前世で世界一周できなかったので、異世界で一周します

第３章 獣人族の町〈ヒュユク〉

道中：第2話

ヒュユクを出発してから数時間。俺とロビン、クリハはいつも通り、蜂に追いかけられている。

「なんでこう毎度追いかけられるかな？」

そう嫌味のように宙を飛んでいるロビンに言う。

「おいらのせいじゃないぞ！」

そう両手左右に振っているが

「ロビンのせいだ！」
「ロビン様のせいです！」

と俺とクリハに怒られるロビン。

すでにへとへとになっているクリハ。このままだとクリハが疲れ果てて倒れてしまう。

俺はそう思い、クリハを抱きかかえて走ることにした。

「一旦二手に分かれるぞ」

「分かった」

ロビンがそう返事をしてからすぐに左右に分かれたのだ。

俺はクリハを抱きかかえて走っていたが俺は足を止めた。

蜂が追ってこない・・・・・・。

「なんでおいらなんだよー！」

と森の中から聞こえてくるロビンの悲鳴。本当にロビンは蜂に好かれすぎている。

「助けて、タクミ～！」

そう言うロビンの声は、いつもの俺を巻き込もうと企んでいる声ではなく、真面目に助けてほしそうな声をしていた。

そして、すぐにロビンの姿が見えた。

真っ赤に膨れ上がっているロビンを追いかけるのは・・・・・・

涎を垂らして追いかける狼《ウルフ》の群れだった。

俺と休み息が整ったクリハが戦闘態勢に入り、狼の群れを狩っていく。

クリハの命中率は100％だ。俺の背後から襲ってくる狼を全て射抜いている。

俺は鉄の槍で切ったり突いたり、加護で勝手に体が動いて狼を狩っていく。

「これで最後」

そう言いながら槍を横に振って、止めを刺した時、今までとは違う威圧が俺たちを襲う。

「あわわわ、キ、王狼《キングウルフ》だ！」

そう声を震わせながら言ったのはロビン。

俺の目の前にはさっきの狼とは比べ物にならないほどの大きさで、周りの木の高さと同じくらい。

「ロビンも手伝え」

そう振り返ると、ロビンの姿がいない。

「ロビンは？」

そう呑気にクリハに尋ねてしまう。

クリハは呆れ気味に左を指で指す。

「逃げてしまいました」

指さした方を見ると森の木々を避けて遠くに逃げていくロビンの後ろ姿。

「あとで説教だ。クリハ、悪いけど高火力で矢を・・・・・・」

そう言いながら王狼の方に振り返ると今度は王狼の姿がない。

「王狼は？」

そうクリハに尋ねると同時に

「なんでおいらなんだよー！」

と泣き叫ぶロビンの声が聞こえてきた。

ロビンの方を見ると、王狼に追いかけられるロビンの姿があった。

「この、バカやろー！」

と言いながらロビンは雷魔法、落雷を魔法スキルとして無詠唱で発動し、王狼を打ち抜いた。

落雷を食らった王狼は黒い煙を体がから立てながら、横たわって息を絶える。

最初から自分でどうにかできるじゃないか。

「人任せにするからこんな目に合うのですよ」

とクリハの説教が始まった。

数分後、クリハの説教が終わりやっと進むことが出来るようになった。

「ごめんタクミ。次は手伝う」

そうクリハに説教され、可愛く謝るロビン。

「とりあえず、これ食べて元気出せ！」

しゅんと落ち込むロビンを元気にさせたのはヒュユクの依頼達成でもらった食料。

ロビンはおいしそうに串肉を頬張った。

「ふう、ご馳走様！」

ロビンは串を自分の背中の方に投げる。

「おい、ポイ捨てするなよ。拾ってこい」

俺はそう言うとロビンは串を取りに行く。

数十分後。

「遅いなー」

そんなに遠くに投げているようには見えなかったから、串自体はすぐに見つかると思うのだがな。

そう思いながら一つの予感を感じた。嫌な予感、だ。

嫌な予感という物は的中するから存在するのだ。

「また、魔物に追いかけられていたり」

そう、クリハが笑い話をしてくる。

「そうかもな」

二人で笑いあっていると、

「助けてー」

とロビンの叫び声が聞こえてくる。

ゆっくり、その声の方を見ると、ロビンの姿があった。その背後には、手足を生やした鮫の群れがロビンを切磋琢磨して追いかける。

期待を裏切らない！

クリハと心の中でツッコむ。

この景色を一言で表すなら、「走る鮫がいた」だ。

というか、一匹ロビンに被り付いているぞ！

でも右手にはちゃんと串を持っていた。えらい！

だが、今は褒めてやれない！

なんだかんだ騒がしい時間を過ごす俺達だった。