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第2章 ドワーフの国〈イルーヴァタール〉

第24話:額作りの旅【後編】

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俺は宿屋の部屋で3人で話をしていた。

「俺は、タクミ・クリハ。今日からよろしく」

「おいらはロビン。よろしくな」

「・・・」

自己紹介もまとも進行できないこの状況。

「えっと、名前は?」

「ご、ご主人様がお付けください」

彼女は震える声でそう言った。

「うー、でも俺ネーミン・・・名前つけるの苦手だし、君の親が付けた名前の方がいいと思うんだ」

しかし、彼女は俺の質問に答えてくれなかった。最後に命令の言葉を付けると絶対言われたとおりにするそうだ。

しかし、拒絶すると苦しくなったり、電気が走ったりするそうだ。

彼女を傷つけることはしたくないから、命令何て言葉は使う気はない。

しかし、今だけ許して欲しい。

「じゃあ、君が奴隷になった経路を教えてくれ。命令だ」

「わ、私は、私の家はお金が少なくて、親が私を売ったの。だから名前もない」

「そうか、なら帰る選択肢があったら、君は帰りたいかい?」

彼女は首を横に振った。

「よっぽどひどい目に合ったんだな」

「そうみたいだ」

ロビンと小さな声で話をする。

「なら、俺と一緒に旅をしないか?」

「ご主人様の言う事なら

「違う。君の意志を知りたい。君が俺の旅に付いてこないのなら、君が食って生きていける場所を探してあげる」

しばらく沈黙が流れた。

「おいらはタクミに付いて来た方がいいと思うぞ。タクミのそばなら、確実に守ってもらえるし、何より三食寝床付き、前の生活に比べりゃ、裕福だと思うぞ」

「しばらく考えてくれ。時間はいくらでも上げる。君の選択は否定するつもりはないから」

部屋には穏やかな雰囲気が流れる。

俺今、結構カッコいいこと言わなかったか?

なんて調子に乗っていると、雰囲気を壊しにきたトーリンさん。

「できたぞ、タクミ」

扉をノックなしに大きく開け放つトーリンさん。

「誰?」

急に入ってきては、質問を投げかけるトーリンさん。

「さっき買ったんだよ」

「案外早かったな」

まるで俺が奴隷を買うのを想像ついていた様子のトーリンさん。

「早かったってどういう事だよ」

俺の疑問を代わりにロビンが尋ねる。

「言葉の通りだが?タクミは優しすぎるんだよ。ルイラットに聞けば、彼方から来たんだって?坊主の国がどんなんだったか知らんけど、ここでは尋常なく優しい。お人好しすぎるってところだ」

「確かに」

トーリンさんの言葉に納得するロビン。

確かに日本と比べたらこの世界は酷すぎる。奴隷制度何て日本にはないし、貧乏人はいたけど、ここまでやせ細り、ボロボロになるほどでもない。

俺みたいな人間は日本にたくさんいる。珍しくはないだろうな。

お人好しと言われるのは前世を含め生まれて初めてだ。

「それより、完成したぞ」

そう言ってトーリンさんが額を渡してきた。

オリハルコン製の額はどこからどう見ても高級感が溢れ出ていた。

俺はそっと額に魔法石をはめた。

サイズはぴったりだった。しかし問題はここからだ。数秒沈黙が流れる。俺の魔法石に注目が集まる。

パキン!

割れた。

あのオリハルコンの額を割るほどこの魔法石がすごいことが分かった。

じゃなくて!もう他にどの額を探せばいいんだよ!

「仕方ねぇか」

トーリンさんはため息交じりにそう言ってもう一個の額を取り出し、魔法石をはめ込んだ。

割れなかった。

「割れない」

「割れないな」

ロビンの後に俺も続けていった。

「この額はさっき二人が倒したドラゴンの角と竜魂で作った額だ。多分、一番強度が強いだろうな。ドラゴン自体が、珍しい生き物だからな、大事に扱ってくれよ」

「ありがとうございます」

俺は丁寧に感謝を伝える。

しかし待て。もしオリハルコンの額が割れなかったらこれをどうするつもりだったのだろうか。

作ってもらった側だし、文句は言わないでおこう。
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