34 / 48
第3章 獣人族の町〈ヒュユク〉
第29話:病気対策の旅【中編】
しおりを挟む
「何を考えているのですか?」
宿のベットの上で考え込む俺に話しかけてきたクリハ。
「一酸化炭素中毒対策」
「いっさんかたんそちゅうどく対策?」
ほとんどひらがなだ。
まあ難しいことを言っているし、そもそもこの世界の医療や化学の劣っているかもしれないから、クリハの反応に無理はない。
「この宿も同じだが、木で暖を取っているだろ?それにより呼吸困難が生じるんだ。だが、そのころにはもうほとんど手遅れ。しかも、自分がその病気に掛かっている事に気が付けないんだ」
「ご、ご主人様!すぐにここを出ましょう!」
話を聞いたクリハは慌てて俺の腕を引っ張る。
「対策はあるにはあるんだ。こうやって」
俺はクリハの腕をほどき、宿にある窓を全開にした。
「喚起をする事だ」
「なら、時間を決めて喚起をするというのはどうでしょうか?」
「問題はそこなんだよ。換気をする事によってせっかく部屋中に満たした暖が外に逃げる。換気をする事によって、木材の使用量が増える。この町周辺の木はほとんどなくなっている」
窓から眺める景色は最悪。住宅が並ぶやけでもなく、緑が生い茂っているわけでもなく、ただ切り株が沢山あるだけ。
魔導書を見ても対策になりそうなものはなかった。
「火の魔石を作ってはどうでしょうか?」
クリハの言う通り、魔石を作ることも考えた。しかし、魔石は使用者の魔力を吸う。俺はともかく、一般人では2時間くらいしか持たないだろう。
「それも考えたが、魔石から火そのものが出てくる。魔力を込める容量を間違えれば、大火災になる事が想像つく」
「んー、難しいですね」
クリハも考えてくれるが答えにたどり着けないようだった。
「ただいまー!」
ロビンが宿のドアを勢い良く開け放つ。手には3つも抱えた袋があった。
「何を買ったんだ?」
「これが干し肉20個で、こっちが猪の肉団子煮、3個。そしてこれが、タクミが作ったマーヨネーズ付の猪肉、100本!」
相変わらず、体に合わない量を食べるロビン。
「タクミと、クリハの分もあるぞ」
俺は最初に干し肉に手を伸ばした。この癖になる味はお酒に合うだろうが、生憎俺は、前世で一度もお酒やビールを飲んだことがない。御つまみなら食べたことはある・・・・・・。
次に俺が作ったピリ辛マヨネーズを付けた猪肉を食べる。
いつまでたってもマヨネーズを覚えないロビンには俺は諦めている。
そんな諦めさえ忘れさせてくれる、ピリッとする辛さのマヨネーズが猪の癖のある匂いを掻き消し、旨味を引き出している。
次にこの町の看板、猪の肉団子煮。
肉団子には煮込んだおかげかスープをしっかり吸っており、猪の味を引き出し、スープは猪の癖のある匂いがあり、スープ自体の味は・・・・・・無かった・・・・・・。
スープは猪の骨から取ったらしいけど、おいしいとは言えないだろう。コンソメ顆粒が欲しいところだ。
「ロビン様はどう思いますか?対策について」
クリハがロビンに尋ねる。
だが、無駄な事だと俺は思った。なんせ今までロビンに相談をしてきた俺だが、まともな回答を今まで聞いたことがないからだ。
「ん?まへきじゃダへはほか?あふッあふッ」
口に熱い肉団子を入れたまま喋るロビンは熱そうに食べている。
「それだと、火事になるかもしれないそうです」
俺の代わりにクリハが答えてくれる。
ロビンは肉団子をよく噛んでからゴクリと飲み込んで
「タクミの魔法を魔石に付与したらいいじゃないのか?第一、タクミもおいらも火属性じゃないだろ?」
俺は目を大きく開いた。対策が立てられたことではなく、あのロビンが、真面目な回答をしかも探していた答えそのものを言ったからだ。
「おい!タクミ!今失礼なこと思っただろう!」
ばれた・・・・・・。
ロビンのお陰で対策が立てることが出来た。あとはそれを実施するのみだ。
宿のベットの上で考え込む俺に話しかけてきたクリハ。
「一酸化炭素中毒対策」
「いっさんかたんそちゅうどく対策?」
ほとんどひらがなだ。
まあ難しいことを言っているし、そもそもこの世界の医療や化学の劣っているかもしれないから、クリハの反応に無理はない。
「この宿も同じだが、木で暖を取っているだろ?それにより呼吸困難が生じるんだ。だが、そのころにはもうほとんど手遅れ。しかも、自分がその病気に掛かっている事に気が付けないんだ」
「ご、ご主人様!すぐにここを出ましょう!」
話を聞いたクリハは慌てて俺の腕を引っ張る。
「対策はあるにはあるんだ。こうやって」
俺はクリハの腕をほどき、宿にある窓を全開にした。
「喚起をする事だ」
「なら、時間を決めて喚起をするというのはどうでしょうか?」
「問題はそこなんだよ。換気をする事によってせっかく部屋中に満たした暖が外に逃げる。換気をする事によって、木材の使用量が増える。この町周辺の木はほとんどなくなっている」
窓から眺める景色は最悪。住宅が並ぶやけでもなく、緑が生い茂っているわけでもなく、ただ切り株が沢山あるだけ。
魔導書を見ても対策になりそうなものはなかった。
「火の魔石を作ってはどうでしょうか?」
クリハの言う通り、魔石を作ることも考えた。しかし、魔石は使用者の魔力を吸う。俺はともかく、一般人では2時間くらいしか持たないだろう。
「それも考えたが、魔石から火そのものが出てくる。魔力を込める容量を間違えれば、大火災になる事が想像つく」
「んー、難しいですね」
クリハも考えてくれるが答えにたどり着けないようだった。
「ただいまー!」
ロビンが宿のドアを勢い良く開け放つ。手には3つも抱えた袋があった。
「何を買ったんだ?」
「これが干し肉20個で、こっちが猪の肉団子煮、3個。そしてこれが、タクミが作ったマーヨネーズ付の猪肉、100本!」
相変わらず、体に合わない量を食べるロビン。
「タクミと、クリハの分もあるぞ」
俺は最初に干し肉に手を伸ばした。この癖になる味はお酒に合うだろうが、生憎俺は、前世で一度もお酒やビールを飲んだことがない。御つまみなら食べたことはある・・・・・・。
次に俺が作ったピリ辛マヨネーズを付けた猪肉を食べる。
いつまでたってもマヨネーズを覚えないロビンには俺は諦めている。
そんな諦めさえ忘れさせてくれる、ピリッとする辛さのマヨネーズが猪の癖のある匂いを掻き消し、旨味を引き出している。
次にこの町の看板、猪の肉団子煮。
肉団子には煮込んだおかげかスープをしっかり吸っており、猪の味を引き出し、スープは猪の癖のある匂いがあり、スープ自体の味は・・・・・・無かった・・・・・・。
スープは猪の骨から取ったらしいけど、おいしいとは言えないだろう。コンソメ顆粒が欲しいところだ。
「ロビン様はどう思いますか?対策について」
クリハがロビンに尋ねる。
だが、無駄な事だと俺は思った。なんせ今までロビンに相談をしてきた俺だが、まともな回答を今まで聞いたことがないからだ。
「ん?まへきじゃダへはほか?あふッあふッ」
口に熱い肉団子を入れたまま喋るロビンは熱そうに食べている。
「それだと、火事になるかもしれないそうです」
俺の代わりにクリハが答えてくれる。
ロビンは肉団子をよく噛んでからゴクリと飲み込んで
「タクミの魔法を魔石に付与したらいいじゃないのか?第一、タクミもおいらも火属性じゃないだろ?」
俺は目を大きく開いた。対策が立てられたことではなく、あのロビンが、真面目な回答をしかも探していた答えそのものを言ったからだ。
「おい!タクミ!今失礼なこと思っただろう!」
ばれた・・・・・・。
ロビンのお陰で対策が立てることが出来た。あとはそれを実施するのみだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ガーデン【加筆修正版】
いとくめ
ファンタジー
幼い頃母を亡くした杏には、庭での不思議な記憶がある。
鳥や虫、植物たちの言葉を理解し自在に操ることができた母。
あれは夢だったのだと思っていた杏だが、自分にもその能力があることに気づいてしまう。
再び生き物たちのささやく声が聞こえてきたとき、悪しきものたちと彼女の戦いが始まった。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。
※旧作を加筆修正しながら投稿していく予定です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
異世界札束ビンタ 〜異世界でメイクマネーしたおっさんの早期リタイア旅〜
bukocharu
ファンタジー
俺はしがないアラサーのビジネスマン、島田耕太郎。
サラリーマンではなくビジネスマンである。
趣味はこれといってなく、働いては眠り、働いては眠るの生活の人生をおくっていた。
おかげで金に不自由したことはない。
ある日の帰宅中、強烈な二つの光がオレに迫ってきているのを最期に地球での記憶はない。
気付けば、太陽が二つある不思議な世界にいた。
俗に言う異世界転生ってやつだな。
異世界に転生されたはいいが、お約束の神からのギフトなどなく、俺はスーツ姿のまま、見知らぬ草原に立たされていた。
それからはまあ色々あった。そりゃあもう色々あった。
どうにかこうにかして、異世界で自立できる基盤ができた時、俺はこの世界が前の世界より文化が遅れていることに気付く。
すぐにでも気付きそうなものだが、あの時の俺は生きることに精一杯だったのだ。
稼げることに気付いた俺は、また働きはじめた。
金はあるに越したことはないからな。
前の世界と同じよう、働いては眠り、働いては眠りの生活。
異世界に転生したかいがないと言われればそれまでだが、魔法にも魔物にも俺にはあまり関心がなかった。
最初はびっくらこいたけど、すぐに慣れてしまった。理屈はわからんが、そういうもんだと思って過ごしているうちに気にならなくなった。
つまりは、あっという間に俺はこの世界になじんだのだ。
働いて、働いて、働いて……
あれから幾年経ったかな?
立ち上げた商会もずいぶんとまあデカくなったもんだ。
俺も商会のこといまいち把握してないんだよな。
古い知り合いからの招待の手紙も溜まっていることだしちょうどいい。
ちょっと仕事から離れてみるかな。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる