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第3章 獣人族の町〈ヒュユク〉

第33話:盗賊団拘束の旅【後編】

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俺達は慎重に盗賊団が潜む遺跡の出入り口を順に塞いでいく。

遺跡を調べたところ出口は全部で5つ。3つは簡単に見つかったが、残り一つはどうやら隠し出口のようで草木が生い茂っている場所に合った。

そして残り一つの出入り口。俺たちは堂々と入っていく。

「いや~、大収穫っすね」

随分と嬉しそうな声が聞こえてくる。

「やっぱ頭《かしら》は強いっすね」

「まあな、あんな奴ら朝飯前だ」

朝飯前と言っても罠にかかっていたら意味はないと思うが、それよりクリハの怒りがどんどん膨れ上がっているのだが、どう責任取ってもらうか・・・・・・。

「そうっすよね。あんなもやし頭なら余裕っすね」

あ、すまん。クリハより先に俺が爆発した。その証拠に俺のどこかでプツンと何かが切れた。

「心外だな。誰がもやしだって?」

俺はかっこつけて登場する。

決まった!

つい厨二心が爆発してしまう。

「い、いつの間に」

「大収穫っすね、辺りからいたぞ」

盗賊団の言葉にロビンは嫌味っぽく顔をにやつかせ、腕を組んで言い放った。

「ふっ、愚かだな。さっきで分からなかったのか?力の差を」

「ああ、分かったよ。俺たちの方が余裕でお前らを潰せると、な」

俺は盗賊団らを挑発させる。

「あ?」

その挑発にまんまとはまり、武器を取るやつが大半だった。

頭と呼ばれていた男は、魔法を放つ準備をしていた。

俺も戦う準備をした。時空間収納魔法からここに来る前に作った鉄の棒。そう!鉄パイプだ!

それを手に持つだけで自分が悪になったみたいで感情が高ぶる。

ばあちゃんが真面目に育ててくれたから問題など一度も犯したことがない俺。そんな俺だからこそ、ワクワクが止まらない。

俺は盗賊団のうち一人との距離を詰めるように地面を蹴った。

そして俺の目の前にいた男《A》は俺がすぐ目の前にいることに驚き退こうとするが、俺はフェイク。本命は・・・・・・

俺の背後から鉄の刃物が磁力によって、目に前の男《A》に襲い掛かった。

もちろん、男《A》は騙されて鉄の刃物が肩に刺さった。

この鉄の刃物の無属性魔法、拘束が発動する条件は血液の付着。その血液の者を拘束するのだ。

男《A》は付与していた魔法で拘束され座り込む。

無属性魔法、拘束は、その者を拘束するだけでなく麻痺状態にする効果がある。だから立つことは不可能だろう。

そんな男《A》の様子を窺っている間に背後から剣を振りかぶったもう一人の男《B》がいた。

武神の加護で倒してもいいが、ここは鉄パイプの強度を足得てやるとしよう。

俺は鉄パイプを背後に回して、剣にぶつけさせる。

その瞬間、鉄が割れる音が響いた。もちろん割れたのは男《B》の剣だ。

俺は野球のピッチャーが投げたボールを打つように男《B》の腹を狙って、鉄パイプを思いっきり振った。

もちろん、男《B》は後方に吹っ飛んだ。そして後方にいたやつらも巻き込んで吹っ飛んでいた。

そんなこんなで頭以外の手下の人間は拘束されて、残りはもちろん頭のみ。

「俺の手下を捕まえたくらいで満足するなよ」

頭は氷の剣を複数生み出し、俺と俺の後ろにいるロビンとクリハに狙って放った。

俺に向かってきた氷の剣をパイプで叩き壊し、ロビンたちの氷の剣は、ロビンたちの目の前に魔法スキル魔力障壁結界を発動する。

氷の剣はあっさりと結界に衝突し壊れた。

しかし、俺の鉄パイプの攻撃も氷の結界で防がれているのも事実。そこでクリハの出番だ。

俺は頭の側面側に回り込み、パイプを横に振る。もちろん氷の結界で攻撃は防がれる。

が、正面から威圧と爆風が迫ってくるのを感じた。

それは頭も同じで、クリハが放った矢だと気が付いたのと同時に結界で防ごうとする。

矢は速度を落とすことなく、結界に衝突。そして結界を貫通した。貫通した矢は頭の肩も貫通し、壁に直撃。

遺跡内が大きく揺れる。魔力の込めすぎだ。

あまりの魔力の込めすぎに一瞬クリハを見る。クリハにっこりと笑っていたが目が笑ってないように見えた。

そんな事より、俺はすぐに胸ぐらを掴む。

「この俺が怪我をするとは。でも、時間は充分に稼げた」

頭は俺の顔を見てニヤリと気味悪く笑っている。

だが、俺はその笑いの意味を知る。

男の足元から冷気が放たれている。あの時の技だ。

しかし・・・・・・

「二度も同じ魔法に罠に掛かるほど、俺はバカじゃないぞ」

男は目を大きく見開いた。

それもそのはずだ。今頃凍っているはずの俺の足が凍っていないからだ。

「なぜだ」

「魔法スキル、放熱結界だ」

放熱結界とは本来は寒い地域などに行った時に使う結界だ。自分の周りに結界を張ることで寒さを凌《しの》ぐことが出来る。

俺は頭にそれだけ言って、左足のつま先をロビンの方に向けて方向転換する。

「ロビン!」

俺はそう叫びながら頭を投げてロビンに魔石をぶつけるように指示する。

が・・・・・・

「まかせ、ってぶつか

ゴン!

俺が頭を投げる力が強すぎたのが原因で、ロビンと衝突した。

そしてお互いに地面に倒れこむ。

「すまん」

だが、その声は頭もロビンにも届くことはなかった。

作戦成功!
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