなっちゃう……愛理さん、違いますか……?」

 矢継ぎ早なはるかの問い掛けに、愛理の思考力が奪われてゆく。

 「はンッ❤︎そッ❤︎そうッ❤︎そうよッ❤︎」

 悶える愛理の顔に影が掛かる。薄めを開けると、そこには夏樹が見下ろしていた。
 夏樹はパンパンに張り詰めたペニスに自らの唾を垂らし、練り込むように右手でゆっくりとしごく。

 「あっ……なっ、夏樹ッ……!」

 夏樹に気を取られる間に、はるかは愛理の乳首に音を立ててしゃぶりつく。

 「あンッ!?❤︎あッ❤︎あッ❤︎はァァッ❤︎」

 完全に不意を突かれた弱点への愛撫。咄嗟に愛理は手を伸ばして遮ろうとするが、夏樹に手首を掴まれ阻まれてしまう。

 手足の自由を奪われて愛理はもがくように身体を捩らせた。

 その間にもはるかは愛理の両乳を寄せあげ、すっかり勃起し切った敏感な先端を舐り続ける。

 まるで恥肉に飢えた獣のように低い呻き声を喉の奥から絞り出し、一心不乱に乳房に吸い付きまくる。

 「ふーッ❤︎ふーッ❤︎んふふッ❤︎ジュルッ❤︎ジュルルッ❤︎」

 「おォッ❤︎そんなッ❤︎乳首ィィ❤︎」

 抵抗を試みた愛理だったが、激しい愛撫の快感に脱力して為すがままにベッドに張り付けられている。

 そんな愛理の眼前に、夏樹のはち切れそうなが突きつけられた。
 夏樹自身の唾液によって充分に濡らされたそれは、いつでも愛理を〝撃ち殺す〟準備ができていた。

 「愛理、しっかり目に焼きつけなよ❤︎これが今からアンタの膣内なかで暴れまくるチンポ……❤︎」

 「うぅ……あっ……あぁ……❤︎」

 興奮とも恐怖とも付かぬ感情が愛理を襲う。

 この夏樹という女が、愛奴であるはるかに対して何の躊躇ためらいもなく膣内射精を決行したのを、愛理は目の前で見せつけられていた。



 夏樹ははるかと入れ替わるように愛理の股の間に身体を滑り込ませる。はるかは押し出されるように、愛理の上半身へて移動した。

 「さぁ愛理さん、ご奉仕ですよ……チュッ❤︎」

 はるかは愛理の奮闘を労うようにキスをすると、腰を上げて愛理の顔に跨がろうとする。

 「嘘……ちょっ……待ってッ!」

 愛理は待ったの声を挙げたが、はるかはそれを無視して愛理の顔面に腰を降す。

 ムチュッ……❤︎

 はるかの体重が愛理の顔面に伸し掛かる。湿り気を帯びた肉厚な陰唇が、愛理の口元をピッタリと塞いだ。

 「~~~ッッ!?ぐェッ!んぐゥゥッ!!」

 口内に流し込まれるはるかの愛液と、膣内に残った夏樹の精液の不快極まる味。逃れるために鼻で呼吸をすれば、脳を突き刺すような強烈な臭気。
 愛理は手足をバタバタと激しくもがき、本能的に逃避を図ろうとするが、身体を激しく動かすほど呼吸はどんどん乱れる。

 「ん"~~…!!ん"ン"~~~ッッ!!」

 (死ぬ!ホントに……死んじゃう……ッ!!)

 いよいよ生命の危機を感じてパニック状態に陥る愛理。
 顔面に跨がるはるかの太ももを両手で掴んで、渾身の力で引き剥がそうとするが、はるかは微動だにしない。

 その時、はるかがふと腰を浮かせた。

 「ぷはァッ!はァッ!はァッ!うぅぅ……!」

 1分以上は呼吸器を塞がれていただろうか、愛理は今までの分を取り戻すかのように必死に深呼吸を繰り返す。それと同時に、大きく見開いた瞳からは不意に涙がこぼれ落ちた。

 肉体的な苦痛と、精神的な恐怖……。

 愛理は抗議の声も挙げられず、ただ放心したようにはるかの顔を見つめ続ける。

 パァンッ!

 そんな愛理の顔にビンタが飛ぶ。強烈な打撃に、愛理の頭が真横に向く。

 「ぎッ!?……くッ……」

 「愛理さん?暴れてるだけじゃダメですよ?ちゃんとご奉仕しなきゃ……」

 はるかから、あの妖しげな笑みが消えていた。どこまでも冷たい目線は愛理の瞳を貫き、放心した愛理の心を一気に現実にある恐怖へと引き戻した。

 「はっ、はるかっ……お願い、ちゃんと舐めるわ。だから……だから顔に跨がるのは……!」

 はるかに許しを乞い、顔面騎乗を免れようとする愛理。だが、それは全くの逆効果だった。

 グポッ

 「ごォッ!?オェ……ゲホッ!ゴフッ……!!」

 はるかは愛理の口に指を突っ込んだ。
 
 右手の人差し指と中指の2本を喉奥まで力任せに捻じ込み、舌を根元からこそぐように引っ掻くと、愛理は激しくえずき、口からはドロリとした多量の唾液が溢れ出た。

 「ほら❤︎いっぱいヨダレ出てきた❤︎自分のヨダレで溺れちゃいそうですねっ❤︎」

 はるかは笑いながら、愛理の唾液にまみれた指を蜜を舐め取るように掬い上げて口へと運ぶ。

 「もう一回チャレンジしましょうか❤︎ちゃんと舐めて下さいっ❤︎」

 「イヤッ……待っ……」

 ギュム……

 必死に懇願する愛理の言葉は、はるかの陰唇の圧力に虚しく掻き消された。

 「ぐゥ……ッッ~~~~!!?」

 苦悶に顔を#顰_しか__#める愛理だが、何とか愛撫を試みようと舌を出す。

 レロッ❤︎ジュプッ❤︎チュパッ❤︎

 「あッ❤︎イイッ❤︎クリ気持ちい……❤︎」

 はるかは恍惚の表情で天井を仰ぎ、自らの乳首を指でコリコリと刺激しながら腰を前後に動かす。
 まるで愛理の顔面を用いて自慰行為をするように、相手をする身勝手な腰捌き。

 はるかにとっては、何より優先されるべきは〝自らの性的快感〟であり、相手は単なる性玩具に過ぎないのかもしれない。

 (このままクンニでイカせる……!)

 愛理は息苦しさと戦いながら、何とかはるかを性的に満足させてこの体勢からの脱出を図っていた。
 だが、そんな愛理の目論見は一瞬で打ち砕かれる。

 ズリュ……

 「お"ッ❤︎……!?!?」

 突如、愛理の下半身を襲った猛烈な異物感。股間の花弁を押し拡げ、臓物を叩いた感触。

 (はっ……挿入はいった……)

 視界をはるかの身体に遮られ、状況を確認することはできない。
 だが、愛理はすっかりはるかの攻略に夢中になり、これが「2対1」の戦いであることを忘却していた。

 「あァ……愛理のマンコ熱っつぃ……❤︎」

 夏樹のペニスが、愛理のヴァギナに深々と突き刺さっていた。



 パンッ❤︎パンッ❤︎パンッ❤︎

 挿入からすかさず、容赦なく腰を打ちつける夏樹の責め。
 そのスピーディな腰捌きは、ベッドスプリングの反動を巧みに応用し、スレンダーな夏樹の体格に似合わぬほどの激しいパワーで愛理の膣内なかを責め立てる。

 「ん"ッ❤︎あ"ゥッ❤︎あ"ンッ❤︎やッ……やめッ……おゥッ❤︎」

 「ハッ❤︎ハァッ❤︎愛理ィ❤︎アンタ最高に気持ちいいマンコしてるじゃんッ❤︎チンポに吸い付いてくるみたいッ❤︎」

 快感に上擦る夏樹の甘い声が聴こえる。だが視界ははるかに遮られ、ましてや呼吸すらもままならない。

 「んぶッ❤︎んォォッ❤︎お"ゥッ❤︎ダメッ❤︎やめッ❤︎やめてェッ❤︎」

 愛理の身体を2人の女が我儘わがままに犯す。そこには一切の慈愛は無く、各々が快感を追求するためだけに愛理の肉体を使しているに過ぎなかった。

 「舐めてッ❤︎もっと舐めてッ❤︎おッ❤︎おォッ❤︎ほォッ❤︎……ク、クリッ❤︎クリイクッ❤︎クリ気持ちいいッ❤︎イッちゃうゥゥゥゥ❤︎❤︎」

 葡萄ぶどうのように肥大したはるかの陰核が、愛理の舌先で小刻みに震える。間近に迫る性的絶頂エクスタシーに備えて、シーツを掴むようにつま先にまで力を入れる。

 一瞬、はるかの体重が前方に移動した。

 愛理は、その〝一瞬〟を見逃さなかった。

 「くっ……ふんッ!」

 「あぅッ!?」

 はるかの浮いた尻を、愛理は渾身の力で真下から垂直に押し上げた。
 跳ね上がったはるかの身体は愛理の頭上、枕側へと大きく崩れて前のめりに手を着いた。

 「はぁッ!はぁッ!夏樹ぃッ!」

 「きゃッ……!」

 愛理ははるかの股下から脱出すると、すぐさま上体を起こして夏樹に抱きついた。
 起き上がる勢いそのままに体重を浴びせられた夏樹は後方に倒された。

 夏樹のペニスは未だ愛理の膣内に挿入されたままであり、愛理はそのまま夏樹の上に跨り腰を落とす。

 「あァッ❤︎うぁッ❤︎くゥゥッ❤︎すごッ❤︎愛理のッ❤︎本気マンコォッ❤︎❤︎」

 「今度は私の番よッ❤︎夏樹ッ❤︎」

 愛理は股間をグリグリと押しつけながら、弧を描くように腰を動かす。

 クチュッ❤︎ズチュッ❤︎

 「あゥッ❤︎はァンッ❤︎待ってッ❤︎無理ッ❤︎ダメッ❤︎出るッ❤︎出るからッ❤︎」

 「出しなさいッ❤︎情けなく果てなさいッ❤︎ほらッ❤︎ほらァッ❤︎」

 愛理の突然の激しい責めに為す術の無い夏樹は、あっという間に絶頂へと昇り詰めてゆく。

 「あッ❤︎あイクッ❤︎ヤバッ❤︎スゴイのッ❤︎スゴイのくるッ❤︎出る出るッ❤︎イクイクイクイクゥゥ……❤︎❤︎」

 夏樹は迫りくる快感に必死に抗うように歯を食いしばる。

 (夏樹ッ……出すのね……ッ❤︎)

 そんな夏樹の〝兆候〟を見て、愛理は勢いよく腰を引き上げた。膣からペニスが音を立てて引き抜かれる。

 「くぅぅッ!!」

 チュポッ!❤︎

 「おォッ!?❤︎」

 ビュッ❤︎ビュルッ❤︎ビュルッ❤︎

 引き抜かれた夏樹のペニスから精液が発射される。

 愛理の膣内に照準を絞ったはずの渾身の射精ショットは、寸前にに見抜かれて虚しく中空を舞った。

 「はァ❤︎はァ❤︎……あぐッ❤︎くぅぅッ❤︎」

 仰向けに横たわる夏樹の腹に、自ら吐き出した劣情の汁がべったりとこびり付く。
 浅黒い肌にギラギラと妖しく照る白濁の汁が、きめ細やかな肌を滑り落ちてじんわりとシーツに染みを作った。



 「はぁ……はぁ……はぁ……」

 薄めを開けて呆然とする夏樹に跨ったまま、愛理もまた呆然とした表情で見下ろす。

 はるかの責めから脱出した瞬間、愛理は自らが責めに転じて夏樹の射精をコントロールする算段を立てていた。
 夏樹の反応や表情を注視し、肉体の動きを制御できるように騎乗位を選んだ。

 だが、ペニスの状態を視認できないセックスによる射精誘導は、まさに〝危険すぎる賭け〟であった。

 「夏樹……私の勝ちね」

 「くッ……!ま、まだ負けてなんか……!」

 夏樹が上体を起こして立ち上がろうとする。

 だが、力が入らない。

 膝がガクガクと震え、夏樹はまた元の仰向けに倒れ込んでしまった。

 「あっ……な、なんで……!?」

 体験したことの無い感覚だった。先程の射精の余韻が、夏樹の肉体の隅々まで侵すように残響していた。
 今この瞬間、身体に触れられたら……悶え狂ってしまいそうなほど敏感になった夏樹の身体は、完全にコントロールを失っていた。

 2人の攻防を側から見ていたはるかが、ベッドに倒れて震える夏樹の身体を抱きしめる。
 愛おしげに唇を首筋に這わせ、黒肌に浮かぶ玉の汗を舌で舐め取る。

 レロォッ❤︎ジュルッ……❤︎

 「あゥ❤︎ダメッ❤︎はるかぁぁ❤︎」

 夏樹は反射的に首をすくめ、はるかの胸を押して離れようともがくが、はるかは力を緩めずに舐めることをやめない。

 「気持ちよくなりすぎてフニャフニャな夏樹さん、かわいいです……❤︎」

 はるかは悪戯な笑みを浮かべ、硬くなった夏樹の乳首を舌先で弄ぶ。
 ふと、愛理と目が合うと、はるかは小さく手招きした。

 (どういうこと?はるかは夏樹と一緒に、私を陥れようとしてたんじゃ……?)

 夏樹に対して従順だと思われたはるかの不可解な行動だったが、愛理にとっては好機であった。

 はるかが愛理の耳元で呟く。

 「愛理さん❤︎一緒に夏樹さんを気持ちよくさせちゃいましょう❤︎」

 「はるか、アナタは夏樹のパートナーじゃ……」

 「関係ないですよぉ❤︎スケベで気持ちよければ、私は相手なんて選びませんから❤︎」

 「えっ……」

 あっけらかんと言い放つはるかに、愛理は返答に困ってしまう。

 だが、愛理には既に分かっていた。このはるかという女は、本物の〝淫乱〟……。

 愛よりも、プライドよりも、何よりも自らの性欲が上回ってしまう、根っからのセックス狂いの女。

 (本当に恐いのは、はるかの方かも)

 「夏樹様ぁ、愛理さんと一緒にお掃除フェラさせて頂きますね❤︎」

 「待って……今はダメ……!」

 今の夏樹には、先程までのような居丈高な態度や女王様然とした振る舞いは見る影も無かった。

 生娘のように股を閉じて抵抗する夏樹の膝を、はるかは無理矢理こじ開けて顔を突っ込む。
 先程よりやや萎んだ夏樹のペニスは、ペタリと腹に項垂うなだれていた。

 はるかが横目で、もう一度愛理に目配せをすると、それに促されるように愛理ははるかの真横に座る。

 「さぁ……愛理さん……❤︎」

 「はぁ……はぁ……❤︎」

 をすっかり喪失した夏樹のペニスに鼻先を持っていくと、生臭い体液の匂いが鼻腔を刺激した。
 それは夏樹の精液であり、はるかの愛液であり、愛理自身の愛液でもある、3人の女による〝性のカクテル〟の淫猥な芳香であった。

 「んはァァ……くっさい……❤︎」

 「ふふッ❤︎そうですね、あまりに……臭すぎます……❤︎」

 3人分のフェロモンの〝原液〟にコーティングされた、ドロドロに照り輝いたペニスに、恐る恐る唇を近付ける愛理。

 もう、後戻りなんてできない──。

 ジュル……グッ……ポ

 「はァァァッ❤︎あぐゥゥッッ❤︎」

 夏樹のペニスをすっぽりと咥え込んだ愛理。夏樹の腰がビクンと大きく跳ねると、強過ぎる快感から逃れようと必死に身体をよじらせる。
 愛理はペニスを舌で包み込み、裏スジを入念にねぶる。萎えていた夏樹のペニスが、愛理の口内でみるみる硬さを取り戻してゆく。

 じゅぷッ❤︎ごぷッ❤︎ずるるッ❤︎

 「ふあァッ❤︎あ"ィッ……❤︎」

 「ふふふ……❤︎ん~~……チュポッ❤︎」

 「あゥッ!?❤︎」

 愛理の舌による拘束を逃れた夏樹のペニスは、力強く真っ直ぐに天井に向いて勃起を完了した。

 「夏樹様、また勃っちゃいましたね❤︎コレ、ですからね?❤︎」

 はるかが愛理の顔に頬を寄せ、夏樹に呼びかける。夏樹は息も絶え絶えに、首を横に振るだけで精一杯という風であり、はるかの声には応えられない。

 「愛理さん、一緒にご奉仕しましょ❤︎」

 「ええ……❤︎」

 愛理とはるかは微笑み合い、一本のペニスに同時に舌を這わせた。



 「あ"ァァァァッ!?❤︎」

 2人の雌が、1つのペニスにむしゃぶりつく。根元から先端まで、丹念に、執拗に、肉厚な舌で唾液をたっぷりと塗りたくってゆく。

 「うふふっ❤︎愛理さんの味がします❤︎」

 はるかがトロンとした瞳で愛理を見つめながら呟く。愛理とはるかは、互いの口の間に夏樹のペニスを隔てながら激しく互いの舌を絡め合う。

 「あ"───ッ!?❤︎嫌ァァッ❤︎無理ッ!❤︎もうイけないッ!!❤︎イけないからッ!❤︎」

 夏樹が叫ぶ。それは事実上の敗北宣言だったが、愛理とはるかのWフェラはなおも加速してゆく。

 「あンッ❤︎夏樹様、イっちゃダメなんですよ?先程も言いましたけど、これはあくまでフェラですからね……❤︎」

 当初とは完全に立場が逆転している。

 〝人間は誰しもSとMを兼ねていている〟

 愛理は以前、恭子に言われた言葉を思い出した。

 究極のマゾだと思っていたはるかは、同時に究極のサドにもなれる。被虐の快楽を知るからこそ、それを引き出す術も熟しているのだ。

 (はるか……素敵……)

 愛理は、はるかに対して羨望と畏怖の両感情を抱き始めていた。

 頬を寄せるはるかの温もり、シャンプーと汗の混じった甘酸っぱい香り、涎まみれの口から漏れる吐息の熱さ、生臭さ……。

 愛理の右手は無意識に自らの陰部へと伸びて、凝り始めた陰核を自らの指で慰めていた。

 ジュポッ❤︎ジュポッ❤︎

 「ふーッ❤︎ふーッ❤︎ジュルッ❤︎……はぁッ❤︎はぁッ❤︎」

 「あはっ❤︎次は私ですっ❤︎……はむッ❤︎ジュルル……❤︎グッポ❤︎グッポ❤︎グッポ❤︎」

 愛理とはるかが代わる代わる夏樹のペニスを咥えてしゃぶる。

 「う"ァァ……ッ❤︎ひィィィィ……ッ❤︎」

 不規則な快感の波に、夏樹はすっかり溺れて前後不覚の様子だ。あとはどちらがか……。

 はるかがフェラチオのスピードを速めた、喉奥まで咥え込み、口内全体でペニスをしごき上げて射精を促す。

 
 ふと、はるかは愛理の左手を握って夏樹の股の付け根付近に触れさせる。
 愛理の指先は、夏樹の会陰えいん、俗に言う「蟻の門渡り」と呼ばれる部分に触れていた。夏樹のペニスの海綿体が膨らんでいるのが分かる。

 次の瞬間、夏樹の会陰がキュッと硬くなる。はるかがペニスから口を離す。

 「あ"ィ"ッ❤︎イ"グぅぅッ❤︎❤︎❤︎」

 ビュッ❤︎ビュルッ❤︎ビュッ❤︎

 「キャアッ!?」

 はるかがフェラチオをやめたとほぼ同時に、夏樹は中空を目掛けて射精した。突然の射精に、愛理は驚いて思わず声を上げてしまう。

 「はぁ……❤︎はぁ……❤︎う……ぐ……うゥン……❤︎」

 夏樹の小ぶりな胸が、荒々しい息遣いにゆっくりと揺れる。放たれた精液は天に向かって弧を描き、夏樹の浅黒い肌を白く汚す。

 決定的な射精の快感に、夏樹は完全に脱力してベッドに沈んだ。

 ぷぅんと漂う栗の花の匂い。はるかは夏樹の腹の上に吐き出された精液を指で掬うと、舌を出して愛おしそうに舐め取りながら愛理に視線を送る。

 「愛理さん、夏樹さんがイク瞬間……分かりました?」

 「ええ、なんか……マンコとアナルの間の……あそこがプクッと膨らんで……」

 「そうです❤︎それが射精の合図です❤︎覚えておくと便利ですよ❤︎」

 指の間をしゃぶりながら、はるかは得意げに微笑む。

 「はるか……あなたは、このサークルに入って何を目指しているの?」

 愛理は率直な疑問をはるかに問い掛けた。テクニックはもとより、セックスに対する貪欲さも並み外れたこの女が、このレズビアンサークルでM嬢として飼われている理由を愛理は知りたかった。

 だが、はるかにとっては愛理の質問こそが疑問に思えた。

 「愛理さんは……セックス嫌いですか?お金の為に仕方なくやってますか?」

 「……嫌いじゃないわ。自信と誇りを持ってる」

 愛理の言葉は強がりではなく、本心であった。恭子に誘われてこのサークルに参加して、今まで経験したことのない快楽や恐怖も味わった。

 しかし、ウリの世界で培ってきたセックスのテクニック、何より持って生まれたルックスとボディは、「この生き方こそ天性」だと愛理自身が確信をしていたし、だからこそサークルに参加する決意をしたのだ。

 「じゃあ、私も愛理さんと一緒ですよ。セックスが好きだから……セックスをしてる時は〝本気の自分〟を表現できるから……理由はそれだけです♪」

 「……うん、私たち……同じかもしれないわね」

 愛理は、少し俯きながら小さく頷いて微笑んだ。

 「私は最初から気付いてましたよ?だから言ったんですよ、〝同じ匂いがする〟って❤︎」

 はるかは愛理の側ににじり寄ると、愛理を抱きしめてキスをした。愛理もそれに応えて、キスを交える。

 「ふふっ……またスイッチ入っちゃうかも……❤︎」

 「また?今日は……もう勘弁して……」

 「あは❤︎冗談ですっ❤︎」

 愛理は苦笑いで答える。はるかもまた、そんな愛理の困惑した反応に目を細めて笑った。



 深夜3時。

 夏樹とはるかが立ち去った部屋で、愛理は一人ベッドの上で突っ伏していた。

 シャワーを浴びた後の半乾きの長い黒髪が、ひんやりと背中を撫でている。

 「うくっ……ぐっ……」

 一心不乱だった。あまりにも突然の夏樹とはるかの強襲に頭は空っぽになり、追い付かない思考の中でひたすらにもがいていた。

 夏樹という女は、本気で愛理に膣内射精なかだしをしようとしていた。一切の躊躇ためらいや慈悲もなく〝他人を潰す事〟ができる女……。

 セックスの最中に押し殺していた感情が、今になって愛理の胸に湧き上がる。

 「ぐぅっ……!うぅぅ……!」

 声を殺して泣きじゃくる。止め処なく溢れる涙が枕を濡らす。仕向けられた理不尽に対する怒り、悔しさ、そして恐怖心。

 (怖い……怖いよ……)

 許しを乞おうかと何度も考えた。頭を下げ、服従し、心も身体も差し出してしまえば、恐怖から逃れられるのではとも思った。

 だが、愛理の本能は〝闘うこと〟を選んだ。

 自分の選択した道で、新たな世界を拓いてゆくと決意した。こんな場所で折れているわけにはいかない。

 やがて愛理は起き上がり、バッグの中からスマホを取り出し電話を掛ける。
 真っ赤に腫らした目を擦りながら、鼻をすすって乱れた呼吸を整える。

 「もしもし?ゴメンなさい、こんな時間に……」

 『愛理じゃん、どうしたの?』

 「恭子、今日の夜……会えない?」

 『えっ?今日?何かあったの?』

 「ううん、何も無いわ。恭子に会いたくなっただけ」

 『ふふ、何それ。前に会った場所でいいの?』

 「ええ、大丈夫。ありがとう……」

 愛理は通話を切り、スマホをベッドに投げると、愛理自身も大の字にその身をベッドに放り出した。

 「恭子……」

 肉体の凄まじい疲労感に、目を閉じると愛理はすぐさま眠りに落ちる。
 この狭い部屋で、たった一つの自尊心を守り抜いた、〝性戦士〟の束の間の休息だった。


(3章 完)
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